民主法律時報

2020年1月号

あらためて憲法を…  <年頭のごあいさつ>

会長 萬井 隆令

 昨年1年、春は元号が「令和」に変わる問題についての異様なニュースの多さに不快を憶えたが、あとは、消費税、オリンピックにまつわる様々な問題が続いていると思ったら、年末になって、急に「桜を見る会」が浮上した。予算額は大きくはないが、安倍政権の陰の側面を全て含んでいる。

昨年の年頭の挨拶は「『美しい国』異聞」と題したが、『民主法律時報』はシュレッダーにかけないし、データも保存しているから、読んでみて、我ながら驚いた。

安倍首相は「美しい国を…」など耳触りの良い言葉を好んで使うが、問題は実際に行なっていることだとし、辺野古基地問題の「県民の皆さまの気持ちに寄り添いながら、基地負担の軽減に向けて…」と言いながら、川柳で「寄り添った顔は白い眼馬の耳(三井正夫)」「沖縄に寄り添わないで寄り倒し(細木豊一)」と皮肉られる始末であること、「働き方改革」、「駆けつけ警護」、カジノ等々、「自分の言葉に酔っている風もある」と書いた。「言うこととやることが違う」とも述べて、「専守防衛」といいながら垂直離着陸戦闘機F35Bを搭載できる「多用途運用護衛艦」の建造=「何と呼ぼうと空母は空母(張本雅文)」、戦闘機をトランプの言い値で100機購入(保有は140機になる)、潜水艦も多数保有する等、国民に重要な情報は隠しながら、攻撃的な戦争体制作りを進めている、と指摘した。

今年の年頭の挨拶にそのまま流用しても違和感はない。「丁寧に説明する」と言いながら説明せず、陰では重要な資料を隠し改竄して逃げ回り、国会を閉じて国民が「忘れていく」ことを待つ姿勢はモリ、カケに続き、既視感がある。安倍首相は少しも成長しないし、「身の丈」発言の文科相や早々と辞任せざるを得なかった大臣など、周りにお友達を集め、国民の福祉を増進する本来の政治とはほど遠いだけでなく、憲法を改正し、戦争できる国作りには熱心な、危険極まりない内閣である。

憲法前文と戦争放棄を定めた9条に従えば、日米安保条約も、米軍基地も、自衛隊も一切要らない。憲法は日本という国の基本的な在り方を定めている。「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」以上、その立場を国際的に拡大する努力を尽くすべきであるが、安倍首相はまったく逆方向に向かっている。福祉、医療、教育などでも反・国民的な施策が続く。これでは「美しい国」ではないではないか。安倍首相には退陣を迫り、力強く闘う以外にない、本物の「美しい国」を創るために。

不更新条項による雇止めを有効とする 不当判決―― 近畿大学事件 ――

弁護士 吉岡 孝太郎

1 はじめに

本件は、4回の更新を限度とする任期規程の上限を超えて契約更新が繰り返されてきた近畿大学の医学部の任期付助教が、近畿大学により平成28年3月31日に雇止めをされたこと(以下「本件雇止め」といいます)に対して、雇用契約上の地位の確認等を求めたものです。

平成31年11月28日、大阪地方裁判所(中山誠一裁判長)は、本件雇止めを有効とする不当判決を言い渡しました。

2 事案の概要

原告は、平成20年1月1日に近畿大学の医学部の助教として入職しました(期間は同年12月31日まで)。

「近畿大学助教及び助手の任期に関する規程」(以下「任期規程」といいます)では、助教の任期は1年で再任は4回を限度とするとされていましたが、原告は入職前に当時の主任教授より医学部では更新回数の制限はないとの説明を受けました。現に、近畿大学の医学部では臨床系・基礎系を問わず、助教は任期規程の再任限度を超えて更新されており、原告もその一人でした。

最後の契約更新時を除いて、入職当時も契約更新時も契約書が作成されることなく、契約更新手続きも、原告が継続任用申請書に氏名や教育研究業績欄等に入力したものを主任教授に送信し、主任教授がこれに申請理由欄等を加筆して大学に提出するだけで終了し、完全に形骸化していました。

ところが、近畿大学は、6回目の契約期間(平成26年4月1日~平成27年3月31日)が終了する18日前の平成27年3月13日に、原告に具体的事情を説明することなく、同年3月31日で雇用契約は期間満了になる旨の通知書と要望書(以下まとめて呼ぶときは「要望書等」といいます)という書面が入った封筒を交付しました。通知書には、同年3月31日で雇用契約が終了することに加え、原告が希望すれば大学は契約を1年限り更新することを検討するものの、その場合には1年後の契約更新がないこと等が明記されていました。また、要望書には、1年に限り雇用契約の更新を希望するものの、1年後の平成28年3月31日には再度の更新がなく本件雇用契約が終了することについて理解したこと等が明記されていました(いわゆる不更新条項)。

翌年度の不更新を受諾しなければ18日後に雇用関係が終了するという差し迫った状況下において、原告は、再就職先も当然に決めておらず、家族の生計の糧が原告の収入しかなかったこと等の理由から、同年3月14日、要望書に署名しこれを近畿大学に提出しました。その後、平成27年4月1日に7度目の契約更新がされましたが、平成28年3月31日に雇用契約が終了しました。

なお、原告と同時期に要望書等の交付という同様の方法により雇止めをされた任期付助教の中には半年後に任期付助教として再雇用された者がいました。また、翌年度に雇止めにされた別の2名の任期付助教も、半年後に任期付助教として再雇用されています。

3 大阪地裁判決の内容

大阪地裁判決は、要望書等交付前の段階では原告に契約更新されることに合理的期待を抱いていたと言い得るとしつつも、①要望書等の記載自体から雇用契約の終了に関する被告の意向や原告のなす意思表示が一義的に明確となっていること、②原告が要望書等の交付や提出時に職員課等に何らの質問等をしないまま特段の異議を述べずに交付翌日に要望書を提出していること、③その後も雇用継続の可能性について大学に再度に問い合わせる等の明確な行動に出ていないこと等を理由にして、要望書提出後の段階においては合理的期待を有していたものとは言えないとしました。その上で、大阪地裁判決は、原告の研究業績や主任教授との信頼関係の不存在等を理由として、本件雇止めは客観的合理的性及び社会通念上相当性が認められるとして、原告の請求を全て棄却しました。

4 大阪地裁判決の不当性と今後の対応

翌年度の不更新を受諾しなければ18日後に雇用関係が終了するという差し迫った状況下において、誰が自由意思で翌年度の不更新を受諾するでしょうか。大阪地裁判決は原告の置かれた状況に対する想像力を欠如したものというほかありません。原告が要望書を翌日に提出したのは、期間満了が迫っていたことから、要望書の提出が遅れるとそれだけで翌年度の更新がされなくなると考えたからであり、何ら不合理な態度とは言えません。また、雇用継続の可能性についても、大阪地裁判決は、原告が学内関係者を通じて学内移籍の可能性を探っていた点を全く無視しており、大阪地裁判決の実態把握には極めて問題があると言わざるを得ません。

賃金・退職金に関する不利益変更の事案においてですら、最高裁は労働者の自由な意思の存在について慎重な立場を採用しています(山梨県民信用組合事件等)。労働関係において労働者に重要な意味をもつ労働条件は決して賃金・退職金に限定されるわけではなく、労働関係の終了は労働者にとって賃金・退職金の引き下げ以上に深刻な意味を持つことは明らかであり、山梨県民信用組合事件の最高裁が示した慎重な態度は、賃金・退職金に匹敵する重要な労働条件、とりわけ労働契約の終了にかかわる合意にも適用されてしかるべきです。当方は、西谷敏先生の意見書を提出する等してこの点を強調してきましたが、大阪地裁判決はこの点について触れることなく結論を導いており、理論的にも極めて問題があります。

近畿大学の担当者の証言によると、近畿大学は、任期規程の上限を超える助教及び5年目になる基礎系助教に対して、一律に1年猶予を与えて1年後に雇用を終了させることにしたのであり、本件雇止めの判断において原告の業績等の個別事情は斟酌していないということでした。にもかかわらず、大阪地裁判決は、原告の個別事情を考慮して本件雇止めを正当化しており、この点も不当と言わざるを得ません。近畿大学が原告と同時期に雇止めにした任期付助教を半年の期間を空けて任期付助教として再雇用していることからすると、本件雇止めの目的は無期雇用への転換を防ぐためであったことは否定できず、本件雇止めは労働契約法第18条の脱法行為と言えます。また、仮に原告の個別事情を考慮することが許容されたとしても、原告は、評価期間内に近畿大学医学部賞を受賞する論文を発表し、特許出願が3件等の十分な実績があります。現主任教授との信頼関係に問題が生じたのは主任教授が上記のような成果を出しつつあった原告の研究を一方的にやめるように命じたことに起因するものです。この点を無視して雇止めを正当化した大阪地裁判決は全く不当というほかありません。

大阪地裁判決は実態把握においても理論的にも極めて問題のある判決であり、控訴審では、これらの点を是正させる必要があります。引き続き尽力を致しますので、ご支援のほどよろしくお願い致します。

二重偽装請負の竹中工務店に雇用責任を問う

弁護士 村田 浩治

1 相談にいたる経緯

原告は大阪市在住の40歳代の男性である。かねてから建設業界の仕事をこなしてきた男性は、施工管理や施行図面の作成業務を労働者派遣や、下請労働者として働いていたこともあり、重層的な建設業界の悪弊もよく知っていた。

2019年6月にハローワークの求人票で日本キャリアサーチという株式会社で三次元キャドによる施行図面作成業務の募集を見つけて、三次元キャドの業務を探していた男性はすぐに応募した。勤務先の都合もあって採用は、正社員として採用されることが内定した。その後、男性は7月に客先での打ち合わせの同席を求められたところ、竹中工務店の100パーセント子会社のTAKでの打ち合わせであった。その後、キャリアサーチより正社員として正式採用されたが、この時点でも労働者派遣契約が前提となっていなかった。

7月の下旬からTAKでの業務に従事したところ、業務委託であると言われながらTAKより直接の指揮命令を受ける労働者派遣の形態であったため、男性はすでに疑問を持ち始めていた。

そこで、すぐに大阪労働局に相談を始めたが、8月になるとキャリアサーチから竹中工務店の現場での就労を命じられた。男性は改めて、派遣なのか業務委託なのか確認したが、業務委託(TAKを通じた再委託)であると告げられた。

8月から竹中工務店の現場で二次元キャドの業務に就労したが、男性の前記の確認にもかかわらず、竹中の社員から直接の指示がメールや口頭で行われていた。男性は、委託ならば作図に対して自らの責任が問われることになるから派遣か業務委託かは重要な要素であったにも関わらず、全くこれを無視した就労のありように従うことは出来ないと考え、大阪労働局に是正申告をした。その後、男性は業務委託であることを示す文書に署名を求められるなどしたが、竹中工務店からの指示の方法が改められることはなかった。

大阪労働局は、8月の末に事業所を訪問し、指示が直接されている実態を調査したが、その後指導がいつされるのか不明なまま、派遣元のキャリアサーチから竹中工務店との間で直接、労働者派遣契約への切り替えが提案されたものの、労働条件は不明なままであり、それどころか派遣切り替えにしなければ、三次元キャドの業務も約束できないといった恫喝を受けるにいたった。こうしたこともあり、男性は契約の切り替えに明確な回答をしなかったところ、キャリアサーチは、10月一杯での解雇を通告した。

2 派遣労働者保護のため行政の解釈を正すための訴訟を選択

大阪労働局は、男性が解雇された際も特に指導をすることなく、11月になってようやく、男性の就労実態は、労働者派遣ではなく労働者供給であるとして労働者派遣法の適用をせず、職業安定法44条違反のみ適用し、竹中とTAKだけを指導した。

男性からのホットラインをうけて結成された弁護団は、竹中工務店、TAKに対して労働者派遣法40条の6のみなし規定に基づいて労働契約の承諾通知を発し、労働契約関係が成立していると通告すると共に、キャリアサーチの解雇が無効であるとしてすべての企業に労働契約上の責任を問うたが、竹中工務店は、二重の偽装請負事案では派遣法40条の6の適用はないとしてこれを拒否し、雇用責任を負う要求に対して全く検討しなかった。

偽装請負の場合に適用されるみなし規定が、間に会社がはいる悪質な場合には、適用されなくなるという行政解釈は、法制定時から批判が多かった。本来の趣旨に照らせば、男性の雇用契約上の地位を認めて労働者保護をはかるべきであるのは明らかである。男性は簡単ではないことを知りながら、竹中の責任をただしたいと提訴を決意した。裁判所が派遣労働者を保護する解釈をとるのか、その姿勢が問われる。注目し応援してほしい。

(弁護団は、村田浩治、谷真介、西川翔大)

「北東アジアの平和共存のための日韓フォーラム」に参加して ――日韓の友好関係は市民の手で――

働き方ASU-NET 川西 玲子

最悪の時こそ市民の力で

日韓政府関係は戦後最悪の状況と言われる中で、こういう時こそ市民が交流することで関係を改善しようと「北東アジア平和フォーラム」が2 019年12月5日~7日、「冬のソナタ」で知られる春川市(チュンチョン市)で、日韓の市民活動家や研究者等約300人(日本からは140人参加)で開催された。世界で唯一の分断国家であり、分断自治体である江原道庁とその道庁所在地である春川市が主催し、事務局はセリム聖心大学東アジア平和研究所・ソウル大学日本学研究所が担当し、日本は日韓交流を進める希望連帯が担当した。

このフォーラムの目的は、日韓両国の市民の力で未来志向的な日韓関係を構築するための具体的で実践可能な方法を模索することであり、最悪となっている日韓の政府関係を修復して友好関係を構築するには日韓の市民の交流と連帯しかない。私たちは「ローカルtoローカル」「ピープルtoピープル」が大事ではないかという呼びかけに大いに賛同した。

ASU―NETは、大阪の市民運動団体として早くから韓国ソウル市の先進的な「労働政策」や非正規職員の正規職化、また幅広い社会運動に注目し、2016年にはソウル市の青年活動家を招き「韓国青年運動に学ぶ」集いを開催したり、韓国視察にも取り組んできた。今回は岩城穣代表を含め4名で参加した。ASU―NET以外の大阪からの参加者は日本コリア協会の皆さんや元府会議員の堀田文一さん等で多彩な皆さんにお会いすることができた。

分断の現場に立って

フォーラムは美しい子供たちのコーラス、詩の朗読などの歓迎レセプションで始まり、ユン・ジェソン教授の思いがあふれる格調高い挨拶に圧倒された。「第二次世界大戦の痛みから生まれた日本の平和憲法と韓国戦争の傷として残っているDMZ(非武装地帯)を両国の市民の協力によって北東アジア地域における平和遺産として構築していくことを提案したい」「ここからわずか数十キロ北方の休戦ラインでは南北の数十万人の若者がお互い銃口を向けている、その歴史の現場に来られた3日間を通してどの分野で何を協力すべきかを議論し、お互いに深く分かち合うことができる有意義な時間にしたい。両国の市民の継続的な協力によって、韓国と日本の平和を成し、ひいては世界の平和を成し遂げることを切に願います」と分断自治体で開催された意義を訴えた。

希望連帯の白石孝代表は「日韓は権力者によって争いの渦中に投げ込まれている。市民が交流を継続することで解決をはかることができる」と力強く挨拶した。

基調講演では秋葉忠利・前広島市長が被爆地ヒロシマの視点から「こんな思いを誰にもさせてはならない」と被爆の実相からの提案として、トランプ大統領に送った「北東アジア非核地帯」の創設を提起した手紙の内容を紹介した。討論では小森陽一・9条の会事務局長が日本の戦争法反対の取り組みや9条の会の粘り強い取り組みを報告、糸数慶子・前参議院議員は「オール沖縄」の枠組みが沖縄の政治状況を大きく変えた、沖縄県民はこれまで知事選、県民投票、国政選挙など幾度も基地反対の民意を示したにも関わらず一顧だにしない安倍政権を批判、アジアの国々と手を結び共に平和を築きたい」、イ・スフン前駐日大使は、日韓はツートラック外交を今後も維持することが大事であるとし、また南北間の単一市場構想を示した。

8つの分科会でかみ合った具体的協力の議論

分科会では「韓(DMZ)、日(平和憲法)ユネスコ世界文化遺産申請協力」「地方政府間の協力」「福祉協力(学校給食と有機農業)」「メディアの役割」「脱原子力協力」「市民社会での交流協力」など8つの課題で活発な討論が行われた。

私は「福祉協力」の分科会に参加した。話に聞いていた韓国の学校給食費の無償化(小学校90%、中学校70%、ソウル市100%)と有機農産物を使用した学校給食が年々拡大し2021年には全面実施となる。さらに保育や幼稚園に拡大しており、その結果として有機農産物の需要が安定し、有機農業の拡大・推進に大きく貢献している。官主導で政策的に進めている実態をつぶさに聞くことができた。驚きと同時にこの分野でも日本は大幅に遅れていることを実感した。日本でなぜこれができない! 日本では給食費の無償化は4%、調理の民間委託率は 50%を超え冷凍食品が増えている。

総合討論では貧困・格差・差別も平和の敵

宇都宮健児弁護士は日本の貧困と格差の実態を示し「北東アジアでの貧困・格差・差別をなくす運動は平和を創造する運動の一環だ。日米軍事同盟の強化は北東アジアの緊張を高めているだけだ」と安倍政権を痛烈に批判した。

最終日は韓国最北端のDMZ江原道高城の統一展望台訪問

急な坂を上った展望台からは青く穏やかな海と空が広がり、南北の約20万人の兵士が戦死したという激戦地・三五一高地を間近に見下ろすことができた。若い男女が肩を組んで眺めている平和な後姿に、その名の通り「統一展望台」となる事を一日も早くと願わずにはいられなかった。

「反日」ではなく「反安倍」で一致

安倍政権は、日本国内にある嫌韓意識を煽りたて韓国の保守反動勢力と連動して文在寅政権を攻撃し、国内問題から目をそらそうとしている。しかし、韓国市民は安倍政権の意図を見抜き、「反日」ではなく「反安倍」を明確に掲げて反撃している。

日本で今必要なのは、安倍政権の言動を正し、日韓連帯の市民交流・運動を盛り上げること、まさに日本の市民運動の真価が求められていると思った。

職場・地域に頼りにされる労働組合に! 第35回北河内権利討論集会開催しました

大阪労連北河内地区協議会 事務局長 青山 一見

 2019年12月1日(日)北河内地区協議会は、民主法律協会の協力を得て「職場、地域に頼りにされる労働組合に! 北河内第35回権利討論集会」を、おおさかパルコープ寝屋川組合員会館で開催しました。午前の記念講演には46名、午後からの分科会には39名、半日参加者を含めて52名の参加でした。

午前の記念講演は、谷真介弁護士(民主法律協会事務局長)から「今こそ改めて憲法 条=労働基本権を職場の中心に」というタイトルで講演をいただきました。

枚方市職労事件との関わりでは、政治的中立性を装った表現の自由・組合活動の抑圧であることを、金沢市の集会会場の使用拒否事件や松原市での施設使用拒否事件など全国の例に触れ、「機関紙の内容への介入や、労働組合事務所の使用への一方的条件変更そのものが労働組合活動に対する支配介入・不当労働行為であり、現場で萎縮しない闘いが必要」であることが強調されました。

また、守口学童労組事件では、1990年代末から財界の「規制緩和」「官から民へ」という新自由主義的要求に基づく「構造改革」路線の時代背景から、現在の自治体アウトソーシングが進められてきたこと、受託業者の利益を確保するために人的経費の削減やサービス水準の低下が避けられないという問題点が明らかにされました。そして、労働組合がサービスの受け手である住民と連携し公共サービスを低下させない取り組みや労働環境の維持改善、労働者の組織化が重要であると強調されました。

記念講演に対するアンケート記入では、「今おきている背景や全国の事例が理解できた」「労働組合の存在、大きな役割があることを実感できた」「憲法や労働組合法を学ぶことが大事」などの感想が寄せられていました。

午後は、①「労働者の権利を守り、充実させる処方箋」②「子どもたちが安心して学べる学校に」③「生活の拠点=地域で頼りにされる労働組合に」という、3つの分科会を行いました。毎回の事ですが、それぞれの分科会には10数名が参加し、全員の自己紹介や特別報告もあり、絞った論議にはならないという悩ましい現実があります。

その中でも、今年は教員の変形労働時間の問題や学校でのパワハラ等、維新による大阪の教育の異常さもあり、第2分科会の「教育・学校」の分科会には北河内7市の教組に参加を呼びかけ、教組以外の組合とも状況の共有を図ることを企画しました。そして寝屋川市教組では職場のパワハラ問題の実態アンケートでは組合員数を大きく上回る回収と市教委への要求書提出の取り組みや、大東市教組と交野市教組からも「画一的な研修が多い」「放課後も子どもたちや親の対応がありゆっくり考える時間がない」などの現状や悩みが報告されました。他の参加者からは、「子どもも教師をしているがそんな実態とは知らなかった」など率直な意見も出されました。

第3分科会の職場・地域に根付いた労働組合づくりでは、「小さなことでも解決・実現した経験を積んで信頼が得られる」「組合活動の見える化、組合にしかできないことがあるのではないか」など討論されました。

最後に参加頂いた7人の弁護士の皆さんから感想を頂く中で、「今の若者は職場環境の改善という面倒なことではなく、他の職場に安易に転職する傾向があるのではないか」「公務職場での権利攻撃に対して組合として市民に説明できているのか、市民に応援団になってもらうためにどうしたらいいのか」との指摘もありました。

第35回となった北河内権利討論集会ですが、民主法律協会と、地域でいつもお世話になっている大阪中央法律事務所及び京橋共同法律事務所の皆さんのご協力を得て、これからも毎年開催していきますのでよろしくお願い致します。

パワハラ・過労死110番 実施報告

弁護士 西川 翔大

 2019年12月7日(土)、10時から15時にかけて、パワハラ・過労死110番を行いました。今回の110番は、トヨタや三菱電機の社員がパワハラによって自殺したことが大きく報道され、パワハラ防止に関する指針案が不十分な内容のまま成立間近であることなど、近年ますますパワハラ・過労死問題に関する関心度が高まっている中、緊急で全国一斉に電話相談会を実施することになり、開催されました。

大阪では、テレビや新聞などによる報道の影響も大きく、ハラスメントの相談に関しては38件、労災補償の相談に関しては3件、その他労働相談が3件の総計44件もの多数のご相談が寄せられました。また全国では、179件ものご相談が寄せられました。

今回寄せられたご相談の中には例えば、納期の管理が厳しい中で2人がメンタルを害して離脱し、人員不足の中でより厳しく納期の管理をされて厳しい叱責を受けることはパワハラに当たるのかといったご相談や、取引先の社長から無理難題を言われるがなんとかならないのかといったご相談がありました。ほかにも、労働者の皆さんが普段の職場でハラスメントかどうか気になりつつ誰にも聞けない疑問やご相談が多数寄せられ、多くの会社や自治体でハラスメントを防止するための職場環境の整備や人員配置が不十分な現実が浮き彫りになりました。

現在、ハラスメント防止法が成立し、パワハラに関する指針の素案が提示されていますが、その内容は極めて不十分なものです。「ハラスメントに該当しないと考えられる例」として挙げられている記載については使用者の弁解を助長するような内容になっています。

今回、これだけ多くの方々から相談が寄せられた現状からすると、職場で不当な扱いを受けているにもかかわらず、どこに相談すればよいのか、何をすればいいのか分からない方がまだまだ多くおられるのではないかと思います。そうした方々の声を拾い、働きやすい職場を実現するきっかけとして、110番という無料電話相談の重要性を改めて認識することができました。また、今年の権利討論集会の第4分科会では、「ハラスメントのない職場をどう実現するか」というテーマでのご報告や意見交換を行いますので、少しでも興味がある方はぜひともお越しいただければと思います。

2020年度第1回労働相談懇談会報告

おおさか労働相談センター 福地 祥夫

 今年度の第1回労働相談懇談会を2019年12月13日(金)国労会館に於いて開催し、6単産・7地域・その他、弁護士、大学生など33名の参加がありました。学習テーマは「解雇・雇い止めの闘い方と解雇の金銭解決制度の問題点」で講師は鎌田幸夫弁護士でした。

最初に「解雇の金銭解決制度導入」の企みの歴史的経過について説明があり、1999年 月の小渕内閣、2005年9月の小泉内閣に続く、3度目の試みであること。これまでの2度の議論では広範な人々の反対で法案化を阻止してきた歴史的事実を振り返りました。その上で、今回の安倍内閣による法制化議論の現状と議論されている制度の中身について学習を行いました。

いま現在行われている検討会では、「解雇の金銭解決制度導入」の是非について議論しているのではなく、導入を前提に労働契約解消金請求権の発生要件や労働契約解消金の算定方法など法技術的な論点を検討しているとの指摘がありました。

安倍内閣の考えは、解雇された労働者の選択権を増やし、復職を希望しない者の選択肢を増やす労働者救済制度であり、解雇基準を緩和するものではないというものですが、労働契約解消金の算定方法など金銭解決の基準が出来てしまうと、使用者はコスト面での予測が容易になり、解雇しやすくなるので、労働者救済にはならないこと、今回の検討議論では、金銭解決の申立権は労働者のみとされているが、将来的には使用者側からの金銭解決申し立てを求める議論に繋がること、などが明らかになりました。

最後に講師の鎌田弁護士から、職場復帰を認めないことの不当性を訴え、就労請求権の法制化を求めること、労働局のあっせんの在り方と労働審判を充実させること、労働者を泣き寝入りさせない労働相談活動と団交および弁護士との連携、そのための労働組合の重要性など、あるべき労働者救済制度が強調されました。

解雇・雇止めに関する労働相談は多く寄せられています。そうした相談には解雇・雇止めの不当性、家族を含めた生活や働く権利を守るために、組合加入と団体交渉による職場復帰を呼びかけていますが、職場復帰は望まずに、金銭的補償を第1の要求に挙げる相談者が多くいます。

しかし、そうした流れの中でも、労働組合として「不当な解雇・雇止めは許さない」という立場を堅持して問題の根本である不当性を訴え、同時に職場を失った労働者の悩みと苦しみに寄り添いながら、問題解決に向けた道筋を探し出す努力と対話を続けることが、労働組合としての使命であること。また、いま議論されている3度目の導入の企みを阻止するためには、地域宣伝や署名運動などを通じた労働組合と市民の広範な共同の取り組みが重要であることを改めて認識した学習会でした。