声明・アピール・決議
有事関連三法案成立に抗議し、発動しないことを求める声明
 与党3党ならびに民主党、自由党は、6月6日、参議院本会議で、いわゆる有事関連3法案の採決を強行した。憲法の平和主義、基本的人権の尊重、国民主権という基本原則に抵触するおそれがあるにも関わらず、国民的な議論のないまま、衆参両院共に、わずかな審議時間で採決が強行されるという暴挙に対し、強く抗議するものである。
 修正案では、基本的人権の尊重が盛りこまれたが、この法案が基本的人権を侵害する危険性があることに何ら変わりはない。
 また、「武力攻撃予測事態」の定義は不明確なままであり、場所的範囲について、在外公館への攻撃の危険なども含み限定はないということであれば、「備えあれば憂いなし」どころか、先のイラク攻撃でも明らかになったように、米軍の先制攻撃の戦争に、武力行使をもって参戦するという本質はなんら変わらないのである。
 民主法律協会は、この法案の本質的な問題を指摘し続けてきたが、有事関連3法案成立の矢先、米国防総省の諮問機関「国防政策委員会」のリチャード・パール前委員長が11日講演し、北朝鮮の核開発問題に関連して、事態がこれ以上悪化した場合には核施設限定の先制攻撃も選択肢として排除すべきではないとの見解を表明した。米軍による侵略戦争の危険に日本も参戦を強いられる危険は、決して杞憂ではない。
 また、有事における首相の地方公共団体や指定公共機関に対する指示権、代執行権には何ら変更なく、有事における民主的な統治機構や地方自治を維持できるかどうかに関する疑問は全く払拭されていない。さらに、NHKのみならず民放を含むマスメディアが政府の統制下におかれる危険性にも何ら変わりはない。  
 このように修正案には、明らかに憲法の平和主義、基本的人権の尊重、国民主権に抵触する問題点は残されたままである。
 しかるに、政府与党は、衆参両院の強行採決に関しては、民主党や自由党も賛成したことで、「多くの支持が得られた」とか、「民主党に政権担当能力があることが明らかになった」などと言っているが、第二次世界大戦前の翼賛政治へと逆行しつつあることを危惧せざるを得ない。
 今後、政府与党は、戦闘地域で「武力行使と一体」となった米軍支援に公然と道を開く「米軍支援法制」や、土地・家屋の使用や物資の保管命令に罰則をつけ、民間企業にも命令し、国民に戦争協力を強制する「国民保護法制」を提出する予定である。
 民主法律協会は、平和主義、基本的人権の尊重、国民主権という基本原則に抵触し、国際法規を無視した侵略戦争への途を開く有事法制関連3法案の成立に強く抗議するとともに、有事法制を発動させないための闘い、とりわけ「米軍支援法制」「国民保護法制」を阻止する闘いに全力を尽くすことを表明するものである。
2003年6月16日
                           民主法律協会
会長 小林つとむ
   
 
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