民主法律時報

郵政産業ユニオンが「20条裁判」を提訴しました

弁護士 斉 藤 真 行

 郵政産業労働組合と郵政労働者ユニオンは2012年7月に組織統一して、「郵政産業労働者ユニオン」(郵政産業ユニオン)となりました。
その郵政産業ユニオンの労働者9名が2014年6月30日に、「 条裁判」を大阪地方裁判所に提訴しました。

「20条裁判」とは
 郵便局で働く有期契約労働者(期間雇用社員)が、同じ労働をしている正社員と比べて、手当などで差別を受けているとして、正社員と同じ手当などを受けられる地位の確認と、手当の差額分の未払い賃金又は損害賠償を求める裁判です。(郵政グループでは40万人近い労働者の約半数が非正規です)

労働契約法第20条
 労働契約法第20条は、有期労働契約であることによる不合理な労働条件の禁止を定めています。つまり、有期雇用という非正規労働者であっても、「有期労働」というだけの理由で労働条件において無期(正規)労働者と差別されてはならず、異なる労働条件は無効になり、正社員と同じ労働条件が認められて差額賃金等の請求権が発生するのです。

明らかに不合理な差別
 郵便局の職場では、様々な場面で期間雇用社員が正社員に比べて不利な労働条件になっています。それは特に手当において顕著です。
 期間雇用社員といっても、原告らは平均9年、長い人ではアルバイト時代も含めて17年もの間、郵便局で働いてきました。彼らは今やベテラン社員として職場で欠かせない存在になっています。仕事の中身も正社員と変わらず、「有期」だからという理由だけで差別されるのは納得できない、として提訴に踏み切りました。

差別の例
「外務業務手当」二輪車や四輪車で郵便物やゆうパックなどの集配・集荷の業務をしたり、局内でそれに付随する業務をした場合に、正社員には毎日外務業務手当が支給されましたが、期間雇用者員には全く支払われていませんでした。この手当は平成26年3月末で廃止されました。
「郵便外務業務精通手当」郵便外務業務に従事する正社員に、職務の精通度合いを評価されて最低でも月5100円の郵便外務精通手当が支給されていますが、期間雇用社員には全く支払われていません。
「年末年始勤務手当」正社員が年末年始に勤務した場合に、12月29日から31日までは1日4000円、1月1日から3日までは1日5000円の手当が支給されていますが、期間雇用社員には全く支給されません。
「夏期・冬期休暇」正社員には6月から9月の夏期と10月から3月までの冬期に、それぞれ3日の休日が付与され、しかもまとめて取るように指示されていますが、期間雇用社員には全く付与されていません。

20条裁判の特徴
 労働契約法第20条は、不合理な差別かどうかを判断する際に「業務の内容」以外に「当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情」を考慮する、としています。「責任の程度」が高い正社員の方が、企業にとって価値があるという考え方です。また「配置の変更」というのは企業から見たら、勤務場所の変更や配置転換を予定されているということは「人材活用」がし易いということで、正社員の方が価値がある」という考え方です。こうした考え方の当否については同一(価値)労働・同一賃金の観点から議論の余地があります。
 それはさておき、今回の裁判では、職務内容や責任などが同程度と言える職場の労働者が、職務内容や責任などとの関連が希薄な手当などに絞って請求をしている点に特徴があります。
 早期に明確な勝利判決を得られると確信します。

非正規労働者は「20条」を活用しよう
 「非正規だから待遇が悪くても仕方が無い、賃金が低くても仕方が無い」と諦めていませんか。できるところから工夫して裁判や労働局に訴えを起こそう。そのために労働契約法 条を活用しましょう。

(弁護団は大阪労働者弁護団から森博行、中島光孝、高木佐知子、植田豊、小谷成美、民法協から河村学、楠晋一、西川大史、そして斉藤の各弁護士)

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