民主法律時報

「今、労働組合はどうあるべきか」――「財は友なり」著者 髙岡正美さんを囲んで

弁護士 鶴見 泰之

 2019年4月12日、国労大阪会館で、「財は友なり」の著者である髙岡正美さんの学習会が行われ、40名近くの方々が参加されました。
城塚健之弁護士が開会の挨拶をし、2018年に労働組合の在り方を考えさせられる重要な書籍が2冊出版され、そのうちの1冊は「財は友なり」だと紹介されました。

 冒頭、髙岡さんから「財は友なり」の執筆経緯が紹介されました。大川真郎弁護士から、「(これまでに多くの経験をしてきた髙岡さんには)書き残す責任がある」と勧められたことで、髙岡さんは執筆を決意されました。執筆をし始めた当時、髙岡さんはガンの治療中で、資料を収集するだけでも一苦労されたそうです。

髙岡さんは、大学を卒業後、全国紙パルプ産業労働組合連合会(紙パ労連)の専従組合員になり、製紙会社の争議を支援するようになりました。髙岡さんは、東中法律事務所(現在の関西合同法律事務所)の当時 代だった宇賀神直弁護士から、第一製紙の工場閉鎖に伴う従業員全員解雇事件のことで、付きっきりで助言を受けました。髙岡さんと宇賀神弁護士の付き合いは、出会ってから約 年が経過した現在も続いています。

1976年、ハリマ製紙の振り出した手形が不渡りになり、事実上倒産した後、髙岡さんは、会社を存続し、従業員の雇用を確保するため、地元の有力企業から支援の約束を取り付け、会社更生手続により、会社を再建させました。

チューエツの再建事例も紹介されました。チューエツのメインバンクは会社の資産を売却し、貸金を回収する方針でしたので、髙岡さんをはじめとした組合が、会社を再建するように方針の転換を求めたところ、メインバンクから、「では、組合が会社を経営してみろ」と無茶な要求をされました。髙岡さんら組合は、メインバンクからの挑発的な要求に対して、けんか腰になることなく、会社経営に参加する方針を打ち出し、組合役員を会社の工場長などの主要部門に派遣し、数年後には経営は黒字に転換しました。髙岡さんは、取締役への就任を打診されましたが、辞退し、チューエツの従業員として雇われることになりました。雇用契約締結後、髙岡さんは、チューエツに休職願を提出し、専従組合員となりました。

「会社存続・支援・協力」という髙岡さんの組合運動のスタイルが、「経営参加型の組合運動」に変わることになった丸三製紙の闘争が紹介されました。12年間に及ぶ会社更生手続の中で活躍された管財人代理が、再建後の会社の代表取締役を引き受ける条件として、髙岡さんが丸三製紙の取締役に就任することを提案されました。髙岡さんは、役員報酬を辞退するかたちで、30数年間、丸三製紙の取締役を務めました。

髙岡さんは組合運動をする上で心掛けていたことがあります。経営者を説得するために、労働組合が会社の財務諸表、取引先、経営戦略のことを知ること、そして、いつでも、労働組合が会社の経営を交代するつもりの心意気を持つことです。言葉で言うのは簡単なことですが、それを実践するのは非常に大変なことです。実際に、言葉通りに実践されてきた髙岡さんから我々は学ぶべきことがあると感じました。

 髙岡さんのお話の後、参加された元組合員の方々から、組合での取組みが紹介されたり、髙岡さんに対して補足説明を求めるなど、学習会は終始活発な雰囲気のまま終了しました。

その後、国労会館近くの料理店で懇親会が行われました。学習会で発言の機会がなかった方々が、今日の学習会の感想を話したり、髙岡さんをよく知る方々から髙岡さんが金融機関と交渉をしたときのエピソードが紹介され、笑いの絶えない懇親会でした。

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