民主法律時報

なくそう! 官製ワーキングプア 大阪集会Vol.4

ハローワーク雇止め裁判原告 時任 玲子

 毎年秋に開催されるこの集会も、第4回目に至り、ますます充実した盛りだくさんの内容で締めくくることができたように思います。今年は秋晴れの下、2016年11月3日(祝)エル・おおさかにて開催されました。

最初に言い訳ですが、私は第1回目の集会は職場の記念式典の行事と重なり、夜の交流会からの参加になりましたが、毎年顔を出して首を突っ込んでおります。今年は全体会の司会を担当することになり、学習内容についてほとんどメモを取れていません。なので、きちんとした報告文としてはまずは及第点が取れないであろうことはどうかお許しいただきたいのです。

午前は、①官製ワーキングプア入門講座、②雇止めなどの判例・通知を学ぶ、③均等待遇を目指して到達と課題、④運動の報告と交流、というそれぞれの分科会に分かれての報告・学習でした。途中、④で非正規雇用労働者の正社員化の成功の経緯についてお話しいただいた京都放送労働組合の、講師の古住さんと当事者松野さんには、場所を移動して、②の分科会でもう一度お願いすることになりました。それだけ多くの人に知ってもらいたい事例でした。

午後は、裁判係争中(ハローワークは終了)の当事者たちからの訴えと報告、安原邦博弁護士からのコメントも交え、5人の発言がありました。つくづく『任用』という化け物がはびこっていると実感しました。 条裁判についても、前日に東京高裁で逆転敗訴するというニュースが流れ、理不尽なことに対して司法が救おうとしないのかと疑念がふつふつと湧き上がるのを抑えられませんでした。皆さんの魂の訴えは心に響いたと思います。特別報告は、「大阪府内の自治体の臨時・非常勤のワークルール第2次調査から見えてきたことと課題」というタイトルで、おひとりでの登壇でプレッシャーかと思いましたが、それをものともしない久米由希子さんの堂々とした発表でした。今回非常に高い精度の大阪府下の自治体調査の重要な役割を果たされた武久英紀さんの、一刻も早いご回復を祈ります。

印象に残ったのは、地方自治体総合研究所の上林陽治さんの総務省調査結果の総括でした。配布されるレジュメなしで、それは「証拠を残さないため」、スクリーンを写真に撮ろうとされた方へ、「写真もできれば撮られたくない」とストップをかけられたところで、これは政府が知られたくないことを握っている!ヤバい情報をつかんでいる!というただならぬ雰囲気が漂う発表でした。確実に、行政の足元で働くこの官製ワーキングプアの存在を、国はヤバいと考えていて、でも手を付けるにはあまりにも大ごとで、適法に不利益を強いられる我々を「どうしていいのか僕わかんない」状態であることが伝わりました。私たちが知って、感じて、声を上げていくことが、現状を動かすエネルギーになるはずです。

休憩をはさんで、ソウル市における労働政策の報告です。なぜ、ソウルでは非正規雇用労働者を正規雇用に変更できて、日本ではそれができないのか。首長の意気込みの差なのでしょうか? 脇田滋先生と白石孝官製ワーキングプア研究会理事の対談でした。

 そして今回の目玉企画である、生活困窮者政策で注目の、山中善彰滋賀県野洲市長を迎えた、「公共サービスと公務労働を考えるシンポジウム」は、期待通り盛り上がりました。税金の滞納者を追いかけて、細やかなケアを施す、申請主義のお役所の常識をおよそ覆す政策を推し進めて、全国から注目されている山中市長のみずみずしい感覚に、移住してくる人たちが後を絶たない現象もうなずけました。「それがいいかどうかは市民が決める」という山中市長の言葉には、確かな響きがありました。コーディネーターの読売新聞原記者のやりとりでは、正規雇用の職員はサボりがちということではないという反論も聞かれましたが、家庭児童相談員の西村聖子さんが、「野洲市に住みたい気持ちにはなるけれど、そこで非正規で働きたいかというとちょっと待てよ、という気になる」という言葉が、私は心に残っています。

総括コメントは、これまでの集会に皆勤賞の西谷敏先生の登場です。西谷先生も上林さんの報告に言及され、感じるものを抱かれたようでした。いつかは「なくそう! 官製ワーキングプア」の集会が必要なくなる日がくることを祈っております。でも、道のりはまだまだ厳しいものがありそうですね。途中で参加費500円の領収証がなくなって、受付担当者が実行委員へ、渡した領収証の回収を依頼された場面がありました。想定以上の数の参加者があったことがうかがえました。150人は超えたでしょう。会場でのカンパも40,884円集まり、熱気冷めやらぬ良質な集会でしたことをご報告いたします。

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