声明

大阪市労組・市労組連組合事務所事件 最高裁上告棄却・不受理決定に抗議する声明

2017年02月16日

1 2017年2月1日、最高裁判所第二小法廷(裁判長 菅野博之)は、大阪市労組・市労組連(以下「市労組ら」という)組合事務所使用不許可取消等請求事件(以下「本件」という)について、市労組らの上告を棄却・不受理とする不当な決定を行った。

2 本件は、2011年12月に大阪市長に就任した橋下徹氏が、組合排除の方針の下、市労組らが2006年以降、市庁舎地下1階において継続的に使用してきた組合事務所について、2012年度以降の使用を不許可とし、同事務所の退去を求めた事件である。企業内組合が主流である我が国においては、組合の活動拠点である組合事務所が企業内にあることが憲法28条の団結権、団体行動権を実質的に保障するためにも極めて重要な意味を持つものである。労働組合が存在すればその多くに組合事務所が提供されており、特に大阪府下を含む地方自治体においてはすべからく庁舎内の組合事務所が提供されている。大阪市における組合事務所への攻撃は、大阪維新の会誕生後の大阪府市における職員基本条例や政治活動禁止条例、労使関係条例の制定、組合費チェック・オフの廃止、思想調査アンケートや入れ墨調査アンケート等、職員・労働組合の働く権利や団結権を権力の側から制限し、また個人の思想信条に土足で踏み入る職員統制の手法の一環であり、当協会も度々これらの問題点を厳しく批判してきた。

3 本件組合事務所問題について、市労組らは、労働組合の拠点である組合事務所の剥奪という労働組合の組織・運営への直接的な介入行為である退去要求を敢然と拒否し、退去せずに取消等訴訟を提起した。

2014年9月、一審・大阪地裁は、自治体労働組合における庁舎内の組合事務所の必要性や橋下市長の組合嫌悪の意思を実態に即して明確に認定した。また憲法28条の団結権保障の趣旨から、本件に労使関係条例12条(組合への便宜供与の全面禁止)を適用すると違憲となり、全年度の不許可処分について裁量権を濫用した違法なものであるとして、市側の明渡し請求を棄却する等、理由・結論ともに妥当な判決であった。

しかしながら、2015年6月、二審・大阪高裁は、大阪地裁判決を変更し、2012年度の不許可処分のみの違法に限定し、労使関係条例(便宜供与の全面禁止)施行後の2013年度及び2014年度の各不許可処分については適法とし、市労組らに組合事務所の明渡しを命じた。同判決は、労働組合が組合事務所として庁舎を使用する必要性は行政庁側の庁舎使用の必要性に劣後する、橋下市長は組合活動を市民感覚に合うよう是正改善していく方針であって専ら市労組らを嫌悪する意思までは認められない、市側に不当労働行為意思があっても直ちに不許可処分が違法となるものではない等判示するなど、橋下市長による団結権侵害の実態を無視し、自治体労働組合の団結権や労働組合の拠点である組合事務所の意義・必要性を殊更に軽視する極めて問題のある判決であった。

これに対し、今般、最高裁は、何らの判断すら示さず、市労組らの上告・上告受理申立を斥けた。高裁判決後の2015年10月には、本件を巡って、中央労働委員会が、大阪市の組合事務所退去要求や使用不許可処分について不当労働行為を認め、大阪市に対し同様の行為をしない旨の謝罪文の手交を命じる救済命令を発し、大阪市もこれを受け容れて市労組に謝罪文を手交したにもかかわらず、かかる中労委命令や大阪市の謝罪の意義をも全く無視したものであった。

当協会は、橋下維新市政下で自治体労働組合を庁舎外から一方的に排除するという前代未聞の団結権侵害行為を是認した高裁判決を破棄するどころか、自治体労働組合の組合事務所の使用という極めて重要な問題をはらむ本件について何らの判断も示さずその不当・非常識な結論を是認した最高裁に対し、人権の最後の砦として憲法を擁護する自らの役割を放棄したものとして、強く抗議する。

4 また大阪市に対しては、組合事務所問題の司法判断は確定したものの、2012年度不許可処分の違法・賠償命令の確定、前記中労委命令や大阪市自身の謝罪、その他思想調査アンケートの違憲・違法が大阪高裁で確定したこと等を重く受け止め、憲法28条で保障された労働基本権を尊重し、市民に目を向けない「もの言えぬ職員」を作り出す労働組合・職員統制の手法を改め、今後の労働条件や団体的労使関係事項等の労使問題全般について、一方的に決定するのではなく労使間での誠実な協議によって解決する姿勢に改めることを求める。

2017年2月16日
民 主 法 律 協 会
会長 萬井 隆令