民主法律時報

第30回記念 北河内権利討論集会を開催!

大阪労連北河内地区協議会事務局次長 稲 垣 忠 男

 大阪労連北河内地区協・民主法律協会共催の北河内権利討論集会が、2012年10月28日(日)10時~16時、パル寝屋川組合員会館で行なわれ、弁護士10人を含む65人が参加しました。
北河内での権利討論集会は、第1回が「労働者の権利交流」として開催され、労働者の権利意識が大切であることが多くの参加者の共通認識となって長く続けられ、今年で節目の30年を迎えました。今回は、どこの職場でも世代交代が進む転換期を迎えており、これまで勝ち取ってきた労働者の権利をもう一度見直し、権利意識を高めようと開催されました。
午前中の記念講演は「労働相談入門講座」と題し民法協事務局長の増田尚弁護士が講演されました。今労働者の状態は、非正規雇用やワーキングプアの増大で、過労死ラインを超える長時間過密労働、メンタルヘルス不全、パワハラなど厳しい職場環境に置かれている。企業に労働基準法を守らせること、改正された労働者派遣法や労働契約法を最大限活用し、職場における労働条件の向上、労働者の要求実現に取り組む労働組合としての「体力」に、どう結びつけるかが重要だと話されました。
続いての基調講演は「労働相談事例から見た労働実態」について、おおさか労働相談センター事務局次長の長岡佳代子さんが行いました。1年間で1839件の相談を受けて、各産別労組・地域労組へ255件紹介している。相談事例から、長時間労働で生きる気力も失っている、会社が一方的に6ヶ月ごとに給与を見直すと言って賃金を引き下げる、職場でのパワハラ・いじめの繰り返しによるメンタルヘルス不全、有期雇用での雇い止めの強要、会社の都合で休まされるのは生活があるから困るというと解雇、派遣での外国人差別や職場での排除・孤立など劣悪な雇用の広がりがある、等報告され、労働組合の大切さを強調されました。
争議組合からの訴えが行われ、午後からは、①職場の闘いと組織拡大、②職場の健康と安全衛生、③非正規労働者の実態と組織化の3つの分科会で熱心な討論が行なわれました。

【第1分科会】職場の闘いと組織拡大 報告者 中村 鎮夫
労働運動の中で一番大きな課題である「職場の闘いと組織拡大」の分科会には、12団体2法律事務所合計24名の参加がありました。
自己紹介を兼ねて職場でのたたかいについて発言が行われました。主な発言としては、①関西医大労組から、職場に成果主義賃金が導入され悪影響が出ており、その反撃の宣伝を毎週行っていることや、この制度の導入で患者さんに対する対応がおろそかになり、一人の患者に対してチームで取り組む体制が崩れてきていること、また組合員拡大では「新入職員」が入ってきても、最近は長く勤めたいと思っている人は少なく、組合の必要性を訴えるのにも苦労していること。②門真、交野教組から、今問題になっている「保護者・生徒アンケート」(府教委案)について、これは教育を良くするのではなく、教員の中に差別と分断を持ち込むものであり(逆効果)、「私は採用しない」と表明している校長もいること。③北河内合同労組は、労働相談で組合員を拡大しており、これからも相談活動を広めていく、といった発言がありました。
その後、田中議長から中間発言として、当面の組織拡大では産別、地域労連と組織拡大をテーマに懇談会を開いて、地域全体として取り組みを進め、相談活動を強めるとの発言がされました。
田辺鉄工所支部では、今まで家庭訪問で組合加入を訴えていたのが困難になり、職場で直接話をして組合員を増やしているとのことです。また、日立建機ティエラ支部では、青年が新入社員に組合のいいところや、自分の感じている組合活動など話をしているとのこと。それぞれ組合では新しく入社した人に対する「声かけ」が工夫されていることが伺えました。
最後に弁護団より、最近の判例にもとづいての発言がありました。パワハラ問題は昔からあったことで、今は労働組合の力が弱くなっているのが原因のひとつではないか、やはりそうした行為を許さない職場環境にしていくため労働組合の組織拡大が大切だと発言がありました。やはり組織活動は目的、意識的にすることが大切として分科会は終わりました。分科会には、オレンジコープ労組や労災継続を闘っているMさんも参加され発言がありました。

【第2分科会】職場の健康と安全衛生の取り組み 報告者 藤田 純一
第2分科会は、7団体、2つの法律事務所、13名の参加で行われました。
今回は、放射線技師で医労連の園部さんにお願いし、パワーポイントを使って放射能汚染についてのミニ講演をおこないました。
福島で起った原発事故は、まだ1年8ヶ月しか経っていないが、事故が起って5~6年後に病気が増えること、内部被爆や外部被爆でも放射能は排出されない限り、人体から外に出ないことが報告されました。また、現在も事故が起って放射能がずっと出ていること、地下水が汚染されていることや、農作物に影響が出ていることが説明されました。
今、事故が起きていち早く退去命令を出した外国の判断は正しかったが、日本の対応が手遅れであったことが明らかにされました。そして、「政府機能はいつまでも東京には置かない」。「首都機能は東京より西に最終的に持っていく」とも言われました。
又、「福島の原発事故は、チェリノブイリと同程度の事故と考えた方がよい」とのことでした。未だに福島の遺体が回収できていない状況であり、放射能で死んだのか、溺死なのか不明になっている。弁護士からは、この事故に対する裁判については難しい面はあるが、いつどこで何を食べたのかメモを取っておく必要があることを強調されました。
現在、「震災がれきの受け入れ」が問題になっていますが、がれきの受け入れが被災地の復興になっていません。むしろ放射能汚染を全国にばら撒くことになります。
最後に、世界が輸入禁止にしている日本の食品の説明があり、その表を見ると、福島、群馬、茨城、栃木、宮城、山形、新潟、長野、山梨、埼玉、東京、千葉などの食品が輸入禁止になっています。更に、クウェート、ギニアについては  都道府県の食品を輸入禁止にしています。「外食についても材料が何処のものか分からないので食べない方がいい」と言われ不安の広がる中、分科会は終了しました。ここで、スライドを見終わって、みんな暗い雰囲気に包まれました。

【第3分科会】地域運動の取り組み
少人数のため取り止め

【第4分科会】非正規労働者の実態と組織化にむけて 報告者 財間 恒明
第4分科会には、9団体、3法律事務所から16名の参加がありました。
自己紹介を兼ねた職場からの発言では、①四條畷市教組~今、大阪の学校では「授業アンケート」(保護者・生徒の4段階評価による学校長の授業観察)の実施で教員への人事評価が行われる。②福祉保育労~ユニオンショップで加入すると労働組合のことがわからない。シフト勤務で生理休暇が取れない。③寝屋川学校給食アルバイト分会~組合を結成して、交渉してきたが中々成果がでず組合への期待が薄れ5名が脱退した。④パル労組~最賃の引き上げに伴なってパート採用時給を800円に、すべてのパートの基本時給が14円引き上げられた。再雇用の時間給も800円から830円に引き上げられた。再雇用制度で60才から賃金ダウン。パートが主体の職場、正規は長時間労働になっている。定年延長やパートにも扶養手当の要求をしている。⑤JMIU日立建機ティエラ支部~非正規労働者が期間満了で解雇され、相談から組合に加入し正社員にさせた。連合の職場では長時間労働でパワハラ、メンタル不全が広がっている。社会的に包囲し、労基法を守らせることが重要。⑥北河内合同労組~正社員だと思っていたら、有期雇用の契約にされていた。契約のことで話したら、退職強要から自宅待機命令にされた。⑦建交労~朝日分会は日雇いなので不安定雇用。関西総合輸送では2年前に事業所閉鎖の闘いをして、組合の力で新事業を起こした。大久保建材も非正規化で偽装閉鎖撤回で闘い職場復帰させた。弁護団からの発言で、パート、アルバイトが声を上げるとパワハラ、解雇と弱い立場にあるが、労働者の団結で改正労働契約法も活用して立ち上がってほしい。民法協でも「有期・パート・非常勤問題研究会」で非正規問題を話し合っているので相談して欲しい。
最後に、弁護団から今回参加者は増えたが、来年はもっと職場の闘いでのレポートを出していただき、権利問題で議論を交わしてもらいたいとの要望がありまとめとなりました。

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