民主法律時報

2018年10月号

看護師・薬剤師83名が 1億円超の割増賃金支払を求めて提訴

弁護士 井上 耕史

 9月19日、りんくう総合医療センター労働組合の組合員 名(看護師83名、薬剤師2名)が、未払割増賃金1億円余、付加金6000万円余の支払を求めて、大阪地裁堺支部に提訴した。

 りんくう総合医療センターは、もと泉佐野市民病院として設立されたが、2011年4月に地方独立行政法人(非公務員型)に移管された。2018年4月1日現在、職員数は1008名である。りんくう労組は、もと泉佐野市職労の病院支部であったが、独法化の際に独立し、泉佐野市職労とともに泉佐野市労連を構成している。

 病院では、看護師・薬剤師の交代制勤務につき1か月単位の変形労働時間制が実施されてきた。ところが、就業規則では3交代となっているのに、実際には2交代で運用されていた。そのため、違法に時間外労働をさせていたものとして割増賃金の支払義務が生じており、病院当局は岸和田労基署から是正指導を受けた。

病院当局は、時間外労働による未払割増賃金額は認めたものの、交代勤務において所定労働時間(1日7時間45分)に満たない勤務日について、所定労働時間数と実際に働いた労働時間数との差に相当する賃金額は過払いであると主張し、その「過払分」を未払割増賃金から差し引いた額しか支払わなかった。病院当局の態度は、理事会にオブザーバー参加している千代松泉佐野市長の意向が影響しているものと見られる。

しかし、看護師・薬剤師について所定労働時間に満たない日が存在する勤務割を指定したのは病院当局である。当局の責任で所定労働時間就労できなかった日について賃金が消滅するものではない。仮に賃金が消滅するとしても、割増賃金と「過払分」との相殺は賃金全額払の原則により禁じられている。当局の主張は成り立たない。

 りんくう労組は、提訴に至る活動を通じて、新たに数十名の組合員を迎えた。皆が「こんなブラックな職場では、新しい職員も来ないし、患者さんのいのちも守れない。労働条件を良くしたいから組合に入った。」という思いで、組合に加入してきている。原告団結成式の締めでは、まだ不慣れな、しかし笑顔で「団結ガンバロー」をする組合員の皆さんの姿が印象的であった。

 なお、病院当局は、交代制勤務とは別に、医師や医療技術員などの宿日直勤務についても割増賃金の不払について是正指導を受けているが、いまだに割増賃金を支払っていない。対象となる組合員が数十名おり、この件についても提訴を予定している。
労働基準法を守らせ、労働者の声を聞く。そんなまともな職場づくりをめざして、たたかいが始まった。大きなご支援をお願いしたい。

(弁護団は、山﨑国満、増田尚、谷真介、加苅匠と井上)

派遣労働者のためのネット相談・ アンケート等についての記者会見 及び各政党への要請活動の報告

弁護士 冨田 真平

 2017年9月より実施している派遣労働者のためのネット相談及びアンケートにこの間多数の派遣労働者の声が寄せられていること及び2015年の派遣法改正から3年が経過し見直しの時期を迎えることを受け、非正規労働者の権利実現全国会議(非正規会議)のメンバー(民法協会員では村田弁護士と冨田)及び申込みみなし規定(派遣法40条の6)の裁判を闘っている派遣労働者1名で、2018年8月31日、厚生労働記者クラブで記者会見を行い、また派遣法見直しについて、各政党への要請活動を行った。

上記ネット相談については、本年の権利討論集会等でも報告したが(民主法律305号(2018年権利討論集会特集号) 32頁以下をご参照いただきたい)、本年の8月末までに250件以上のアンケート回答及び120件を超える相談が寄せられた。特に本年7月以降は3年の期間制限によって更新を拒否されたという派遣労働者の相談が増加した。また、アンケートの自由記入欄には、「だれのための派遣法改正だったのか?」「派遣で3年働いたら自動的に派遣先に直接雇用してくれる制度にしてほしい」「本当にモノ扱いというのが実感です。」「(16年間今の職場で働いていたが派遣切りにあい)正直この16年間が実に悔しく感じる」など派遣労働者の生の声が寄せられた。

記者会見では、上記のようなアンケート結果や相談内容、派遣労働者の生の声を紹介し、2015年の派遣法改正によって直用化がほとんどすすまず、ほとんどの派遣労働者が3年の期間制限で切られている一方で、企業側は人を変えて派遣を受け入れ続けている現状、直用の際の派遣会社への手数料なども直用を妨げる要因になっていることなども訴え、事業所単位の期間制限の延長を認めず、人単位の期間制限を撤廃し業務内容にかかわらず同一部署における派遣受け入れ期間の制限を3年とするなどの改正が必要であることを訴えた。

また、2015年10月に施行された直接雇用申込みみなし制度も施行から3年経過し同様に見直しの時期を迎えていることを踏まえ、兵庫、大阪、名古屋各地裁でのみなし規定裁判の状況を報告するとともに、主観的要件が労働局の指導に当たって障害となっている現状なども報告し、みなし規定についても主観的要件をなくすなど改正の必要性があることを訴えた。

記者からはアンケート結果や相談内容、派遣法改正の内容などについて質問が多数あり、翌日朝日新聞や赤旗に掲載されるなどマスコミでも取り上げられた。
記者会見の前後には、自民党、公明党、共産党、立憲民主党、国民民主党に上記のような改正の必要性を訴えた要請書を手渡した。
当日の様子は非正規会議のHPにもアップしているため、是非こちらもご参照いただきたい(http://hiseiki.jp/whatsnew/180901_pressconference.php)。

今後2015年改正から3年を迎え、多数の相談が寄せられることが予想される。派遣研究会でも今後の取り組みを検討しているが、上記ネット相談について相談体制をさらに充実させていく必要がある。(現在も多数の弁護士会員・学者会員の方にネット相談のMLに登録いただきあるいは相談担当者になっていただいているが)、弁護士会員の皆様におかれては、是非ネット相談担当者にご登録いただきたい。

派遣研 読売テレビ訪問 報告 ~非正規労働者の現状・テレビの舞台裏を学ぼう~

弁護士 大久保 貴則

1 はじめに
派遣法改悪から3年が経過しようとし、個人単位・事業所単位の期間制限が直前に迫る中、2018年9月25日、派遣研の企画で読売テレビを訪問してきました。派遣研から4名の弁護士、新入会員の弁護士2名、そして 期修習生の計7名で参加しました。

2 訪問内容
まずは、労働組合の書記室にて、村田浩治弁護士から「『派遣』労働の法律問題と労働組合の役割」と題して、派遣労働者に関する法規制等について解説していただきました。講義では、そもそも労働者の権利とは何なのかという基本的なところから、派遣法改正の歴史やそれらによって現在どのような問題があるのか、それに対して労働組合としてどのように対応すべきかということまで幅広く解説していただきました。
特に、2015年改正法の施行から3年目にあたる時期であったため、個人単位・事業所単位の期間制限などについて詳しく解説していただきました。
参加されていた社員の方は、派遣社員ではなく業務委託によって勤務する方々でしたが、村田弁護士の講義後には、自身の置かれている立場は法的にどのように解されるのか等の質問がなされ、予定時間をオーバーするほどの盛況ぶりでした。

次に、参加メンバーが2組に分かれ、読売テレビ内の見学ツアーと労働者の方からの個別相談会を行いました。
見学ツアーでは、マスター室や実際の番組のスタジオなど普段テレビで見ている番組の裏側をふんだんに見学させていただきました。ツアー案内をしてくださった方がサービス精神旺盛だったためか、前回読売テレビを訪問したときよりもたくさんの場所を見学できたそうで、2度目の参加であった弁護士も大満足の様子でした。

個別相談会では、計11名(うち組合員は1名)の労働者の方からの相談を受けました。読売テレビでは分業が進んでおり、読売テレビ社員ではなく、関連会社や他の会社に業務委託をしていることが多く、今回相談に来られた方々も業務委託の方ばかりでした。相談内容としては、有期契約社員と無期契約社員との間の待遇の差という均等待遇問題だけでなく、先の自然災害(大阪北部地震や西日本豪雨)の際の会社の対応への不満などタイムリーな労働相談が多くありました。
個別相談会を通して、自身の置かれている現状を打破するため労働組合への参加を検討し始めた方もいましたので、今後民法協への相談もあるかもしれません。

3 おわりに
私は、派遣法の問題については、受験時代に簡単に勉強した程度で実際の現場での問題を聞くのは初めてでしたが、今回の訪問を通して、派遣や業務委託の労働者の実態を少し学ぶことができたので、今後も継続して勉強し、労働問題解決の一助となれればと思います。
企画してくださった派遣研のみなさん、ありがとうございました。

「固定残業代」について議論しました  ~ブラック企業対策! 判例ゼミ

弁護士 清水 亮宏

1 2018年9月の判例ゼミ
2018年9月27日(木)18時30分から、民法協事務所でブラック企業対策! 判例ゼミを開催しました。約20名が参加し、大いに盛り上がりました(司法試験合格者の方にも3名ご参加いただきました。)。
今回のテーマは「固定残業代」です。固定残業代はブラック企業で悪用されるケースが多く、残業代不払いや長時間労働の温床になっています。昨年から今年にかけて、注目判例が出ていることから、テーマとして取り上げました。

2 検討した判例・裁判例
まず、康心会事件(最判平成29年7月7日 労判1168号49頁)(差戻審 平成30年2月22日 労判1181号11頁)について、安原弁護士から報告いただきました。高報酬の勤務医について、通常の労働時間の賃金に当たる部分と割増賃金に当たる部分とを判別することができないとして、固定残業代を無効と判断した事例です。給与が高額であること等を理由に固定残業代の有効性を肯定したモルガン・スタンレー事件(東京地判平成17年10月19日)の判断が最高裁によって実質的に否定されたこと、労基法 条の趣旨が時間外労働等の抑制にあることを最高裁が改めて確認した点に意義があること等を確認しました。

続いて、加苅弁護士から、日本ケミカル事件(最判平成30年7月19日 ジュリスト1523号4頁)について報告いただきました。ある手当が時間外労働等に対する対価として支払われたものといえるか否かについて、一定の判断基準を示した判例です。判例のあてはめをどのように解釈すべきか迷う部分もあり、実務にどのように影響するかについて様々な意見が出されました。

最後に、私からPMK事件(東京地判平成30年4月18日)の報告を行いました。会社説明会・入社説明会・事前研修において固定残業代について説明したとする会社側の主張を否定し、固定残業代の合意を否定した事例です。採用過程における労働者のメモ等が固定残業代の合意の有無を示す有力な証拠になり得ること等を確認しました。

3 さいごに
その他、固定残業代制度そのものの問題点、清算条項・清算実態が固定残業代の有効要件といえるか、割当金額・割当時間のいずれかが明示されていない場合に明確区分性が認められるかなど、様々な点について議論しました。

次回の判例ゼミは11月28日(水) 時 分~@民法協事務所です。ぜひご参加ください!(ゼミの中盤では、西田弁護士の岡山土産「源吉兆庵のお月見羊羹」をおいしくいただきました~。西田弁護士、ありがとうございました。)

SNS活用法講座 ⑥ 団体ページを開設しよう

弁護士 清水 亮宏

1 はじめに
SNS活用法講座、第6回は〝団体ページを開設しよう〟 です。
Facebookでは、個人名で登録する個人ページと、団体名で登録できるFacebookページがあります。SNSを始める際は、個人ページから始めることが多いですが、労働組合やNPOなどの団体の運営や事務に携わっている方は、ぜひ団体名でのFacebookページの開設・活用をご検討ください。

2 Facebookの団体ページを開設しよう

(1) Facebookページの特徴
Facebookページは、団体名での登録が可能です。友達申請の機能はありませんが、Facebookページに「いいね!」を押してくれた人と繋がることができ、Facebookページからの情報発信が繋がった人のタイムライン(その人のページ)に表示されるようになります。
Facebookページは、Facebookに登録していない人でも、インターネット検索等を通じて閲覧することができるため、ホームページのような役割を果たすことも可能です。また、個人ページについては、友達の数が5000人までという制限がありますが、Facebookページにはそのような制限がありませんので、気兼ねなく輪を広げることができます。

(2) 情報発信の分析が可能
Facebookページへの「いいね!」が一定数以上(現時点では30個以上)になると、「インサイト」というツールを使うことができます。これは、投稿が配信されたユーザー数、記事毎のコメント・シェア数などを分析できるツールです。どのような投稿が多く閲覧されたのか、どのような人が記事を閲覧しているのかなどのデータを分析することができますので、効果的な情報発信に繋げられます。

(3) イベントの告知・広報ができる
Facebookページでは、イベント作成機能があります。イベントの名前・場所・時間等を登録すれば、簡単にイベントの告知ができます。イベントの告知を多くの人にシェアしてもらうことができれば、宣伝効果も期待できます。

(4) 複数人で運営しよう
Facebookページは複数人で運営することができます。複数人で運営することで、1人の作業負担を軽減することができますし、(運営者間で)SNS活用のノウハウや経験を共有するきっかけにもなります。複数人でFacebookページを運営している団体では、「第1週は〇〇が担当」「〇〇に関する記事は〇〇が担当」など、時期や項目に応じて担当者を決めているところが多いように思います。

3 さいごに
いかがでしたでしょうか。興味を持たれた方は、ぜひ、「Facebookページの設定方法」で検索してみてください。