二重偽装請負の竹中工務店に雇用責任を問う

2020年01月15日

弁護士 村田 浩治

1 相談にいたる経緯

原告は大阪市在住の40歳代の男性である。かねてから建設業界の仕事をこなしてきた男性は、施工管理や施行図面の作成業務を労働者派遣や、下請労働者として働いていたこともあり、重層的な建設業界の悪弊もよく知っていた。

2019年6月にハローワークの求人票で日本キャリアサーチという株式会社で三次元キャドによる施行図面作成業務の募集を見つけて、三次元キャドの業務を探していた男性はすぐに応募した。勤務先の都合もあって採用は、正社員として採用されることが内定した。その後、男性は7月に客先での打ち合わせの同席を求められたところ、竹中工務店の100パーセント子会社のTAKでの打ち合わせであった。その後、キャリアサーチより正社員として正式採用されたが、この時点でも労働者派遣契約が前提となっていなかった。

7月の下旬からTAKでの業務に従事したところ、業務委託であると言われながらTAKより直接の指揮命令を受ける労働者派遣の形態であったため、男性はすでに疑問を持ち始めていた。

そこで、すぐに大阪労働局に相談を始めたが、8月になるとキャリアサーチから竹中工務店の現場での就労を命じられた。男性は改めて、派遣なのか業務委託なのか確認したが、業務委託(TAKを通じた再委託)であると告げられた。

8月から竹中工務店の現場で二次元キャドの業務に就労したが、男性の前記の確認にもかかわらず、竹中の社員から直接の指示がメールや口頭で行われていた。男性は、委託ならば作図に対して自らの責任が問われることになるから派遣か業務委託かは重要な要素であったにも関わらず、全くこれを無視した就労のありように従うことは出来ないと考え、大阪労働局に是正申告をした。その後、男性は業務委託であることを示す文書に署名を求められるなどしたが、竹中工務店からの指示の方法が改められることはなかった。

大阪労働局は、8月の末に事業所を訪問し、指示が直接されている実態を調査したが、その後指導がいつされるのか不明なまま、派遣元のキャリアサーチから竹中工務店との間で直接、労働者派遣契約への切り替えが提案されたものの、労働条件は不明なままであり、それどころか派遣切り替えにしなければ、三次元キャドの業務も約束できないといった恫喝を受けるにいたった。こうしたこともあり、男性は契約の切り替えに明確な回答をしなかったところ、キャリアサーチは、10月一杯での解雇を通告した。

2 派遣労働者保護のため行政の解釈を正すための訴訟を選択

大阪労働局は、男性が解雇された際も特に指導をすることなく、11月になってようやく、男性の就労実態は、労働者派遣ではなく労働者供給であるとして労働者派遣法の適用をせず、職業安定法44条違反のみ適用し、竹中とTAKだけを指導した。

男性からのホットラインをうけて結成された弁護団は、竹中工務店、TAKに対して労働者派遣法40条の6のみなし規定に基づいて労働契約の承諾通知を発し、労働契約関係が成立していると通告すると共に、キャリアサーチの解雇が無効であるとしてすべての企業に労働契約上の責任を問うたが、竹中工務店は、二重の偽装請負事案では派遣法40条の6の適用はないとしてこれを拒否し、雇用責任を負う要求に対して全く検討しなかった。

偽装請負の場合に適用されるみなし規定が、間に会社がはいる悪質な場合には、適用されなくなるという行政解釈は、法制定時から批判が多かった。本来の趣旨に照らせば、男性の雇用契約上の地位を認めて労働者保護をはかるべきであるのは明らかである。男性は簡単ではないことを知りながら、竹中の責任をただしたいと提訴を決意した。裁判所が派遣労働者を保護する解釈をとるのか、その姿勢が問われる。注目し応援してほしい。

(弁護団は、村田浩治、谷真介、西川翔大)