民主法律時報

2018年11月号

建設アスベスト大阪1陣訴訟判決の報告

弁護士 遠地 靖志

1 はじめに

2018年9月20日午後2時30分、関西建設アスベスト大阪1陣訴訟の大阪高裁判決(第3民事部、江口とし子裁判長)が言い渡された。建設アスベスト訴訟では11番目の判決、高裁段階では4番目の判決である。判決は、これまでの判決を受け継ぎ、国についても、建材企業についてもその責任を全面的に認めるものであり、建設アスベストの早期全面解決に向けて大きく前進する意義を有する判決であった。

2 国の責任

建設アスベスト被害に関する国の責任については、東京1陣地裁判決(2012年12月)以後、本判決に至るまで、労働者との関係では安衛法等に基づく国の規制権限不行使の違法を認める判決が10連続で言い渡されてきた。しかし、一人親方等との関係では、建設現場でのばく露実態に労働者との差がないにも関わらず、安衛法等が直接保護対象とする「労働者」ではないという形式的理由で、国の権限不行使の違法が及ばないという不当な判断が続いていた。

しかし、今年3月の東京1陣高裁判決において、はじめて一人親方等に対する国の責任を認め、8月31日の京都1陣高裁判決でも一人親方等に対する国の責任を認めた。一人親方等に対する国の責任を引き続き認めるかが、本判決の国との関係での最大の争点であった。

本判決は、一人親方等が安衛法等の直接の保護対象でないとしても、製造等禁止(同法55条)や警告表示(同法57条)に関しては、これらの規定の由来や趣旨に加え、建築現場で労働者と同じように働き、同じように石綿粉じんにばく露したという一人親方等の稼動実態に照らしてみれば、国家賠償との関係では一人親方等もその保護範囲に含まれるとして、一人親方等に対する国の責任を認めた。

また、判決は、建築現場でこれだけ大量の被害が発生した原因が石綿建材を普及させた国の住宅政策にあることを指摘し、さらに製造禁止という抜本的対策が十数年も遅れた点も指摘し、国の責任割合を従来の3分の1から2分の1に大幅に引き上げた。

3 建材企業の責任

また、建材企業については、警告義務違反を認めながら、被災者の発症の原因となった建材が特定できないとして、因果関係を否定する判決が続いていた。

しかし、京都1陣地裁判決(2016年1月)が、当該職種が類型的に扱う建材の種類や建材のシェア等に基づき、被災者ごとの主要原因建材・企業を認定して、建材企業の責任を認めたことを契機に、神奈川2陣地裁判決(2017年10月)、神奈川1陣高裁判決(同年同月)でも建材企業の責任を認める判決が続いた。8月31日の京都1陣高裁判決でも、同地裁判決の判断を維持し、建材企業の責任を認めた。

本判決は、こうした全国の判決の流れを受け継ぎ、本件の因果関係の立証が困難であることや手持ち資料を提出しない建材企業の応訴態度を指摘し、そうしたなかでシェアと確率論を駆使した原告らの立証方法の正当性を認めた。そして、原告毎の主要原因建材・企業を認定し、民法719条1項後段の類推適用によって主要原因企業らの共同不法行為責任を認めた。建材企業の責任割合も、全部責任を前提にして、他の石綿建材からのばく露等も考慮して、原告毎に平均して4割の責任を認めた。

4 早期全面解決に向けて

大阪高裁判決により、国は同一訴訟で10連敗となった。国がここまで負け続けた裁判はない。国の責任はより一層明確になり、一人親方の救済も大きく前進した。また、建材企業の責任を認める司法判断の流れも確実なものとなった。建設アスベスト被害の全面解決には、「建設アスベスト救済基金」(仮称)の創設が必要であるが、その創設に向けて政治や行政に強いメッセージともなった。

全国6箇所で闘われている12の訴訟のうち、東京、大阪の各高裁で2つずつ、計4つの判決が言い渡された。今後、最高裁での審理が本格化していくことであろう。

一方、本判決は、解体作業との関係では国も建材企業も警告義務違反はないとして、その責任を否定した。この点は到底納得できるものではなく、最高裁や残る高裁判決(札幌、福岡)、2陣訴訟で克服していかなければならない。

原告団、弁護団は最高裁での勝利、早期全面解決に向けて全力で取り組む決意である。引き続き、ご支援をお願いしたい。

働き方改革推進法学習会をしました!

弁護士 加苅  匠

1 働き方改革を理解し、職場での闘いに活かそう!
2018年10月25日(木)、エル・おおさかで、「働き方改革推進法を理解し、職場での闘いに活かそう!」働き方改革推進法の学習会が開催されました。学習会では、強行成立した働き方改革推進法の問題点に加えて、問題への対処法や新たに導入された労働者にとってメリットのある制度についても検討し、今後の運動に活かすための実践的な学習会となりました。
学習会は二部構成で行われ、労働時間規制については井上耕史弁護士、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保については河村学弁護士に解説いただきました。参加人数は、約40名でした。

2 労働時間規制が逆効果!?
労基法改正により、時間外労働の上限規制が初めて設けられましたが、同時に、繁忙期6か月は「単月100時間、2~6か月平均 時間以下」(=過労死ライン)の時間外労働を認めるという重大な例外も設けられました。このような規制では、法が過労死ラインまでの時間外労働にお墨付きを与えたかのような印象を与えてしまい、労災認定の硬直化や三六協定改悪など労働者にとって不利益となるおそれがあることが指摘されました。また、高度プロフェッショナル制度の導入要件も確認し、対象業務の不明確性や十分な健康確保措置が要求されていないことが指摘されました。
しかし、過労死ラインぎりぎりの時間外労働も高度プロフェッショナル制度も、組合が過半数代表を取り、協定を拒めば職場に持ち込まれることはありません。過半数代表がとれずとも、導入反対キャンペーンをうち、むしろこれまでの協定等の見直しを行うなど、職場で取りうる手段はたくさん考えられます。また、使用者に客観的な労働時間を把握させ(強制義務)、勤務間インターバル制度を導入させる(努力義務)ことも長時間労働是正にとって有効です。

3 今すぐ活用! 均等・均衡待遇
雇用形態に関わらない公正な待遇の確保のために、①パート労働法に有期労働者が組み込まれ、均等・均衡処遇規定が整理される、②派遣労働者についてもパート有期法と整合させる法改正がなされました。
均等・均衡処遇については、現在も労契法20条裁判が各地で起こされており、無期雇用社員との格差是正を求めることは可能です。今後は改正法の趣旨を踏まえた運動が求められます。
使用者側の予想される対抗策として、無期雇用社員の階層化(より処遇の低い社員と比較させるため)や正社員の諸手当の廃止・基本給への組入れが指摘されました。非正規の均等・均衡処遇を求める運動と無期雇用社員の処遇維持・改善運動を連動させて行うことが重要です。
その他、福利厚生施設の付与義務や使用者の説明義務の拡充など、均等・均衡処遇運動のために利用できる規定も要チェックです。

4 これからの取り組み
働き方改革推進法は成立してしまいましたが、今後は、改正法の不利な制度は職場に持ち込ませない、有利な制度は積極的に利用することが求められます。
そのためにも、まずは働き方改革推進法の内容をしっかり理解すること、そして、その理解を職場で共有すること、職場に広げることが大切です。
ぜひ、職場・組合で、働き方改革推進法学習会を!

なくそう! 官製ワーキングプア 第6回大阪集会報告

弁護士 和田  香

 2018年10月13日土曜日、エル・おおさかにおいて「なくそう!官製ワーキングプア大阪集会」が開かれました。
この集会は、公務労働に従事する非正規労働者が置かれた現状とその問題、今後の取り組みなどについて、当事者の労働者、支援者、研究者らが報告し合い、議論するというものです。
私は、全体会の司会を小野順子弁護士と一緒にさせて頂いたのですが、とても盛り沢山の報告があり、終わりの時間に間に合うよう進行に一生懸命になり過ぎて、肝心の集会の網羅的な記憶ができていません。そこで、ここでは、集会全体のご報告ではなく、特に印象に残ったことについてご報告したいと思います。

 公務労働に非正規労働者が多く利用されているということは、報道等で聞いていました。
しかし、特に専門的な技量を要するといえる対人支援業務の職員や、失業者の方に職、とくに正規公務員の職を見つける機関であるハローワークの職員に非正規労働者が多いとは知りませんでした。
集会では、パネルディスカッション「公共サービスの在り方と担い手を考える」として、非正規の公務労働者の方が報告をくださいました。

私は、その報告者の方々の仕事を聞いて、本当にびっくりしました。コーディネートをしてくれた西村聖子さんは家庭児童相談員です。何かしらの問題に直面したお子さんやご両親の相談を受け、アドバイスをしたりするお仕事です。その他の登壇者の方も、生活困窮者自立支援事業の相談員、そして、ハローワークの職員です。
まず、専門的な対人支援業務の職員については、担当している業務の内容が専門的であり、経験すればする程に技量が上がり、より専門職として能力を発揮されるはずのところ、非正規公務員として一定の期間がくれば契約満了となってしまいます。これでは、住民サービスもままならないはずです。しかし、コメンテーターとして登壇された上林陽治先生(NPO法人官製ワーキングプア研究会理事、公益財団法人地方自治総合研究所研究員)によると、対人支援業務は「しんどい」仕事であり、元々職員から嫌厭されていた業務である面があり、そのような業務は非正規の職員を導入して担当させるという流れがあるということでした。

また、ハローワークの職員の方については、正規公務員の職員同様、失業者の方に正規公務員の職を見つけなければ業績として評価されず、契約更新に響いてしまうそうです。ところが、自分自身は非正規労働者ですから、何ともいえません。
登壇された当事者の方々のお話からは、費用も出ないのに研修に出かけたり、契約終了が見えていても住民の方のために知恵を絞ってアドバイスをされたりしながら仕事をされているのがよく分かりました。このような姿勢で公務労働に従事している方を短期間のサイクルで次々に取り替えていく非正規公務員の制度は、長い目でみれば経済的にも非効率のように思いました。

 集会では、その他、現に雇い止め等を争って闘っておられる方からの報告、非正規労働者の公務員に公務災害制度の適用ができない条例となっていた北九州市の事案の現状の報告や全国各地の条例の現状の報告、脇田滋龍谷大学名誉教授からの韓国における非正規公務労働撤廃の運動と成果の報告などがあり、非常に充実した内容でした。

秋の憲法大学習会が開催

弁護士 須井 康雄

2018年10月14日、大阪憲法会議・共同センターの主催により、中央区民センターホールで秋の憲法大学習会が開かれた。大阪憲法会議には、民法協も参加している。
丹羽徹幹事長の開会あいさつののち、戦争をさせない1000人委員会事務局の山元一英さんから連帯の挨拶があった。山元さんは、北朝鮮情勢に触れつつ、イデオロギーや路線を越えて戦争のできる国づくりに反対することの重要性を訴えた。
続いて、女子高校生と新婦人の女性からの憲法に関するスピーチがあった。高校生は、アルバイトで団体交渉をした経験から、労働基本権をはじめとして憲法が日常生活に密接にかかわっていることを訴えた。新婦人の女性は、署名集め目標の達成状況を報告した。

その後、渡辺治一橋大学名誉教授が「安倍9条改憲の危険性と発議阻止にむけてのたたかい」というテーマで講演した。渡辺教授のお話は次のとおりであった(筆者の理解による。)。
安倍総理は、イメージや参考資料などどんな名目でも、とにかく今秋の憲法審査会に自民党の改憲案を出し、国会の3分の2をとって、来年、再来年で憲法改正を発議するということを考えているとのことである。安倍首相がいる限り、改憲の動きは止まらず、3000万人署名と共同の力をもって止めるしかない。

安倍総理は、戦争法を成立させたが、市民と野党の共同がある限り、アメリカ追随の軍事大国化が実現できないことを知っている。だから、維新の会や公明党の案を唯々諾々と取り込んでまで、憲法改正に執念を燃やす。
市民と野党の共同のもたらした成果は2つあり、1つは、立憲民主党が野党第1党になり、改憲反対を訴えるようになったこと、もう1つは、選挙協力ができれば、改憲派による衆参両院での3分の2の議席獲得を阻止できる状況が生まれたことである。

自衛隊明記案の危険性は4つある。確信をもって署名集めするためによく理解する必要がある。①1950年代の自衛隊ではなく、戦争法により海外で戦争ができるようになった自衛隊が合憲化される。憲法裁判を封殺できる。②9条2項は残るが死文化する。国民が圧倒的に支持している自衛隊は、人殺しの軍隊としての自衛隊ではなく、災害派遣にいく自衛隊であり、海外で人を殺さない国際貢献の自衛隊である。③9条だけでなく日本国憲法全体が変質し、非常事態規定、軍法会議などにつながる。オスプレイの監視もできなくなる。日本の人権状況が大きく変わる。④朝鮮半島の非核化、話し合いの方向と逆行する。

安倍改憲にどう取り組むか。ポイントは2つ。1つは、強行採決をすると支持率が下がるので、強行採決ができない。もう1つは、自公も一枚岩ではない。3000万人署名で改憲勢力の見識が問われ、大運動になる。
改憲を葬る鍵は2つ。3000万人署名と共闘の強化。安倍改憲に反対するという点で一致し、各政党が成長する必要がある。
3000万人署名は4つの力を持つ。①地域選出の国会議員、地方議員に改憲問題を説得して、態度をはっきりさせる。②3000万にとどまらず、5000万、6000万の国民に改憲反対を訴えることになる。③9条の会が増えるにつれ、改憲賛成派が減る。④署名の取組を通じて共闘の土台ができる。
詳しくは渡辺教授著「戦後史の中の安倍改憲」(新日本出版)をお読みいただきたい。
渡辺教授は、最後に「憲法を守る政治を実現しましょう」と高らかに宣言し、会場は大きな拍手に包まれた。
その後、山田憲司事務局長の行動提起、菅義人副幹事長の閉会挨拶で終わった。

団結権は労働者個人の権利である(民法協会員への問題提起)

島根大学名誉教授・弁護士 遠藤 昇三

 団結権(団体交渉権・争議権も同様に考えているが、ここでは狭義の団結権に絞って述べる)は、従来においても、第一次的には労働者の権利とされて来た。しかし、同時に労働組合も団結権の主体であるとされるだけでなく、その団結権が労働者のそれに優位すると考えられ、いつのまにか労働者の団結権は、独自の権利としてではなく、せいぜい労働組合の中におけるメンバー権に矮小化されていた。その後現代においては、基本的枠組みに違いがないが、労働者の優位あるいは労働者の団結権の重視が、主張されては来ている。私は、それを徹底させて、団結権を労働者個人のみが有する権利と考えている。

そうした見解を唱える理由の第一は、5分の4以上の労働者が団結権を行使しない状況にあることである。従って、労働者が団結権という権利を行使しないということを視野に容れた理論が必要である。それは、団結権不行使(団結しない自由である)の法的価値を積極的に承認すること、積極的な権利行使の道筋を理論内在化することでなければならない。第二は、団結権保障をめぐる憲法と法律との乖離である。団結権(とりわけ問題となるのは、ストライキ権・争議権ではあるが)の法律による制限・禁止が、憲法第 条の存在に拘わらず行われるとともに、それを合憲とする最高裁判例は、全く揺らいでいないのであるが、こうした事態を団結権論に内在化して捉えることが、要請されるからである。第三は、企業社会に対抗しそれを克服しうる団結権論が、求められていることである。

それ故に、第一には、「団結権=目的」(その反面が「団結=手段」)という捉え方に転換しなければならない。それは、第一には、団結権を生存権(広く組合の目的)を実現する手段とする従来の捉え方からの脱却である。団結権が手段である限り、生存権が別の方策により実現されれば、団結権の制限・禁止の正当化の余地が生ずるし、現に代償措置論が、制限・禁止を正当づける根拠とされて来たのである。第二には、団結を目的とし結果的に団結を至上の価値とするような、従来の捉え方の放棄である。即ち逆に、団結は、あくまで労働者の目標・目的実現の手段であって、決してそれ自体が目的ではないことである。この両方の捉え方が成立するためには、団結権は、労働者個人の権利でなければならないのである。

第二には、団結権論は、団結の質を問うことに開かれていなければならない。それは、「団結=手段」論によって可能となるのである。何故なら、団結が手段である限り、如何なる手段としてどう活用されるのか、現実に如何なる働きをしているのかが、常に問題化しうるからである。以上の事柄を一言で言えば、「団結権の行使・不行使」が、労働者個人という権利主体に委ねられるということである。

それでは、団結権が労働者個人の権利であるということの意義は、どこに見いだされるのであろうか。
第一には、「団結しない自由」の積極的承認(この帰結としてのユニオンショップ違法論は、ここでは展開しない)である。それは、一つには、従来の「団結を通じた自由の回復・実質的自由の確立」という立場を、放棄するということである。それはまた、労働者を従属的労働者とのみ見る捉え方から、「主体的労働者」性を強調する捉え方への変化によるし、それ以前に、団結による自由の抑圧という事態の広範かつ深刻化にもよる。もう一つは、強制としての組織強制の法的否認であり、組織拡大・組織維持の機能は、団結の自前の努力に委ねられることを意味する。さらには、団結を結成しそれに加入するか否かは、労働者の自由な選択に基づく決断であり、「団結しない自由」とは、既存の団結の現状・ありように対する労働者による否定的・拒否的選別でもある。

第二には、労働者個人の団結権の優位・尊重の徹底のための、団結体(具体的には労働組合)の団結権の否定である。そこまで行き着くのでなければ、労働者個人の団結権は、完結しない。では、現に団結体が存在する場合、その団結権は認められるのであろうか、またそれはどこから生ずるのであろうか。それは、労働者個人が自らの団結権を団結体に委ねる(授権と称する)ことによってである。どのような授権を行うかは、労働者が決めることである。多様な労働者による多様な授権を調整することは、労働組合にとって、短期的にはマイナスであり負担となるであろう。しかし、そのことによって、労働組合の組織力・闘争力の向上が、実現されるのである。

「民主法律時報」534号(2018年4月号)で、労働組合の量的拡大という観点から「企業別組合の個人加盟の組合への切り替え」という提言をしているが、これは、従来の団結権論のままでも成り立つ議論ではある。しかし、権利論の観点からすれば、その提言に最もふさわしいのは、「労働者個人の団結権」だと、私は考えている。またあえて言えば、長年にわたって日本の労働組合の弱点・欠陥として企業別組合が問題とされ、それからの脱皮が主張され取り組みもされて来たが、結局今日においても成功していないが、それは、一面では、「企業別組合からの脱皮」の権利論がなかったためと思われる。「労働者個人の団結権」論は、そのための権利論としても意義を持ちうると思われる。

SNS活用法講座⑦ 多くの市民に 意見を届けるために

弁護士 清水 亮宏

1 新しい情報流通パターン
SNSが登場する前の基本的な情報流通パターンは、メディアが取材内容を報道し、受け手が問題を深化させていくというものでした。その後、SNSの登場により、市民が手軽に情報発信をできるようになりました。
これにより、SNS発の情報が大手メディアに取り上げられ、多くの市民への情報発信につながるケースが目立つようになっています。

2 セブンイレブン病欠罰金問題を例に
2017年にあった実際の事例を元に説明しましょう。セブンイレブンでアルバイトをする娘を持つ母親が、風邪でバイトを休んだ娘が交代人員を見つけられず給料を減らされてしまった(ペナルティとして約1万円の罰金をした)ことをツイッターで投稿しました。すると、この投稿がSNS上でどんどん拡散(リツイート)されていきました。拡散の背景には、ブラックバイト問題が大きな関心を集めていたことや、給与明細の写真があり、内容が分かりやすかったことも影響していたと思います。その後、まとめサイトやネットメディアがこの問題を取り上げるようになりました。そして、まとめサイト等の記事が公開されると、これらの記事を引用する形で更に情報が拡散されていきました。ここでは、労働問題に詳しい弁護士や労働組合などが、法的な観点から考察やコメントを行い、更に情報が拡散されていったことも見逃せません。最終的には、テレビや新聞などの大手メディアが取り上げるようになりました。「セブンイレブン 風邪 罰金」などで検索すると、どのように情報が広がっていったのかをうかがい知ることができます。
このように、SNSユーザーの投稿→SNSで拡散→まとめブログやネットメディアなどが記事化→記事がSNSで拡散→有識者がブログ等で問題を考察・コメント(情報・コンテンツの価値が高まる)→大手メディアが取り上げる という情報流通の形が生まれています。

3 多くの市民に情報発信するために
注目すべきは、弁護士・労働組合・学者がSNS上でコメントをすることで、情報拡散を促すことができる(情報・コンテンツの価値を高められる)点、SNS発の情報がメディアの目に留まり、報道されることがあるという点でしょう。新聞やテレビなどの大手メディアの記者は、SNSから情報を取り入れることが多いと聞きますし、多くのフォロワーを有する専門家の情報発信はチェックされるようになっています。新聞やテレビのみから情報を受け取る層もいますので、大手メディアに取り上げてもらうための取組みも重要です。
会員の皆様にも、労働団体の一員として、SNSを通じた情報拡散に一役買っていただければ幸いです。