民主法律時報

2018年12月号

NHK不当労働行為事件 ~最高裁決定を受けて~

弁護士 西澤 真介

1 はじめに

初めて相談があったのは平成23年の夏ころのことでした。今回最高裁で上告棄却・不受理決定が出たのは平成30年10月10日でしたので、7年以上の歳月が経ちました。事件の内容は以下のとおりです。

全日本放送受信料労働組合堺支部(以下、「全受労」といいます。現在では「南大阪支部」に名称変更しています。)が日本放送協会(以下、「協会」といいます。)堺営業センター(現在では「南大阪営業センター」に名称変更しています。)との間で開催する団体交渉の中で、受信料契約の取次等を行う地域スタッフであったA氏に対する通信機器の貸与拒否や、地域割当ての問題等が議論の対象になっていました。全受労がその交渉力を強めるため、堺労連所属のB氏を団体交渉に参加してもらうこととし、団体交渉を申し入れたところ、協会側が「外部の者の同席は認めない」として団体交渉を拒否したのが発端です。

後日、再度の団体交渉申し入れに対し、協会は「外部の者の同席は認めない。」として団体交渉を拒否しました。そこで、全受労が団体交渉拒否を不当労働行為として申立てをしました。

2 事件の経過

本件事件の主な争点は、①協会の契約取次等を行う地域スタッフが労組法上の「労働者」にあたるか、②協会が外部者の出席を理由として団体交渉を拒否したことが不当労働行為にあたるか、の2点でした。

事件は、大阪府労委平成25年7月30日付命令では、①②ともに認容され、続く中労委平成27年12月7日付命令でも協会の再審査申立ては棄却され、①②ともに認められました。そしてこれに続く協会からの取消訴訟でも東京地裁平成2 9年4月13日判決でも請求棄却判決、東京高裁平成30年1月25日判決でも請求棄却でした(判例時報2383号58頁)。最終的に今回の上告棄却決定により確定いたしました。

上告棄却決定後直ちに協会は、全受労の支部副委員長を呼び出し謝罪文を手交しようとしましたが、全受労としては、然るべき出席者立会いの下で手交日時を決めて謝罪文の手交を求めるよう窓口交渉を行い、その結果、2018年10月1 8日の10時30分から、南大阪センターの会議室にて、謝罪文が手交されました。

3 判決の意義

本件上告棄却決定により、協会で働く地域スタッフの労働者性が確認されました。

高裁では「労組法上の労働者については、労働契約によって労務を提供する者のみならず、これに準じて使用者との交渉上の対等性を確保するための労組法の保護を及ぼすことが必要かつ適切と認められる者をも含み、これに当たるか否かについては、契約の実際の運用等の実態に即して、事業組織への組込みの有無、契約内容の一方的・定型的決定の有無、報酬の労務対価性、業務の依頼に対する諾否の自由の有無、指揮監督下の労務の提供の有無、事業者性等の事情を総合考慮して判断すべき」と判示したうえで、協会の反論をそれぞれ具体的に退けました。

本件とこれまでの最高裁3判例と比べた場合、時間的場所的拘束性がより緩やかであっても労組法上の労働者性を認めたという点で意義のあるものといえます。また、本件により、現実に働く実質的に労働者である地域スタッフ及び個人請負という形態で就労する方々が労働者として団結してたたかうことができると示せた点にも意義があります。

4 判決を受けて(労使関係への変化の有無)

しかしながら、現実に協会で働く地域スタッフからみると、協会との関係は改善されていません。地域スタッフの数は平成23年度に約4000人であったものが平成29年末では約1100人まで減少しています。減少分の業務は委託法人がカバーしているようです。協会は3年毎に『NHK経営計画』を策定し、『平成24~26年度 NHK経営計画』では、地域スタッフを毎年300名削減することを打ち出し、『平成27~29年度 NHK経営計画』でも、同じく毎年300名削減する事を打ち出しておりました。現在の『平成30~32年度 NHK経営計画』では32年度末までに地域スタッフ数を500名体制にする事を打ち出しています。

協会による業態変更が時代の流れであるとみる向きもあるでしょうが、実態は、協会が就労者の生活・権利を顧みずより使い勝手のよい労働力に置き換えようとしていることの現れと評価する事もできます。

本件上告棄却決定により、協会の地域スタッフだけではなく、個人請負という形態で働く方々の労働者としての権利が尊重されるよう、切に願う次第です。

(弁護団 河村学、井上耕史、野矢伴岳、西澤真介)

日本労働弁護団第62回全国総会報告

弁護士 西田 陽子

1 総会の概要
2018年11月16日(金)及び17日(土)、北海道のシャトレーゼガトーキングダムサッポロにおいて、日本労働弁護団の第 回全国総会が開催されました。

2 第1日――幹事長報告、道幸哲也北大名誉教授による記念講演、懇親会ほか
総会1日目(16日)は、会長である徳住堅治弁護士による「この2日間十分な議論をし、成果を持ち帰って活動してほしい」という力強い開会挨拶に始まりました。来賓である八木宏樹札幌弁護士会会長、出村良平日本労働組合総連合会北海道連合会会長、三上友衛北海道労働組合総連合議長からの挨拶の後、棗一郎幹事長より、働き方改革関連法、入管法改正、職場のハラスメント防止法等に関する活動方針の報告がありました。

記念講演は、道幸哲也北海道大学名誉教授より、「労働関係の集団的性質と労働組合法の課題」というテーマでご講演いただきました。アメリカ法上の制度を参考に、不当労働行為制度の保護対象を労働組合や労働組合員に限定せず、非組合員の集団志向的行為や従業員代表の行為等をも保護対象に含む構想につき、非常に示唆に富む内容でした。講演後は、中島哲弁護士及び上田絵里弁護士をコーディネーターとして、道幸先生、長野順一弁護士及び札幌地域労組副委員長の鈴木一さんをパネラーとして、パネルディスカッションが行われました。パネルディスカッション後の質疑応答において、鎌田幸夫弁護士からは、従業員代表制の導入により労働組合の存在意義はどうなるのかという質疑がなされました。

その後は、前回総会以降の取組みについて、種々の報告がなされました(①嶋崎量弁護士(常任幹事)から働き方改革関連法について、②今泉義竜弁護士(事務局次長)から時間外労働の上限規制について、③梅田和尊弁護士(事務局次長)から同一労働同一賃金について、④北海学園大学の川村雅則先生から、公契約条例、非正規公務員の問題、無期転換ルール、学生アルバイト問題について、⑤新村響子弁護士(事務局次長)から、ハラスメント防止法について)。討議においては、無期転換後の労働者と正社員の労働条件の格差をいかにして埋めるかにつき、中島光孝弁護士より問題提起がなされ、活発な議論が行われました。
全国常任幹事会後は、懇親会が開催され、会員同士(会員の家族も)が親睦を深めました。

3 第2日――特別報告、ハマキョウレックス弁護団への労働弁護団賞授与ほか
総会2日目(17日)は、特別報告から始まりました。①棗幹事長から憲法改正問題について、②佐藤博史弁護士から自衛隊員の人権等について、③山岡遥平弁護士(事務局員)から自民党の改憲案の問題点等について、④指宿昭一弁護士(常任幹事)から外国人労働者問題について、⑤木下徹郎弁護士(事務局次長)から雇用によらない働き方について、⑥谷村明子弁護士(事務局次長)から女性労働者の問題について、⑦嶋崎量常任幹事から労契法 条について、⑦村田浩治弁護士(常任幹事)からは、非正規労働者の権利実現全国会議における派遣ネット相談等につきご報告がありました。

今年の労働弁護団賞は、ハマキョウレックス事件最高裁判決(2018年6月1日)でした。徳住会長より、中島光孝弁護士に賞状が授与されました。中島弁護士は、記念スピーチにおいて、「最高裁判決には労使交渉をせよ、というメッセージがある。使用者側は本判決を受けて対策を立てているが、労働組合の取組みはまだ弱い。格差是正に取り組まなければならない」と述べました。

また、今年は、労働時間の上限規制等を活用し長時間労働の是正を目指す決議、高度プロフェッショナル制度の廃止と職場への導入阻止を目指す決議等合計8本の決議がなされました(その他の決議については、日本労働弁護団HPをご参照ください)。
井上幸夫弁護士(副会長)からの閉会挨拶の後、3つのスタディグループ(①LGBTと労働問題、②労働運動のSNS実践講座、③非正規就労(雇用によらない働き方)に分かれて討論が行われました。筆者は、当会の村田弁護士とともに、②のSNS実践講座に参加しました。SNSを弁護士や労働組合がどう使っていくかにつき、今泉弁護士、中村優介弁護士(事務局次長)からの取組み紹介、長崎バスユニオン(中川拓弁護士。当日、諸事情で来場できなかったが、スカイプ参加により簡単な報告あり)、さっぽろ青年ユニオン等各地の実践例の紹介がありました。なお、このSNSのスタディグループ参加を受けて、前記の派遣ネット相談の公式キャラクターである「はろなちゃん」のツイッターアカウント(@harona_hiseiki)が誕生しました。

4 おわりに・雑感
筆者は始めての参加で、知り合いも大変少なく、体調が悪くなるくらい緊張したのですが、全国で活躍する研究者、組合員、弁護士の方々の活発な議論に触れることができ、参加して本当によかったと思いました。「成果」と言えるかは分かりませんが、念願であった「はろなちゃん」を誕生させることができ、ブラック企業対策!判例ゼミにロイズのチョコレートを買ってくることができました。

次回大会は岡山だそうです。まだ参加したことのない方も、次は大阪から近いので、是非ご参加を!筆者も、また大阪に「成果」(活動のアイディアとおいしいお土産?)を持ち帰るために、きっと参加します。

第51回働くもののいのちと健康を守る学習交流集会

大阪労働健康安全センター 事務局長 鈴木 まさよ

 第51回働くもののいのちと健康を守る学習交流集会は、2018年12月17日(土)に「職場に持ち込ませない安倍『働き方』」というテーマで国労大阪会館で開催され68名が参加しました。午後の分科会には、「職場のメンタルヘルス」に25人、「安全問題」に13人、「安全衛生活動」に17人が参加しました。

午前の記念講演は伊藤大一氏(大阪経済大学準教授)が「労働運動を活性化させる新たな潮流―アメリカにおける最賃15ドル運動からの示唆―」というタイトルで講演を行いました。伊藤氏は2年前の研究留学の体験からアメリカのファーストフード労働者の最賃15ドル運動やアマゾンへの直接行動、生徒や保護者も参加した教員ストライキなど映像を交えて紹介しました。アメリカでは組織率の低下に歯止めがかからない中で「社会正義の実現」による組織の影響力拡大へと運動の流れを変え地域のコミュニティーや宗教団体、NGOと連携しながらこれまで顧みられてこなかった女性やマイノリティー、低賃金労働者を対象に広げていっています。日本でも若者への世代継承や組織拡大は大きな課題で、従来の戦術を見直し対象と獲得目標を絞り込みマスコミを効果的に使うことで社会にアピールするという戦術は教訓的です。伊藤氏は大学で組織化のワークショップを行っており話し合いを通じて解決を目指す方法を採用し今話題の『職場を変える秘密のレシピ47』の書籍を紹介しながら、「トライ&エラー」(失敗するのを許す環境を作る事)が大事だと締めくくりました。

午後は3つの分科会がもたれ、第1分科会では大阪職対連の福田茂子さん(産業カウンセラー)が「職場のパワーハラスメントを考える」という基調報告を行った後、職場の現状を出し合い交流しました。第2分科会では「職場に安全文化をきずこう」と化学一般関西地本顧問の堀谷昌彦さんが基調報告を行い、JMITU日立建機ティエラ支部と全港湾築港支部から支部の活動、自公総連大阪地連から「バスの重大事故とその背景」について報告しました。第3分科会では全労働大阪基準支部の丹野弘さんが「「働き方改革関連法」の成立と労働組合に求められるこれからの役割」について基調報告を行い、茨木教職員組合と化学一般関西地本ダイトーケミックス支部が報告を行いました。

「時代に合った新しい『戦術』で組合運動をすすめていく事に共感が持てました」「自分と違う職種の活動内容など色々な話を聞けて大変ためになりました」「学校職場の状況はひどい。自己責任論の広がる恐れも感じた」等多くの感想が出されていました。

いの健集会は、5団体による実行委員会で準備を積み上げ秋の一日開催が定着してきており、職場の働き方がますます厳しくなる中で単産や地域、職場の労安活動を学習交流する有意義な場となっています。日程や内容を工夫し今後も学習と活動交流を大切にしていきたいと思います。

ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミ

弁護士 清水 亮宏

1 11月の判例ゼミ
2018年11月28日(水)18時30分から、民法協事務所でブラック企業対策! 判例ゼミを開催しました。司法試験合格者の方にも3名ご参加いただきました。
今回のテーマは「試用期間と解雇」です。試用期間とは、使用者が労働者を本採用する前に能力や適性を評価する期間のことをいいます。試用期間が付されていても労働契約自体は成立しており、基本的には、試用期間の満了とともに本採用へ移行します。試用期間については、〝(期間中は)いつでもクビにできる制度〟と誤解されて運用されているケースも多いのではないかと感じています。
トラブルに発展することも多いため、テーマとして採用しました。

2 検討した判例・裁判例
まず、三菱樹脂事件(最大判昭和48年12月12日 民集27巻11号1536頁)について、中西基弁護士から報告いただきました(レジュメは西田弁護士作成)。試用期間と解雇に関するリーディングケースとされる最高裁判例です。
この最高裁判例は、試用期間の付された労働契約の法的性格を留保解約権付労働契約と解釈した上で、留保された解約権の行使につき、通常の解雇の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められると判断しました。中西弁護士の報告を受け、名目上は期間の定めのある労働契約であっても実質的に試用期間として運用されている場合に、契約の性質についてどのように解すべきか、試用期間中の解雇の有効性が争われる場合にどのような点を主張すべきかなどの点について議論しました。

続いて、私清水から、医療法人財団健和会事件(東京地判平成21年10月15日 労判999号54頁)について報告しました。試用期間満了の約20日前の解雇を、指導による改善可能性を考慮せず早まったものであり無効と判断した裁判例です。同旨の裁判例としてニュース証券事件(東京高判平成21年9月15日 労判991号153頁)があります。試用期間満了時の本採用拒否ではなく、試用期間中の解雇について、有効性が厳格に判断されるべきという点を確認しました。

最後に、加苅弁護士から、日本基礎技術事件(大阪高判平成24年2月10日 労判1045号5頁)について報告いただきました。新卒技術社員の適格性・改善可能性の欠如ゆえになされた6か月の試用期間の中途の解雇を有効とした裁判例です。試用期間中の解雇を有効とした事例の検討を通じて、試用期間中の解雇の有効性が争われる場合の主張のポイント等を学びました。

3 さいごに
ゼミの中盤では、西田弁護士の北海道土産「ROYCEのチョコレート」をおいしくいただきました。日本労働弁護団北海道総会のお土産だそうです。西田弁護士、いつもありがとうございます。
次回の判例ゼミは2019年1月 日(木) 時 分~@民法協事務所です。ぜひご参加ください!

2019年権利討論集会にご参加を!

事務局長 須井 康雄

 あわただしい年の瀬を過ぎると権利討論集会の季節がやってきます。
来年は2019年2月16日(土)に権利討論集会を開催します。午前10時からエル・おおさか南館5階南ホールで全体会を開き、午後からは7つの分科会を開きます。分科会終了後、懇親会も行います。会員外の方の参加も可能です。

全体会では、南山大学の緒方桂子教授(twitter:@Keikolein)をお招きし、「非正規労働者をめぐる情勢と労働組合の取り組み」についてお話しいただきます。緒方教授は、職場における平等、非正規の均等待遇の問題について研究しています。
2018年は、非正規社員との格差是正に関するハマキョウレックス事件や長澤運輸事件の重要な最高裁判決が出されました。働き方改革推進法にも均等・均衡待遇に関する規定や格差についての説明義務を使用者に課す規定が盛り込まれました。いわゆる3年ルールによる直用みなし、5年ルールによる無期転換化の適用も始まりました。正規職員と非正規職員の間の分断を許さず、すべての労働者が人間らしく働くことのできる社会の実現にどう取り組むかを考え、実践につなげていくきっかけにしたいと思います。

分科会は、①裁判・労働委員会闘争、②派遣、③有期パート、④過労死、⑤雇用によらない働き方、⑥外国人労働、⑦憲法です。
①裁判・労働委員会闘争の分科会では、現在闘っている事件を通じて裁判所、労働委員会の問題を討議します。②派遣分科会では、直接雇用化、格差是正の取組を、③有期パート分科会でも無期転換化、格差是正のほか地方自治体の会計年度任用職員の問題を討議します。④過労死分科会では、長時間労働抑止に向けた働き方改革推進法の利用のしかたや現在審議されているパワハラ禁止法整備の状況を踏まえたハラスメント防止の取組を討議します。⑤雇用によらない働き方分科会では、業務委託や請負の形をとった勤労者の権利をどう守るかということやライドシェア問題を討議します。⑥外国人労働分科会では、現在、国会で審議されている入管法改正問題を踏まえ、外国人労働をめぐる制度の学習と言葉の問題など様々な困難のある外国人労働者を支援する取組を討議します。⑦憲法分科会では、憲法改正発議がいつ行われてもおかしくない情勢のもと、広告のプロの方も交え、どのような宣伝活動を行っていくかを討議します。

いずれの分科会も現在の情勢に即応した内容であり、平和や人間らしい暮らしを破壊する安倍長期政権の様々な悪弊を跳ね返すための知識と力を私たちに与えます。託児所も用意しています。多くの方のご参加を呼びかけます。準備の都合上、参加をご希望の方は、チラシを読み終えると同時にお申し込みもお済ませください。