民主法律時報

2019年3月号

2019年権利討論集会を開催しました

事務局長・弁護士 須井 康雄

 2月16日、エルおおさかで2019年の権利討論集会を開きました。参加者は235名でした。
全体会では、南山大学法学部教授の緒方桂子先生(@Keikolein)に「非正規労働者をめぐる情勢と労働組合の取り組み」をお話しいただきました。

緒方先生は、職場における平等や非正規労働者の均等待遇を研究テーマとされています。権利討論集会の前日に、非正規の職員にも賞与相当額の一部支払いを命じた大阪医科大学事件の逆転勝訴判決が大阪高裁で出ました。このような朗報のなか、実にタイムリーなご講演となりました。

講演内容ですが、労働組合には、①非正規労働者の雇用安定の現実化、②均等、均衡処遇の現実化、③働き方改革推進法に向けた対応が求められるとのことでした。

雇用安定の点は、5年目の不更新を阻止できれば、年度末の不安感を解放され、働き続ける決心もでき、より高い技能を身に着けるための努力もする、労働者本人にも会社にもプラスの効果があると述べられました。そして、更新の合理的期待がある場合に更新拒絶を認めないと定める現在の労働契約法19条の由来となった日立メディコ事件最高裁判決について触れ、その事件では、①労働契約書に更新欄があらかじめ印刷されていたこと、②臨時員就業規則に年次有給休暇、定期健康診断、予防接種が規定されていたことという2つの事実だけで、雇用関係の「ある程度」の継続が期待されていたと認定されたものの、非正規労働者の実際の定着率が低かったことから、更新の期待が低かったとして敗訴したとのことでした。そのうえで、緒方先生は、期待というと個人の主体的意思に着目した表現に聞こえるが、「合理的期待」というのは、社内にいる有期労働者を会社がどういう風に制度的に扱おうとしているかが問われているのではないかと指摘し、更新期限を5年とする制度があっても、5年は無期転換権が発生する期間であり、そもそも労働者は無期雇用でもいつでも退職できるので、労働者の側から有期の契約を結ぶ合理的な理由は全くなく、会社にとってのみ解雇規制の回避として合理性があるような制度は労働契約法 条の雇用安定という趣旨に反し、不更新条項の是認は違法な制度に裁判所が手を貸すことになると指摘されました。

続いて、均等・均衡待遇の点ですが、①手当型、②コース区分型、③定年後嘱託型があり、①と③は最高裁判決が出て、最高裁は、非正規労働者の場合、合理的な労働条件の決定が行われにくいという前提で格差の是正が必要だという認識を示したとされました。ただ、均衡のとれた処遇の考え方として、(ア)労働条件の格差と職務などの違いの程度が一致すべきだという比例的均衡の考えをとるのか、(イ)労働条件の違いと職務の違いは厳密に一致していなくても法的に許される範囲にあればよいというグレーゾーン的な考えをとるのかは明確でないとされました。しかし、いずれにせよ、最高裁は、不合理ではないことの説明を会社に課したものであり、団体交渉で取り組んでいく重要性を強調されました。

緒方先生は、なぜ格差が許されないかを強く訴えました。1つは、憲法14条の平等原則に反することです。2つ目は、労働条件が相当低く、生活を脅かすほどの水準であり、生存権(憲法25条)の保障にも抵触することです。憲法25条は「健康で文化的な最低限度の生活」と定めており、死ななければよいというレベルではないのです。3つ目は、不合理な格差は、個人として生きてきてこの社会にいるという個人の尊厳(憲法13条)を侵害することです。人はその労働に対し等しく報われなければならず、このことは、人格の価値を平等とみる市民法の普遍的な原理であり、ここに格差是正に取り組む根本的な価値があるとのことでした。

最後に改正法との関係で、労働組合には、何が困っていて、どこを改善してほしいかをきちんと聞くことが求められている、病気休暇などを求めているケースも多い、求めるものは違うが、内部で話をして、どこから手を付けるかを決め、処遇決定理由の説明を求めることが重要であると話されました。

記念講演のあと、奈良学園事件の不当労働行為救済命令と大阪医科大学事件の大阪高裁逆転勝訴判決の報告、外国人労働問題と憲法改正反対の行動提起がありました。
続いて、①外国人労働問題への取組強化、②憲法9条改正反対、③都構想・カジノに反対する決議を採択しました。

午後からは7つの分科会に分かれて、学習や経験交流を行いました。今年は、外国人問題と雇用によらない働き方の分科会が新たに開かれました。内容は、各分科会の報告に譲りますが、いずれも充実した学習と議論がなされました。
懇親会は、79名が参加し、各参加者に争議や情勢への取組をご紹介いただきました。また、音楽ユニオンの皆さんに楽曲を披露していただき、大変好評でした。
この権利討論集会で得た経験や人とのつながりを活かし、さまざまな課題に取り組んでいきましょう。

 

 

 

分科会報告


第1分科会 裁判闘争、労働委員会闘争における課題と展望 (報告:弁護士 足立 敦史)

1 はじめに
第1分科会は、パネルディスカッション方式で、前半は「不当労働行為とどう闘うのか」団交と街宣の実践について、後半は「どうなっているの? 裁判所」裁判所・労働委員会の活用方法について討論を行った。
2 「不当労働行為とどう闘うのか」(前半)
(1) パネラーは自交総連・庭和田裕之氏と航空連エミレーツ分会の方で、司会は西川大史弁護士が担当された。
(2) まず、団体交渉の要点について検討し、庭和田氏は、団交要求の按配を意識することが大事で「取り過ぎてもいけない」と注意喚起された。エミレーツ分会の方は、団交が終始会社ペースで進んだことの反省から、「団交獲得目標の明確化」の重要性を話された。続いて、団交対応について事例を挙げて検討し、会社が団交を規制してきた場合、会社のペースに乗らず、団交に応じなければ抗議することが本筋であること等が確認された。
(3) 次に、街頭宣伝について、庭和田氏は、街宣中にロープを張って通行を妨げない等「徹底して配慮することが重要だが、そのための工夫が継承されていない。」と問題提起をされた。エミレーツ分会の方は、「一番堪えたのは宣伝だった」と会社が本音を漏らしていたと街宣の実効性を報告された。
(4) 最後に、庭和田氏は、争議に踏み切るには「家族の理解と経済的基盤が最も大事。」と話され、エミレーツ分会の方は、「当事者への支援と寄り添いが何よりも支えになる。」とまとめられた。
3 「どうなっているの?裁判所」(後半)
(1) パネラーは、建公労・松澤伸樹氏、大阪争議団共闘・新垣内均氏、増田尚弁護士で、司会は、原野早知子弁護士が担当された。
(2) 松澤氏は、裁判所の問題点として、アクアライン仮処分事件を挙げ「担当裁判官が保全の必要性について他の裁判官の意見を聞いて突然方針を変更した。」等の問題点を報告された。新垣内氏は、パナソニックAIS配転事件に触れて「大阪地裁5民の裁判長は社会問題になっている介護問題を無視し、1986年の最高裁の判断枠組みを出ようとしない。」と問題点を報告された。増田弁護士は、これらの原因について「安倍政権になってから、官僚的統制がより強くなり、高裁で判断がひっくり返るのを恐れる傾向がある。」と分析された。
(3) 労働委員会の問題点について、松澤氏は、「中労委に行くのが大変。北港観光事件では中労委の西日本分室で開催できた。」と報告され、新垣内氏は、「命令が出るまでが長い。事務局の人手が少ない。」と体制の問題点をコメントされた。
(4) 裁判所と労働委員会の活用について、併用した場合、会社の出方が分かるメリットや、よくない判断が相互に影響しあうデメリットがあると確認された。増田弁護士は、「事件の性質により十分な協議・検討が必要。10年前の労働委員会はひどかった。裁判所・労働委員会に労働者を救済させるよう、どう変えられるかが課題。」と指摘された。
4 おわりに
分科会参加者は50名で、パネルディスカッション方式により問題点が浮き彫りになり、会場からの発言が絶えず、現場での掘り下げが進んだ。遠藤昇三名誉教授より、労働組合運動の再構築についてもお話頂いた。労働争議は最終的には労使間の話合いで決着するものであり、裁判・救済命令もその手段の一つにすぎないが、裁判・救済命令を有効活用するためにも運動が重要であることを学んだ。

第2分科会 直接雇用原則を取り戻そう (報告:弁護士 片山 直弥)

 第2分科会では、「直接雇用原則を取り戻そう」をテーマに議論が行われました。参加者は15名でした。
 第1に、村田浩治弁護士から労働者派遣法の歴史についての解説を頂きました。
派遣労働は直接雇用原則の例外として位置づけられており、労働者派遣法は例外的な取扱いであることを前提にいわゆるポジティブリスト方式(=例外として許されるものを列挙する方式)で成立しました。その後、規制緩和によっていわゆるネガティブリスト方式(=例外として禁止するものを列挙する方式)に転じてその後原則と例外が曖昧になっていったのです。労働者派遣法の歴史を省みることは、直接雇用が原則であることを確認するとともに、今後派遣の働き方が広がるおそれがある中で労働組合がその問題点(=「例外」と「原則」の曖昧となっている点)を認識して組合運動としてどう取り組むかが重要になっていることを確認するきっかけとなりました。
 第2に、安原邦博弁護士から2017年9月以降行ってきた派遣労働者のためのネット相談(実態把握のためのアンケートを含む)、2018年11月に行った派遣労働者のためのホットラインについての報告を頂きました。
ネット相談はネットで寄せられた相談に弁護士がメールで回答するというもので、ホットラインは電話で寄せられた相談に弁護士がその電話で回答するというものです。ネット相談は時間的制限がないこともありホットラインに比べると派遣労働者も相談しやすいようだ、との所感を頂きました。今後も派遣労働者が相談しやすい仕組みを作り、派遣労働者の労働実態を把握していくことの必要性が確認されました。
 第3に、現在係属中の各裁判についての報告を頂きました。報告を頂いた事件は、①ライフ社(対東リ)事件、②全港湾事件、③大阪医療刑務所事件、④派遣通勤費訴訟の4つで、①ないし③では労働契約申込みみなし制度の適用を主張する上で争いになっている点について報告があり、④では労働契約法 条を根拠に格差是正を主張する上で争いになっている点について報告がありました。
 第4に、ご自身も派遣労働者として働いていた経験を持つ山本さん(仮名)から現在の派遣業界について報告を頂きました。
オフレコということでお話いただいた内容もありますので、詳細は割愛します。ただ、弁護士が議論している内容(例えば、派遣労働者の直接雇用化)と実際の派遣労働者が望んでいる内容との間にずれがあるのではないか、実際の派遣労働者の中で直接雇用を望んでいる人は8割もいないのではないか、という指摘にはとても驚きました。今後どのような運動を進めるか、を考える上で無視できない点であると思います。
 最後に、各労働組合からこの間の取組みについて報告を頂きました。中には派遣労働者に関する労働協約を締結しており、条件を満たせば正社員となることができることを明確にしているところもありました。派遣労働者に関するモデル協約書を作って交渉をしてはどうか、という意見が出るなど活発な意見交換・交流がされました。私もこの日頂いた意見を今後の活動に活かしたいと思います。

 第3分科会 働き方改革から見る非正規労働者が現場で使える規定 (報告:弁護士 鶴見 泰之)

第3分科会では、「働き方改革から見る非正規労働者が現場で使える規定」をテーマに、報告、議論が行われました。参加者は事前申込者数よりも10名も多い37名でした。
 パートタイム労働法が改正され、有期雇用労働者も規定の対象となったこと、均等待遇に関する規定が有期雇用労働者にも適用されることになったこと、また、均衡処遇に関する規定が、従来の「短時間労働者の待遇」という文言から、より具体的に「短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇」と改正されたことなどを当職が報告しました。
谷弁護士からは、不合理な待遇の禁止等に関するガイドラインを説明していただきました。通常の労働者よりも待遇の水準を低く設定した新たな管理雇用区分を設けることによって均等待遇・均衡処遇を回避することはできないこと、定年後継続雇用労働者もパートタイム労働法8条の「その他の事情」にあたること、「賞与」が「手当」の項目から独立したことなど、2016年に公表されたガイドライン案から変更された点を紹介していただきました。
 労働契約法20条に関する裁判の報告を2件していただきました。
1件目は、谷弁護士及び原告の方から、権利討論集会の前日に言い渡されたばかりの大阪医科大学事件の大阪高裁判決を報告していただきました。非正規職員に賞与を支給しないことが不合理であると判断したことは画期的です。
郵政ユニオンの森田さんからは、郵政西日本裁判の大阪高裁判決を報告していただきました。雇用契約期間が5年を超えているか超えていないかで線引きをして、5年以下の契約社員に、祝日給、夏期冬期休暇、病気休暇を支給しないことを不合理とはいえないと判断したことについて、疑問が投げかけられました。
 毎年恒例となった寸劇が今年も行われました。常勤職員に対して非常勤職員へ契約内容の変更を迫る使用者とのやり取り、 分未満の時間外労働を切り捨てようとする使用者との交渉の様子、労働基準監督署の受付で、監督官を呼び出すための交渉の仕方を、労働組合や当事者の方々が演じました。
 関西圏大学非常勤講師組合の江尻さんからは、立命館大学では、2016年度からの採用者について雇用期間を通算5年とする就業規則を作成したこと、大学は制度の廃止を拒否していることや、関西大学などで非常勤講師に大学教員任期法を適用して無期転換権を 年に引き延ばしていることなどが報告されました。
大阪府内の教育機関の当事者の方からは、勤務している学校とのこれまでの闘いが報告されました。出勤日数が他の常勤教員よりも少ないことを理由に差別的取扱いを受けたことがきっかけで、紆余曲折があったものの非正規組合に加入しました。その後、経営悪化を理由に、常勤教員から非常勤講師へ契約内容を変更することを学校側から告げられたので、労働組合に相談したところ、真剣に取り合ってくれないので、地域合同労組に加入し直し、団体交渉を行った結果、常勤教員の地位のまま契約が更新され、無期転換の申込みも行えました。
金融ユニオンの浦野さんから、三菱UFJ銀行では2015年から無期雇用制度が導入されたものの、労働条件は有期雇用のときと変わらず、臨時給与も退職金の支給もないこと、昼食手当が正規職員よりも低いことなど、厳しい現状が報告されました。
自治労連の仁木さんから、会計年度任用職員制度の解説が行われました。現在、大阪府下の自治体では、非正規職員の割合が %を超えるところが多く、2020年4月から、非正規職員が会計年度任用職員という位置付けになること、会計年度の雇用しか保障されておらず、いつ雇止めをされるのかの不安を抱えながら働いていることなどが報告されました。

第4分科会 考えよう! 働き方改革関連法徹底利用 (報告:弁護士 和田 香)

1 はじめに
第4分科会は、『考えよう!働き方改革関連法徹底利用』と題し、分科会を開催した。
分科会は、2部構成とし、第1部では、井上耕史弁護士を講師に迎え、『改正労基法徹底利用! 過労死防止に改正労基法をどう使うか』として講演を頂いた。
第2部では、『ハラスメントと闘う!近年の傾向と対策』として岩城穣弁護士に講演頂いたうえで、ハラスメントを受けた当事者2名の方から事案のご報告を頂いた。
そして、参加者から各職場の現状や取り組みを発表頂いたり、全国過労死をなくす家族の会からの参加者から訴え等を頂くなどした。
以下、報告を行う。
2 講演『改正労基法徹底利用! 過労死防止に改正労基法をどう使うか』
働き方改革一括法について、悪法ながらこれをいかに利用するかは、難しいながら重要な問題である。
講師の井上弁護士からは、有給休暇の付与の義務化、客観的な方法による労働時間の把握義務等、従前の労基法の規定から前進した部分についての説明と共に、高度プロフェッショナル制度の導入に関して労働組合の役割が一層重要となったことの指摘等があった。
また、参加者から、附帯決議の内容が紹介され、これを活用すべきとの指摘もなされた。
さらに、参加者の各職場における労働時間の把握の現状や労働者の過半数を獲得するための取り組み、有給休暇の取得状況等が報告された。その中で、運転労働に従事する労働者から、労働時間規制が必要な職場であるにも拘らず、今回の労働時間規制の対象外となっていることに対する落胆の意見が出された。
また、過労死の遺族や参加者から、自分たちの子どもが長時間労働に従事していること、親として言い聞かせても責任感などから長時間労働の職場で勤務を続けていることに対する強いジレンマの声もあり、労働者と家族の間の温度差を感じると共に、真面目な労働者を過労死させる社会の仕組みの一端を感じた。
3 講演『ハラスメントと闘う! 近年の傾向と対策』及び労働者の報告
近年、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメント等の上位概念としてハラスメント、という言葉の利用が提唱されている。
講師の岩城弁護士からは、ハラスメントには様々な類型があること、長時間労働とハラスメントが組み合わさったときに特に労災が起こりやすいことなどが紹介された。
その上で、実際にハラスメントを受けて精神疾患に罹患し、労災や民事訴訟を戦っている当事者の方からの報告を頂いた。職場でハラスメントが起きた場合に被害労働者のその後の人生に与える影響の大きさを改めて感じる報告であった。
4 おわりに
分科会参加者は28名、大学生や議員事務所の職員など幅広い参加者を迎えて、それぞれ活発な意見交換がなされた。特に、各職場の現状に関する報告や、職場で過半数を獲得するための非正規労働者の取り込みなどの活動報告は現在の労働環境を知ることのできる貴重な機会であった。

第5分科会 雇用によらない働き方は自己責任でよいのか? (報告:弁護士 加苅 匠)

第5分科会では、「雇用によらない働き方は自己責任でよいのか?」と題して、雇用によらない働き方をテーマに議論しました。参加者は21名でした。
第1部として、出版ネッツ(出版業界で働くフリーランスのユニオン)元委員長でジャーナリストの北健一さんより、情勢や厚労省検討会での議論状況について基調報告をしていただきました。フリーランス保護の方向性として、「労働者概念の見直し(拡大)」や「優先度の高い課題について個別法等での対応」があることや、現状でも労働組合を活用した保護の在り方があることについて解説いただきました。
第2部では、雇用によらない働き方の実態を知るために、それぞれの団体より、職場での問題や実際のトラブルについて報告を頂きました。
自交総連の松下末宏さんより、新しい働き方として注目されているライドシェア問題について報告していただきました。出版ネッツ関西でトラブル相談を受けている山崎亮一さんからは、関西の出版業界で実際に発生したトラブルの内容、それに対する出版ネッツの取組みについてご報告いただきました。音楽家ユニオンの藤田直子さんとユニオンに所属する音楽家の方々からは、音楽家の働き方や音楽家ユニオンの取組みについて報告いただきました。それぞれの職種で働くフリーランスの実態や問題意識を共有することができました。
第3部では、雇用によらない働き方保護のあり方について議論しました。岩佐賢次弁護士より、独占禁止法を活用したフリーランス保護の在り方について「人材と競争政策に関する検討会報告書」(公取委、2018年2月)の報告がありました。また、西川翔大弁護士より、フリーランスについて労基法上及び労組法上の労働者性が争われた事例について報告がありました。
雇用によらない働き方は多種多様であり、その保護の在り方も新しい論点で、引き続き議論が必要です。フリーランス自身は、まだまだ自分の働き方に着目されていることやトラブルの解決方法を知らないのが現状です。雇用によらない働き方が着目され、その保護の在り方が議論されていること、現状でも労働組合を活用した解決方法が存在することを、広く周知することが必要であることを共有することができました。

第6分科会 あなたの職場にもやってくる外国人労働者 (報告:弁護士 清水 亮宏)

第6分科会では、「あなたの職場にもやってくる外国人労働者」と題して、外国人労働者の問題について議論しました。労働組合やマイグラント研究会のメンバーなどが参加し、参加者は28名でした。
分科会は3部構成で行い、特に外国人労働者から労働相談を受けた際の対応について重点的に議論しました。
第1部「先行する労働組合の取組みに学べ」では、徳島労連書記長の森口英昭氏から「外国人技能実習生の相談活動について」と題してご講演いただきました。繊維業における外国人技能実習生(中国人が中心)の劣悪な働き方(長時間労働、時給300円の低賃金労働、寄宿舎の寮費や光熱費が賃金を低く抑える手段となっている実態など)を紹介いただきました。また、留学生への通訳の依頼や、中国語教室の開催など、言葉の壁を乗り越えるための取組みについても報告いただきました。
第2部「外国人就労の仕組みと外国人労働者の抱える問題」では、マイグラント研究会所属の弁護士が取り組んでいる外国人労働者の労働事件を紹介しながら、外国人労働者を取り巻く諸問題について学習しました。技能実習生の残業代請求事案の紹介では、ベトナム人技能実習生の当事者から、経緯や思いについてご発言いただきました。その他、技能実習打ち切り事案や労災事案の紹介を通じて、在留資格の問題や外国人労働者に多発している労災事故の問題などについて議論・学習しました。
第3部「あなたは外国人労働者の相談に対応できるか」では、参加者を6~8人程度のグループに分け、あらかじめ用意した設例について、労働組合としての対応を議論しました。日本語を話せない労働者から突然相談があった場合にどのように対応するか、在留期限が迫っている労働者の解雇事案について労働組合としてどのように対応するかなど、外国人労働者の特有の問題について、議論と解説を通じて学びました。
外国人労働者の増加が見込まれる中で、外国人労働者の問題を共有する良い機会となりました。

第7分科会 改憲を阻止するための運動論~発議されても諦めない~ (報告:弁護士 辰巳 創史)

第7分科会は、「改憲を阻止するための運動論 ~ 発議されても諦めない~」と題して、国民投票が実施された最悪の場合を想定して、どのような運動を行うかの方法論を実践的、具体的に議論した。
分科会の前半は、広告代理店に勤務している方を講師に迎え、人を振り向かせるには、人の注意を引き付けるにはどうしたらいいかの方法論を具体的に話していただいた。
ある商品を買ってもらう広告をする場合は、いきなり「買ってください」では、人は引いてしまう。恋愛に例えると、ある人と交際したいと思っても、いきなり「付き合ってください」ではなく、普通は、まず好きになってもらうために様々なアプローチをするはずである。エジソンは、トースターを買ってもらうために、まず一日3回食事をするよう人々に啓蒙した。そうすると、パンを食べる機会が増えるからである。このような例をたくさん引きながら、具体的に話してもらった。さらに、事前に参加者から提供していただいた、実際に街頭で配布したチラシも講師に見てもらい、評価してもらった。詳細は後の報告に譲るが、どうも我々の作るチラシは、文字が多く、結論を押し付ける傾向にあるようである。また、講師から、多くの人に伝えるために、SNSがいかに重要か、立憲民主党の行った例を挙げて解説していただいた。
その後、杉島幸生弁護士から、パワーポイントを使って、分かりやすく国民投票運動でできることを解説してもらい、参加者数名から、実践の報告もいただいた。
分科会の後半は、参加者を4名ほどの小グループに分けて、ワークショップ形式で、実際にどんな運動をしたいかを議論した。参加者全員が議論に参加するという形式は、新鮮な試みであり、前半の講義も踏まえて、ユニークなアイデアが多く出された。
西晃弁護士から、チラシなど宣伝方法の工夫は必要だが、我々の運動としては、立ち位置を明確にして宣伝を行うこと、すなわち、「私たちは、憲法改正に反対です!」ということを明確に打ち出すことは、やはり重要であるということが確認された。
分科会参加者は22名であった。

勝利判決も 「5年で線引き」という特異な判断 ~郵政西日本20条裁判~

弁護士 西川 大史

1 はじめに

日本郵便で働く期間雇用社員8名(郵政ユニオンの組合員)が正社員との格差是正を求めた郵政西日本20条裁判で、大阪高裁(中本敏嗣裁判長、橋詰均裁判官、三島恭子裁判官)は、2019年1月24日、年末年始勤務手当、住居手当、祝日給、夏期冬期休暇、病気休暇についての格差が不合理であるとの勝利判決を言い渡しました。

もっとも、本判決は、格差が不合理であると認めた手当・休暇のうち、住居手当を除いて、契約期間が通算して5年を超える期間雇用社員に限って、格差が違法であるという特異な判断を示しています。

2 事案の内容、事実経過

本件では、日本郵便の外勤業務に従事する期間雇用社員が、正社員業務内容は全く同じであるにもかかわらず、①外務業務手当、②郵便外務業務精通手当、③年末年始勤務手当、④早出勤務等手当、⑤祝日給、⑥夏期・年末手当(賞与)、⑦住居手当、⑧扶養手当、⑨夏期・冬期休暇、⑩病気休暇について、著しい相違があるとして、その是正を求めて、2014年6月に提訴しました。

それに対して、大阪地裁(内藤裕之裁判長)は、2018年2月21日、年末年始勤務手当、住居手当、扶養手当について、格差が不合理であると判断しました。また、郵政東日本 条裁判でも、東京高裁は、2018年12月13日、年末年始勤務手当、住居手当、夏期・冬期休暇、病気休暇について、格差が不合理であると判断しました。

3 前進? 後退? 特異な大阪高裁判決

大阪高裁判決は、大阪地裁判決と同様に、年末年始勤務手当、住居手当については、格差が不合理であると判断するとともに、地裁判決が認めなかった祝日給、夏期・冬期休暇、病気休暇についても不合理な労働条件の相違であると判断しました。一歩前進です。他方で、大阪高裁判決は、大阪地裁判決が不合理な格差と認めた扶養手当については、長期雇用を前提として、基本給を補完する生活手当であるとして、不合理ではないとの判断を示しました。また、当事者・組合・弁護団が力点を置いた賞与についても、地裁判決を引用してのわずか4行だけの判断で、その不合理性をあっさり否定しました。

大阪高裁判決で何よりも不当だと個人的に感じているのは、住居手当を除く手当について、契約期間が通算して5年を超える期間雇用社員に限定して、労働条件の相違が不合理であるとの判断を示したことです。これまでの裁判例でもこのような判断を示されたことはありませんし、会社側もこのような主張は一切していません。あまりにも唐突な判断でありました。大阪高裁判決は、5年で線引きする明確で説得的な理由を示していませんが、判決文には「労働契約法18条参照」とあり、契約期間が5年を超えると無期転換権が発生することを念頭に置いたのでしょう。たしかに、日本郵便で働く期間雇用社員には5年や10年を超える長期間就労している労働者も多数おり、原告8名のうち7名は提訴時点で契約期間が通算して5年を超えていました。しかし、通常は、契約期間が通算して5年を超える有期雇用労働者は少なく、仮に大阪高裁判決の論理がまかり通れば、圧倒的多数の有期雇用労働者が救われないことになりますし、5年直前での雇止めも誘発するおそれも高まります。労働契約法20条は契約期間の年数により合理性の有無を判断する条文ではありません。労働契約法 条及び非正規労働者の現実への理解を欠いた特異な判断というほかありません。

4 最高裁で前進を!

郵政西日本裁判の舞台は最高裁に移ります。この間、大阪医科大事件やメトロコマース事件などの20条裁判で、非正規労働者の権利を前進させる判決が続いています。大阪高裁判決も、大阪地裁・東京高裁判決を継承し、夏期冬期休暇などの不合理さを認めた点での前進もあります。しかし、賞与をはじめその他の手当の不合理性が認められなかったことや、やはり契約期間が通算して5年を超える期間雇用社員に限って格差が違法であるとの判断は看過できません。最高裁で必ず是正させて、不合理な労働条件の相違に苦しむ非正規労働者の権利実現、前進につなげていければと思っています。

(弁護団は、森博行、斉藤真行、中島光孝、河村学、楠晋一、髙木佐知子、植田豊、小谷成美各弁護士と西川大史)

大阪市労組組合事務所団交拒否事件 府労委勝利命令の報告

弁護士 冨田 真平

 大阪市による、大阪市労組の組合事務所の供与についての団交申し入れに対する団交拒否について、2019年1月2 8日、大阪府労働委員会は、大阪市に対し団体交渉に応じるよう命じる救済命令を出した。

 大阪市労組の組合事務所の問題については、労働委員会での闘いでは、地労委命令(2012年2月20日)・中労委命令(2015年10月21日)において、大阪市の不当労働行為が断罪されたが、裁判での闘いにおいては不当な高裁判決・最高裁決定(2017年2月1日)が出され、大阪市労組は、2017年3月、断腸の思いでこれまで守り抜いてきた本庁舎の組合事務所を明け渡した。

他方で、大阪市労組は、裁判・労働委員会での闘争と並行して、大阪市に対し、2012年度使用不許可処分時以降、毎年のように、使用許可申請や同不許可処分の前後に、組合事務所の使用その他を交渉議題とする団体交渉を開催するよう申し入れてきた。しかし、大阪市は、管理運営事項(地公法55条3項)や労使関係条例を口実として、一貫して団体交渉に応じない態度をとってきた。

事務所明け渡し後の2017年3月に行った、①組合事務所の供与について真摯な協議を行うこと、②組合事務所を供与しない具体的理由の説明、組合の不利益の回避、代替措置の存否・条件や検討状況、退去を巡る条件について具体的な説明、協議を行うこと、③市庁舎その他大阪市が所有・管理する全ての物件について使用状況を具体的に説明し、供与可能なスペースの有無について協議を行うことなどを団交事項とした大阪市労組の団交申入れに対しても、大阪市は2か月以上放置した上で、結論として団体交渉を開催しなかった。

そこで、2017年9月11日に大阪市の団交拒否に対し、団交応諾命令とポストノーティスを求め、府労委に救済の申立を行うに至った。

 府労委命令では、ほぼ組合側の主張を認め、上記①~③の交渉事項について団体交渉を開催しなかった大阪市の態度が正当な理由の無い団体交渉の拒否であると判断した。

市側は、府労委において、地公労法が適用される公務員で構成される労働組合については、組合事務所などの団体的労使関係に関する事項は義務的団交事項にあたらない(地公労法第7条各号及び第13条2項に列挙された事項以外の事項については義務的団交事項とはならない)という主張を行った。これに対し、府労委命令は、市側の主張を退け、地公労法第7条本文はそこに規定されていない事項について団交の対象から排除する趣旨ではないとして、地公労法が適用される労働組合についても、一般の労働組合と同様に団体的労使関係に関する事項も義務的団交事項に当たるという至極全うな判断をした。

また、府労委命令は、本件の交渉事項が管理運営事項に当たるため、団交拒否に正当な理由があるという市側の主張について、団体的労使関係の運営に関する事項についても、管理運営事項そのものでない限り、原則として義務的団交事項となるとした上で、本件の交渉事項について、管理運営事項そのものではない事項が含まれているとして、管理運営事項であることを理由に団体交渉を拒否した大阪市の態度が不当だと判断した。

さらに府労委命令は、交渉事項②③について、管理運営事項に該当する事項があるかどうか明らかでなかった(なお、これらの事項が管理運営事項そのものでないことは泉佐野市不当労働行為事件の中労委命令などからも明らかである)ため、確認したい旨伝えただけであり、団体交渉を拒否していないとの市側の主張についても、管理運営事項に該当しない事項がある以上まず団交に応じるべきであり、また不明な点があるのであれば、市側から組合側に積極的に交渉事項を確認すべきだったとして、市側の主張を退けた。

 今回の府労委命令は、管理運営事項や労使関係条例を盾に一切団体交渉にさえも応じない不当な大阪市の態度をしっかりと断罪するものである。また、管理運営事項そのものでない事項がある以上まず団交に応じるべきであり、管理運営事項そのものでないものが含まれるかどうかについて市側が積極的に確認すべきとした点で、大阪市労連の事件の中労委命令をさらに一歩前進させたものといえる。

大阪市は、中労委で勝ち目はないと見たのか、大阪地裁に取消訴訟を起こそうとしており、橋下市政以降続く大阪市との闘いは、再び大阪地裁に闘いの場所を移すことになると思われる。今後も労働組合が自由な活動を展開できる正常な労使関係を取り戻すため、一丸となって闘っていく所存であるので、ご支援をお願いする次第である。

(弁護団員は、豊川義明弁護士、城塚健之弁護士、谷真介弁護士、及び冨田の4名。)

大阪市交通局『ひげ裁判』のご報告

弁護士 井上 将宏

第1 はじめに

以前、提訴報告をさせて頂きました大阪市交通局『ひげ裁判』ですが、このたび一審の大阪地裁で勝訴判決を得ました。

この裁判では、地下鉄の運転士に対して、ひげを一律に禁止することとした大阪市交通局(当時)における職員の身だしなみ基準の是非を通じて、本来的に個人の自由に属する行為を一律全面的に禁止する職場内ルールの必要性・合理性が問われてきました。

本件は、2019年1月30日付で大阪市が控訴したこともあり、以下では、一審判決の問題点にも触れつつ簡単にご報告させて頂きます。

第2 本件判決の意義と問題点

1 本判決の意義
(1) 2019年1月16日、大阪地裁第5民事部(内藤裕之裁判長)は、①原告らが「お客様に快い印象を与えるものでないひげ(=無精ひげ、奇異・奇抜なひげ)の状態であった」、②原告らにはひげ以外にも減点評価されるべき事情があり、ひげだけを理由に減点評価したわけではない、等といった被告の主張を排斥し、大要以下のように述べて、被告に対し、各22万円の支払いを認める原告勝訴の判決を言渡しました。

 「ひげを生やすか否か、ひげを生やすとしてどの様な形状のものとするかは、服装や髪型等と同様に、個人が自己の外観をいかに表現するかという個人的自由に属する事柄である」から、「地下鉄運転士に対して、職務上の命令として、その形状を問わず一切のひげを禁止するとか、単にひげを生やしていることをもって、人事上の不利益処分の対象とすることは、服務規律として合理的な限度を超えるものといわざるを得ない」。

 本件基準には「整えられた髭も不可」という明確な記載が存在し、通達にも人事考課への反映を行う旨の記載があること、原告らの上司(当時)である乗務所長はひげを生やしていることを理由に2つの評価項目で低評価とした旨述べていること等の事実を認定して、「原告らがひげを生やしていたことを主要な事情として考慮して、この点を原告らに不利益に評価したものであると認めるのが相当である」。

 仮に原告らが無精ひげを生やしていたのであれば、乗務開始前の点呼の際等にひげを整えるよう指導したり、勤務自体を停止させたりすることも可能であるところ、被告がそのような対応をしたとする証拠は認められないことから、「原告らが、市民・乗客に快い印象を与えるものでない無精ひげの状態で勤務していたと認める」ことはできない。

 本件身だしなみ基準の趣旨目的、ひげを生やすか否かは個人的自由に関する事項であることに鑑み「本件各考課の内容については、原告らの人格的な利益を侵害するものであり、適正かつ公平に人事評価を受けることができなかったものであって、国賠法上違法である」。

(2)
 本判決は、労働者の市民的自由が抑圧されている現在の社会情勢や職場環境の中で、職場における労働者の市民的自由(本件では労働者の人格的利益)に対する過度の制約が違法となるということについて、あらためて確認した点に意義があります。

2 本判決の問題点
本判決には、①勤勉手当の差額請求を認めなかった点、②本件基準自体の合理性を認めた点、③特に理由も述べないまま、本件基準は「職員の任意のお願いを求める趣旨のものである」と認定し、本件基準の制定自体の違法性を否定した点等、幾つか重大な問題点もあり、控訴審ではこれらの判示部分を徹底的に批判し、認定を覆せるよう争っていかなければなりません。

第3 終わりに

本件原告らは、提訴から約3年間、職場内にありながらこの裁判を闘い続けてきました。その点には純粋に敬意を表したいと思います。

また、一審判決には問題点も多くありましたが、原告らとしては、大阪市が誤りを認めて控訴を断念するのであれば、こちらからはあえて控訴せずに、判決を早期に確定させた上で現場で活用する方途を模索するということも検討していました。しかしながら、大阪市は控訴という挙に出ましたので、この機会に一審判決の問題点を問い直していく所存です。

(弁護団は村田浩治、谷真介及び井上の3名)

府労委からの文書要望 ~枚方市・組合事務所事件~

弁護士 西川 大史

1 はじめに

2019年2月14日に、大阪府労働委員会は、枚方市職員労働組合が申し立てた不当労働行為救済命令申立に関する実効確保の措置申立につき、被申立人である枚方市に対して、「現在、本案事件が審査手続中であることから、被申立人は、これ以上労使紛争が拡大しないよう、労働組合法の趣旨に従い、適切に対応されたい」と文書による要望書を出しました。

本件は、枚方市が枚方市職労に対して、組合事務所の明け渡しを通知したため、枚方市職労が不当労働行為救済申立てを行うとともに、実効確保の措置を申し立てた事案です。府労委が、文書要望を行うことは極めて異例のことで、近年、文書要望が出されたことはないかと思います。

2 事件の概要・経過

(1) 枚方市職労は、1971年1月から、枚方市庁舎敷地内の職員会館の一部の貸与を受けて、組合事務所として使用してきました。
枚方市職労が一年ごとに行政財産使用の許可申請をして、枚方市が許可決定するという取扱いがこれまでなされてきました。

(2) 2015年8月の枚方市長選挙で当選した伏見隆市長(所属政党はみんなの党、その後大阪維新の会)は、前職の枚方市議時代から、労働組合に対する批判を繰り返していました。伏見市長は、市長就任後、職員団体は、職員の勤務労働条件の維持改善を「主たる目的」としなければならず、「社会的、文化的、政治的活動等」は「従たる目的」であるという独自の見解に基づき、組合活動への非難を強め介入をしてきました。

(3) 伏見市長は、2016年3月31日に、枚方市職労への平成28年度の職員会館の使用許可に際して、使用目的として「組合事務所としての利用(職員の勤務条件の維持改善及び職員の福利厚生の活動に限る)」との条件を付したのでした。枚方市職労は、組合結成以来、このような条件が付されたことはありません。

伏見市長による組合活動への介入はその後も続き、枚方市職労が発行する日刊ニュースに対して、戦争法反対や安倍政権を批判する記事などについて内容の修正を求めたり、次年度の職員会館の使用不許可を示唆するなどの介入を繰り返しました。さらに、伏見市長は、平成 年度、平成 年度の枚方市職労への職員会館の使用許可においても、「使用目的」として「職員の勤務条件の維持改善及び職員の福利厚生の活動に限る」という条件を付したのでした。

(4) そして、伏見市長は、2018年12月27日に、枚方市職労に対して、職員会館の平成30年度の使用許可を取り消すことになるので、自主的に職員会館から退去するよう通知してきました。これは、枚方市職労の労働組合としての正当な組合活動を敵視するものでしかありません。

枚方市職労は抗議するとともに団体交渉を申し入れたのですが、枚方市は団体交渉にも応じません。
そのため、枚方市職労は、2019年1月18日、枚方市が組合事務所の明け渡しを求めたこと、及び枚方市が団体交渉を拒否したことについて、不当労働行為救済申立を行うとともに、実効確保の措置申立を行いました。

3 府労委による文書要望

府労委は、2019年2月14日、冒頭に記載の文書による要望書を出しました。勧告が出なかったことは残念ですが、府労委による文書要望は異例であり、非常に重要な意義があります。要望書は、伏見市長による一連の対応が、組合活動の自由を奪う不当労働行為であり、完全に誤っていることを示すものであり、伏見市長に対してこれ以上の不当労働行為を繰り返さないよう警告を与えるものでもあります。

組合事務所の使用許可は一年ごとに出される運用となっています。枚方市職労の組合活動を嫌悪した伏見市長は、次年度の使用許可を出さない恐れもあります。市職労及び弁護団では、伏見市長に労働組合法の趣旨に従った適切な対応をさせるよう、この文書による要望を積極的に活用して、次年度の組合事務所の使用許可を勝ち取るとともに、伏見市長の不当労働行為を正すべく闘っていきます。皆さま、ご支援をお願いします。

(弁護団は、城塚健之、河村学、中西基、谷真介、加苅匠各弁護士と西川大史)

2019年1月 ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ

弁護士 清水 亮宏

1 2019年1月の判例ゼミ
2019年1月24日18時30分から、民法協事務所でブラック企業対策! 判例ゼミを開催しました。修習生や新人弁護士の方に多数ご参加いただきました。
今回のテーマは「パワハラ(業務指導の必要性との関係)」です。
2018年は様々な業界でハラスメントが話題となり、ニュース等で頻繁に取り上げられました。法制化に向けた議論も進められているところです。もっとも、どのような場合にパワハラに該当するかついては明確な基準がなく、パワハラであるか否か(違法であるか否か)が争われることが多々あります。その中でも、使用者側から、〝業務指導の必要性があったため、ある程度厳しい指導はやむを得ない〟などの主張がなされることが珍しくありません。そこで今回は、業務指導の必要性との関係について取り上げることにしました。

2 検討した判例・裁判例
まず、PE&HR事件(東京地判平成18年11月10日 労判931号65頁)について、新人の西川翔大弁護士から報告いただきました。「泥棒と同じことをしている」「人間として最低」などの代表者の発言について、言動に多少比喩的あるいはきつい表現が見られると判断しながらも、会社の利潤追求目標・組織の在り方・被害者の業務処理状況等を考慮し、違法性を否定した裁判例です。
続いて、同じく新人の足立敦史弁護士から、前田道路事件(高松高判平成21年4月23日 労判990号134頁)について報告いただきました。被害者が落ち込んだ様子を見せるほど強い叱責があったものの、ある程度の厳しい改善指導をすることは、上司らのなすべき正当な業務の範囲内であるとして、違法性を否定した裁判例です。
最後に、冨田真平弁護士から、U銀行事件(岡山地判平成24年4月19日 労判1051号28頁)について報告いただきました。被害者自身の問題(ミスや業務遂行能力等)を指摘しつつも、叱責が精神的に厳しく被害者の体調にも無配慮であったことを理由に違法性を認めた裁判例です。
参加者からは、業務上の必要性を理由に違法性を否定すること自体に異論を唱えていくべき、パワハラの該当性について可能な限り基準を明確化していくべきなどの意見が出され、活発な議論が生まれました。

3  さいごに
次回の判例ゼミは2019年3月28日(木)18時30分~@民法協事務所です。テーマは「休職・復職」です。ぜひご参加ください!

2019年第1回新人学習会のご報告

弁護士 足立 敦史

 2019年1月30日、大阪弁護士会館904号室にて2019年新人学習会が開催されました。講師は須井康雄弁護士で、参加者は新人弁護士3名、弁護士3名、組合の方2名、司法修習生2名でした。
須井先生には、「労働相談入門講座」というテーマで講義いただき、労働問題について法律相談を受ける上で注意すべきポイントや確認すべき事項を横断的にお話しいただきました。個々の論点について、司法試験で必要とされる知識は一定程度はあるものの、法律相談を受ける上で必要なことはまだまだ勉強不足であることが確認でき、極めて有益な時間となりました。

まず、労働相談では、相談に来られる方は、精神的ショックを受けていることが多く、通常の法律相談よりも相談者から「聴く」姿勢が大事であることを学びました。相談者の勤務する会社の組織について部、課、係等から先輩・同僚・部下等の人間関係等まで把握すること、相談者の会社における位置づけを1日の仕事内容から職場の間取り等にいたるまで具体的に確認することが重要であることを教わりました。
当事者を把握すると、次は労働契約の内容、「労働者」(労働基準法、労働組合法)を確認する必要があります。
その上で、問題となっている出来事を証拠とともに時系列で確認し、その際には、事実と評価を区別することが特に大事であることを学びました。

総論として、法律相談に共通する事項を学んだ後、紛争類型別に、解雇・雇止め、賃金、いじめ・ハラスメント、労働災害について個別に検討しました。
解雇・雇止めでは、労働契約法18条の無期転換等の改正点について、退職では、「退職届」と「退職願」の違いや離職票の「退職」という終了事由に異議を記載することが重要であること等実務で使える知識を学び、山梨県民信組事件(最判H28・2・19)について検討しました。
賃金でも、付加金請求は2年の期間制限が除斥期間であって内容証明を出しても中断しないこと、高度プロフェッショナル制度のあらまし、法令上の割増賃金率の改正、労働時間の把握方法等、法律相談を受ける上で重要な事項について学びました。
最後に、解決方法の選択として手段の選択、相手方の選択、法律構成の選択等、方針決定をする上で不可欠な事項を教わりました。

今後、新人学習会は、3月27日に「残業代請求」のテーマで渡辺輝人弁護士に講義をいただき、4月以降に職場見学を行う予定です。新人弁護士だけでなく、先輩会員の皆様もふるってご参加いただきたいです。

《書籍紹介》 渡辺輝人著『 残業代請求の理論と実務』

弁護士 須井 康雄

 著者である渡辺輝人弁護士は、ブラック企業問題や労災など数多くの労働事件に労働者側としてかかわり、残業代計算ソフト「給与第一」を開発、公開し、近年、最高裁で使用が推奨されている「きょうとソフト」の作成に大きく寄与しました。

また、YAHOOニュースにも個人のサイトをもち、労働問題を始めた多くのエッセーを執筆するとともに、ツイッター(@nabeteru1Q78)でも積極的に情報発信しており、民主法律協会会員の中にも多くのフォロワーがいるかと思います。

本書は、2018年12月に発行され、渡辺弁護士がこれまでの経験・研究をもとに著した残業代請求の理論面及び実務面の最先端の書籍といえます。理論的な部分では、残業代計算の基本となる最低基礎賃金や賃金単価算出方法といった、いざ計算するとなると、細かすぎてよく分からないことがなきにしもあった部分から、国際自動車事件など固定残業代に関する最高裁判例の分析など最新の理論状況まで、常に労働者側に立った解説がなされています。

実務の部分でも、時効の中断方法や労働時間に関する証拠収集方法、打ち合わせでの確認事項など多数の事件を解決に導いてきた著者ならではのノウハウが惜しむところなく盛り込まれています。

定価2800円+税ですが、コストパフォーマンスは抜群です。民主法律協会でも特別価格で販売しています。
また、2019年3月27日午後6時 30分からは大阪弁護士会1205号室で渡辺弁護士をお招きして、残業代請求の学習会を実施します。申込用のチラシを同封しています。最先端の実務・考え方について学ぶことができる絶好の機会ですので、ふるってご参加ください。

旬報社 2018年12月10日 発行
A5版288頁
定価 2800円+税
※民法協で少しお安くお求めいただけます。