民主法律時報

Q:「常識や生活習慣を身に付けさせる」義務とは?

Q:条例案は、保護者が子どもに対して「常識や生活習慣を身に付けさせること」を義務付けているとのことです。条例の具体的内容と問題点を教えてください。

A:「保護者は、学校教育の前提として、家庭において、児童生徒に対し、生活のために必要な社会常識及び基本的生活習慣を身につけさせる教育を行わなければならない。(5条3項)」という義務を課しています。
基本的生活習慣や生活のために必要な社会常識というのは親が教えることで学校では教える義務はなく、学校教育を受ける前に家庭で教えてきてくださいという趣旨を言っているのでしょうが、果たしてそのような切り分け方はできるものでしょうか。
また、生活のために必要な社会常識というのは一体どのようなものを言っているのでしょうか。日本人と日本に居る外国人の方とは違ったりもするでしょうし、社会常識というのもかなり家庭によって幅があるものでしょう。学校での集団生活の大切な意義の1つに、それぞれ価値観や常識の異なる人間を認め合いながら折り合いを付けてやっていくこともあります。
基本的生活習慣についても、一定の病気や、精神的なストレス等から朝起きることやおねしょをするなど生活習慣に問題を抱えている児童生徒もいると思われます。そういう問題を抱えている児童生徒について原因がわかっていないパターンも多いでしょう。できない児童生徒について、保護者と先生や学校が一緒になって問題を解決していくのではなく、家庭でのしつけがなっていない、学校には責任がないということで問題を切り捨てることになると思います。また、学校である生徒が他の生徒をいじめた場合に、その原因が家庭か学校か、それとも社会なのか要因はハッキリしないでしょう。学校側が、家庭でのしつけがなっていないということで、学校側が責任を回避していく理由にもなっていくと考えられます。
これまでも、家庭だけでの教育には限界があり、学校や行政、地域など多様な人たちが子育てに関わることの重要性が認識されている中で、問題のある家庭を切り捨てていくこの規定は時代に逆行し、子どもにとっては百害あって一利無しといえるでしょう。

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