民主法律時報

2020年3月号

2020年権利討論集会 ―― 319名の参加で盛況に終わる

事務局長・弁護士 谷  真介

 本年2月15日(土)、エル・おおさかにおいて2020年権利討論集会を開催しました。全体会のみ、分科会のみの方も含め、合計319名の参加で、近年まれにみる大盛況となりました。

午前の記念講演では、政治学・社会思想研究者の白井聡さん(京都精華大学専任講師)にご講演いただきました。政治学の分野で記念講演をいただくのは2015年の中島岳志さん以来となります。事前には現在の日本の政治体制を俯瞰するようなお話を依頼していました。

白井さんは、冒頭で現在猛威を振るっているコロナウィルスや、大災害への安倍政権の対応について触れ、政権は無策であるどころか、これに乗じて例えば災害派遣に向かないオスプレイをアピールしたり、緊急事態条項導入を目論んだり等、利用することしか考えていない、国民の命や暮らしにはそもそも興味が無いのだという、衝撃的な評価から話を始められました。さらにモリ・カケ問題や桜を見る会に表れている国政私物化こそが、現政治体制の状態(いわば末期の状態)を端的に示していると評されました。その上で政治体制を維持するために、戦前は天皇制を軸とする家族的国家感を、戦後はアメリカへの盲目的追随を「国体」として用いてきたことを、事象や具体例をあげながら論じられました。

普段民法協の活動では、安倍政権の市民・労働者に対する攻撃について一つ一つ実態から反論し、あるべき社会をつくるために活動をしていますが、安倍政権が各政策を強引に推し進める原動力がどこにあるのかについて、戦前・戦後の政治体制や、天皇制やアメリカとの関係等大きな視点で考える良いきっかけになったと思います。参加者からも視点が新鮮で興味深かったとの感想が多く寄せられました。90分の講演では中々伝えきれないところもあったかもしれませんが、ご興味をもたれましたらご著書を手にとってみてください。

その後全体会では、5月に大阪地裁堺支部で判決を迎えるフジ住宅ヘイトハラスメント事件、現在最高裁に審理が係属している建設アスベスト訴訟、中東海域への自衛隊派遣の問題と、3つの特別報告がありました。その後、「パワハラ指針全面改訂とハラスメント禁止立法を求める決議」、「『表現の不自由展・その後』をめぐる自治体首長等の不当な言動及び文化庁の補助金不交付決定を批判し、同交付手続の明確化、透明化を求める決議」、「自衛隊の中東海域への派遣に抗議し撤回を求める決議」を提案し、いずれも採択されました(採択された集会決議については民法協のホームページに掲載しています)。

午後からは8つの分科会に分かれて活発に討論を行いました。集会冒頭の萬井会長の挨拶にもありましたが、権利討論集会の分科会をみれば、現在日本が抱える労働問題や民主主義に関する課題がみえてきます。今年は、非正規雇用に関する均等待遇や「雇用によらない働き方」、ハラスメント、外国人労働、表現の自由などについて、民法協らしく実態・実践の報告と運動課題が活発に議論されました。いくつかの分科会では、グループディスカッションや模擬団交(寸劇)形式を取り入れるなど、参加者自身が実践する場にもなったものと思います。中でも、第3分科会(「雇用によらない働き方」)では、フランチャイズやプラットフォームビジネス、クラウドソーシングなどで就労する方の連帯、組織化等が議論され、本集会をきっかけに民法協でも動きを模索できればと思っています。

終了後の懇親会にも約100名の方が参加され盛大なものとなりました。会員労働組合や争議を闘っている方々、過労死家族の会、新人弁護士・修習生など、元気の出る発言が続き、次なる闘いの英気を養うことができました。

こうして民法協の最大行事を終えたわけですが、今後も6月4日に予定している解雇の金銭解決制度に関する法律家団体共催集会や、4月・6月と2回にわたる労働法研究会など、民法協の企画は目白押しです。ぜひ権利討論集会で得たものを各職場の運動や事件活動で活かし、来年2月にまた皆様とお会いしましょう!

※新型コロナウイルス感染拡大を受け4月の労働法研究会と6月4日の法律家団体共催集会は中止(延期)としました。
(4月付記)

 

分科会報告

第1分科会
 討論・労働委員会をどう闘うか?(報告:弁護士 足立 敦史)

 第1分科会は、二部制で、前半は府労委(アクアライン事件)、後半は中労委(全受労NHK地域スタッフ団交拒否事件)を題材に、労働委員会の闘い方と手続についてパネルディスカッションと意見交流を行った。参加者は46名であった。
 前半のパネリストは、弁護団の愛須勝也弁護士と大阪府労委の労働者側参与(委員)川辺和宏氏で、司会は、原野早知子弁護士が担当された。
愛須弁護士からは、事件の事案及び手続選択の説明と、事件の顛末である未払い賃金訴訟提起、会社の報復人事と監視カメラ設置、救済命令申立から責任逃れのための会社破産に至るまで、壮絶なやりとりの説明があった。
川辺氏からは、府労委の申立から命令までの流れに沿った注意点の解説があった。申立段階で、大阪では労働者委員の指名が認められており川辺氏に事前相談すべきこと、調査期日(主張)段階では、公益委員や事務局は、労働法制・労使関係を理解していないこともあるので分かりやすい書面を作成する必要があること、不利益取扱い(1号)事案では不当労働行為該当性の主張立証に気を付けること等、どれも実務に直結する解説がなされた。
その後、ABCラジオ・スタッフユニオン弁護団、当該組合からの勝利命令報告を共有し、質疑応答となった。会場からは、「命令までが長い」等の感想や、和解のタイミングや命令書の交付方法などについて質問があった。
 後半のパネリストは、弁護団の井上耕史弁護士、全受労兵庫県協議会議長の岡崎史典氏、中央労働委員会の元労働者委員の岸田重信氏で、司会は、西川大史弁護士が担当された。
井上弁護士、岡崎氏からは、事件の概要と争点、府労委命令を維持するための工夫、中労委労働者委員とのコミュニケーションの深化(堺労連の坂元氏のサポート)等の説明があり、府労委から最高裁勝訴まで7年にわたる闘いの覚悟と苦労の伝わるものであった。
岸田氏からは、中労委での申立から命令までの流れに沿った注意点の解説があった。委員には地労委の命令書、最終陳述書以外の書面、書証は配布されないので重複になっても重要なことは再度書く方がいいこと、労働者委員とのコミュニケーションが大事で本音で話し合える関係を築いておくこと、調査期日段階では、公益委員を追及せずに説得して味方につける必要があること等、こちらも実務に直結する貴重な説明がなされた。
その後、エミレーツ事件中労委勝利命令の報告を受け、質疑応答となった。会場からは、中労委での闘い方のポイントや、和解しても使用者が合意内容を守らない場合どうするか等の質問があった。
 労働委員会の闘い方を具体的に把握できる得がたい機会となった。

第2分科会
 均等待遇を実現しよう(報告:弁護士 冨田 真平)

第2分科会には42名が参加し、「均等待遇を実現しよう」というテーマの下、様々な報告・議論を行いました。
前半は、まず河村学弁護士から4月1日から施行される働き方改革関連法の均等・均衡待遇について規定、ガイドラインの解説がありました。特に説明義務が新たに規定されたことから、各手当の趣旨目的などを使用者に書面化させることが重要であるとの指摘がありました。
その後、現在行われている労契法20条についての各裁判について、当事者からの報告・質疑が行われました。大阪高裁でアルバイトにも賞与を認める逆転勝訴判決が出された大阪医科大学事件、154名もの一斉追加提訴が行われた郵政事件、派遣元無期社員に対しては交通費を支払いながら派遣労働者については交通費の支給が無いことから派遣労働者にも交通費を支払うよう求めた事件、定年前社員に対して支払われる賞与や各手当を定年後継続雇用社員にも支払うよう求めた近畿オイルサービス労契法 条事件、最近提訴された南海バス事件について当事者の方からの報告、質疑が行われました。
さらに、質疑の中で、非正規職員について支払われていない手当について基本給に含まれているとの主張がなされるケースが多い、非正規労働者に支給されていない手当についてカットされたという正規職員からの相談もある、など各地の現状についての報告がなされました。
後半では、組合の取組として、3つの組合からの取組の報告がありました。建交労関西合同支部大陽液送分会からは、発注元労働者と下請労働者の労働条件の格差が問題となり現在対応を検討している旨の報告、金融ユニオンからは一時金や賃金などについての取組の報告がありました。また、KBS京都労組からは今までの長年の取組の歴史や現在の取組などの報告があり、均等待遇を実現することが正社員化につながることなどの報告がありました。
最後に、現在作成中の均等・均衡待遇についての説明義務を活かした要求書のひな形について紹介し、これを使って、企業側が論理構成を整える前に早期に各手当や基本給、賞与についての説明を書面化させようという提起がなされました(このひな型については近日中に民法協で何らかの形で公開予定です)。
全体を通じて、今後の取組も含め充実した報告・議論がなされました。

第3分科会
 新しい連帯がモノをいう!  「雇用によらない働き方」ユニオン活用法(報告:弁護士 西念 京祐)

第3分科会のテーマは、「新しい連帯がモノをいう! 『雇用によらない働き方』ユニオン活用法」でした。雇用によらない働き方を取り上げた分科会は、昨年に続き2回目です。問題点の把握や問題意識の共有をテーマとしていた昨年の分科会から、今年は、一歩進んで、ユニオンを結成して状況の改善に取り組んでいる多くの当事者が参加し、経験を報告し合い、今後に向けた展望を議論する貴重な機会となりました。
雇用によらない働き方は、IT技術を活用することによる新しい柔軟な働き方であるとして取り上げられることがあります。しかし、「雇用」の外側に位置づけられることで、労働基準法や最低賃金法など、これまでに労働者が獲得してきた働く者に対する保護が及ばないという問題があります。
そのような環境を改善するためには、働く者同士が連携をとって、一緒に声を上げていくということが極めて重要になります。労働組合法上の労働者に当たるのだとして、ユニオンを結成し、団体交渉を通じて要求を実現していく取組みが注目されるのです。
分科会では、まず、ウーバーイーツユニオンの取組みについて、東京から駆けつけて頂いた川上資人弁護士および近畿在住の2人の当事者から報告を受けました。プラットフォーマーがアプリを通じて仕事をマッチングさせる、雇用によらない働き方問題の象徴とも言える形態で働く当事者のユニオンです。アプリで始められる仕事の手軽さに、ポケモンGOの延長のような気分で始めていたけれど、ユニオンの活動に関する情報発信を見て、労災の保障がないことなどのリスクを知ったという当事者さんのお話が大変印象に残りました。
他にも、ヤマハ英語講師ユニオンからの雇用化に向けた交渉の報告や日本音楽家ユニオンからの組織拡大の工夫に関する報告、そして、コンビニ加盟店ユニオンや楽天ユニオンなど、事業者性が認められるケースであっても、本部との顕著な力の差がある中で、団結して交渉することの重要性や、公正取引員会を活用する戦略についてなど、興味深い議論が交わされました。
互いに、他のユニオンが交渉や人員拡大においてどのような工夫をしているか、そのノウハウを聞いて、今後の活動に役立てようとする実践的で刺激的な学習企画になったものと思います。
分科会には39名が参加しました。

第4分科会
 いのちと健康を守る職場を実現しよう!(報告:弁護士 上出 恭子)

第4分科会では、「①ハラスメントのない職場をどう実現するか~具体的事例の報告、パワハラ防止法・指針を知ろう~  ②労基署をどう活用するか~労基署の現状を踏まえて~」という二つの柱で報告・討論を行いました。
昨年に「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」が改正され、今年4月から、職場におけるパワーハラスメント防止のために、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となり、今年1月 日付けで事業主の措置義務を具体化する指針が公表されるなど、ハラスメントに対する問題関心がこれまで以上に高まる背景があったこと及び労基署の現状を踏まえた活用法という実践的なテーマを設定したことで、50名という多数の方に参加いただきました。
前半の「ハラスメントのない職場をどう実現するか」では、昨年、広く報道されたトヨタのパワハラ過労自殺事件を担当した立野嘉英弁護士より、直属の上司から「こんな説明ができないなら死んだ方がいい」といった苛烈なハラスメントに被災者が曝された実態と一旦症状が治まったかのように見えて職場復帰をした際の職場環境の配慮の重要性の指摘がありました。
大阪職業病対策連絡会の藤野ゆきさんからは、支援をされてきたパワハラ被害者の労働者の方に対して質問形式で、ハラスメント被害の実情等についてのリアルなお話をお聞きしました。新聞労連近畿地連の伊藤明弘さんからは日本MIC(日本マスコミ文化情報労組会議)が実施をしたセクシャルハラスメントWebアンケートに基づいた報告があり、多数の被害報告があっても実際に相談をしたという割合が非常に低いという指摘がありました。
以上のハラスメント被害の具体的な報告を受けて、岩城穣弁護士からハラスメント防止法、指針の概要の解説、西川翔大弁護士から近時のハラスメント事案の裁判例報告があり、法的知識の解説がされました。
耳原病院労組副執行委員長の横山健さんからは、職場内で、労使双方が委員として構成をするパワハラ防止委員会・セクハラ防止委員会の設置をしてハラスメント事案の解決に取り組むという画期的ともいえる取組の報告をいただきました。
後半は、もう一つの柱である労基署の活用法について、労働行政ウォッチャー小山かおるさんから、労働行政の組織構成、職員の定数の推移といった背景から、現状、労基署がどうなっているのか、また、大阪、愛知等の大規模労働局で労災事務処理の集中化の実態、その弊害の一つとして労働時間の認定の厳格化といった指摘がありました。
最後に、現在、過労死事案の訴訟の当事者の参加者から訴えがありました。
このように非常に盛りだくさんな内容で、今後のハラスメント防止の取組を考える上で必要な法的知識、また実例を知っていただく機会となりましたら幸いです。

第5分科会
 初心者歓迎! 増加する外国人労働者からの相談に対応しよう!(報告:弁護士 大久保 貴則)

第5分科会では、「初心者歓迎!増加する外国人労働者からの相談に対応しよう!」と題して、外国人労働者の問題について議論しました。労働組合やマイグラント研究会のメンバーなどが参加し、参加者は25名でした。
分科会は2部構成で行い、外国人の労働相談の特殊性や注意点等を重点的に議論しました。
第1部では、外国人労働者の相談実績が豊富な首都圏移住労働者ユニオン書記長の本多ミヨ子氏から、外国人労働者からの労働相談において注意すべき点などを実際の事例も交えてお話しいただきました。外国人労働者は、日本語がうまく話せない・読めない、日本の法制度等がわからないなどの理由から、契約書がそもそも作成されないケース、契約書があってもそれは「入管提出用だ」と言われ実際には異なる労働条件で働いているケースなど、日本人労働者よりもさらに劣悪な条件で就労させられていることを紹介していただきました。
また、外国人労働者から相談を受ける際にまずハードルとなる言葉の問題についても、通訳人を確保するための様々な方策をご紹介いただくなど、外国人労働者を取り巻く事情の説明にとどまらず、まさに「明日から使える」実践的なテクニックも教えていただきました。
第2部では、マイグラント研究会所属の弁護士から在留資格についての解説を行い、外国人労働者問題に対応するために最低限必要な知識を身につけた上で、参加者を6~8人程度のグループに分け、あらかじめ用意した設例について、労働組合としての対応を議論しました。在留資格・期限などの外国人特有の問題のため日本人の場合とは違った検討・配慮が必要となることが、事案を用いて議論することでより深く理解することができました。
さらに、少人数のグループで自由に意見交換することで、出題者が予定していなかった着眼点での議論も行われるなど、外国人労働者の問題を共有する良い機会となりました。
今回の分科会の資料・内容が、これから増加する外国人労働者の相談において活用されることを願っています。

第6分科会
 都構想を阻止! 秋の住民投票をどう闘うか(報告:弁護士 藤井 恭子)

本分科会では、本年11月に住民投票が実施される見通しの「大阪都構想」を阻止するため、私たちがどのような取り組みをしていくべきか、というテーマで討論を行いました。
まず、大阪市をよくする会の事務局次長・中山直和さんに、今回の「都構想」住民投票へ至るまでの経過や、問題点について、解説をしていただきました。
中山さんの解説の中で、「都構想」は大阪市を廃止して二度と「大阪市」に戻せなくするものであり、住民サービスを必ず低下させ、災害支援体制を後退させるという、問題だらけのものであることが明らかにされました。
その上で、大阪日日新聞編集局長で元NHK記者である相澤冬樹さんに、マスコミの視点から「維新はなぜ強いのか?」をテーマに講演をしていただきました。
維新の強さとは、大阪の「お笑い100万票」無党派層を取り込んだだけでなく、維新に鞍替えした保守議員(自民党議員)が地元で足腰の強い活動をしたことで、無党派層を維新支持者に定着させたことにある、という解説にはなるほどと思わされました。
さらに、維新と安倍政権は、変化を求める市民感情に訴えかける手法が共通しており、これに対して野党が弱いのは、批判に終始して夢を語らないから支持を得られないと指摘されました。ではどうやって市民に「都構想」反対票を投じてもらうのか。
相澤さんが導いた結論は、住民投票で都構想反対票を投じてもらうためには、市民の感情に訴えるしかない、というものです。
わかりやすく市民の感情に訴える「大阪市をなくすな」といったフレーズを使い、安倍政権や維新を上回る「夢」「希望」を語ることが、安倍政権や維新に勝つ方法である、という主張は非常に説得力がありました。
その後、大生連の大口さん、大阪市学校園教職組の宮城さん、大阪市労組の井脇さんから、市民あるいは現場で働く立場として、維新政治と都構想が市民に何をもたらすか、という観点から発言をしていただきました。
さらに参加者全員で討議を行い、最後に、大阪自治労連の荒田さんより、「大阪市がなくなる」という真実を伝えることで大阪市民にもっと運動を広げていこう、と行動提起をしていただいて終了となりました。
11月の住民投票まで、あまり時間がありません。今回の分科会で出された様々な意見は、すぐにでも着手するべき運動のために参考になるものばかりだったと思います。
特に相澤冬樹さんが述べた「大阪市民の感情に訴える運動」「維新を上回る愛・夢・希望を語ること」という点は、市民を投票行動へ向かわせるために必要な視点ではないでしょうか。
本分科会に参加された皆さんが、都構想反対運動に今回の議論をフィードバックして、運動を盛り上げていくことを願っています。
分科会参加者は32名でした。

第7分科会
 反貧困・社会保障運動と労働運動の連帯のために(報告:弁護士 清水 亮宏)

第7分科会では、「反貧困・社会保障運動と労働運動の連帯のために」とのテーマで討論しました。当日は、学者・労働組合・弁護士・学生など、様々な立場から 25名に参加いただき、今後の展望を議論する貴重な機会になりました。
分科会では、まず、県立広島大学の志賀信夫さんから、「反貧困運動と労働運動の接点」と題してご報告いただきました。貧困の概念を問い直す必要があること、貧困・不平等・格差をなくすために資本・賃労働関係という視点が必要であること、労働者階級の連帯によって資本・賃労働関係に介入していく必要があることなどについて、学術的な観点からわかりやすくご報告いただきました。
続いて、NPO法人「結い」で活動されており、市議会議員のご経験もある片田正人さんから、「要求を実現するための市民運動~NPOの実践から」と題してご報告いただきました。議員活動を通じて感じた政治・行政の限界を踏まえつつ、市民がどのように行政施策にコミットすべきか、どのようなコミットが有効か、リアルな体験を踏まえてご報告いただきました。
その後、①イタリアの年金者組合について、全日本年金者組合大阪府本部執行委員長の加納忠さんから、②年金引下げ訴訟の概要と訴訟の展望について、喜田崇之弁護士から、③生活保護裁判基準引下げ違憲訴訟・障害のあるひとり親に児童扶養手当の支給を求める裁判について、清水亮宏弁護士(筆者)から報告がありました。
最後に、報告者と参加者を交えて、反貧困・社会保障運動と労働運動の連帯のためにどのような運動が望まれるのか、私たちの課題は何かを議論しました。“勝てるゴールを設定して勝ち癖を付けるべきでは”“市民に貧困問題に関心を持ってもらうための宣伝が必要ではないか”“労働組合を交えた社会保障運動の構築が必要では?”など、活発な意見が飛び交いました。
反貧困・社会保障運動と労働運動が連帯するきっかけになる良い分科会になったと思います。

第8分科会
 表現の自由が危ない! 「表現の不自由展・その後」のその後(報告:弁護士 辰巳 創史)

第8分科会は、「表現の自由が危ない!『表現の不自由展・その後』のその後」と題して、いつもの憲法9条ではなく、憲法21条の表現の自由をテーマにして、3部構成で行いました。参加者は24名でした。
第1部では、そもそも「表現の自由」って何?なぜ重要な基本的人権と言われているの?という基本的なことを、71期(2年目)のフレッシュな若手弁護士コンビが、分かりやすくスライドを使って解説しました。とても分かりやすく、市民講座向けにまた使いたくなるスライドでした。私は、早速翌日の憲法カフェで使わせてもらいましたが、好評でした。
メインの第2部では、「表現の不自由展・その後」が中止に追い込まれた際に再開を求めて仮処分を行い、勝利的和解を勝ち取った弁護団から、弁護団長の中谷雄二弁護士をお迎えし、緊迫した当時の状況等についてご講演いただきました。あいちトリエンナーレの一連の事件は、ドキュメンタリーなどでテレビでも取り上げられていましたので、知ったつもりになっていましたが、大村秀章知事や津田大介氏のヒーロー像は作られた虚像であり、実態は全然違うのだということがよく分かりました。
その後、地元の大阪で起きている表現の自由が問題となった事件についても、4人の方にご報告いただきました。枚方市職労のニュースへの市当局の干渉、吹田市の行政財産の目的外使用の使用料に対する規制強化、松原民商まつりの公園使用不許可など、自治体による表現の自由の侵害の他、街宣への干渉・妨害事例が報告されました。
第3部では、出席者24名全員に参加いただき、2つのグループに分かれて、それぞれ異なる事例について自由に検討してもらいました。1つの問題を例に挙げると、児童ポルノは法で禁止されているが、ある自治体が条例で児童の裸を描いた「絵」も規制の対象として刑罰を科することとしたが、表現の自由の観点から問題はないか?というものです。いろいろな角度から、様々な意見が出て、表現の自由をじっくり考える機会になったと思います。
参加者は最少の24名でしたが、全員参加で熱く盛り上がった分科会でした。

朝日放送ラジオ・スタッフユニオン事件 大阪府労委から勝利命令

弁護士 村田 浩治

1 勝利命令の概要

2018年3月22日、朝日放送ラジオでニュースのリライト業務(新聞等の原稿をラジオ用原稿にする業務)を行っていたスタッフらが結成した朝日放送ラジオ・スタッフユニオンは、朝日放送(株)によるスタッフらの「派遣元」会社である(合)DHに対する契約更新拒否による雇用喪失に対し、スタッフらの雇用の確保を求めて団体交渉を要求したが、朝日放送は団交に応じなかった。

大阪府労働委員会は、2020年2月3日(5日到達)、上記団交拒否に対して、朝日放送グループホールディングス(株)及び朝日放送ラジオ(株)の両社(2018年4月に朝日放送がグループホールディングス化された)に対して、団体交渉に応じること及び謝罪文の交付を命じた。

2 事件の経過

(1) 労働組合員らの経歴
労働組合を結成したスタッフ5名はいずれもリライターとしてシフト制で 時間のラジオニュースを支えてきた。経歴は以下のとおりである。

Aは、2001年3月から派遣会社甲の従業員として就業し、2009年4月から朝日放送の派遣元一本化方針により派遣会社乙に移籍し就労していた。Bは、2006年9月 日より朝日放送と個人委託契約を結んで就労を始め、2008年4月に朝日放送の指示で派遣許可を取った乙社の従業員として就労した。Cは2009年2月より、Dは2010年3月より乙社の派遣社員として就労していた。

2011年2月、A及びCは、朝日放送の指示・協力のもとDH社を設立した。A、C、Dは同社へ移籍、Bにいたっては朝日放送から誘いを受けて同社へ移籍した。Eは、DH社結成後、履歴書を朝日放送に提出し、朝日放送の採用を経てDH社に加入した。2011年4月、朝日放送とDH社は労働者派遣契約を締結し、5人はDH社の派遣労働者として就労を始めた。

(2) DH社の実情
合同会社DH社は、資本金1円、別の仕事をしているAの妻が代表者を務めるダミー会社であった。法人登記のために事務所を借りているが、事務所での業務実態はなく、従業員5名全員を朝日放送ラジオにリライターとして派遣しており、スタッフらの雇い主として経費を負担するためだけの存在であった。派遣料金は、半年に1回朝日放送とスタッフらの交渉によって決められていたが、その内容はスタッフらの朝日放送ラジオでのキャリアや能力に応じた個々の料金を合算する方法がとられており、その実態は賃金交渉であって、交渉の情報はスタッフらで共有していた。

3 団体交渉申入れまでの経緯

朝日放送がDH社設立に関与したのは、朝日放送による直接雇用を回避しながら、スキルを有するリライターの安定的供給の維持を図るために、形式上は派遣とするためであった。

2015年9月30日施行の改正労働者派遣法は、指令指定業務がなくなり、DH社は派遣会社としての許可を受ける資本要件も欠いていたため、2018年4月1日以降はリライター業を「業務委託化」し、スタッフらの就労は継続する見込みであった。ところが、2017年3月23日、突如、朝日放送は分社化計画の下で、DH社との業務委託契約を白紙に戻すと通告した。さらに2017年7月19日、2018年3月末をもってDH社との労働者派遣契約を終了する旨の通告をしてきた。スタッフらは、朝日放送労働組合とも相談しながら、雇用の保障を求めるよう要求してきた。

しかし、朝日放送は、リライト業務そのものがなくなること、ラジオ放送事業が分社化してラジオ社が承継することなどを説明するだけで、2017年12月11日になっても新しい就労先の確保などの約束もせず、朝日放送労働組合に対しても協議の対象ではないとして拒否した。

スタッフらは2017年12月に労働組合を立ち上げた。その後も、朝日放送労働組合からの働きかけやスタッフらの連名による交渉申入れを行ったが事態は進展せず、2018年3月22日付で、朝日放送に対してスタッフらの雇用保障等を求める団体交渉を求めた。しかし、朝日放送は「使用者」ではないとの理由で交渉を拒否した。

4 命令の内容

命令は、DH社のダミーの実情の詳細には触れず、朝日放送は「予め労働者を特定ないし指定して派遣を受け、各人のキャリアや能力を評価して労働の対価に反映させていたというべき」であり、派遣法や派遣先指針の定めを逸脱して「本件組合員らの採用や雇用に関して、派遣先である旧会社が、事実上、雇用主と同視できる程度に、現実的かつ具体的に支配決定するに至っているというのが相当である」として、ラジオ事業を承継した朝日放送ラジオ社と旧会社の経営を承継した朝日放送グループホールディングス社の両方が労組法7条の「使用者」にあたり、団体交渉への応諾義務があるとの判断を示した。

5 命令の意義

派遣労働者が、派遣先の契約解除による身分喪失の解決を求める団体交渉拒否の不当労働行為に対して救済命令を発したのは、2018年2月の神奈川県労働委員会命令(日産派遣切り事件)以来で前例が乏しいと思われる。

本命令は、派遣先が「派遣労働者の特定ないしは指定」を具体的に行っていることや派遣労働者各人の賃金を派遣先が評価して決定していることを使用者性判断の要素とし、派遣法や派遣先指針の定めに反している点をとらえて、採用や雇用の決定・解約について派遣先が現実的かつ具体的に支配決定していると判断し「契約解除による派遣切りをした派遣先事業者」の労組法7条の「使用者」性を肯定している。

命令の示した理由付けは、これまで派遣契約解除にあたっては、契約当事者ではないという理由だけで、使用者性すら否定してきた命令が続いてきた中で、労働者の採用にあたって具体的に決定していたという点をとらえてその身分を失わせる決定を行った派遣先の責任を認めた点で、重要な判断要素を示したものであるといえる。また、通常の派遣労働関係でも活用できる点で重要な命令と考える。

(弁護団は、報告者の外に河村学、加苅匠)

「有償ボランティア」の労働者性とその後の問題 ~堺市の保険医療業務協力従事者(看護師)の事件を通して~

弁護士 大久保 貴則

1 はじめに

「有償ボランティア」という言葉はご存知でしょうか。ボランティアとは、本来「金銭的な対価なく、法的義務付けなく、当人の家庭外の者のために提供される仕事」を行う者とされており、無償であることが前提となっているため、「有償ボランティア」という言葉に違和感を持つ方も多いかと思います。しかし、日本では1980年代から、高齢化社会を背景に、経費や謝礼を支払う「有償ボランティア」が主に高齢者福祉分野で発展してきたとされています。

今回は言葉の違和感については問題にせず、この、ボランティアだが謝礼を支払っているという曖昧な枠組みのために、本来労働者であれば行使できる権利を行使できないという問題が生じ得ることについて報告いたします。

2 有償ボランティアの労働者性

(1) 事案の概要
本件はこの問題について正面から争った事案です。堺市の保険医療業務協力従事者に登録し、市の保健センターが実施している健診業務に看護師として従事している方(以下「相談者」といいます。)が、令和元年3月に有給休暇を請求したところ、堺市は、相談者は「有償ボランティアであって、労働者ではない」として、有給休暇取得を認めませんでした。

しかし、相談者は20年以上勤めてきましたが、「有償ボランティア」という名前を聞いたのはこのときが初めてであり、かつ、その就労実態は、堺市から送られてくる1年間のシフト表に基づいて出勤し、1回の出勤について時間に応じた謝礼が支払われるなど、「ボランティア」とは到底呼べないものでした。

そこで、相談者がこの問題について堺労働基準監督署に申請したところ、令和元年12月27日、同監督署長は、相談者の労働者性を認め、堺市に対し、有給休暇取得を認めるよう是正勧告を出しました。

監督署の調査担当者によれば、前記のような就労実態から、労働者性の主要な判断要素はすべて労働者性を認める方向に認定されたとのことでした。

また、このような「有償ボランティア」の労働者性を扱ったケースがなかったため、監督署だけでは判断を下すことができず、労働局、さらには本省にまで判断を仰いだ結果の是正勧告であるとのことであり、本件は重大な先例的価値を有すると考えています。

(2) 有償ボランティアの労働者性

労働者性が認められるか否かは、言うまでもなく、労基法上定められた様々な権利(有給休暇や残業代等)や労災補償を受けられるかという点に関わる非常に重大な事項です。本件は堺市での事案ですが、他の自治体や企業でも同様に「有償ボランティア」として扱い、労働者としての権利が保障されず、労災保険にも加入されていないケースがあると考えられます。

しかし、一口に「有償ボランティア」と言っても、その働き方は様々であるため、結局は個別具体的な事案ごとに検討せざるを得ず、被害の掘り起こしが必要です。

もっとも、「有償ボランティア」として明確に募集されている場合はともかく、そのような名称での募集等がされておらず、今回の相談者のように、そもそも労働者自身が「有償ボランティア」と扱われていることを認識していない場合もあります。

そのため、単に「有償ボランティア」として働いている方への相談窓口を設けてもすべてを救いきれない可能性があり、周知の仕方等も工夫して掘り起こししていきたいと思います。

3 その後の問題

労働者性が認められたとしても、労働者として新たに契約を締結する際に、使用者が報酬額の減額など実質的な労働条件の切り下げをする恐れもあります。

本件でも、まさしくその恐れが現実化しました。是正勧告の結果、相談者を含む保険医療業務協力従事者(180名ほど)を労働者として扱う必要が生じた堺市は、それらの者を「会計年度任用職員」として公募し、任用した際の給与は従前の6割程度とする予定であることを発表しました。さらには、看護師の公募は正看護師に限り、准看護師(相談者が該当)は対象にしないと説明されています。

特に後者の点は、明らかに監督署に通告した者に対する報復であり、許されるものではありません。

相談者らは、これまで長年堺市の保険医療業務を支えてきましたが、このような人たちの労働条件を守ってこそ市民の健康・安全が守られるというべきであり、前記のような明らかな改悪は必ず阻止しなければなりません。

このように、本件は労働者性をクリアしたその後の問題に発展し、より深刻な問題へと進んでいますが、これからも引き続き闘っていきます。

南海ウィングバス南部株式会社事件 提訴報告

弁護士 西川 裕也

1 はじめに

令和元年12月4日、南海ウィングバス南部株式会社(以下、「被告」という)に所属するバスの運転手(以下、「原告」という)が、被告に対して、労働契約法 条違反を根拠とした損害賠償を求めて大阪地方裁判所岸和田支部に提訴しましたので、その内容をご報告します。

2 事案の概要

被告は、正社員に対しては賞与を支給する一方で、原告を含めた契約社員には賞与を支払わないという取り扱いを行っています。

正社員は主に路線バスを運転し、契約社員は主にコミュニティバスを運転するのですが、双方ともに乗客を乗せてバスを運転するという点で業務や責任の内容に大きな違いはありません。

また、被告内でバスの運転業務を行う従業員は、基本的に転勤等の業務内容の変更は予定されておらず、この点も正社員と契約社員との間で差異はありません。

加えて、被告の作成した就業規則上では、正社員、契約社員とも賞与に関し「従業員に賞与を支給することがある。その時期、金額等については、そのつど決める」と同様の定めが設けられており、業務内容の差異により賞与の支払いに差異が設けられている訳ではありません。このような、就業規則の定めからしても、被告は正社員が期限の定めのない契約であり、契約社員が有期雇用契約であるということに着目して賞与の支払いに格差を設けているものと言えます。

以上の理由から、被告が正社員に賞与を支払う一方で、原告に賞与を支払わないことは、労働契約法 条に違反する不合理な格差であり、早急に是正されなければなりません。

3 訴訟に至る経緯

原告は、団体交渉を通じて、被告に対して、正社員との間の不合理な格差の是正を求めてきました。

原告は継続的に被告との間で団体交渉を行ってきたものの、被告は契約社員に対して賞与を支給した前例がないこと等を理由に、誠実に対応する姿勢を示すことはありませんでした。

そこで、団体交渉では、被告が上記の格差を任意に是正する見込みがないと判断し、裁判所の判断を求めるため、本来であれば、原告に支払われるべきであった賞与相当額の損害の賠償を求めて、訴訟を提起するに至りました。

賞与には賃金の後払いとしての性質が認められることからすると、正社員と契約社員との間で業務に特段の違いがない以上は、原告を含めた契約社員に対して賞与を支払わないことに合理的な理由があるとは言えません。裁判所には適切な判断を求めていきたいと考えています。

4 終わりに

残念ながら、実質的に同じ業務を行わせるにもかかわらずに、契約社員に対する賃金の支払いを抑えて使い倒すという状況は、現在でも多くみられます。

同一労働同一賃金を実現していくためには、一つ一つの事件で使用者の不正を是正していくほかありません。本件も、その一つの戦いとして重要なものとなると考えておりますので、どうぞ、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

(弁護団は、須井康雄及び当職)

民法協 2020年新人学習会 報告

弁護士 西口 加史仁

1 2020年新人学習会の概要

2020年1月30日、大阪弁護士会で主に新人弁護士を対象に、学習会が開催されました。講師は谷真介弁護士で、新人弁護士3名に加えて、先輩弁護士や司法修習生、組合の方も参加していました。谷先生には、「労働者側の労働相談入門」というテーマで講義をしていただきました。具体的には、弁護士が労働者の方から法律相談を受けた際に注意すべき点、事情を聴きとる際のポイントなどを、谷先生の実体験を踏まえながら、横断的に解説をしていただきました。

2 労働相談の基本

以下、本学習会で学んだ、労働相談の基本について報告します。
(1) 近年、労働相談・事件の数は増加傾向にあります。
ところが、労働事件は、「会社」・「職場」という密室で行われており、証拠が偏在・不足すること、仕事という人の「生活」、「誇り」に関連する問題であること、圧倒的な立場の違いがあること等、固有の特徴があります。また、紛争解決の手段として、訴訟だけではなく、労働審判や行政による紛争解決等の様々なものが用意されています。このように、労働事件は比較的に特殊性を有しているといえます。

(2)
 そのような労働事件の特殊性から、労働相談においては、特有の注意点や取るべき姿勢があります。
例えば、労働者の業務内容等は様々であり、その業界の固有のルールや職場慣習等も様々であるため、我々が知らない・わからないことが多くあります。このような事情は、相談労働者から丁寧に事情聴取をしなければ、正確に把握することはできません。また、例えば、解雇・ハラスメントの相談だが、未払い残業代がある等、労働者が認識していない問題が隠れている場合もあります。更に、労働者の意向も様々であり、職場復帰を望むケースもあれば、金銭賠償を望むケースもあり、高い解決水準を望むケースもあれば、スピード感を望むケースもあるなど、事案ごとに多種多様です。
このように、聴取しなければならない事項が多岐にわたるため、労働相談では事情聴取にかなりの時間がかかる傾向にあります。しかし、これら基本的事実関係を丁寧かつ正確に把握することは、労働者が抱える問題を適切に解決に導くためには不可欠で、極めて重要です。

3 おわりに

本学習会では、労働相談について、基本事項から応用事項まで幅広く、谷先生の経験を交えた、大変有意義な解説をしていただき、新人弁護士にとっては、労働相談に関するこれ以上ない学習会となりました。民法協では、毎月各種の研究会が実施され、日々の業務にも大変参考になる議論がなされているとのことですので、私も積極的に学習会に参加し、研鑽していきたいと思います。

《書籍紹介》 石川元也弁護士の『創意』を編集して ―― 人権弁護士の先駆者、刑事弁護の創造

弁護士 岩田 研二郎

石川元也先生(元自由法曹団団長、元日弁連刑事法制委員会委員長、修習9期、88歳)が、2019年12月、ERCJ選書(刑事・少年司法研究センター)のシリーズとして、『創意――事実と道理に即して・刑事弁護六〇年余』日本評論社を出版されました。

私は斉藤豊治先生(甲南大学名誉教授、大阪弁護士会)とともにインタビューを担当し、石川先生の刑事事件に関する弁護活動と刑事法改革の取り組みをたどりました。

石川先生は、弁護士登録された昭和32年以降、戦後の新刑事訴訟法を憲法に基づき実質化していく実践活動に尽力され、証拠開示をはじめ数々の新判例を引き出されました。(松川事件、吹田事件、宮原操車場事件、全逓大阪中郵事件、大阪学芸大学事件、白山丸事件、徴税トラの巻事件、国労尼崎事件、大阪証券労組事件、都島民商事件など「無罪判決一覧表」に32の事件が掲載されています)

この本は、単なる思い出話ではなく、なぜその判例が獲得できたか、前著の「ともに世界を頒つ」で指摘された「裁判官との共感」を作り出すために、世論への働きかけとともに「事実と道理により裁判官を説得できる」ことを信ずるという大衆的裁判闘争の教訓も改めて指摘されています。

石川先生が若いときに、刑事弁護人のありかたの教えを受けた毛利与一弁護士(1901年生まれ、1982年1月30日没、人民戦線事件、第2次大本教事件、松川事件、砂川事件などの公安事件で弁護活動を行う。東京裁判では平沼騏一郎の補佐弁護人。1959年大阪弁護士会会長)のことも紹介されています。

私が印象に残ったのは、毛利弁護士が戦後の東京裁判に弁護人として参加して、アメリカ人弁護士の法廷での活気ある裁判官との口頭での弁論をみて、これが真の弁護人だと感得した言葉です。

毛利先生は「私の法廷態度を変化させたものは何よりも東京裁判の経験です。法廷は生き物で、闘争の場であることをつくづく経験しました。私が東京裁判で学んできたのは、弁護士としての『闘魂』ですね。『強情』と呼んでもいい。特定の弁護士じゃなくて、全体の法廷の雰囲気ですね。私はひそかに詠嘆したんです。軍事裁判にしてこれだけ活発にやれるのやと。法廷では裁判所はいばっていましたけれども弁護士も平気で裁判所に喰ってかかる。軍事法廷でも、アメリカの弁護士は、裁判長の発言抑制に対して、「今の裁判所の決定は、『アンデユー・インタフエアレンスだ(不当な干渉だ)』」と抗議する。裁判長が「取消せ」と弁護士に迫るが、弁護士は「取り消さん」、裁判官「今日は法廷から帰れ」(退廷命令だ)それで弁護士は帰るが、次の日ものこのこ出てくる。さすがの平沼騏一郎も「あの強情さは、尊いものだね、君」。「強情」という言葉を使いよった。「あの強情さはほしいな、弁護士に。」。これは、冷水三斗をあびせかけられた気持ちだった。あの時、私も、もう一つやらんけりゃいかんかった。私は「これを大阪へもって帰って、大阪の法廷でやってやるぞ」と、私の瞬発力の好きな性格と合わせて、私流にケースバイケースに間に合わせていった。『これが新刑訴だ、おれは東京裁判で見てきたんだ』」と。

この場面から、「たたかう弁護士」毛利与一が誕生した。このとき、毛利先生46歳でした。

このように先輩から学ばれた石川先生は、日野町再審事件でも今なお現役弁護団で活動されています。また私が今も活動をともにする日弁連刑事法制委員会では、本来証拠隠滅のおそれが低下するはずの起訴後勾留が何のチェックもなく自動的に更新される制度を批判し、「起訴後勾留の再審査制度」の導入を提唱されています。

石川先生が学生時代にメーデー事件で逮捕されたときの上田誠吉弁護士(元自由法曹団団長)の接見メモなども資料として掲載され、みなさんがご存じない石川元也青年の生い立ちもたどることができます。

石川先生の活動を振り返ると、第一に、人権と民主主義の擁護という戦後の弁護士の社会的活動の先頭を行かれた弁護士であるとともに、第二に、新刑事訴訟法を憲法に基づき実質化していく実践活動に尽力し数々の新判例を引き出した傑出した先駆者といえます。

また、個人の力だけではなく、弁護士会や自由法曹団という組織をリードして、社会的に大きな力をつくっていく活動に注力されたことがさらに大きな成果を生み出したことを実感します。

石川先生は、弁護団でも委員会でも理念的な論争には加わることなく、常に具体的な事実に則して、筋を通しながら、実践的な意見を述べられ、落ち着きどころを探られる。結論や先が早く見えすぎるという声も聞くが、歳をとられるにつれて、じっと聞いておられることも多くなったように思います。

石川先生が先輩から何を「継承」したか、そのうえに立って柔軟な発想で、何を「創意工夫」して、新しい判例を勝ち取ったかなどを考えながらの編集作業でした。

(岩田研二郎までお申し込みいただければ、送料込みで1600円で販売します。きづがわ共同法律事務所tel:06-6633-7621 fax:06-6633-0494)

非正規労働者の「均等均衡待遇」学習会は お済みですか?

弁護士 加苅  匠

1 今年(2020年)の4月から施行です!

2018年6月に成立した「働き方改革関連法案」のうち、「雇用形態に関わりない公正な待遇の確保」に関する規定が、今年(2020年)の4月1日から(パート有期雇用労働法については、中小事業主は2021年4月1日から)施行されます。俗に言う「同一労働同一賃金」規定です。

「働き方改革関連法」のうち「長時間労働の是正」に関する部分は、過労死ラインまでの残業を合法化するなど大きな課題が残ったまま成立してしまいました。一方、「雇用形態に関わりない公正な待遇の確保」については、均等均衡待遇規定の整理に加えて、正社員と非正規労働者との間の待遇差について使用者に説明義務が課されるなど、使える部分も多いです。

2 改正「パート有期雇用労働法」「派遣法」のポイント

改正法のポイントは、①均等待遇規制(正社員と職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲が同一の者について差別的取扱をしてはならない)及び均衡待遇規制(個々の待遇ごとに、職務の内容、職務の内容・配置の変更の範囲、その他の事情を考慮して、正社員との間で不合理な取扱をしてはならない)の整備・追加と②使用者の説明義務の強化です。

短時間(パート)労働者と有期雇用労働者はパート有期雇用労働法で、派遣労働者は派遣法で規制されます。規制の内容はほとんど同じですが、派遣労働者については派遣元と労働者の過半数代表等との協定により①の規制を除外することができます。

①については、厚労省からガイドラインが示されており、原則となる考え方や問題となる事例が具体的に示されています。

②説明義務は今回の改正法で新たに加えられた規定です。事業主には、労働者の求めに応じて、正社員との個々の待遇差の内容及び理由について説明しなければならない義務が課されました。

3 学習会をしよう!

改正法・ガイドラインを活用して、正社員と非正規労働者の均等・均衡待遇を求めることは、非正規労働者の労働条件改善となることはもちろんのこと、社会全体のベースアップや非正規労働者の組織化、労働者間の団結強化に繋がります。

今年4月の施行に備えて、運動を加速させるためにも、職場や組合で学習会を開きませんか?民法協までぜひお問い合わせください。(毎月第3金曜日「パート研」への参加もお待ちしています!)


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