民主法律時報

2013年権利討論集会を開催

事務局長・弁護士 増 田   尚

 2月9日、10日の2日間にわたって、南港にある大阪アカデミアにて、2013年権利討論集会が開催されました。234名の方に参加いただき、盛会のうちに終えることができました。
 全体会の記念講演では、東洋経済新報社の記者である風間直樹さんをお迎えして、「『雇用融解はどこまで進むのか』~新政権の向かう先~」と題し、深刻化する雇用情勢と、安倍第2次政権のねらいをお話しいただきました。
 風間さんは、この間の取材を通じて、昨年来吹き荒れるリストラの嵐の中で、「ロックアウト型」解雇や、常軌を逸した退職勧奨、嫌がらせの配置転換がまかり通っていると告発されました。「ロックアウト型」解雇とは、帰社時に退職勧奨(解雇通知)と自宅待機命令を同時に発し、職場から閉め出す手法です。IBMなどで多用され、労働者を精神的に追い詰めておいて、退職勧奨に応じれば、解雇を撤回し再就職支援をするなど申し出て、「自主的な退職」を装うものであり、同時に、解雇無効を争う裁判での証拠収集を困難にするねらいもあると指摘されました。また、執拗な退職勧奨にお墨付きを与えるきっかけとなった、IBM事件での東京地裁判決が、退職を拒否したとしても勧奨を中断する必要がないと判断したことを批判されました。これらに加え、中小・零細企業では、すでに「解雇自由」というべき無法な解雇が横行しており、解雇規制が厳しいから退職強要や嫌がらせ配転をせざるを得なくなるとの企業側の言い分が事実とまったく異なっていると指弾し、解雇規制を貫徹させることこそ重要であると述べられました。
 他方で、若年非正規労働者が、低賃金と不安定な地位にあえぎ、雇用と同時に住まいも生活も奪われる状況に置かれており、こうした現状をマスコミも報道しなくなってきていると批判されました。とりわけ派遣労働については、登録型をメインにする派遣業者が軒並み黒字を維持しており、経営リスクを労働者に転嫁するビジネスモデルのあり方を問題視されました。その上で、非正規雇用から正規雇用への転換こそ、ワーキングプアを解消する道であると訴えられました。
 最後に、安倍政権の雇用戦略について、経済産業省サイドが労働市場に介入する傾向が強くなっており、経済財政諮問会議や規制改革会議などを復活させ、労働規制緩和をねらっているが、かつての「労働ビッグバン」での暴走の再現を許さない運動を構築すべきと述べられました。
 風間さんのご講演では、豊富な取材経験に裏付けられた生の事実が明らかにされ、私たちにとっても、「雇用融解」という現状を改めて思い知らされたのではないでしょうか。安倍政権の規制緩和の動きや、リストラ攻撃と対峙する労働運動の構築という課題に取り組む上で、たいへん示唆に富んだ内容であったと思います。

 全体会では、1日目に、思想調査国賠・組合事務所など大阪市のたたかい(竹村博子さん・大阪市役所労働組合委員長)、ダイキン控訴審(青山一見さん・全日本金属情報機器労働組合大阪地方本部ダイキン工業支部執行委員長)、JAL控訴審(神瀬麻里子さん、西岡ひとみさん・JAL不当解雇撤回訴訟原告)、北港観光事件勝訴判決(安田博之さん(原告)、西川大史弁護士)が、2日目に、泉南アスベスト訴訟(山田哲也さん(原告)、遠地靖志弁護士)過労死防止基本法制定(岩城穣弁護士・過労死防止基本法制定実行委員会事務局長)、改憲阻止のたたかい(梅田章二弁護士・大阪憲法会議幹事長)について、それぞれ特別報告がありました。最後に、「『職員の政治的行為の制限に関する条例案』・『労使関係に関する条例案』の廃案を求める決議」を採択し、集会を終了しました。
 全体会や分科会を通じて、各団体や各委員会・研究会での日ごろの活動の成果が持ち寄られ、交流を図ることができたことは、権利討論集会の大きな魅力の一つだろうと考えます。今年は、大阪市内で開催し、日帰りでの参加も可能となるようにしました。権利討論集会の参加者が確信をつかみ、自らの活動に還元できるよう、これからも運営に努めてまいりたい所存です。

 

分科会報告

第1分科会 裁判闘争、労働委員会闘争における課題と展望 (報告:大阪労連 龍 洋治)

 1日目は、鎌田幸夫弁護士より、「もう一度、権利闘争の原点を見直そう」と題し、①労働委員会をどう使うか、②裁判や労働委員会で得られた成果、③法廷外闘争をどのように形成していくかという課題の問題提起がありました。
 討論では、各争議の当該や担当弁護士が、オレンジコープ、津田電気計器、北港観光バス、大阪市労組の組合事務所問題等の、各争議内容について、経過や課題の報告を行いました。
 議論の中で、ビクターアフター争議の当該からは、2005年に申立てを行ってから、差戻審を含めて現在「7審」目となっており、8年の争議を闘っていること、せっかく勝利命令を勝ち取っても、会社からの不服申立てにより簡単に覆され、最高裁、東京高裁に行く交通費用、精神的な不安があることなどが話されました。
 また、ある当該は、署名が裁判所にどの程度影響与えているのかについて質問し、谷智恵子弁護士から、自分たちの経験から、署名やビラは必ず届いており、どの程度の数が来ているかは裁判官も把握しているとの発言がありました。
 2日目には、1日目の議論を踏まえ、争議支援共闘会議のあり方についても議論がもたれました。ダイキン争議においては、ダイキン工場前での月1回の宣伝行動、専従者の生活支援等の報告がなされました。
 また、組合事務所問題弁護団の大江洋一弁護士からは、法廷でのたたかいにおいて事実を出すためには、弁護団が当該の語ることに謙虚に耳を傾ける必要性があり、当該には、経験したこと、自身が事実を知っていることに確信を持ち、主体的に参加していくことが求められるとの発言がありました。
 労働審判については、労働審判員の経験もある、地域労組さかい吉田暢書記長より、労働審判の実態や、地域労組の組織化にどのようにつながっているかについて報告がありました。時として解決水準の低さが指摘されることもある労働審判制度ですが、迅速かつ実効的な権利救済のための制度にしていくため、積極的な活用が望まれます。
 参加者は40名でし。


第2分科会
 骨抜き派遣法だから諦めていませんか? 労働組合の力で派遣法を活かす! ――派遣法改正の内容を学び、活用するために―― (報告:弁護士 中峯 将文)

 第2分科会では、2012年10月から改正派遣法が施行されたことをふまえて、主に労働組合の立場からこの改正法の活用法について議論をしました。
 労働組合からは15名の方が参加され、弁護士を含めて総勢22名で議論が交わされました。
 1日目は、長瀬信明弁護士が、改正派遣法を当てはめると労働者の権利を守ることができた事例として、NTT西日本アセットプランニング事件を紹介されました。その後、労働組合の方の事例報告がありました。「正社員だけの労働条件を闘っているだけでは先細りになる。協力関係になければならない。」と語っていらっしゃったのが印象的でした。正社員がどれだけ当事者意識を持って派遣労働者の問題について取り組むことができるかが、派遣法の運用にも影響してくるのではないでしょうか。
 残りの時間で村田浩治弁護士が改正派遣法の講義をし、1日目を終えました。
 2日目は、主に労働組合法7条の「使用者」性に焦点をあて、団体交渉のシミュレーションを行いました。
 派遣法が改正され派遣労働者の保護が明確化されましたが、派遣先と派遣元との力関係を考えた場合、派遣社員の労働条件について派遣先に対して改善を求めていくことが必要になると思われます。しかし、派遣先からは、派遣労働者の使用者ではないからという理由で団交を拒否してくることが想定されます。この点について、派遣先に団交応諾義務は存在しない旨結論付ける労働委員会の判断も出ているところです。今後、労働組合としては積極的に団交申入れを行って団交応諾義務の存在を主張していく必要があり、このような観点からの企画でした。
 シミュレーションをしていると、労働組合の方から次々と質問が出てきて、派遣研究会を開いているようでした。
 労働組合の方からは、昨年末から派遣労働者の相談が増えているという指摘があり、今後ますます派遣法の研究を深化させていき、活用していく必要を実感しました。


第3分科会 改正法を学んで活用しよう ~有期雇用労働者の権利を守るために~ (報告:弁護士 片山 直弥)

 第3分科会では、「改正法を学んで活用しよう」をテーマにした議論が行われ、38名の参加を得ました。
 1日目は、まず、有村とく子弁護士から有期法制改正(労働契約法の新18条、19条及び20条)についての解説を頂きました。有村弁護士からは、各条項の問題点、すなわち、新18条については5年を超える前に有期契約労働者の雇止めが一斉に行われる危険がある点等、また、新19条については使用者による濫用的更新拒絶がなされる危険がある点、さらに、新20条については違法とされた場合の法的効果の内容が今後の解釈に委ねられている点の指摘がなされました。これを受けて、参加者間で、非常に活発な議論がなされました。その中で、新18条ないし20条を労働者の新たな武器として積極的に活用する道を模索すべきであることが確認されました。
 続いて、郵政産業ユニオンの森田さんから非正規の正社員化と均等待遇に向けての闘いについて、北口さんから生協労連が取り組んでいる有期雇用の闘いについて、松澤さんから建交労大阪府本部における有期雇用の闘いについて、仁木さんから自治体及び公共関係の非正規労働者における有期雇用・雇止めに関する闘いについて、岩井さんから大阪の私学における有期雇用実態と大私教の運動についての報告がなされました。仁木さんの「有期雇用のしわ寄せを食らうのは結局のところ消費者である。」という発言が印象的でした。
 2日目は、まず、楠晋一弁護士から非正規労働者にまつわる判例の解説を頂きました。
 次に、現在、訴訟係属中あるいは訴訟に向けて準備中の事件について、青山さん、井口さん、藤井さん及び、時任さんの事件について有村弁護士から報告がありました。ダイキン訴訟原告の青山さんの「物を作る会社は、労働者が主役でなければならない。悲惨な雇止めを繰り返させてはならない。」という発言が印象的でした。仕事に誇りと自信を持って働いてきた人が虐げられている現状を知り、ショックを受けました。
 続いて、川西玲子さんから「職務評価のガイドライン」(厚労省)についての解説を頂きました。川西さんからは、正社員とパートタイム労働者との間にある格差が合理的であることを示す手段として、このガイドラインが用いられることが懸念されるとの指摘がなされました。
 その後、新20条をどう生かすかについて、参加者間で、活発な議論がなされました。その中で、「職務評価のガイドライン」で示された評価方法の妥当性を引き続き検討する必要のあることが確認されました。
 このように、1日目・2日目を通じて、改正法に関する活発な議論が参加者間でなされました。新たな制度ができた場合には、その問題点を検討する必要、そして、強気にその制度を利用する方法を検討する必要があることを実感しました。


第4分科会 今、改めて『過労死』について考える ――それぞれの立場から考える過労死・過労自殺をなくすための具体策――
  (報告:弁護士 西川 研一)

 第4分科会では、「今、改めて『過労死』について考える―それぞれの立場から考える過労死・過労自殺をなくすための具体策―」と題し、各分野の方々から報告やミニ講演をいただき、過労死・過労自殺をなくすための方策を討論するという、近年にあまりない取組を行いました。
 1日目は、まず、労働実態の現状についての報告として、大阪過労死問題連絡会の上出恭子弁護士より、「労災補償状況から窺える過労死問題の現状」と題して、精神障害事案は増えていること、他方、過労死・過疾病事案については「減ってはいない」と捉えることが正確であること、精神障害事案については若年労働者の割合が2~3割弱と非常に高いことなどが報告されました。
 次に、NPO法人POSSE事務局長の川村遼平さんより、「若年労働者を取り巻く過酷な労働実態」と題する報告をいただき、女性正社員や契約社員の過労が広がっていることに着目し、契約社員として入社し、社員登用があると希望を持たせておいて正社員よりも一層働かせるといった実態などが報告されました。そういった実態を「強制された自発性」と捉え、これを発動するメカニズムについての分析をいただきました。
 第2に、ミニ講演として、まずは、元大阪労働局労働基準部監督課・非常勤職員の畠山奉勝さんより、「企業に求められる『まともな働き方』の最低条件」と題する講演をいただきました。畠山さんは、元は民間企業の人事畑での仕事に長年従事され、退職後に非常勤職員として労働基準監督業務に携わってこられた経験から、労働基準法違反のトップが労働時間(32条)違反であることを挙げつつ、労働時間が日本では規制されていないこと、その背景に日本の労働契約が「ジョブ契約」でなく「メンバーシップ契約」であることで使用者による強力な拘束性が生じていることなどを論じていただきました。
 次に、三共精機株式会社代表取締役社長である石川武さんより、企業の経営者の立場から講演をいただきました。当分科会として経営者の方をお招きして講演いただく初の取組となりました。石川さんは、商社である自社にとって大切なことは、介在することで価値を生み出す「介在価値」を実現することであり、そのためには発信の起点となる人づくりが重要であるとして、それを実現するための取組を紹介いただき、過労死とは無縁に近い生き生きした職場環境を構築しておられることをお話しいただきました。
 続いて、過労死連絡会の下川和男弁護士より、「過労死防止のための教育活動」と題し、高校の先生との勉強会や高校への出前授業を通じて、過労死しない働き手を育成する楽しい実践的取組について、実演を交えながら講演いただきました。
 最後に、関西大学教授森岡孝二先生より、総括として、労働組合の弱体化が大きな原因になっていることなどのご指摘をしていただきました。
 2日目は冒頭に、過労死防止基本法制定実行委員会の取組について、同委員会事務局長の岩城穣弁護士からの報告、ついで、過労死企業名情報公開訴訟の高裁判決・及び上告理由書を2月1日に提出をしたことの報告をいただきました。
 2日のメインの報告である、「一般社団法人・産業保健法務研究研修センター」の理事である三柴丈典近畿大学法学部教授より、同法人による職場の精神障害事案への対処に向けた新たな取組の紹介がなされました。同法人では、これまで精神疾患を抱えた労働者を無理に「抱え込む」か不用意に「切り捨て」る方向で対応されてきた側面の強い当該問題に、労働者の精神疾患の具体的症状、程度、業務起因性の有無といった各視点から問題点を「切り分けて」適切に対処すべきという発想の元に、企業への法的アドバイス、人材育成等を行う予定であるとのことでした。
 最後に、三柴教授への質疑、また、分科会参加者の簡単な自己紹介と意見、質問等がなされました。今年も、複数の過労死、過労自殺遺族の方が参加をされ、被災者の過酷な労働実態についての訴えもなされています。
 2日間を通じて、過労死防止ための具体策が一朝一夕では見い出せないことを改めて痛感しつつも、過労死の一番の要因が長時間労働にあることを再確認し、今後の活動に活かせればと考えています。参加者数は36名でした。

※第4分科会報告第9段落中、当初 「同法人では、これまで精神疾患を抱えた労働者を「切り捨て」る方向で対応されてきた側面の強い当該問題に、」と記述しておりましたところを 「同法人では、これまで精神疾患を抱えた労働者を無理に「抱え込む」か不用意に「切り捨て」る方向で対応されてきた側面の強い当該問題に、」と修正しました。


第5分科会 大阪府・市の悪政に、どう立ち向かうか
 (報告:弁護士 大前 治)

 第5分科会は、「大阪府・市の悪政に、どう立ち向かうか」をテーマにして、約35人が活発に討論しました。
◆教育・教員に対する攻撃とのたたかい
 最初に、大阪教職員組合の藤川真人書記次長から、教育基本条例を具体化する動きとして、教員評価を目的とした「授業アンケート」が混乱を生じさせている実情などが報告されました。
 藤木邦顕弁護士からは、学校協議会が教員評価へ介入できる仕組みや、民間人校長の大量採用、さらには「つくる会」の社会科教科書の採択や「近現代史の歴史博物館」への社会科見学などを市長が指示できる体制づくりについて報告があり、これら全体の本質をとらえた反撃が必要だと指摘されました。
 会場からは、桜宮高校での体罰自殺事件を利用した教育への政治介入への反撃の重要性など活発な発言が続きました。また、日の丸・君が代の強制に反対するのは大切だが、さらに大きく広く共感を広げるためには、「児童憲章を読み上げよう」という提案を対置するなど、私たちの側にも工夫が必要だという意見も出ました。
◆公務員攻撃・自治体破壊とのたたかい
 次に、公務員攻撃と自治体破壊の動きについて議論が進みました。
 府職労の小松康則書記長からは、多くの施設や部局を民営化・独立法人化・民間委託する動きについて生々しい実態が報告されました。そのなかで「公務でも民間でも1人の首切りも許さない」という共同の取り組みが広がっています。
 大阪市労組の中山直和氏からは、橋下市長就任以前から大阪市解体へ向けた動きや労使交渉の形骸化が進められてきたことが指摘され、支配層が狙う自治体解体・公務員攻撃の狙いと結びつけて本質をつかみ反撃するべきと指摘されました。
 このほか高橋徹弁護士からはWTCビル購入および府庁舎移転費用の返還を求める住民訴訟について報告があり、遠地靖志弁護士は大阪市思想調査アンケート国賠訴訟について報告しました。
 私たちの運動の成果とともに、今後の課題と展望を語りあえた有益な分科会となりました。


第6分科会 新自由主義と改憲問題
 (報告:弁護士 中森 俊久)

 1 改憲論「総論」

 冒頭、改憲問題の情勢につき共通認識を得るべく、丹羽徹教授から「改憲の動向と私たちの課題」についてお話をいただいた。憲法  条を改訂して憲法改正を日常化させ、その経過の中で、平和憲法を放棄し、権力者の支配の道具としての憲法にその性格を変えさせようとする改憲派の真の狙いを把握するとともに、そのような危険な内容を孕む憲法改正草案の問題点を広く国民に知らせることの重要性を改めて認識できた。
 次に、梅田章二弁護士からの「新自由主義と改憲問題」と題して分科会を持った意義の説明に続いて、参加者に自己紹介をいただく経過の中で、それぞれの憲法問題に対する問題意識を発表いただいた。女性の参加者から憲法  条の重要性を訴える声が多かったことが印象に残っている。
2 改憲論「各論」
 憲法改正の動きの背景には、新自由主義があり、憲法9条の問題に限らず、総じて、国民の権利が制限され、多くの義務が課せられる基本的な問題がある。そのような視点から、改憲論の各論として、①教育の問題点につき大阪教職員組合の末光章浩さんから、②生活保護の問題点につき大生連の大口耕吉朗さんから、③労働の問題につき大阪労連の鴻村博さんからそれぞれ発表をいただいた。
 国際協力や規制緩和、自己責任の名のもとに、平和主義を後退させ、国としての基本的な義務を放棄するかの如くの情勢が如実に伝えられ、憲法改正の動きに孕む根本的な問題を理解させられた。
3 運動論
 それでは、いかに運動を進展させていくか。この点につき、2日目の冒頭、アメリカのウィスコンシンで共和党の知事のもとで労働組合の権利を後退させる攻撃が加えられ、それに対する労働者や市民の闘いが続けられている映像を放映した。そして、梅田弁護士より、「労働者が組合を自分たちの利益だけを考える機構としてではなく、公正な経済のために集団的に立ち上がることを可能にする媒介として見るように環境を変えなければ大幅な組織拡大をすることはできない。」(特集号137頁参照)という220万人の組合員を擁するサービス従業員国際労組(SEIU)の委員長の言葉等を紹介いただき、運動論について討議した。
 そして、明日の自由を守る若手弁護士の会の活動を諸富健弁護士に紹介いただく中で、日本国内における運動をいかに大衆化させ、大きな運動に繋げていくかにつき、率直な意見交換を行った。
4 平和への権利の動き
 最後に、田中俊弁護士から、平和への権利が国連の人権宣言として採択されようとしている動きを紹介いただいた。平和的生存権を国際的スタンダードにしようとする国際的な潮流のもと、それと真逆の方向に進もうとする安倍政権の平和憲法改悪の策動は、国際的孤立化に導くものである。国際的な視点も踏まえて憲法改正の問題を考える必要性を感じさせられた。
 分科会参加者は37名であった。

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