民主法律時報

2019年1月号

「美しい国」異聞 《年頭のごあいさつ》 

会長 萬 井 隆 令

 安倍晋三氏はかつて「美しい国を…」と訴えていた。何を以て「美しい」というのか説明はなかったが、問題は首相になってから、実際に行なっていることである。

安倍首相(と、ブレーン)は耳触りの良い言葉を好んで使う。辺野古基地反対を掲げ、大差で当選した沖縄県知事・玉城氏と初めて会った際、沖縄に米軍基地が密集している「現状は到底、是認できるものではない。今後とも、県民の皆さまの気持ちに寄り添いながら、基地負担の軽減に向けて一つひとつ着実に結果を出していきたい」と述べた。「今後とも…」というと、何かこれまで努力してきたかのようだが、現実には、普天間基地の撤去は見通しも立たないし、沖縄だけでなく横田、岩国にもオスプレイが配備され、各地で米軍の行動は拡大し、基地負担は重くなる一方だが、地位協定を理由に黙認するだけ。沖縄では、成りふりかまわず辺野古で土砂投入へ前のめり。基地予定地の海底に厚さ mのマヨネーズ並みの軟弱地盤があり、忽ち沈下のおそれがあるが、それでも強行する。早速、川柳で、「寄り添った 顔は白い眼馬の耳」(三井正夫)、「沖縄に寄り添わないで寄り倒し」(細木豊一)と皮肉られる始末である。ほかにも、「働き方改革で、『非正規』という言葉を一掃したい」と言い、実際には戦闘が必至な事態をも「駆けつけ警護」と言い、カジノを含む理由を説明しないままIntegrated Resort(IR)推進と言う等々。自分の言葉に酔っている風もある。

安倍首相は言うこととやることが食い違うこともしばしばで、広島の原爆死没者慰霊・平和祈念式では、「非核三原則を堅持しつつ、国際社会の取り組みを主導していく決意」と言いながら、核兵器禁止条約に賛同しないのはその典型。

トップがこれだから、大臣や官僚は「倣え!」で、海上自衛隊は「いずも型」護衛艦を改修して垂直離着陸戦闘機F35Bを搭載できる「多用途運用護衛艦」にする。「何と呼ぼうと 空母は空母」(張本雅文)。言い値のまま一機150億円で100機も買い(保有は140機になる)、潜水艦も多数保有する。いずれも海外へ出かけて戦闘する武器で、「専守防衛」は顧みられもしない。

「言葉」による誤魔化しとともに深刻なのは、現実の政治の内容である。攻撃的な戦争体制作りのために、トランプ大統領から国際会議の場でわざわざ礼を言われるほど巨額の武器購入をする。「ポチではなくてカモだった」。他方で、超巨額の財政赤字を改善するまともな政策はなく、赤字を次世代に先送りするだけ。低金利政策が続き、「いざなぎ」景気以来の好況で、企業は儲けているが、労働者の実収入は減る一方。今の青年は年金が保障されなくなると言われる。挙げれば切りがないが、このままでは将来、どうなるのだろうと不安に駆られる問題が少なくない。

まともな仕事をしない官僚機構も目に付く。森友問題では売却土地の評価を偽造、記録は改ざん。「働き方改革」の柱にしていた裁量労働制についての資料は不備、財界の「労働力」需要に応えるためだけの法律制定を急ぎ、人権無視で働かされている技能実習生の実態は把握していない等々。政府は反省もしないし、責任者の懲戒処分もほとんどない。

毎年、同じようなことを言ってる気もするが、状況がそうさせる。安倍首相は言ったことももう忘れているだろうが、これでは「美しい国」ではないではないか。もう、待ってはいられない。私達が力強く闘う以外にない、本物の「美しい国」を創るために。

JMITUダイトク分会不当労働行為救済申立事件―― 府労委救済命令の報告 ――

弁護士 冨田 真平

 大阪府労働委員会に申し立てた、株式会社ダイトクによる、JMITU大阪地方本部傘下の地域支部きずなダイトク分会に対する不誠実団交及び同組合員である沖野氏に対する不利益取り扱いについての救済申立について、2018年10月23日、ついに救済命令が出された。

ダイトクは、トラックスケールや産業用・空港用はかりの製造販売業等を業とする従業員が20名程度の株式会社であり、かねてからサービス残業が蔓延するような状態で、従業員が低賃金の中で働かされていた。そのような中で藤村氏の解雇事件等をきっかけにJMITU地域支部きずなダイトク分会が結成された。組合の公然化後、会社側からの組合に対する嫌がらせがはじまり、組合員の沖野氏の賃上げが全く行われなくなるとともに一時金もわずか10万円程度のものになった。組合は、このような会社側の態度に抗議を行い、藤村氏の解雇問題や賃上げや一時金の問題、利益隠しの可能性が高い同族会社への高額な地代家賃の支払いの問題や未払いの残業代の調査・支払いなどについて団体交渉を重ねてきた。しかし、会社側は、代表取締役などの役員を団交の場に全く出席させず、組合の質問に対してほとんど無言で答えず、資料の提示も行わないなど、団交において一貫して不誠実な態度をとり続けた。

このような中で、救済命令を突破口に、不利益取り扱いや藤村氏の解雇事件も含め、運動で解決していくために、労働委員会に沖野氏に対する不利益取り扱いと不誠実団交についての救済申立を行ったのが本事件である。

 府労委命令では、団体交渉拒否については、ほぼ組合側の主張を認め、藤村氏の解雇撤回職場復帰の要求以外の団体交渉事項について、会社側の交渉態度が不誠実団交に当たることを認めた。

命令では、一時金の問題については過去の売上や経常利益について回答しなかった点や賞与の決定方法について組合の質問に答えなかった点、賃上げの問題についても十分な説明を行わなかった点などが不誠実団交に当たると判断された。また、未払い残業代の問題についても、消滅時効が完成している以上義務的団交事項に当たらず被救済利益もないという会社側の主張を退け、不誠実団交の成立を認めた。加えて、ダイトクスケールへの地代家賃の支払い等についても、地代家賃の支払いに関して利益隠しが疑われていると組合側が主張していること、会社側が賞与回答において売上のみならず利益の上昇率を回答の根拠としていること及び利益と経費が密接な関係を持つものであることから、これらの事項が組合員の賃金に無関係であるとはいえないとして、これらについて一切回答しなかった会社の態度が不誠実であると認定した。もっとも、藤村組合員の解雇撤回等の要求については、不誠実団交の成立は認められなかった。

このように、不誠実団交については、組合側の主張をほぼ認められ、賃上げや一時金だけでなく地代家賃の支払いという会社のいわば経営上の事項についても組合員の賃金との関係性が認められ、不誠実団交の成立が認められた。

 他方で、昇給及び賞与についての不利益取り扱いについては、会社や社長による恣意的な運用がなされた可能性を指摘しつつも、基本的には、組合員と非組合員の賃金格差の存在や、その賃金格差について組合員であるが故の不利益取り扱いであったことについての証拠が足りないということで、不利益取り扱いは認定されなかった。

不利益取り扱いについては、組合員が沖野氏しかおらず、非組合員の資料がほとんどない中で、申立ての段階からその立証については厳しい見通しではあったが、労働委員会の中でも求釈明や物件提出命令の申立てを行うなどして、なんとか会社側に資料を開示させ、立証を試みた。その中で一定の資料が開示されるなどして、賞与については一部格差の存在が明らかとなったが、最終的には立証のハードルの高さに阻まれた形となった。この点については、ハードルの高い物件提出命令など労働委員会の制度上の問題点も感じた。

今後、同命令をどのように活かし、どのような闘いを展開していくかについては、当事者・組合・弁護団で検討していきたい。

 (弁護団は、鎌田幸夫弁護士、清水  亮宏弁護士、及び冨田真平)

プリントパック事件、和解で解決!

弁護士 諸富  健

1 はじめに

「ネットでいんさ~つ、プリントパック」というフレーズ、CMで聞いたことがある方もおられるのではないでしょうか。プリントパックは、創業わずか 数年で年間売上を100倍にも伸ばした印刷通販の大手企業です。
プリントパックを舞台にした2つの不当労働行為事件について、ご報告します。

2 第1次不当労働行為事件

2013年11月1日、若者2人は組合結成を会社に通知して団交を申し入れました。すると、会社はわずか1週間で2人とも異動させ、出勤時間を1時間遅らせたり残業させなかったりする措置をとりました。その結果、2人の労働時間は短くなったのですが、そのことをもって会社に対する貢献度が足りないなどとして、昇給や賞与の支給をほぼ行わなくなりました(うち1人に対して1度、他の従業員より少ない昇給・賞与の支給があっただけ)。

そこで、2015年2月10日、京都府労働委員会に救済を申し立てたところ、府労委は2016年7月19日にこちらの言い分をほぼ認めた救済命令を出しました。会社はこれを不服として再審査を申し立てましたが、会社の言い分は通らず、2017年2月13日に中央労働委員会で和解が成立しました。この和解では、様々なことが定められましたが、そのうち公開が認められたのは、①良好な労使関係の構築に努めること、②解決金の支払い、賃金額の是正、組合が社業発展に協力すること、組合員が労働契約に従って就労すること、③会社の労働関係法令の遵守義務の再確認、組合・組合員が不当な言動を行わないこと、④労働時間の短縮に向けた生産性の向上・勤務体制の改善努力、⑤会社が誠実に団体交渉に応じること、の5点です。

3 第2次不当労働行為事件

2017年11月6日、新たに1名の若者が組合に加入したことを会社に通知。すると、わずか4日後、第1次事件で証言に立った常務取締役がこの若者を呼び出し、40分以上にわたって組合脱退をもちかけるという事件が発生しました。この若者は、賢明にもこのやりとりを録音していたのです。その内容を聞くと、不当労働行為であることは明らかでした。そこで、同年 月 日、再び京都府労働委員会に救済を申し立てました。

こちらは第1次事件以上に結論が明らかでしたので、労働委員も不当労働行為の心証を抱きながら、早期の段階で和解を勧めてきました。こちらとしても、救済命令をもらってもよいが、それ以上の内容であれば和解に応じるという強気の態度で和解に臨みました。

その結果、2018年10月11日に和解が成立しました。以下、一部抜粋します。
「1 (常務取締役が組合員に話したことは)その内容が組合員の申立人組合加入が同組合員にとって将来不利益になることもあるかのような内容に及んだ点において不適切であり、労働組合法が禁止する不当労働行為に該当する行為であることを確認し、申立人組合に対し謝意を表明し、今後このようなことを繰り返さないことを誓約する。」
「4 申立人組合及び被申立人会社は、中央労働委員会における平成29年2月13日付の和解の遵守が、今後の相互の信頼関係の構築にとって肝要であることを改めて確認する。」

4 終わりに

2つの事件を通して、若者達が成長する姿を間近で見ることができたことは大変幸せでした。また、わずか数名の若者達が、会社に残って働きながら会社と闘い続けて和解を勝ち取ったことは、全国の組合員を励ましたことだろうと思います。
彼らは、さらに組合を大きくし、長く働き続けられる職場にしようと決意しています。今度こそ良好な労使関係を構築することができるか、今後の彼らの闘いを見守っていきたいと思います。

 (弁護団は、中村和雄、塩見拓也、 当職です。)

ヤマハ英語講師ユニオンが 結成されました!

弁護士 清水 亮宏

1 ヤマハ英語講師ユニオン結成!

2018年12月、ヤマハミュージックジャパン(以下、「ヤマハ」)に所属する英語講師十数名が労働組合を結成しました。今後、労働条件の改善を求めてヤマハと団体交渉を行う予定です。ぜひ、会員の皆様からの応援・支援をお願いいたします。

2 ヤマハ英語講師の働き方

ヤマハは、いくつかの楽器店と契約し、音楽教室や英語教室の運営を委ねています。創設された英語教室のレッスンを担当する英語講師は、ヤマハと契約を締結しており、形式上の契約形態は委任契約となっています。

しかし、レッスンで使用する教材やレッスンのカリキュラムなどはヤマハから指定されており、教室の備品等も楽器店がヤマハから購入するものが多くあります。業務内容の定期報告を求められるほか、講師会議や研修への参加を実質的に強制されるなど、英語講師は従属的な立場にあります。講師の報酬は、英語教室のコース内容や指導経験年数等によって変動しますが、基本的には担当するレッスンに対応したものであり、労務との関係が高いものです。

加えて、ヤマハは、税務上、英語講師を給与所得者として扱っています。ヤマハの説明では、英語教室を始めた当初は英語講師を個人事業主として扱っていたが、税務署から指導を受けたため、給与所得者として扱うようになったとのことです。

このようなヤマハの英語講師の働き方の実態をみると、ヤマハ英語講師は労働者であるといえるでしょう。契約形態が委任契約となっているために、労基法等が(形式上)適用されない扱いを受ける、社会保険に加入できないなどの問題が生じています。

加えて、①講師会議・研修などの業務に対する報酬が支払われない、②(講師の報酬が受講生徒数によって変動し)生徒数が1人のみの場合には報酬額が最低賃金を下回るような額となる、③土曜日や日曜日の出勤に対する手当がない、④レッスン時間前後の保護者対応や報告書の作成などの様々な業務に対する報酬が支払われていないなどの問題も生じています。

3 労働組合結成の経緯

このような問題について疑問を抱いた講師の一人が、2018年4月に労働基準監督署に相談したところ「あなた方は労働者ではない」と門前払いされてしまいました。しかしその後、思いを同じくする英語講師が集まり、既存の労働組合や労働弁護士と繋がり、労働組合の意義や役割について学習会を行い、夜中にわたるまで議論した末、労働組合を結成することができました。結成に当たっては、岩城穣弁護士、音楽ユニオン、大阪労連北河内地区協議会、総合サポートユニオン、川西玲子さんなど、様々な方の支援を受けることができました(私もサポートに加わりました。)。

現在、「雇用によらない働き方」が注目を集めていますが、実態が労働者であるにもかかわらず請負や委任と扱われる問題や、過重労働・低報酬の問題などが指摘されています。労働組合を通じた交渉は、これらの問題の解決手段として有効ですが、そのことが十分に社会に共有されていない状況にあります。今回のヤマハ英語講師の行動を通じて、労働組合を通じた働き方の改善の意義について社会的に発信していきたいと考えています。

2019年1月に1回目の団体交渉が行われる予定です。ヤマハに労働者性を認めさせ、付随する様々な問題の改善を図るため、会員の皆様方からもご支援いただけますと幸いです。どうぞよろしくお願いいたします。

北河内 第34回権利討論集会

大阪労連北河内地区協議会 副議長 東野 明治

北河内第34回権利討論集会を民主法律協会の協力を得て、2018年12月9日(日)におおさかパルコープ寝屋川組合員会館で開催しました。今回は大阪労連の提起も受けて組織拡大総がかり行動の一環として「働くもののための学習市民講座」としても打ち出しました。午前の記念講演には43名、午後からの分科会には29名、半日参加者を含めて48名が参加しました。

午前の記念講演は、須井康雄弁護士(民主法律協会事務局長)から「3年ルール・5年ルールを活用し非正規労働者の権利向上を」というタイトルで講演をして頂きました。2018年4月からの有期労働者の無期転換権、 月からの派遣期間制限違反の直接雇用みなしの適用開始の具体例や事業所の適用妨害例なども述べられました。また、まだまだ不十分な部分があるとしても非正規労働者の待遇改善のために活用していく重要性を強調されました。何よりも一人ひとりでは弱い立場の労働者を励まし、支援する労働組合の存在と役割が問われていると強調されました。

午後からの第1分科会は、午前の講演を深める「3年ルール、5年ルールの実例、交流」を主題に行いました。「有期では継続して働けるのかとの不安とともに、教育ローンや住宅ローンなど融資も受けにくい」、「3年ルールは知っていたが、5年ルールは知らなかった」、「別組合でパート組合があるが、会社側から無期雇用の提案がされた」、「外国人実習生が働いているが適用されるのか」など参加者から実践的な疑問や交流が行われました。おおさかパルコープ労組からパート労働者の無期転換制度を確立した先進的な報告や、3年間という実習期間がある外国人実習生への適用は事実上困難との解説とともに、入管法改正が強行された中で外国人労働者の相談も増える可能性もあり労働組合としての学習の必要性や、民主法律協会のマイグラント研究会の活動紹介もされました。

第2分科会は「労働争議、権利侵害を許さない交流会」と題して行いました。
守口市職労学童保育指導員分会から「2019年4月からの学童保育民間委託に反対する闘いをこの1年やってきた、雇用は継続するといっているがこれまでの賃金労働条件や保育内容が保障されるのかどうか不安がある」、関西外国語大学2 1世紀教職員組合から、憲法に保障されたスト権行使に対しての不当処分撤回の裁判の報告がされました。

分科会を終えての全体集会では、参加頂いた6人の弁護士の方から感想を交えた発言を頂きました。その中で、過去の権利集会では100名近い参加者があったが最近は参加が少ないのではとの厳しい指摘を受ける一方、継続して開催していくことも大事との激励も受け、北河内地区協の今後の取り組みにいかしていきたいと考えています。また、今回は「働くもののための学習市民講座」と位置づけもしたことで、地域向けの開催周知ビラを1万枚配布しましたが、電話で2件問い合わせがあったものの当日の参加には至りませんでした。組織拡大むけての「市民講座」(仮称)を今年5月に開催することにしていますが、未組織労働者・非正規労働者に届く宣伝の工夫や、簡単にできませんが組合役員だけでなく一人ひとりの組合員の取組みになるよう呼びかけていきたいと思います。

今後とも民主法律協会の皆さんのご協力をよろしくお願いします。

労働相談懇談会に参加して

弁護士 清水 亮宏

 2018年11月22日、2019年度第1回労働相談懇談会が開催されました。当日の内容を簡単に報告させていただきます。
西川大史弁護士から、2018年8月以降の労働情勢について報告がありました。パナソニック子会社の労災民訴裁判、建設アスベストの大阪高裁判決、NHK地域スタッフの最高裁判断などについて、簡潔でわかりやすく報告いただきました。この間、大阪からも注目の判例がいくつか出ています。

続いて、村田浩治弁護士から、「2018年改正派遣法3年目見直しの相談活動と労働組合の課題」と題してご講演いただきました。
2018年問題、労契法20条裁判の最高裁判決、改正労働者派遣法の見直しなど、2018年に非正規の話題が多かったことに触れつつ、労働者派遣法の内容や、2012年改正・2015年改正の内容などについてわかりやすくご報告いただきました。
また、2017年9月から非正規労働者の権利実現全国会議で実施している派遣労働者アンケートの集約結果や、ネット相談に寄せられている相談内容についてもご報告いただきました。直接雇用義務が生じる3年を期に派遣切りが行われており、派遣労働者の身分が不安定になっていること、紹介料が高く直接雇用が進まないケースが存在することなど、派遣労働者の置かれた状況について報告がありました。問題を啓発し、派遣労働者が相談・行動しやすい環境を作っていくことが重要であると再認識する機会になりました。

次回は2019年2月22日18時30分から、国労大阪会館1階ホールで開催されます。テーマは「長時間労働と三六協定について」(講師:須井弁護士)です。ぜひ、ご参加ください。

裁判・府労委委員会の報告

大阪争議団共闘会議 特別幹事 松本 哲夫

 2018年12月11日、エル・おおさかにて定例の裁判・府労委委員会が開催され、東大阪市にある運送会社・アクアライン争議について学習しました。
はじめに建交労大阪合同支部・松澤書記長から、アクアライン争議の概要と闘争経過として、オーナー社長によるワンマン経営を改めさせ、従業員が安心して働ける職場にするため 名が建交労に加入して分会を結成したこと、組合結成を嫌悪・敵視した社長が組合員らに対し不当配転、人権侵害、労基法違反、不誠実団交を繰り返してきたことが報告されました。また、社長が賃金から「取次(仲介)料」として5万円を差し引き、労基署から是正勧告を受けたこと。その後弁護士が交代したが、それ以降人権侵害・法律違反が露骨になり、組合の申し入れなど何かあるたびに「不審者がきている」と警察を呼ぶなどをくり返したことが報告されました。

続いて愛須弁護士が裁判の争点と仮処分申立の現状を報告。賃金支払請求事件のでは、①就業規則に定められている精皆勤手当が一度も支払われていない。②賃金の一部控除の支払い請求については、社宅補助としての家賃負担の打ち切り、事故の際の免責負担、賃金の一方的減額、運賃計算のごまかし、一方的な管理費の値上げに対するものがその内容です。
また、地位確認仮処分事件については、分会長の田中さんが「管理監督者ではない、残業代を支払え」と言ったことを捻じ曲げて、会社は「管理職を辞めると言った」として運転職への配転を一方的に命じたが、田中さんは運行管理者からの配置換えを拒否したため賃金が支給されず、5カ月にわたって収入ゼロとなったため申し立てました。しかし、裁判所は第4回審尋期日でそれまでとは態度を変えて「保全の必要性が問題」と言い出しました。そのため、やむをえず配転命令の有効性に異議を留めて、11月7日から運転業務を行うことで、11月5日に和解を受け入れたとのことでした。

報告を受けての質疑・応答では、①田中分会長の運行管理者から運転業務への一方的配置転換は、配転事案ではなく本人同意が必要な職種変更、②解雇の場合は収入が断たれるので仮処分もありだが、田中分会長は運転業務を拒否しているため無収入になっている。地裁5民は裁判官の夏季休暇を理由に進行を遅らせており、早期の判断を怠っている姿勢は問題、③アクアラインも都合が悪くなれば偽装倒産させる可能性も考えられる。アクアラインの別会社である「関西合同サービスセンター」の前歴、財務状況等の調査が必要、④5民の裁判官は何でも知っている訳ではない、経験のない裁判官の場合部長に相談するなど、意見を聞いたりしている。進行協議の初期に仮処分決定の予定だったものが仮処分を認めないとなったのも、内藤部長に相談した結果その意向が反映したものであり、裁判官の独立性が侵されている重大な事態、などの意見が出されました。

この日の報告と質疑・討論を通じて、裁判官の資質と独立性が問われる事例がリアルに出されたことで、労働事件で不当判決を連発している裁判所、とりわけ地裁第5民事部に対する働きかけと運動を、さらに強化しなければという思いを強くしました。

労働審判支援センター懇談・交流会が開かれました

弁護士 須井 康雄

 2018年12月18日、国労大阪会館で労働審判支援センター懇談・交流会が開かれました。
大阪府外から参加された2名の方も含め労働審判員4名、弁護士6名、労働組合員2名が参加しました。
懇談会では、裁判所内で行われる労働審判員向けの研修のあり方や調停案の決まり方などについての報告・討議が行われました。事例をもとにグループで討議した結果、各グループで調停案の金額に大きな開きが出て、中には、使用者側が認めている金額より低い金額を出したグループもあったとのことでした。もっとも、解決額の提示に当たっては、証拠や法令・判例を参考にして金額を出しているとのことであり、裁判に近い主張立証が求められることは、労働審判でも同じといえます。

次回の懇談・交流会は、労働審判を活用している組合からの報告や、労働部と弁護士会の懇談内容などの報告を予定しています。
このような懇談会は、弁護士や労働審判を利用する組合にとっては、労働審判員をご経験された方から、書面及び審判での活動のあり方について、貴重な示唆を得ることができ、また、労働審判に携わるうえでの疑問点などを討議することができる貴重な場です。労働審判に携わる多くの方にとって大変意義のある機会ですので、ぜひ次回以降の懇談・交流会にご参加ください。

《書籍紹介》髙岡正美著『財は友なり』 ―― 労働運動と会社再建闘争一筋 “怒り、泣き、笑い”の半世紀

弁護士 奥田 愼吾

 著者である髙岡正美さんは、1934(昭和9)年8月生まれ、現在84歳にして現役。
1957(昭和32)年、学生アルバイトとして、総評・紙パ労連関西地協(全国紙パルプ産業労働組合連合会関西地方協議会)の組合書記になってから現在まで約61年間、労働運動と会社再建闘争に身を投じて来ました。
本書は、著者個人の労働運動の記録にとどまりません。戦後の労働運動の一面を映し出すとともに、労働組合運動の生きた実践例を示すものといえます。

著者は、産業別労働組合のリーダーとして「したたか労働運動」を掲げてきました。製紙業界の小さな組合が解雇、工場閉鎖、会社の倒産といった厳しい事態に直面します。著者は、従業員の雇用と生活を守ることを大事にし、そのためには会社を存続させねばならないと考え、専門家等の多くの「友」の協力も得ながら、組合の枠にとらわれない独自の活動を展開してきました。
例えば、組合による会社更生法申請や新会社設立、組合による水利権の取得、雇用保障協定の締結、銀行や親会社との交渉、組合が根抵当権者となるなど、意外で効果的な手を打つことに驚かされます。

また、著者は、1980~84年までの4年間、大阪地労委労働者委員として、合計134件の審査事件等を担当しました。本書では、労働者委員の立場で勝利和解に関与した大阪工作所事件等の個別事件の経験に加え、労働委員会についての提言や大阪争議団共闘や民法協が取り組んだ労働委員会の民主化運動も紹介されています。

私は、2010年夏から、著者とともに、経営が悪化した某学校法人の労使紛争に関わった経験があります。組合の顧問弁護士として、団交への参加、メインバンク等への要請、未払賃金支払請求訴訟等の活動をしました。その過程で目にした著者の取り組みは、極貧の幼少時代から培われた人間に対する洞察力や共感力、長年の経験と信念に裏打ちされたものでした。
労働運動の継承という観点から見たとき、また、労働者側弁護士として労働組合との関わり方を考える上でも、本書に記された著者の豊富な経験、労使紛争解決に向けた姿勢や取り組みから、貴重なヒントや教訓を得ることができることと思います。

図書出版 浪速社
2018年11月 発行
A5版・382頁
定価 1667円+税
※民法協事務所にて少しお安くお求めいただけます