民主法律時報

2019年6月号

東リ伊丹工場における「採用拒否」事件で兵庫県労働委員会が救済命令を出す!

弁護士 村田 浩治

1 事件の概要

東リ伊丹工場において、東リの主力製品である巾木(床と壁の境界に必ず使用される建築資材)の製造に従事していた下請け会社ライフイズアート(以下「ライフ社」という)の社員は、同社代表者の度重なるパワハラに対抗すべく2015年に連合兵庫ユニオンL.I.A労働組合を結成した。組合は学習する中で、20年以上にわたる偽装請負状態を解消し、東リの雇用責任を追及する方針を打ち出した。2017年3月に組合員のうち執行部を中心に一部有志が先行して、東リに対して労働者派遣法40条の6に基づく直接雇用を求め、組合として団体交渉を申し入れていた。

折しも東リは、ライフ社代表者によるパワハラや団交拒否の不当労働行為が繰り返されている中で、この下請けに見切りをつけ、新たな派遣事業者であるシグマテックへ切り替え、同社にライフ社社員を移籍させる方針をとろうとした。この移籍の過程で、シグマテックが直用を求めていた組合員だけを採用拒否するという事件が起きたのである。16名いた組合員のうち11名が採用通知一日前に一斉に組合を脱退していた。組合は、2017年6月1日付で兵庫県労働委員会にシグマテックによる採用拒否は不利益取扱であり、東リが直用の団交に応じなかったのは団交拒否の不当労働行為であるとして救済を求めた。

兵庫県労働委員会は2019年4月26日付でシグマテックに対して組合員らの職場復帰による救済を命令した。

2 兵庫県労働委員会の命令内容

(1) 命令主文
命令主文は、「被申立人シグマテックは、申立人組合員である○○(組合員5名全員)を平成29年3月20日の面接時に提示した条件で、同年4月1日に採用したものとして取り扱い、その後の労働契約の更新については、同日に東リ株式会社伊丹工場の巾木工程、化成品工程に派遣した者と同様に行わなければならない」「その余の申立を棄却する」というものであった。

(2) 当事者にとって切実な職場復帰を勝ち取る
ア、シグマテックの使用者性
命令は、シグマテックと組合員の間で面接時にすでに労働契約関係が成立していたとする主張を退け、シグマテックと組合員らの間で労働契約関係はないとした。しかし、不当労働行為制度の目的に照らすと、労働契約上の使用者以外でも「近い将来」労働契約関係が現実的かつ具体的に成立する者も使用者に含まれるという基準を示し、シグマテックが東リから従業員を引き継ぐ前提で全員と面接していたこと、面接時、他に従業員募集をしていなかったこと、面接時、組合員の「入院時の給与補償」「不採用にすることは考えていない」と述べるなどしていたこと、全員にライフ社からの給与資料を提出させていたこと等からシグマテックは、近い将来労働契約関係が成立する現実的かつ具体的可能性があると判断した。

イ、不当労働行為意思

その上で、労組法7条1号本文の不利益取扱の規定には、採用拒否の類型が示されていないから不当労働行為の成立する余地がないとするシグマテックの主張を「労働組合の団結権を保障するとした労組法が組合員であるが故に採用を拒否する行為を保護の対象外においたとする解釈は妥当ではない」と明確に退け、採用拒否について原則労組法7条にいう不利益取扱に含まれないとの判断を示したJR北海道事件最高裁判決も「特段の事情がある場合は採用拒否が不利益取扱にあたるとしており」本件が特段の事情に当たる場合に該当するとして最高裁判断を否定しないもののこれを乗り越えた判断を示した。

ウ、不利益取扱の不当労働行為
シグマテックは、採用の自由を盾に、組合員らを採用しなかった理由を全く示さない態度に終始した。シグマテックのこうした対応を労働委員会は厳しく批判した。命令は、従業員の手術の情報まで伝えられていたこと等から「シグマテックと東リの間で、ライフ社の全従業員が採用されることを前提として細部にわたる連絡や要望があったことが認められる上、組合員らが申込み見なし制度の承諾書を東リに送付したことや、東リに兵庫労働局の立ち入り調査があったことなど、シグマテックにとって重要と考えられる採用候補の従業員に関する情報も、当然に東リから伝えられていたと推認することができる」としてシグマテックが組合員らの情報を得ていたことを認定した、その上で、シグマテックが「客観的な採用基準を頑強に開示しなかった」態度からすると「組合員であることを理由として採用拒否したという真の理由を隠蔽する姿勢があったと見られても仕方がないところである」としてシグマテックの対応を厳しく批判して不利益取扱の不当労働行為を認定した。

エ、救済方法
救済命令は、シグマテックに対し、組合員らに対して行った「不採用はなかったものとして取り扱い、2017年3月20日の面接時に提示した条件で、同年4月1日付けで組合員らを雇用し、同日に伊丹工場の巾木工程及び化成品工程に派遣した者と同様の契約更新をするという救済を行うことが適切である」とした。

2017年4月1日に溯って、非組合員らと同様に扱えということは、工場から排除された組合員らの地位の回復をはかることで救済をせよというものである。仕事を失った組合員の切実な要求である職場復帰による救済を命じたのである。このように組合員の窮状を救済する実効性のある措置を命じたことは、兵庫県労働委員会の見識を示したもので高く評価できる。

(3) 派遣先東リの使用者性の否定
今回の命令で残念な点は、東リの使用者性をいとも簡単に否定したことである。
東リは終始、適法な請負であったとして、命令は実態に即した組合の主張を事実認定レベルで十分に検討することなく、労組法7条の使用者性をあっさりと否定した。さらに派遣法40条の6という派遣先との契約関係成立のためのみなし制度の判断を、裁判所による終局判断に委ねるべきとして労働委員会としての判断を回避した。労働委員会としては職場復帰までの判断で足りるとしたのであろうが、法適用を受けるまで労働組合が派遣先と交渉することすら判断が出来ないとすることは労働組合の団体交渉権を保護助成する労組法の目的に照らして適切とはいえないであろう。シグマテックに対する判断と対比する時、不十分と言わざるを得ない。

(4) ポストノーチスを命じず
命令は、シグマテックによる謝罪文の手交すら認めなかった。この点は不可解である。職場復帰を命じることで十分との判断があるのだろうか? 労働組合の保護助成の趣旨からは疑問である。

3 命令を生かした行動の開始

組合は、東リに対する命令については不服であるとして中労委の判断を求めることにした。シグマテックは雇用を喪失した組合員らの救済をはかるべく、命令にしたがった措置をとるべきであり、労働組合として命令を実現するべく交渉を開始している。

東リとの間では、派遣法40条の6の直接雇用みなし規定の適用を求める裁判が神戸地裁で係属中であり、来る7月と8月に証人尋問が予定されている。

派遣法40条の6という偽装請負労働者を救済する制度が実効性あるものとするための裁判所の判断が待たれるが、労働組合が交渉によってこうした権利を実現できるよう助成することも労働委員会の役割であるはずだ。東リに対する中労委での闘いは労働組合法の価値を実現するための新たな課題を提起するものとなるだろう。

(弁護団は、村田浩治、大西克彦、安原邦博)

タクシー乗務員の割増賃金請求 洛陽交運事件 大阪高裁で勝訴

弁護士 渡辺 輝人
(京都第一法律事務所)

1 事案の概略

本件は洛陽交運株式会社(京都市内では最大手のヤサカタクシーのグループ企業。以下「会社」)でタクシー乗務員として稼働している労働者が、割増賃金の支払いを求めて提訴した事案である。会社には労働組合(原告も加入)があり、以下で説明する賃金制度は、全て労働協約に基づくものであった。

会社の賃金制度の基本部分は、最低賃金水準の月給制の「本給」と、賃金算定期間を月とする歩合給である「基準外手当Ⅰ」や「基準外手当Ⅱ」等で構成されている。判決文にその旨の判示はないが、後者は累進歩合給であり、旧労働省通達「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(1989年基発93号)で、長時間労働やスピード違反、交通事故の発生の懸念の観点から廃止するものとされたものであった。それ以降2016年2月19日までの期間(B期間)についても、歩率は変わるものの、基本的な構造は変わらなかった。

これらの手当は、会社主張の「法定計算」(最低賃金ベースの本給のみを算定基礎賃金とした割増賃金計算を指す会社の社内用語)による金額が基準外Ⅰ・基準外Ⅱの各手当の合計額を下回るときに限って支給するものとされていた。そして、基準外手当Ⅰや基準外手当Ⅱ等の歩合給について、すべて、「時間外勤務手当および深夜勤務手当」と記載されていた。

本件は、上記基準外手当Ⅰや基準外手当Ⅱ等は歩合給(定義:出来高に賃率をかける賃金)であり、労基法 条の割増賃金を支払ったことにはならないから、本給のみならず、基準外手当Ⅰや基準外手当Ⅱ等に対して割増賃金を支払うよう請求して提訴したものである。

2015年8月12日に提訴して以降、請求の拡張などを経て、2017年6月 日に京都地裁判決が出た(一部勝訴)。双方控訴していたところ、2019年4月 日大阪高裁判決(一審原告一部勝訴。勝訴部分拡大)が出た。

2 高裁判決の判示事項

(1) 規範(判断枠組み)
ある費目の賃金が割増賃金に該当するか否か(割増賃金該当性)の判断枠組みについては、最高裁判所では、①高知県観光事件(最2判平成6年6月13日・集民172号673頁)、②テックジャパン事件(最1判平成24年3月8日・集民240号121頁)、③国際自動車事件(最3判平成29年2月28日集民255号1頁)、④康心会事件(最2判平成29年7月7日・集民256号31頁)の各判決で示された、「通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分」の「判別」(判別要件)に関するものと、⑤日本ケミカル事件(最1判平成30年7月19日・集民259号77頁)の判決で示された「時間外労働等に対する対価として支払われるものとされているか否か」(対価性要件)に関するものがある。

私見では、下級審裁判例が、最高裁の判断枠組みを踏襲しているとは必ずしも言えない。例えば国際自動車事件差戻審判決(東京高判平成30年2月15日)は、労働契約における割増賃金(の支払方法)の「明確区分性」という、上記の一連の最判が出る前の時期である主に昭和末期~平成の初頭の一部の下級審裁判例の文言やそれを受けた学説を土台にした判断枠組みを示している。

控訴審判決は、判断枠組みについて、上記最判のうち①②③⑤を正面から参照して、判別要件と対価性要件を両方規範として掲げた。この点、判別要件と対価性要件の関係性については、a.択一的なもの、b.後者が前者を覆したもの、c.重畳的なもの、など幾つかの見方があり得るが、判決は、両者を「そして」という接続詞でつなぎ、重畳的なものとして併記したのが特徴である。これは最高裁判決の判旨を正確に捉えた妥当なものだと考える。

(2) 当てはめ
その上で、控訴審判決は以下の理由を列挙して、A期間の基準外手当Ⅰ及び基準外手当Ⅱは、乗務員が時間外労働等をしてそれらの支給を受けた場合に、割増賃金の性質を含む部分があるとしても、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することはできない、とした。

① 「本給」が最低賃金額に抑えら れ、基準外手当Ⅰや基準外手当Ⅱは、いずれも、時間外労働等の時間数とは無関係に、月間の総運送収入を基に、定められた歩合を乗ずるなどして算定されることとなっていること
② 会社において、実際に法定計算による割増賃金額を算定した上で、基準外手当Ⅰ及び基準外手当Ⅱの合計額との比較が行われることはなく、単に各手当の計算がされて給与明細書に記載され、その給与が支給されていたこと
③ 会社の求人情報において、月給が、固定給に歩合給を加えたものであるように示され、当該歩合給が時間外労働等に対する対価である旨は示されていないこと(会社は請求に係る期間においても同様の求人広告を出していたものと推認されること)
④ このような賃金算定方法の下において、会社の乗務員が、法定の労働時間内にどれだけ多額の運送収入を上げても最低賃金額程度の給与しか得られないものと理解するとは考え難いこと

この点、②について若干補足すると、2014年11月までは、会社の賃金計算システムの上で、両者の比較が行われない結果、一審原告には最低賃金水準を下回る賃金しか支払われていない月があった。要するに会社のいう「法定計算」は、実際には行われていなかったのである。

B期間については、「法定計算」額と基準外1、2等との比較が行われており、後者が少ない場合は「その他手当」による穴埋めがされており、一審では、このことが、B期間で清算がされた(その他手当が支払われた)月の基準外1、2等の割増賃金該当性を肯定する根拠とされていたが、控訴審判決は、そのような考え方を取らず、B期間についても、賃金の性質は異ならない、として、割増賃金該当性が全面的に否定された。

認容額は原本、遅延利息、付加金で500万円弱となる。会社側は上告した。若干であるが敗訴部分があるため、積極的防御の意味もあり、当方も上告した。

3 控訴審判決の意義

控訴審判決は、判別要件、対価性要件の意義を従来の「明確区分性」と混同せず、本来の最高裁判決の文言・趣旨に沿って示しており、また、二つの要件を重畳的(並列的)なものとしたものである。それだけでも、今後の実務に大きな影響を及ぼすものといえる。また、判断基準では判別要件と対価性要件だけを示し、当てはめにおいて2つの要件の観点から様々な客観的事情(賃金の実質)を考慮するスタイルも、今後の模範となるものだろう。

また、控訴審判決は、当てはめでも、近時の東京地裁等の判決のように契約上つけられた賃金のラベルに惑わされることなく、労働協約による賃金であるという一事に拘泥することもなく、基準外手当Ⅰや基準外手当Ⅱ等が割増賃金に当たるとは言えない理由を詳細に述べている。それらの理由は、社内的な事情や原告個人の事情ではなく、労働契約に現れた賃金の客観的性質、会社が社外に表示していた広告の内容、労働者が時間外手当とは理解できないことなどであり、多くの客観的事情の積み重ねによって、判断を導いている。射程が大変広い判決だと言える。

画期的成果! KBS京都から派遣社員なくなる

民放労連京都放送労働組合

京都放送(略称・KBS京都)から近い将来派遣社員がなくなります。全国どの事業所でも派遣社員は不可欠な戦力です。そのような中で今回京都放送労組は、派遣社員を無期雇用にするという画期的な成果をあげ派遣社員をなくす一歩を踏みだしました。

派遣社員
 要求だせば直用化

この闘いは、6年前の13年の春闘から始まりました。テレビ進行(放送番組のプレビュー業務)職場の派遣社員組合員を契約終了後即派遣先・KBS京都へ直用化したわけですが当時会社は、「半年の空白期間をもうける」と主張しましたがこれを論破しました。そして4年後の17年に組合は、派遣社員の直用化を制度にすることを求め会社と労使協定を締結しました。内容は、組合が3年契約終了前に「KBS京都への直用を求める」という要求をだせば会社は、無条件で応じるというものです。この制度で去年2名の派遣社員組合員がKBS京都へ直用(有期雇用3年の常勤アルバイト)となりました。しかし直用化闘争を闘いながら有期雇用のことも視野に入れていました。雇用の原則は、直接雇用であり無期雇用です。組合の闘いの視点は、困難な闘いほど一点突破・全面展開を心掛けています。今回もまず直用化制度をつくりその上で無期雇用をめざすという戦略です。

会社恐れる
 組合の社員化闘争

組合は、去年直用化が実現するとさっそく春闘で無期雇用化の要求をだしました。会社が一番恐れているのは、組合が社員化闘争をし実現することです。組合は、この半世紀格差是正の闘いを続け、約150名の非正規労働者を社員化・直用化・雇い止め撤回を実現した歴史があるからです。

このため無期雇用イコール社員化を恐れ会社は当然要求を拒否しました。しかし組合は、先ほどの一点突破の方針をとり対象職場をしぼりこみました。それは、「再建前には社員が行っていたが再建途上に導入された常用雇用代替職場」と「応募しても応募者がみつからない職場」です。

一点突破の戦略
 合意に踏みきらせる

この組合提案に会社ものり、今年の春闘で無期雇用化の制度が実現しました。その内容は、①対象職場は、テレビ進行・パブリックセンターと報道カメラアシスタント②対象者は、常勤アルバイト③契約は、有期雇用3年終了後さらに1年有期雇用契約を3回更新、その後労働契約法18条で無期雇用転換を申し出る④賃金は、常勤アルバイトの時給、慰労金は、構内スタッフの最高額(現在10万円)です。
そして6月にカメラアシスタント職場の男性組合員が制度第1号となりました。

信じられない無期雇用
 解決へ7要因

該当する組合員からは、「派遣の自分たちが派遣先KBS京都に雇われることに驚いたのに今度は、60歳まで働けるとは信じられない」「仕事に力を入れていきたい」「KBS労組は本当に頼りがいのある信頼できる組合である。感謝している」と喜びの声が聞かれました。

今回の派遣社員の無期雇用化実現の要因は、次の点があげられます。
①同一価値労働同一賃金の方針をもち非正規労働者に不断に寄り添う姿勢②これまでの闘いの蓄積を教訓化③非正規労働者を仲間として組合に迎え入れる。120名の組合員数の4割を占める。要求の掘り起こしをする④闘う対象者をしぼり込みその人を先頭にして闘う⑤解決の道筋をつくる執行部のリーダーシップ⑥最終解決にいたるまでは徐々に風穴をあける一点突破・全面展開の方針⑦上部団体民放労連と地域の仲間それに大学教授・弁護士との協力。
組合は、今後①対象職場を広げる②待遇改善をはかることに力を入れ構内から不安定雇用の派遣社員をなくすことにしています。

最後に組合の闘いに関心をもっていただいているみなさんから「価値ある成果」「全国に発信して下さい」「味のある合意内容はみごと」とのメッセージをいただき、これを糧にさらに奮闘していく覚悟です。

格差是正の大きなうねりを! ~労契法20条裁判学習会報告

弁護士 加苅  匠

1 労契法20条裁判の総括

2019年5月28日、エル・おおさかで「格差是正の大きなうねりを! 労契法20条裁判の闘いの成果を職場で活かそう!」と題した労契法20条裁判の学習会が開かれました。当集会は、連合大阪法曹団、大阪労働者弁護団、民主法律協会の共催で開催され、当日は119人が参加しました。職場での関心の大きさが窺えました。

労契法 条裁判とは、期間の定めがあること(有期契約)によって、期間の定めがない労働者(正社員)との間で不合理な労働条件の相違が発生している場合に、使用者に対して当該労働条件の相違分を金銭請求する裁判です。

2 全国の労契法20条裁判が集結!

2018年6月1日にハマキョウレックス最高裁判決、長澤運輸事件最高裁判決が出された後も、全国各地で非正規社員の格差是正を求めて闘われています。当学習会には、①ハマキョウレックス事件、②郵政西日本・東日本事件、③大阪医科薬科大学事件、④メトロコマース事件の弁護団・原告が一挙に集結し、各裁判の意義や課題、加えて職場での取り組みについて報告いただきました。また、河村学弁護士より、労契法20条裁判の総括として、これまでの裁判の到達点や今後の取組のポイントについて解説していただきました。加えて、3名の参加者から各組織の課題や取組みについて発言していただきました。

3 闘いの成果を職場で活かそう!

同じ職場で同じ仕事をしているのに、正社員に比べて給料が低く、賞与も手当もない・・。そういった悩みを抱えている有期契約社員の方々は多いのではないでしょうか?

全国各地で闘われている労契法20条裁判では、皆勤手当や住宅手当等の手当不支給の不合理性はもちろんのこと、賞与や退職金を全く払わないことや、夏季休暇を与えないことが不合理であると認める判決も勝ち取ってきました。

しかし、このような闘いの成果は広く職場へ伝わっているとは言えず、まだまだ知らない人が多いのが現状です。月数千円の手当が支給されるだけでも、労働者にとっては大変大きな成果です。格差是正のためには、各職場で格差の総点検を行い、使用者へ格差の説明を求めること、そしてなにより闘いの成果を有期契約社員へ周知することの大切さを確認することができました。

労契法20条裁判が全国各地で盛り上がっています! 裁判での闘いと職場での闘いを相互に活用し、ともに「格差是正の大きなうねり」を起こしていきましょう!

第3回労働相談懇談会 外国人労働者からの労働相談について学習

おおさか労働相談センター 事務局長 福地 祥夫

2019年5月10日(金)18時30分より、国労大阪会館において第3回労働相談懇談会を開催しました。今回は、四方弁護士を講師に「外国人労働者からの労働相談」について基礎知識を学習しました。当日は4産別、6地域からの労働組合員と弁護士、大学生、職対連など計26名の参加がありました。

冒頭、川辺所長が「化学現場でのブラジル人・中国人労働者、介護職場でのインドネシア人労働者と 年前から労働相談はあった。今回の法改悪で矛盾がさらに膨らむ。今後の労働相談体制について検討が必要。そのためにもしっかりと学習し身につけよう」とあいさつ。

その後、清水亮宏弁護士から裁判・労働委員会に見る労働情勢が報告されました。今回清水弁護士が強調されたのは、民法の債権に関する時効期間についての議論です。それに伴って労働基準法の賃金・残業代の時効期間についても議論が行われようとしている。こうした情勢を踏まえ、労働相談では残業時間の記録など5年前に遡って保存しておくことが大事だとの指摘がありました。

学習会では講師の四方久寛弁護士が「外国人労働者からの労働相談で一番大事なことは、在留資格と在留期限の確認だ」と指摘されました。

その上で、在留資格には①技能実習生など定められた範囲でのみ就労が認められるもの、②難民認定申請中や 経済連携協定に基づく看護師など許可の内容によって就労の可否が決まるもの、③永住者、定住者など身分や地位に基づくもの、④留学生など原則として就労できないものの4つがあることやそれぞれの資格の特徴・留意点についての説明がありました。

これらの資格のうち最も多いのが①の技能実習生などの在留資格を持った労働者からの相談です。この在留資格の注意点は、解雇など失職すると在留期間の更新が出来ないことです。また、正当な理由もなく在留資格に係る活動を3ヶ月以上行わなければ、在留資格そのものが取り消されます。

外国人労働者からの労働相談で2番目に大事なことは、早い段階での弁護士相談です。未払いの賃金等の問題で安易に労働基準監督署に行くと、在留資格がない状態であることを理由に不法滞在者と判断され、入国管理局に通報され国外退去を命じられる可能性もあります。「在留資格や在留期限の問題と合わせて弁護士との相談が大切。」とのことです。

参加者からは「初歩的な説明から行ってくれたので良かった。」「非常に分かりやすく、今後の相談活動のためになる」との声が寄せられていました。

「大阪教育集会2019」報告 教科書展示会に行き、アンケートに意見を書きましょう!

出版労連大阪地協 永石 幸司

子どもと教科書大阪ネット21と出版労連大阪地協が事務局団体となり、民法協や自由法曹団大阪支部、関西MICなど の労働組合や市民団体、教育研究団体などの賛同を得て、2019年5月19日(日)に大阪教育集会を開催しました。参加者は50名でした。

◎「誇示」する教科書

東京家政学院大学教授で教育科学研究会副委員長の佐藤広美先生を講師に迎え、「『誇示』する教科書――歴史と道徳をめぐって」という演題で講演をしていただきました。2001年に登場した「新しい歴史教科書」の記述が戦時中に軍事政権がつくった国定教科書『国史』と類似していることや、戦時中の国定教科書『地理』や植民地朝鮮の教科書『修身書』の記述から、戦争と教育、侵略と教育を考えるお話しをしていただきました。

◎依然問題が多い道徳の教科書と検定

大阪ネット21の教科書チームによる報告が行われました。なお、教科書分析には71期の若手弁護士3名にも加わっていただきました。

ここでは道徳の22の徳目のうちの一つ「規則の尊重」をテーマにした題材の特徴を報告します。①「ルールは疑問を持たずに守るべし」といスタンスの題材ばかりです。上位規範に反する下位規範は無効であることを教えていません。②憲法上の権利義務(人権)と私法上の権利義務が混同されています。権利と義務がセットになっている話ばかりです。「『権利』は、生きていくために当然のこととして認められていること。『義務』は、自分の立場に応じて、当然やらなくてはならないこと。」と定義している社もあり、「権利」を「人権」と誤解する文章になっています。専門的知識の裏付けがない検定は有害と言えます。③集団の利益を個人の利益と比較して集団の利益を重視しています。法やきまりに対して自分の権利を主張することが自分勝手な反発と受け取られてみんなに迷惑をかけるという話になり、集団の利益のために個人の権利主張を抑圧する傾向になってしまいます。④法的義務と道徳的義務が混同されています。22の徳目はほとんどが法的義務ではありません。道徳的な規則が入ってきていることが問題です。22の徳目は教育基本法1条や2条の価値につながるべきですが、唯一徳目に入っていないのが1条の「平和で民主的な国家及び社会の形成者」という部分です。⑤子どもの権利条約28条を取り上げた社もあり、これはいい内容だと言えます。

社会科では、検定基準が変更され「閣議決定により示された政府の統一的見解が存在する場合は、それらに基づいた記述がされていること」が加えられ、例えば領土問題では検定意見が相次ぎました。その結果、各社とも「北方領土、竹島、尖閣諸島は(日本)固有の領土である」こと、「竹島は韓国が不法に占拠しているため、日本が抗議を続けている」こと、「尖閣諸島は日本が有効に支配していること。中国が領有権を主張しているが、領土問題は存在しない」ことを明記させられています。他の分野の記述と比べて、領土問題だけが異様に詳しくなっています。

将来の民主主義の担い手となる子どもたちが学ぶ教科書の展示会が各地で始まっています。実物の教科書を手にとって、皆さんの声をアンケートに書いて教育委員に届けましょう。

裁判・府労委委員会例会報告 日本貨物検数協会不当労働行為事件を題材として

弁護士 片山 直弥

1 はじめに

2019年5月29日、裁判・府労委委員会の例会がエル・おおさかで行われました。今回は「日本貨物検数協会不当労働行為事件」(以下「本件」といいます)をテーマに、個別事件の検討を行いました。なお、出席者は23名でした。

最初に、弁護団の増田尚弁護士から事件の概要・争点、争点に対する府労委命令の判断及びその誤り、本件の意義などについて詳細なご報告を頂きました。
続いて、全港湾阪神支部(以下「組合」といいます)より主に運動面についてのご報告を頂き、最後に、それら報告を踏まえて、出席者との間で活発な議論が交わされました。

2 本件の概要

事案については、民主法律時報2019年4月号(2019・4・15)で弁護団の西川大史弁護士が執筆しました「全港湾阪神支部・日検事件 ~派遣先の使用者性を否定する不当命令」をご覧いただければよいか、と思うのですが、簡単に整理をしておきたいと思います。

日本貨物検数協会(以下「日検」といいます)は、積荷・揚荷の数などを確認し、受け渡したその数を証明する業務を営んでいます。この業務は、少々特殊でして、日検を含む4協会と、4協会に指定された事業体の労働者でなければ行うことができません。なお、その指定された事業体のひとつに日興サービスがあります。

さて、組合は、日検に対し、2016年8月、組合・日検間で2016年3月に取り交わした確認書に基づき、日興サービスの従業員である組合員について直接雇用するよう団交を申し入れました。これに対し、日検は、団体交渉を拒否。組合は、2016年11月、団交拒否が不当労働行為であるとして救済申立てを行いました。

なお、この確認書の内容は、「指定事業体からの職員採用に関しては、平成28年度から平成30年度まで、毎年度約120名の採用を実施するよう努力する」というものです。これは、本件以前(=2016年3月)に組合が日検を相手に救済申立てを行った際に、日検から和解の申し出があって取り交わされたものでした。

3 本件の特殊性

本件の争点のひとつに、日検が日興サービスの従業員である組合員の「使用者」に当たるか、が挙げられます。

報告を聞いて驚いたことに、日検・日興サービス間では、2006年以降、労働者派遣契約ではなく業務委託契約が締結されていた(つまり、偽装請負であった)というのです。

また、この偽装請負は、2016年1月(組合が本件とは別の救済申立てを行い、組合・日検間で確認書が取り交わされた直前)に、労働者派遣契約に切り替えられていたというのです。

組合員はこのことを一切知りませんでした。

つまり、日検は、2006年以降派遣期間の制限を潜脱すべく偽装請負を行う、また、2016年3月には組合員が申込みみなし制度(労働者派遣法 条の6第1項5号)を活用できないよう偽装請負の事実を隠すべく和解の申し出をするなどしていたことになります。

本件にはこのような特殊性があるのです。

ちなみに、組合員は、偽装請負の事実を知って2017年10月に申込みみなし制度を活用すべく労働契約の申込みを承諾する通知をしました。しかし、府労委は、1年以内に承諾の申込みがあったとはいえない、という形式張った判断しかしませんでした。また、日検の使用者性についても組合・日検間で確認書が取り交わされている事実を重視せず、それも否定しました。

4 さいごに

日検は、偽装請負を行っていたにもかかわらず、その事実を隠して組合員が申込みみなし制度を活用する機会を奪いました。このようなことがまかり通っては申し込みみなし制度など派遣労働者を保護する制度が骨抜きにされてしまいます。

現在、中労委に再審査請求をするだけでなく、労働者派遣法40条の6第1項5号に基づき、日検との間に労働契約が成立したとして、名古屋地裁に地位確認の訴えを提起したとも聞いています。
これら手続の中で府労委命令での判断が改められることを願ってやみません。

働き方改革攻略法のリーフレットを 作りました!

事務局長 須井 康雄

民法協では、労働者のための「働き方改革攻略法」というリーフレットを作成しました。今回の民主法律時報と一緒にお届けしています。

全12頁です。今回の働き方改革に盛り込まれた①残業時間規制、②残業時間規制の適用除外、③有給休暇付与の義務化、④高度プロフェッショナル制度、⑤有期・パート労働者の格差是正、⑥派遣労働者の格差是正、⑦勤務間インターバルという7つのテーマをとりあげ、それぞれ1頁か見開き1頁に収まるように構成し、一貫して労働者側に立ち、どのように対応すればよいかを、図表やチェックリスト、イラストを活用し、テーマごとに色分けするなどして、読みやすさ、分かりやすさを重視し作成しました。

政府は、高度プロフェッショナル制度について、「自由な働き方の選択肢を用意する」「時間に縛られない働き方を実現する」などと説明し、一部マスコミでも「脱時間給」などと制度の本質を覆い隠す誤った宣伝が繰り返されてきました。厚労省が2018年9月に公表した働き方改革のリーフレットにも同様の表現が盛り込まれ、日本労働弁護団が撤回を申し入れるということもありました。

また、今回の働き方改革は、有休の義務化や非正規労働者の格差是正など、雇用する側にも大きな混乱を招くことが予想されます。

政府の誤った印象操作に対抗するとともに、雇用する側の無理解や悪用に適切に対応するため、労働者側に立った手軽で分かりやすいリーフレットが求められているとの思いが、この「働き方改革攻略法」作成のきっかけとなりました。

働き方改革は、今後も新たな制度が毎年、施行されていきます。

働く現場で大いに活用いただくとともに、問題事例や活用事例があれば、民法協までお寄せください。また、分かりにくいところなどございましたら、同じく民法協までお知らせいただければ幸いです。

現場での声を踏まえたリーフレットの改訂や、民法協のホームページでの解説とリンクさせることも考えています。