民主法律時報

維新「教育改革」がもたらすもの ―教育・文化府民会議 秋の学習会に参加して―

弁護士 藤井 恭子

1 はじめに

2019年10月5日、子どもと教育・文化を守る大阪府民会議主催の「秋の学習会」に参加し、10年間に及ぶ維新府政の「教育改革」の内容を学ぶとともに、教育の現場でたたかう皆さんの声を聴くことができました。
チャレンジテストをはじめとする、維新による教育改革は、私が想像していた以上に、大阪府の公教育をゆがめ、子どもと保護者に大きな影響を及ぼしています。
学習会では、大阪府民会議事務局長の大瀬良篤さんが、維新による教育施策の内容を、チャレンジテストを中心に解説し、その後、教員の方々や保護者によるシンポジウムで、現場の声を聞き、さらに参加者との意見交換が行われました。

2 チャレンジテストによる競争の強制

維新府政は、行政が行う統一テストを子ども達の内申点に反映させ、そのことによって生徒間・学校間競争を強制させる教育施策を進めてきました。それが「チャレンジテスト」と呼ばれるものです。
チャレンジテストは、行政調査として、府内の全生徒・児童を対象に行われるものであるにもかかわらず、2016年から、中学生についてテスト結果を内申点に反映させる措置を行っています。内申点は、高校入試に影響を与える評価であることから、子ども達の学習に諸々の影響を及ぼしています。
例えば、過度のチャレンジテスト対策のために、あえて授業を早めに進めるなど、学校の教育課程に悪影響を与えているのです。一人一人の学習を見るのではなく、競争を重視した教育に変容させてしまっています。
さらに深刻なのは、学校間格差の拡大・固定化と、学校及び地域で生きる子ども達の人間関係が破壊されるという懸念です。
大阪では、チャレンジテストの結果により、「学校ごとの評定平均」が決められてしまうのです。それは、個人がどれだけ頑張ったとしても学校全体の平均点が低ければ、高い成績を付けられないということです(逆も又然り)。
そして、チャレンジテストにより影響を受けた成績は、高校入試のときに大きく働き、子ども達の進路にも影響を及ぼします。
そのために、チャレンジテストの結果がよく、評定平均の高い学校を選んで転校するケースが見られるようになったそうです。
この動きは、学校規模に差を生じさせ、将来、学校統廃合や学校選択制導入の理由に悪用される危険を孕んでいます。
なにより、地域で慣れ親しんだ友だちと離れて、あえて評定平均の高い中学校を選択せざるを得なくなるとしたら、子ども達が地域で人間関係を作ることを阻害することになってしまいます。
子ども達にとって大切なのは、学習面での競争だけではなく、地域で人間関係を作り、ともに様々なことを経験していくことなのではないでしょうか。

3 教育環境の破壊とこれがもたらすもの

維新府政が進めてきた教育施策は、チャレンジテストだけではありません。
教員に対する授業内の細かいルールの強制や、賃金に直結する相対評価システムなどにより、教員は疲弊していると言います。評価結果と賃金のリンクは、教員間の分断を招き、相互に相談しにくい職場環境につながっています。
さらに、この間府政は、高校再編整備計画の名の下に「高校つぶし」を進め、また、大阪市立高校の府への移管問題も出てきています。いずれも、子ども達から学校を奪い、各学校がはぐくんできた学校としての文化をないがしろにする動きです。

4 現場の声から感じたこと

維新による教育施策は、子ども達の学力向上だけを重視し、そのために「不合理・不要」と思われるものを容赦なく切り捨てていくものに思えます。そうやって切り捨てられていくものの中には、二度と戻らない文化や歴史など、子ども達の成長にとってかけがえのないものも含まれています。
教育現場で働く教員の皆さんは、子ども達のためによりよい学習を提供したい、そのために、例えば少人数学級の実現などを目指しています。
維新は、こういった現場の教員の声に、もっと耳を傾けるべきではないでしょうか。
今後、維新による教育破壊を止める運動を盛り上げていくためには、学校と地域、そこで生活し学習する人たちが、さらに連帯を強めなければならないとの思いを、強く感じた学習会となりました。

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