民主法律時報

中小零細事業主のための独禁法研究会の新人歓迎学習会が行われました。

弁護士 岩 佐 賢 次

 2013年2月6日、大阪弁護士会館にて、中小零細事業主のための独禁法研究会(以下「独禁法研究会」といいます。)の新人歓迎ガイダンス(学習会)が行われました。今年の参加者数は弁護士登録して間もない新65期を中心とする弁護士20名、66期司法修習生13名が参加し、弁護士会館510号室は、開始時刻の午後6時半には満席となり、他の会議室から椅子を借り出す必要があるほど盛況でした(終了後椅子は元にきちんと戻しました。念のため。)。講師は西念京祐弁護士と西田敦弁護士で、事例報告担当が辰巳創史弁護士でした。
 まず、新人歓迎学習会は、司会の喜田崇之弁護士が、民主法律協会や独禁法研究会がどのような目的で設立、組織されて、どのような活動をしているかについて、簡にして要を得た説明を行い、幕が開きました

 学習会は、講師の西念京祐弁護士から、「中小零細企業のための独禁法活用について」と題して、独禁法の目的や仕組み、公正取引委員会の役割などの基本知識の説明から始まりました。公取への申告を交渉の場でどう活用するのかということや、裁判事例を複数取り上げて、どういう事実に着目して、独禁法をどう駆使して戦っていったのかなど具体的実践的な説明がなされました。講師作成のレジュメも独禁法違反と私法上の効力の関係が事例に基づいてわかりやすく整理されており、具体的にイメージできるものでした。また最後に時間の制約がある中で、独禁法の特別法・補完法である下請法にも簡単に触れられました。
 続いて、もう一人の講師である、西田敦弁護士からは、「継続的契約の打ち切り・不当な契約打ち切りに立ち向かう」と題して、契約自由の原則から、継続的契約は信頼関係を破壊するようなやむをえない事由がない限り、取引関係を解消してはならないという判例法理など、基本的事項から簡潔な説明がありました。具体的な裁判例に基づいて説明がなされ、大企業側の不合理な抗弁事由にも触れられ、いかなる事実に着目しどのような主張を組み立てるのかはもちろん、大企業側の不当な抗弁事由(反論)にどう立ち向かったのかについて、説明がありました。熱い語り口に引き込まれるように、熱心にメモをとったり、持参した六法をめくったりする参加者が目立ちました。
 最後に、辰巳創史弁護士から、独占禁止法違反で争っている事案の紹介があり、相談の経緯から調停に至った経緯の話がありました。まず、当初は債務整理の相談だったが、借金を増やした経緯がいかにも不当で、企業側に何か請求できないかということで、個人事業主である依頼者の権利保護のために試行錯誤して、独禁法違反の法律構成に思い至ったという話でした。具体的に依頼者から相談を受けた弁護士として、依頼者からの事情の聞き取りをいかにすべきか、方法選択を採るにあたって粘り強くあらゆる可能性を探るという姿勢は、弁護士の基本姿勢として勉強になる話でした。

 民法協をはじめ、各種法律家団体の新人ガイダンス(学習会)では稀にみる?盛会となりました。これはまず、学習会のタイトルを「中小企業救済のために独禁法を活用しよう」と題したために、企業法務の参考になると考えた弁護士・修習生が少なからず参加していたのが一因であることは否定できないでしょう。また、必ずしも企業側の事務所ではない弁護士が、弁護士大増員時代でいかに生き抜くかという最近の若手弁護士の問題意識から業務拡大などの参考にしようとして参加した弁護士・修習生も多くいたように思います。
 しかし、むしろこれは民法協や独禁法研究会の存在すら知らない弁護士・修習生に、民主法律協会、独禁法研究会の活動や存在意義を伝える貴重な機会になったということです。
 学習会のあとは、恒例のチルコロでの懇親会でした。22名が参加し懇親を深めました。修習生時代に青法協の例会(沖縄普天間・嘉手納基地問題)に参加したと言う新65期弁護士から話掛けられ、大いに旧交を温めることもできました。これからも微力ながら民法協・独禁法研究会の発展に寄与できれば幸いです。

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