民主法律時報

言語道断 ――年頭のごあいさつ

会長 萬井 隆令

「言語道断」とは、手元の『辞林』(三省堂)によれば、「言葉で言い表しようのないほど、ひどいさま」とある。2017年、そう呼ぶべき事件が相次いだ。

核兵器禁止条約が国連で初めて採択された。信じ難いことだが、「非核3原則」をとるという日本政府は同条約に反対した。他方で、陸上イージスやミサイルをはじめ超高額の防衛装備をアメリカの「言い値」により購入し、対話による平和的解決を目指すのではなく、北朝鮮へ軍事的圧力をかけるアメリカに追随し続けている。憲法に、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と謳う国の政府の態度であろうか。沖縄では小学校の校庭に、アメリカ軍ヘリCH53Eの操縦室の窓枠が落下したが、構造の問題ではなく「人的ミス」で片づけて、飛行を再開し、政府は直ちに容認した。人間はミスすることもあるから、ミスがあっても外れて落ちることはない構造にすべきで、そうなっていないことは「構造の問題」ではないのか。国民の生命、安全を守るべき任を果たすことなく、アメリカの主張を何から何まで容認するとは、言語道断である。

ちなみに、安倍首相は韓国の外相や大使と会談する時、一段高い、豪華にみえる花柄の椅子を使い、相手を見下す形で会っている(写真を見た)。まるでチャップリンの『独裁者』でみるヒットラーで、外交儀礼にも悖るだろうが、それに何も言わない外相ら補佐役も含めて、言語道断。

2016年8月の内閣改造の際に提唱して以降、「働き方改革」という言葉が巷に出回っている。コンサルタント会社などは、業務のあり方を見直したら残業が12%減ったなどと「働き方改革」の効果を宣伝している。以前は「合理化」と呼んでいたことで、政府の「働き方改革」は結局は企業が合理化を進める基盤を整備する改革であり、それを労働者にとって有益なことのように宣伝するのは労働者・国民を欺くものである。政府も、それを復唱するだけのマスコミも言語道断である。

森友学園に対して土地を売る際に、学園側がないと言っているゴミが地下にあったことにすれば、値引きできると国が持ちかける様子の録音が発覚した。「忖度」という言葉が流行り、「丁寧に 謙虚で真摯に くぐり抜け」(池附の綱)。税金の無駄遣いそのもの、言語道断である。

リニアモーターカー建設に絡んで、大林組、清水建設など4つのゼネコンが、これまでに受注した15件のすべてにおいて、「受注調整」して4社均等になるように談合していた容疑で、東京地検特捜部と公正取引委員会が捜査を始めた。そもそも、リニアモーターカーは建設の可否自体が大問題であるし、関連工事は当初、すべてJR東海が負担する予定であったが、安倍政権は公的資金を注ぎ込むという。これも税金の無駄遣いで、言語道断である。

高速増殖炉「もんじゅ」では、空気や水と触れると爆発的に燃焼する液体ナトリュウムが冷却用に用いられているが、それを取り出す装置が設置されていない。核燃料は、何かの事故があった際は至急に引き出して爆発を防ぐ必要があるが、その核燃料の引き出しも容易ではないという。緊急時の核燃料や冷却材の取り出し、さらには廃炉さえも想定しないで設計し、建設し、運転していた。フランスでは廃炉を決定した同型の炉からの液体ナトリュウムの回収が20年経って、ようやく最終段階に入ったと伝えられる。日本原子力機構は具体的な計画もないまま、廃炉の方針を発表した。言語道断そのもの。

幾つかのメーカーの商品に関わるデータの捏造、無資格者による新造車両の点検、異臭・異音の報告を無視した新幹線の運行等々、他にも性格も規模も異なるが、「言語道断」が多すぎる。放置すれば、日本の将来は闇に突入する以外にない。

国民の生命を尊重する政治への転換、公正な国家財政の運営、民主主義の確立等々、私達に課せられた課題は明確である。今は、実践あるのみ。昨年の選挙では幾つも市民連合が生まれて成果を上げ、政治を変える一つの道筋を示した。厳しい年になるが、「明けない夜はない」。おおらかに前へ進みたい。

〔追記〕 言うべきことが多すぎて、約束の字数の倍になった。これは言語道断……ではない。

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