民主法律時報

枠組みを超えて広がった「なくそう! 官製ワーキングプア」第2回大阪集会

集会実行委員 川 西 玲 子

 2014年11月3日、エル・おおさかで「なくそう! 官製ワーキングブア」第2回大阪集会が開催されました。昨年に引き続いて2回目の開催です。主催は同実行委員会で、共催は民法協・大阪労働者弁護団・非正規労働者の権利実現全国会議・NPO労働と人権サポートセンター大阪・NPO官製ワーキングプア研究会でした。
 参加者は、午前の5つの分科会①運動の報告と交流②任用論を越える③総務省実態調査の分析④委託、指定管理者の状況と取り組み⑤官製ワーキングプア入門講座にのべ103名、午後からの全体会に160名の参加者がありました。
民法協からは、萬井隆令会長、豊川義明副会長をはじめ、多数の弁護士、労働組合の会員の皆さんに参加していただき熱心な討論がされました。
また、前田達男先生(金沢大学名誉教授)、西谷敏先生、脇田滋先生、上林陽治さんなど学者・研究者の皆さんにもご協力をお願いし、午前中の分科会から全体会、その後の交流会までみなさんお付き合いくださり、現場の非正規労働者を励ましていただき大変充実した集会になりました。

公務職場で増え続ける非正規労働者は、正規とは大きな格差のある処遇におかれ、3年、5年と期限を付けられた不安定な雇用を強いられ、20年30年勤続であっても「公務は契約ではない任用だ」と一方的に首を切られる。この集会は、こんな理不尽な実態を社会的にアピールしようというものです。ナショナルセンターを越えた公務職場の非正規労働者が自ら立ち上がり、労働組合・弁護士・学者・研究者と協力して取り組んできたものです。
 今年 7月には総務省が全国の自治体に通知を出し、特別職非常勤(労働法・労組法全面適用)を一般職非常勤(公務員法適用)か「任期付職員」に位置付けるよう任用替えを示しました。この間非常勤の手当(一時金・退職金)を巡る判決でも「任用」と「実態」のかい離が明らかにされ、もはや繕いようのない事態になっています。そして今吹田の非常勤裁判ではまさにそのことが大事な争点の一つとして争われています。私たちの前に立ちふさがる「任用」とは何かをいま一度しっかり学ぶ必要があると、意見書を書かれた前田達男先生を金沢からお招きし、午前の分科会では日本の公務員法がドイツ官吏制度を取り入れ、戦後改革の中で公務員の身分関係はすべて「任用」と統一された歴史的経過と今後どうあるべきかを講演していただき、午後の全体会では河村学弁護士との掛け合いトークでさらに解かりやすく、もともと吏員とは違って雇用契約関係にあった3分2もの労働者には、市民法の一般原理である合理的意思解釈とか信義則といった法理を適用することが可能になると言われたことは私たちを大いに励ますものでした。

午後の全体会は中西基・小野順子弁護士の司会で始まり、オープニングは、掛け持ち大学非常勤講師のコール佐藤さんがギター片手に「非常勤ブルース」で楽しく元気よく開会しました。
城陽市非常勤の中労委事件について塩見卓也弁護士が「労働委員会でなら不当労働行為は職場復帰命令が出せる」と闘っている事案を報告しました。
リレートークでは、ハローワーク雇い止訴訟、東大阪学童保育指導員解雇事件、大阪大学非常勤雇い止事件、混合組合の団交権訴訟などを当事者が報告し、多くの職場で闘いが広がっていることを実感しました。
事前に募集した川柳には241句の応募があり当日入選作が発表されました(選者:正木斗周)。安倍首相のお題では「返り咲きしたと思えば狂い咲き」、自由句では「奴隷ではないと手足が叫び出す」「年金に早く逝けよと急かされる」など思わず共感しうなずきました。
続いていま臨時・非常勤が最も知りたい総務省7・4通知については「模擬団交」から始まり、通知の背景・あらまし、すでに悪用されようとしている東京都の当局提案の内容などが上林陽治さんや玉城さん(東京都の消費生活相談員)から報告されるなど短い時間でしたが通知をめぐる現時点の状況が交流されました。

最後に集会のまとめ的な発言では西谷先生は「いまの公務員の法制度は無茶苦茶、特に特別職非常勤(3条3項3号)はひどく本当に法治国家といえるのか、法と実態の矛盾を通知一つで是正できるのか」と総務省のいい加減さを指摘し「現在地方公務員法のコンメンタールを作っている。総務省作成のものが普及しているが、もっと正しい解釈のものを作りたい。来年3月には発売できる。大いに役立ててほしい」「公務員制度全般はどうあるべきか検討し直す必要がある」と話されました。
脇田先生は韓国の「風船効果」(非正規運動で押し込めば、使用者側は悪知恵を働かせて他の就労形態を考え、間接雇用や特殊雇用(請負)が風船のように広がった)の危険性について話され、官製ワーキングプアをなくす運動だけでは業務委託(偽装請負での丸投げ)が増える可能性があると指摘されました。また、上林さんは「非正規が非正規でいるという事が自分たちの責任ではないという事を常に意識して、自分たちが正しいと言える運動を創ろう、攻撃する側の言葉を使わず自分たちの言葉と文化を持とう」と結ばれました。
そして最後に、共催団体でもある非正規労働者の権利実現全国会議から村田浩治弁護士が、緊迫した派遣法の国会情勢の報告を行い、必ず成立を阻止するために署名・ネット署名を訴えました。

今年の集会は、社会的にアピールしたいという私たちの願いどおり、参加者の所属は68 組織と多岐にわたって広がり、組合未加入の参加者もありました。また初めて市会議員の参加も3市3名あり、マスコミも新聞4社、毎日放送は翌日の夕方の番組VOICEで報道しました。
正規・非正規、組織・未組織、ナショナルセンターの枠組みを越えて、「なくそう! 官製ワーキングプア」という一致点でさらに大きな運動にしていきたと思います。

民主法律時報アーカイブ

アーカイブ
PAGE TOP