民主法律時報

派遣労働問題研究会がMBS(毎日放送)労働組合を訪問

弁護士 岩 佐 賢 次

 2012年6月1日、派遣研究会の有志メンバーで、大阪市北区茶屋町にあるMBS(毎日放送)の労働組合を訪問し、懇談会を行いました。
 懇談会へは、村田浩治弁護士、大西克彦弁護士、喜田崇之弁護士、藤井恭子弁護士、高橋早苗弁護士、中村里香弁護士、中峯将文弁護士、岩佐の他、組合関係者3名が参加しました。
 放送業界の労働組合と懇談会を持つのは、最近ではytv(読売テレビ)に続いて2回目です。
 懇談会に先立ち、MBSの看板報道番組であるVOICEのスタジオ見学会も開かれました。
 報道フロアには人の入れ替わりがありながら、常時  数名のスタッフが働いていました。それぞれが、ディレクターの指示に従い、モニターを切り替えたり、次の段取りのために動いたりとそこには一つのチームとして番組を作り上げる姿がありました。取材し編集した題材を確実に視聴者へ届けなければならないというスタッフの使命感と、失敗は許されないという生放送ならではの緊張感を感じました。
 続いての懇談会は、参加者の自己紹介の後、まず村田弁護士が改正労働者派遣法の概要の講義を行いました。改正の大きなポイントである、法律名・目的(1条)の変更とみなし労働契約申込み(40条の6)を中心に歴史的な経過を踏まえた説明がありました。その中で、問題のある法律も使えるところがあれば使うという派遣法を使う上での姿勢の話や、みなし労働契約申込み規定があれば、村田弁護士が経験したこれまでの敗訴判決の中で、(少なくとも)6割はこれからは勝てるようになるはずであるとコメントされていたのが印象に残りました。
 その後、懇談会は、質疑応答、そして、MBS労組サイドからの個別相談という流れで開かれました。MBS労組の奮闘の歴史的経緯があり、現在MBS本社には派遣・契約社員はおらず、全員正社員ということでした。しかし、その反面、制作スタッフの大部分が所属するのは、子会社であるMBS企画からの派遣又は契約社員ということでした。MBS労組からは、子会社MBS企画の契約社員の方の正社員化闘争を例に挙げて、子会社のMBS企画にMBS労組の支部を置き、労働組合を正社員・非正規社員を問わず組織してきたが、正社員と非正規社員の立場の違いからおのずと要求内容が異なることに加え、非正規労働者間の雇用条件や組合への関わり方などのスタンスの違い等の理由から労働者を結束させることが困難になっているという話をされました。不安定な非正規労働者の立場そのものが組合の分断につながっていることを改めて思い知らされました。
 懇談会は、予定時間を30分も過ぎて、続きの相談は、この後の懇親会でということになり、近くの居酒屋で懇親会が持たれました。
 私は、労組関係者から今までの闘争の歴史の話、獲得した成果の話をうかがいました。また、放送業界の営業がどんなことをやっているか、番組制作の実情、スポーツニュース番組の今と昔の違いなどの話や、昔のアナウンサー全員がレギュラー出演していた「あどりぶランド」というMBSの名物番組のなつかしい話で大いに盛り上がりました。
 みなさまご存じのとおり、放送業界は一部の高収入正社員がいて、これを支えるかのように大勢の非正規社員が番組制作に関わり、厳しい条件で働かされている業界です。国民の知る権利に奉仕する報道の自由の享有主体である放送業界が、長時間・低賃金・不安定な労働条件の中で懸命に働いている非正規社員によって支えられているというのはやはりいびつな感じがします。MBS労組関係者から、職場での状況など生の声を聞くと、我々若手弁護士は特にこれは何とかしないといけないと思います。ただし、その手法は、直ちに弁護士が介入して法的紛争に持ち込むというものばかりでないのも事実です。この点で労働組合の意義を再確認するとともに、労働組合と弁護士が継続的に相談できる関係・体制を作っていかなければいけないと改めて思いました。
 これからも、ytv労組と同様にMBS労組とも、定期的に派遣法や労基法などの勉強会を行いながら、関係を密にして継続的に個別の相談を受け入れる体制を作っていくことを約束して、その日は散会となりました。
 このような貴重な機会を作って頂いた村田弁護士、MBS労組にはこの場をお借りして御礼申し上げます。ありがとうございました。

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