民主法律時報

2018年9月号

取材を受けたら懲戒処分? 帝産湖南交通「しんぶん赤旗」記事・懲戒処分事件、控訴審逆転勝訴!

弁護士 安原 邦博

1 はじめに

本年(2018年)7月2日、帝産湖南交通事件(地裁敗訴時の報告「新聞記者の取材に応じると懲戒処分か? ――帝産湖南交通事件」http://www.minpokyo.org/journal/2017/06/5297/)の高裁判決が言い渡された。
しんぶん赤旗の取材を受けたことに対する懲戒処分を違法、無効とした、原告の逆転勝訴である。

2 事件概要

滋賀県の路線バス会社帝産湖南交通(株)のバス運転手であり、帝産湖南交通労働組合の委員長であった原告、八木橋喜代友氏(以下「原告」という)が、2014年6月、バス運転手の長時間労働の実態及びパート労働者の労働条件改善の取組みについて「しんぶん赤旗」の取材を受け、それが同年8月22日に同紙上で記事となったところ、会社は、記事に誤りがあり信用を毀損するなどとして、2015年2月に原告に対し出勤停止10日の処分を断行した。

3 しんぶん赤旗記事(のうち会社が懲戒事由とした部分)

・記事①
「帝産湖南交通労働組合は、パート運転者の不満をとりあげて会社と交渉しました。しかし、会社は、非組合員の問題だといって組合との交渉に応じませんでした。」
・記事②
「正社員の運転者が『君しか走るものがおらんのや』と会社に言われ、1日に早い時間帯と遅い時間帯など2人分の勤務をかけもちするよう迫られました。断り切れずに、3日間連続の長時間労働をした翌日に、心筋梗塞で入院しました。」

4 地裁(大津地方裁判所・山本善彦裁判長)

原告は、2015年4月1日に、懲戒処分の違法、無効を明らかにするため提訴をした。
(1) 地裁判決
2017年4月13日に言い渡された地裁判決は、記事①は真実としたものの、記事②については、恒常的な長時間労働のもと心筋梗塞となったバス運転手につき、心筋梗塞の直前に「3日間連続」の長時間労働にあったとした点をとらえ、同記事が虚偽であるとして、会社の信用を毀損し懲戒処分は相当である、などとの不当判決を言い渡した。

(2) 地裁判決の不当性
しかしながら、同記事の核心部分は、心筋梗塞となった者をはじめとするバス運転手が恒常的な長時間労働にあったという点にあるのであり、かように枝葉の部分で真実性が立証できないことで責任を問われるのであれば、今後、労働者、労働組合も、報道機関も、職場の不当・違法な労働実態を世に訴えることができなくなる。
さらに地裁判決は、不当にも、「従業員が会社の内部情報を外部の報道機関に提供する行為は、~一般に、平時においては企業秩序に違反するものとして厳に慎まれるべき」などとして、職場の不当・違法な実態を報道機関に情報提供すること自体が一般的に許されないかのような判示をしており、労働運動を抑圧するものという他なかった。

(3) 負けられない闘い
かような不当判決を捨ておいては、今後の労働運動に多大なる悪影響が生じかねない。原告、労働組合及び弁護団は、何がなんでも控訴審で逆転勝利しなければならない、という窮地に追い込まれたのである。

5 高裁(大阪高等裁判所第5民事部・藤下健裁判長)

(1) 高裁での審理
高裁では、実質的審理の口頭弁論期日を5回開かせ、更なる尋問も実施させ、毎回傍聴席を支援者で埋めて(私鉄「連帯する会」に大奮闘いただいた)、主張立証を更に尽くした。

(2) 高裁判決
その結果、本年7月2日に言い渡された高裁判決では、記事②について「3日間連続の長時間労働という以上の過酷な労働をしていた」という正当な認定をさせることができ、記事①及び②につき、双方ともその掲載ないしそれに係る情報提供行為が公共の利害に関する事実に係り専ら公益を図る目的に出たものであり、①は真実、②についても核心部分で真実であって、原告の情報提供行為は懲戒事由に該当せず、懲戒処分が違法、無効であることが認められたのである。

6 さいごに

バス運転手の長時間労働の是正とそれによる労働者の健康・生命の保護及び乗客たちの安全確保は、喫緊の課題である。ところが、本年6月 日にはまやかしの「働き方改革」法が強行採決され、運転業務の規制は5年間先送りされるなど、長時間労働の是正は一向に進んでいない。
かかる状況のもと、労働者、労働組合が、職場の長時間労働の実態を社会に広く訴え、使用者に是正を迫ることは必要不可欠であり、これは、正当な組合活動、表現の自由として保護され、また国民の知る権利を実現するものである。この点において、このたびの逆転勝訴判決は、運転業務の長時間労働を是正するための今後の取組みに資するものである(なお、会社が上告をしたので本判決はまだ確定していない)。

弁護団は、藤木邦顕、鎌田幸夫及び安原邦博である。

民法協・第63回定期総会のご報告

事務局長・弁護士 須井 康雄

 2018年8月25日、中之島公会堂地下大会議室で、第63回定期総会を開きました。
萬井隆令会長の挨拶ののち、前半は、ジャーナリストの志葉玲さんに「戦争の現場から~私たちにできること~」という演題でご講演いただきました。志葉さんは、イラク戦争の現場をはじめ戦場で様々な取材活動を行い、反戦のための情報を発信してきました。罪もない市民が銃弾や爆弾に苦しむ写真が何枚も紹介されました。戦争の非人道さをあらためて聴く者に焼き付け、憲法9条改正の反対運動に取り組む決意を新たにさせました。また、神奈川県川崎市で開かれる日本初の軍事見本市の話もありました。見本市で笑いながら武器を手にしている人間の映像は、安倍総理が戦争のできる国づくりを進めてきたことを如実に示すものであり、強い憤りを呼び起こしました。

後半の冒頭では、岩城穣会員から2018年8月1日に亡くなられた森岡孝二関西大学教授の功績をご紹介いただき、参加者全員で黙とうをしました。過労死根絶のため、亡くなる直前までご尽力くださいました。
続いて、私から、2018年度の活動報告と、2019年度の活動方針案を報告しました。その後、①鎌田幸夫幹事長より、働き方改革推進法成立後の取組、②村田浩治弁護士より非正規労働者の均等待遇のための取組、③当事者の方よりエミレーツ航空事件のご報告、④同じく当事者と組合の方から関大事件のご報告、⑤杉島幸生弁護士より憲法改正、国民投票法に対する取組、⑥過労死を考える家族の会の寺西笑子さんから働き方改革推進法に反対してきた取組をご報告いただきました。
その後の討論では、大阪地裁第5民事部(労働専門部)の在り方に関する取組や、憲法改正に反対する取組を強化すべきとの意見が出されました。

続いて、2018年度の決算報告と2019年度の予算案の提案を行うとともに、新聞労連の伊藤明弘さんが会計監査報告を行い、質疑応答を経て、活動方針案及び決算、予算案が承認されました。
その後、①高度プロフェッショナル制度の廃止、残業時間規制の上限の引下げを求める決議、②憲法改正に反対する決議、③都構想、カジノ誘致に反対する決議が質疑応答を経て、修正のうえ採択されました。
続いて、人事案が承認され、退任事務局と新任事務局があいさつしました。退任されるのは、大阪労連の遠近照雄さん、弁護士の西川大史さん、細田直人さん、馬越俊佑さんです。新任は、次長として、大阪労連の藤原邦昭さん、弁護士の辰巳創史さんです。また、2018年1月の弁護士登録よりすでに事務局として活躍いただいている加苅匠さんです。退任する事務局には、今後とも民法協のさまざまな活動にかかわってくださることを期待しています。
最後に、豊川義明副会長より閉会の挨拶をいただき、第63回定期総会は終わりました。

今年度も、個々の労働者の尊厳をかけた多くの争議への支援はもちろん、憲法9条改正反対、裁量労働制拡大や解雇の金銭解決制度反対、非正規の2018年問題、会計年度任用職員制度への取組など多くの課題があります。今年度もよろしくお願いします。

大阪労働局との懇談会

弁護士 冨田 真平

 2018年7月6日に派遣労働問題研究会で大阪労働局との懇談会を実施しました。

労働局との懇談会は2015年派遣法改正を受けて2016年に行った前回以来2年振りでした。今回は、2015年改正法施行からまもなく3年を迎えるということで、2015年改正法の下での労働局の指導の実情、2015年10月1日に施行された直接雇用の申込みみなし制度(2012年改正法)についての労働局の指導の実情などについて、労働局から聞き取りを行うために、実施することとなりました。当日は派遣問題研究会のメンバー10名が参加しました。

懇談会では、まず最初にこちらから事前に質問した項目について労働局からの回答があり、これを踏まえたうえで、質疑応答・意見交換を行うという流れでした。
事前の質問事項としては、この間の相談の中で出てきた期間制限についての旧法と新法の適用関係の問題、みなし規定の指導について(特に脱法目的の認定について)質問を行いました。

前回の懇談会の中で、労働局から、脱法目的については判断しないという回答があったことも踏まえ、脱法目的についてどのように判断を行っているのか、具体例も挙げたうえで場合によって脱法目的について認定できる場合はあるのではないかなどの質問を行いましたが、これについては具体的な認定の判断方法に関することについては回答できないという形式的な回答しかありませんでした。
また、40条の8に基づく指導について、その数を尋ねましたが、これについては集約していないため回答できないということでした。関連して兵庫の労働局で、40条の8に基づく指導について、裁判等で係争中の事案については指導をしないという厚労省からの通達があり、指導が中止されたという件を挙げて、そのような内部文書があるのかという質問も行いましたが、これについても回答はできないとのことでした。
他にも、当日労働局が配布した資料(プレスリリースされているもの)の中に偽装請負についての指導の事例がありましたが、これらについて派遣労働者にみなし規定の適用可能性の説明を行っているのかという質問も行いましたが、これにも答えられないという回答でした。

今回の懇談会では、こちら側の事前の質問やその場での質問に対し、労働局の担当者からは「その質問には回答ができない」という対応が比較的多く、指導の実情(特に40条の8に基づく指導)についての踏み込んだ意見交換ができませんでした。

以前の懇談会ではもう少しざっくばらんな意見交換ができていたとのことですが、今回の懇談会では、労働局の担当者が余計なことを言うまいと杓子定規な回答に終始していたという印象です。今年の4月で担当者が変更になったこともあり、まだ担当者が赴任して間もない状況であったことが影響しているかもしれませんが、今後も定期的に労働局との懇談を行い、担当者との間で一定の信頼関係を作っていく必要性を感じました。

「教員の働き方を考える」つどい

弁護士 清水 亮宏

 2018年7月19日、働き方ASU-NETとの共催で、「教員の働き方を考える―長時間労働・有期雇用・ブラック経営―」と題する集会を開催しました。開催場所はエル・おおさか、参加者は66名でした。

教員の労働問題に詳しい内田良名古屋大学准教授の講演「教師のブラック残業に迫る」では、教員の長時間労働の問題や、労働時間が適切に管理されていない問題について、統計や教員の声等を紹介しながらわかりやすく報告いただきました。また、ブラック部活動や給特法の問題など、教員に特徴的な労働問題について、現状と背景をご説明いただいたほか、“子供のため”“楽しい”といった理由で教員が長時間労働に陥ってしまう構造的(心理的)な背景についても説明がありました。最後には、制度設計なき部活動や制度設計なき長時間労働をなくしていく必要があると締めくくられました。

その後、関西大学労基申告解雇事件の弁護団から、事件の経過報告等について説明があったほか、関西大学初中高教職員組合・原告本人から、支援の訴えがありました。
続いて、リレートーク「教育現場で何が起きているのか」が行われました。

私学教員ユニオンの坂倉昇平さんからは、私学教員には給特法が適用されないが、教員自身がこのことを知らず、適法であると思い込まされていること、私学教員にも長時間労働が蔓延しており、打ち合わせの時間を確保することすら難しい状況にあること等、私学教員の働き方に関する現状報告がありました。また、教員の意識を変えていくこと、既に立ち上がっている人が闘っている姿を見せていくことが重要であるとの問題提起がありました。

近畿大学教職員組合書記長の浜田太郎さんからは、みなし残業代、変形労働時間制、労働時間の適正管理の問題、業務の範囲と自発的な活動の区別のあいまいさ等、労働時間に関する様々な問題点を報告いただきました。また、情報を共有して共闘する取り組みが必要であり、今後、組合の相互の連帯が重要となるとの問題提起をいただきました。

関西大学初中高教職員組合委員長の大谷和海さんからは、教員の多忙化、事務作業の増加、研修機会の増加等、教員の長時間労働について現状報告がありました。また、クラブ活動を労働時間として認めさせるための組合の取組みについても報告をいただきました。そして、分断されないようにすることが重要、動けば風は変わってくる、連携を取りながら闘っていきたいとの問題提起をいただきました。

関西圏大学非常勤講師組合書記長の江尻彰さんからは、大学の非常勤講師が3、4の大学を掛け持ちしている現状や、 コマ程度を担当しないと生活が厳しいという現状等について報告をいただいたほか、5コマで最低生活ができることを目指した労働組合としての取り組みについても報告をいただきました。最後には、無関心を変えていくことが重要であるとの問題提起をいただきました。

今回のつどいは、教員の働き方の問題について現状を共有し、団体の枠を超えて運動を広げていく必要性を認識できる非常に良い機会であったと思います。参加者に教職員組合の関係者が多く、問題認識を共通する人々が一堂に会することができたのも今回のつどいの特徴であると思います。
運動の輪を広げ、教員の働き方を変えていくきっかけとなる集会になりました。

初夏も… ブラック企業対策! 判例ゼミに学ぶ

弁護士 西田 陽子

1 初夏のゼミ
2018年7月26日(木)も、ブラック企業対策! 判例ゼミが開催されました。今回のお菓子は、淀屋橋の有名パティスリー「ジョエル」のチョコケーキです。
今回は、合格発表待ちの法科大学院修了生も参加してくださいました。テーマは「人事権濫用とパワハラ」。今回は、何と過去最高の19名が参加し、大盛況のゼミでした。

2 ゼミの内容
①JR西日本吹田工場事件(大阪高判平成15年3月27日労判858号154頁)
担当者が来られなくなり、ピンチヒッターで筆者が担当しました。
使用者が、国労組合員らに対し、真夏の炎天下で、日よけのない約1m四方の白線枠内に立って、終日、工場構内踏切横断者の指差し確認状況を監視等」する作業に従事するよう命令した事例です。
人事権濫用によるパワハラの事例ではないのですが、国労の思い出話など飛び出し、盛り上がりました。
②オリンパス事件(東京高判平成23年8月31日労判1035号42頁)
担当は加苅弁護士。営業チームリーダーであった労働者に対し、正当な内部通報を行ったことの制裁として、3回にわたり配転を行い、達成が著しく困難な業務目標を設定して未達成を理由に低評価とする等した事例です。
例によってさすがのクオリティで準備してくれたのですが、そのころの筆者は、チョコケーキをカットしており、発表を聞けませんでした。修習生や法科大学院修了生の方々から積極的な質問があったようです。
③プロクター・&・ギャンブル・ファー・イースト・インク事件(神戸地判平成16年8月31日労判880号52頁)
担当は清水弁護士。退職勧奨を拒否した労働者に対し、自主的に退職するよう追い込む目的で、仕事を与えずもっぱら社内公募による異動先探しのみを行わせて降格させるスペシャル・アサインメントを通告し、新職務に配転した上で降格した事例です。
事実関係が丁寧に調べられており、活発に議論が行われました。
④追い出し部屋事件(平成25年4月25日)
谷弁護士の担当事件。貴重な体験談を聞きました。
退職勧奨を拒否した労働者を「追い出し部屋」(辞めさせたい社員を配置転換で異動させて精神的に追い詰め、自主的退職させるための部署)に配転した事例です。

3 先輩弁護士から後輩へのメッセージ
各発表は、概ね東亜ペイント事件で示された規範に基づいてなされましたが、最後に、ベテランの豊川弁護士やゼミの創始者である中西弁護士から、「判例を乗りえていこう」という熱い激励がありました。

4 今後の日程等について
定例日が奇数月第4木曜に変更となり、次回は9月27日(木)の開催を予定しています。ご参加お待ちしております。

裁判・府労委委員会例会報告――フジ住宅ヘイトハラスメント裁判を題材として

弁護士 片山 直弥

1 はじめに
2018年7月31日、裁判・府労委委員会の例会がエル・おおさかで行われました。今回は「フジ住宅ヘイトハラスメント裁判」をテーマに、個別事件の検討を行いました。なお、出席者は20名でした。
最初に、弁護団の村田浩治弁護士及び冨田真平弁護士から事件の概要・特徴、今後の課題などの詳細なご報告を頂きました。
その後、その報告を踏まえて、出席者との間で活発な議論が交わされました。

2 フジ住宅ヘイトハラスメント裁判の特徴
事案については、民主法律時報2015年10月号(2015.10.15)で弁護団の金星姫弁護士が執筆しました「『ヘイトハラスメント裁判』にご支援よろしくお願いします!」をご覧いただければよいかと思うのですが、驚いたのは、①フジ住宅の会長が業務とは関係のない人種差別的内容を含みヘイトスピーチとして違法である可能性が極めて高い新聞記事のコピーやフェイスブック記事のコピーなどを全社員に配布して業務日誌などに感想を書くよう促し、②さらに会長がその感想文に下線などを引いたもの(これにも人種差別的内容が含まれています)を全社員に配布しているという点です。

労働者の中には人種差別的言動にさらされたくないという方もいるでしょう。上記①は、そのような労働者に対し、読みたくもない人種差別的内容が書かれた資料を強いて読ませるものです。また、「同調圧力」や「認知的不協和」という言葉があるように、通常、人は、個人の認知と他人の認知との間に不一致・不調和が生じた場合、不協和を解消あるいは低減しようとするものです。会長や同僚が「すばらしい」と賛同しているものに対して「おかしい」と反対の意見を述べることは決して簡単なことではありません。そのため、上記②は、賛同したくもない人種差別的内容への賛同を強いるものといえます。このように、フジ住宅ヘイトハラスメント裁判では、職場における労働者の人格権の侵害が問題になっているのです。

例会でお聞きしてさらに驚いたのは、「被告である使用者側がネット等で積極的な動きを見せている」という点です。具体的にいいますと、フジ住宅は、その公式ホームページで「提訴に関する弊社の考えと原告支援団体の主張に対する反論」として、各期日の概要、被告提出書面及びその骨子などを書いたブログへのリンクを掲載しているのです。私の知る限り労働者との間で裁判となった使用者を支援する側も積極的に動員をかけるという事案は聞いたことがありません。通常、使用者は、その企業イメージが低下することを懸念して裁判沙汰となっていること及びその内容を隠すものだからです。

3 さいごに
昨今ではインターネットが発達して、労働者側もSNSを利用するなどの変化がありました。今後は、厚顔にも本件のように使用者側がSNSを活発に利用するようになるのかもしれません。職場における労働者の人格権を守るためにというのはもちろんですが、インターネットを利用した裁判外論争の先駆けとして運動面でもがんばって頂きたいと思います。なお、その運動の一環として労働者側は、メーリングリストの開設(info@taminzoku.comに「件名」に「フジ住宅ML参加希望」と書き「本文」に氏名、連絡先及びひとこと自己紹介を書いたメールを送信)、Twitterアカウントの開設(@HateHarassment)及びFacebookページの開設(https://www.facebook.com/HateHarassment)を行っていますので、一緒に支援の輪を広げて参りましょう。

労働相談懇談会に参加して

豊中労連 斎藤 須美雄

 私は、3ヶ月ごとの労働相談懇談会に参加するのを楽しみにしています。
最初に、西川大史弁護士から、最近の「労働情勢報告」をしてもらいます。3ヶ月で 件ほどの判例などを報告してもらいます。
今回(2018年8月3日)は、正規と非正規労働者の均等待遇問題での判例が続きました。最高裁の判決も紹介されましたが、一部の手当て格差があるのは無効との判決ですが、私は、なぜすべて手当てが同じに認められないのか、不満です。そのほか様々な判例で、労働相談にのるときの参考になります。

そのあと、一つのテーマでの講演があります。
今回は有村とく子弁護士の「職場のセクハラ・マタハラに関する労働相談について」の講演でした。自民党の杉田水脈衆議院議員の「LGBTは生産性がない」の雑誌寄稿が話題になっており、時宜を得たものでした。
マタニティハラスメントでは、男性に対するパタニティハラスメントがよくあることも、私たちは気を付けないといけないと思いました。
セクハラでは、相談を受けた時の対応で、①相談に来られた方の気持ちを「想像力を働かせて」聞くこと、発言もセクハラにならないか発言の前によく考える事など、②共感の姿勢をとりつつ、先入観を持たずに冷静、慎重に、③一人より二人で聞くこと、④記録は相談者の了解を得てから、⑤解決方法を聞くこと、⑥二次被害を与えない、などわかりやすくかつ丁寧な講演で、いつも手元に置いておこうと思いました。資料もたくさんあり参考になりました。
相談を受けていて、セクハラになるかならないか考えるときがあります。いつも今回の講演を参考にしたいと思います。

労働法研究会報告 労働契約法18条(無期転換ルール) ――「不更新条項」に対しどのように たたかうか

弁護士 片山 直弥

1 はじめに
2018年8月4日、約1年ぶりに労働法研究会が開催されました。労働法研究会は、研究者、労働組合及び労働弁護士を会員として組織している民法協ならではの取り組みですが、最近では1年に1回程度の開催にとどまっています。今回は、ホットな論点のひとつである労働契約法18条(無期転換ルール)をテーマとし、「不更新条項」に対しどのようにたたかうかについて議論を交わしました。なお、参加者は21名でした。

2 研究会の流れ

(1) 弁護団からの報告

当日の研究会は、①雇止めが問題となった「ダイキン工業雇止め事件」(井上耕史弁護士)、「近畿コカ・コーラボトリング事件」(鎌田幸夫弁護士)、ある大学で雇止めが撤回された事件(谷真介弁護士)などについて各弁護団から報告を頂きました。
各報告では、各事案の概要のみならず、その後の学説や判例(特に、労働者の自由な意思に基づいてなされたものか、について厳格に判断をした山梨信用組合最高裁判決)を踏まえての検討がなされるなど、大変勉強になりました。

(2) 三井正信教授からの基調報告
その後、三井正信教授(広島大学)から「労働契約法18条について」と題して基調報告を頂きました。三井教授は、「労働契約法19条の基本構造と不更新条項」(民商法雑誌153巻6号849頁、154巻1号133頁)という論説を掲載しておられますように、不更新条項の有効性について研究しておられます。同論説にもありますように、三井教授は、「自動更新の基本合意=『当然更新されるべき労働契約を締結する意思』が認められれば、かかる基本合意が存する以上、……不更新条項は……民法 条1項により、あるいは……その基本趣旨に照らして、無効となる」との考えをもっておられます。つまり、自動更新を約する基本合意を「隠れた本当の契約」と位置づけ、不更新条項を「見せかけの契約」と捉えるのです。研究会では、不更新条項の効力についての学説の対立及び裁判例を整理いただいた上で、三井教授の私見について分かりやすく説明いただきました。

(3) 参加者との議論
三井教授の私見は、特に不更新条項なしに有期労働契約が反復更新されてきたケースで不更新条項の効力を否定する理論として傾聴すべき意見です。研究会で活発に議論が交わされたのも、三井教授の私見に関するものでした。

3 さいごに
不更新条項の効力をどのように争うか、については、運動面でも理論面でも確立されていない部分がまだまだあります。今後も労働法研究会では不更新条項の事案を集約・分析することでその両面をより高めていく必要があると考えています。それ以外にも研究会で取り上げてはどうか、というテーマがありましたら、ぜひ民法協までお寄せください。