民主法律時報

2018年5月号

ハラスメントによる自死事案で業務起因性を認めた逆転判決

弁護士 波多野 進

1 はじめに

ハラスメントによる自死事案の労災認定を求める行政裁判で、業務起因性を否定し、被災者側を敗訴させた大阪地裁第5民事部の判決(平成20年1月30日付)を大阪高裁第1民事部が覆し(平成29年9月29日付)、確定しました。以下、報告します。

2 事案の概要

型(寸止め)の空手を少年時代からやり続けてきた被災者は、直接打撃を行う極真空手の使い手である上司から「お前の空手はなんちゃって空手やな」などと言われたり、「道場に来い」と呼び出されたりしていた。
業務上のある出来事に端を発して「俺と仕事の話は一切せんでええ」「道場へ来い。道場やったら殴りやすいから」「殺すぞ」などハラスメントが短期間に連続して続き、被災者は家族に「殺される」と言い残して自死した。
本件は国の労災の不支給決定の取り消しを求めた裁判である。

3 大阪地裁判決の誤り

大阪地裁判決は、労災認定基準を「行政処分の迅速かつ画一的な処理を目的として定められたものであるから、裁判所を法的に拘束するものではない」とし、労災にあたるかどうかは「認定基準を参考にしつつ、個別具体的な事情を総合的に考慮して行うのが相当」とした。

しかし、大阪地裁は、個別具体的な事実を総合的に判断せず、行政基準ですらない出来事表の例示の具体例に当てはまるかどうかについてあたかも行政のごとく判断しており、極めて問題の多い判決であった。

しかも、大阪地裁は、総合判断するのが相当としながら、問題になった11件のハラスメントを個別に分断して検討し、それぞれの検討内容も誤ったうえ、11件のハラスメントが一連の行為として関連して負荷を高めるという視点もなければ、集中して行われた点なども無視して、たいしたハラスメントではないとした。それぞれの負荷が過大ではないことはありうるところ、このよう判断手法は、ハラスメントを否定・矮小化するためのものといえよう。

大阪地裁の象徴的な誤判部分を挙げる。被災者は、幼少時から就職後に至るまで真摯に空手に取り組んできていた。青春をかけて打ち込んできたものを意味のないことと断じることは、お前は意味のないものに人生・エネルギーを割いてきたと断じることと同じであり、人格を踏みにじる許しがたい発言である。被災者は、空手の先輩や同輩に上司から被災者の空手のことを馬鹿にされることに対し、どのような対応をすればいいのかということを相談するほどであった。同僚の一人は、被災者が「止めてくださいよと言って笑っていましたが、実は落ち込んでいたと思います。」と述べていた。

大阪地裁は、同僚の「実は落ち込んでいたと思います」との供述について、同僚の印象を述べているにすぎず、被災者が落ち込んでいたと認めるに足りる的確な証拠はないとして、そのハラスメントを無視した。ハラスメントの研究結果等からすると、被害者が被害の申告を行うことが困難であるうえ、仮に申告ができたとしてもその申告内容より実際の被害はもっと悲惨な場合が多く。大阪地裁の判断はハラスメントの本質を無視したといわざるをえない。

4 大阪高裁判決の概要

大阪高裁判決は、大阪地裁が個別分断的に捉えていたハラスメントを真の意味で関連性のあるハラスメントであり、相互に影響し合っているというハラスメントの本質を捉えた適正な判断を行った。

大阪高裁は、被災者が打ち込んできた空手を否定し馬鹿にする上司の発言をハラスメントと評価し、相当な心理的負荷がかかったことを認め、この発言が後の上司の言動の背景として心理的負荷を強める作用をしていることを認定し、大阪地裁が軽く見ていた「道場に来い」という発言と、上司の空手に関する発言が相俟って、被災者に業務による相当程度の心理的負荷がかかっていたとした。

個々の上司の発言についても、大阪高裁は適切な認定をした。まず、「俺と仕事の話は一切せんでええ」「道場へ来い。道場やったら殴りやすいから。」との上司の発言は、「自らの怒りの感情を爆発させ、被災者を怒鳴りつけ、その内容も仕事の話を一切しないように言うなど理不尽なもの」であり、「道場へ来い」との発言は、「道場やったら殴りやすい」と加害の意図を有することを示していると認定した。被災者が怒鳴りつけられている間、黙っていたことについても、「上司で怖い存在であったことから、被災者の心理状態は、反論、反発できるような状態でなかったことによると考えるのが合理的である」と適正に判断した。

上司が「何もするな」と怒鳴りつけたことについても、大阪高裁は、極めて理不尽な言動で「労働者としての職業上の人格を踏みにじり、否定する行為といっても過言ではなく、これが嫌がらせ、いじめに当たることは明らか」とした。「何もするな言うたやろ。殺すぞ」との発言についても、「『殺すぞ。』と怒鳴りつける行為は、文字通り殺人行為が実行されるとの恐怖を相手方に抱かせるものとまでいえないが、被災者と(上司)の従前の人間関係、本件夜勤におけるそれまでの出来事を含む具体的な状況に照らせば、殴る蹴るなどの危害が加えられるかもしれないという畏怖の念ないし不安感を被災者に抱かせるに足りる行為」とし、単発的なものではなく、連続的になされたものであることを有機的に連動して評価した。

さらに、上司が「小学生の文書みたいやな。」と大声で言ったことについて、大阪高裁は、一連のハラスメントと連続して行われていること、「周りに他の隊員らがいる前で、被災者に対し文書の提出を受けるや、『小学生の文書みたいやな。』と大声で言ったものであり、そのような人格の否定につながるような侮蔑的な言辞で侮辱された被災者が強い屈辱感等を抱き、惨めな気持ちであったことは容易に推察される」と判断した。

5 大阪高裁判決の意義

ハラスメントは複合的に連鎖していて、大阪地裁のように単発的に評価することは間違いであり、連続的総合的に従前のハラスメントの影響力の有無を検討する必要があること、大阪地裁のように表面的な事象(被害者が笑っている、反論しない、黙っていることなど)ではなく、大阪高裁判決のように被害者の置かれた客観的な状況を踏まえて、被害者が笑っていたことなどの評価を検討しなければならないことが、ハラスメントが争点になっている審理で不可欠であることがはっきり示された。

メーデーの起源の地シカゴで 労働運動について学んできました!――レイバーノーツ大会@シカゴ

北大阪総合法律事務所 事務局 三澤 裕香

 2018年4月6~8日にシカゴで行われたレイバーノーツの大会に参加してきました。日本からの参加者は全部で27人。日本各地(東京・大阪・京都・愛知・三重・高知・鳥取)から弁護士や労働者が参加しました。大阪からの参加者が安原邦博弁護士、伊藤大一さん(大経大)、私の3人だけで、少数だったのが残念です。もっと大阪からも多くの労働者や弁護士に参加してほしかったです。

大会に先立ち、現地の労働組合などたくさんの労働者と交流したり、労働の歴史を学ぶツアーに参加しました。
個人的にメキシコ移民の労働者の話が印象的で、トランプ政権下で移民への弾圧が強くなっており逮捕や投獄がなされていること、移民労働者は非正規労働者であること(正規になれないようです)、労働者としての権利やそもそもの人権が侵害されている中で労働者や移民としての権利を学び、コミュニティで協力し、力をあわせ支えあっている姿に心からエールを送りたいと思いました。AVA(シカゴのストリートベンダー(屋台みたいに通りで食べ物を販売している人たち)の協同組合)のみなさんがもてなしてくれたメキシコ料理がおいしかったです。

 労働の歴史を学ぶツアーに参加して初めて知ったのですが、シカゴはメーデーの起源の地だったんですね。1886年、シカゴで8時間労働を要求する労働者の大集会が開催され、その後の5月4日にヘイマーケット広場で労働者と警官隊の衝突があり、その際に爆発が起こり、労働者4人が証拠もないままにその爆発事件の首謀者とされて死刑になりました(ヘイマーケット事件)。労働者側はそのことを忘れないように、直前に大集会が行われた5月1日を労働者の日として毎年集会を開くことにしたのだとのこと。それを聞いて私の中でメーデーの意味が変わりました。これからは先人たちに感謝し、労働者として誇りを持って過ごそうと思います。写真はヘイマーケット事件で犠牲になった人たちを慰霊する像の前で撮ったものです。

大会には世界各地から3000人近い人々が参加したようです。年齢も性別も人種も職業も本当に様々な人たちが参加していました。会場はオヘア空港近くにあるハイアット・リージェンシーホテル。私は参加するのも初めてだし、レイバーノーツ及びその大会の存在を知ったのも最近ですが、レイバーノーツの歴史は古く、設立は1979年とのこと。そもそもレイバーノーツとは、「労働運動に運動を取り戻す」を合言葉に設立された「労働教育・研究プロジェクト」というNPO組織であり、月刊誌を発行し、ウェブサイトを運営し、労働者向けの教育プログラムを実施したりしています。

大会は6日の午後から始まりましたが、それに先立ち、日本の参加者向けにファシリテーターワークショップを開催してもらいました。このワークショップのおかげで、日本で日常的に行われているワークショップとは明らかに違うワークショップの進行にも、そんなに戸惑うことがありませんでした。日本だったら、進行役・発言者が決まっていて、参加者は話を聞いて、質疑応答のときに何人かが発言をするけれど、一言も話さずに帰る人が多いですが、この大会では、ワークショップの途中でペアもしくはグループでテーマに沿ってディスカッションをする時間が設けられるし、ディスカッションがない場合でも次々に会場から発言があって、退屈する暇がありませんでした。

大会が開催された3日の間に、ワークショップ(1コマ90~105分)が全部で9回(1日間3回、2日目4回、3日目2回)も行われ、多い時間帯には同時に42種類ものワークショップが開催されました。1日にこんなに勉強したのは大学以来じゃないかというぐらいのハードスケジュールで、特に1日目は頭がパンパンになってキャパオーバー状態でした。

私が参加したワークショップ(訳し方が間違ってたらすみません)は、①成功するオーガナイザーの秘訣(無関心に打ち勝つ)、②レイバーノーツとは?、③アジアの連帯と軍事力、④職場での人種差別・性差別の克服、⑤日本の労働運動、⑥国際連帯の構築、⑦日本の映画上映(メトロレディースブルース、アリ地獄天国)、⑧アジア労働交流会、⑨地域と労働者の協力による組織づくり。
日本のワークショップでは、メトロコマース裁判の後呂さん、日本郵便20条裁判の筒井さん・渡邊さんが報告をされました。メトロコマース裁判はシカゴに行くまで知らなかったので(すみません)、そういう意味でも参加してよかったです。

アジア地域の交流会では、アジア版レイバーノーツ大会を開催する話で盛り上がり、早ければ来年春に東京で開催予定です。海外にはなかなか行けないという方はぜひこちらにご参加ください。

大会に参加して得られたものは多かったです。みんな普段は色んな悩みや苦労を抱えているかもしれませんが、自分たちの活動や経験を発言する彼らは誰もが輝いていて、労働者って素敵だなと思ったし、同じ労働者として誇らしかったです。

「組織化」のためのヒントがほしいというのがこの大会に参加した動機のひとつでした。たくさんのワークショップに参加するなかで、現実を諦めてまわりと対話していなかった自分に気づきました。私の悩みに対して得られたキーワードは「対話」「共感」「共有」「連帯」「協力」。これからは組合のメンバーはもちろん、未組織の人とも諦めずに会話してみようと思います。会話の中から共通点や共有できるものを見つけ出すことができるかも知れないし、自分自身の認識も高めることができるからです。あと、当たり前ですが組合は一人で動かせるものではありません。1%の中心メンバーだけでいくら頑張ってもダメで、まわりに活動の担い手になりうる信頼できる10%を作り出すことが大事です。ついつい目に見える結果を求めがちですが、変化は1日で訪れるものではありません。一歩一歩少しずつでいいから前に進めばいい。当たり前のことばかりですが、大事なことを再認識することができました。

大会に参加して、改めて労働運動って素敵だなと思いました。簡単ではありませんが、自分たちの要求実現をするのはもちろん、地域と協力して社会を変えたり、政府を動かすこともできるし、国際連帯を通じて世界を変える可能性もあるのだと思ったら、その「可能性」にワクワクしました。課題は山積みだし、人材不足とか弱体化とか悩みは尽きないし、目の前のことで手一杯なのが現状ですが、労働者・労働組合・労働運動に希望をもらうことができた大会でした。

レイバーノーツのレシピ

弁護士 安原 邦博

 2018年4月6~8日にシカゴで開催されたレイバーノーツの大会について、私からは、運動の方法論(レシピ)として人の話を聞く重要性が強調されていたことをご紹介したい。

レイバーノーツの大会では、何度も次の言葉を聞いた:「Union democracy」(組合民主主義)、「Rank and File Unionism」(一部(執行部)ではなく組合員全体による民主的な組合運動)。そして、複数のワークショップで、「Listening: For a Change」(変革のため、人を動かすための、「聞く」)という方法論が強調されていた。内容は次のとおりである。

・People like being listened to(人は、話を聞いてもらうことを好む(他の人の話を聞かされることよりも))
・ People like sharing their opinions and thinking(人は、自分の意見や考えを聞いてもらうことを好む(他の人の意見や考えを聞かされることよりも))
・Meetings go better when there is a chance for everyone to speak(ミーティングは、参加者全員が発言できるものの方がうまくいく)
・ If you want people to really consider a new idea, give them the chance to! People need opportunities to think out loud using their own words and examples(人に何か新しいことについて検討して欲しいのなら、そうしてもらえるようにする!人は、自分自身の言葉や事例を使って考えるものである(物事に対する理解の度合いは、聞くだけ ・When everyone gets to talk and be listened to, the union is stronger and more democratic(全員が発言をできるとき(全員の意見や考えを聞くとき)、組合はより強くなり、民主的になる)
・Easier to listen people into change than talking them into it(変革のため、人を動かすためには、自分の話を押しつけるよりも、相手の話を聞く方が容易である)

このレイバーノーツが発行する「Secrets of a Successful Organizer」の訳本であり、日本労働弁護団が発行している「職場を変える秘密のレシピ47」では、その巻末あたり(260~263頁)で、「基本に立ち返ろう」と題し、組織化において念頭におくべき点として次のことを挙げている:一対一で話す、自信を醸成する、権力に対して立ち上がる、有能なリーダーを獲得する、共通する問題を見つけ要求を共有する、民主的に組織する、具体的な目標を立てる、人に行動させる、団結する、近道はない、だんだんに運動の熱を高めていく、行動しながら評価する、組織がすべて、目標を見失わない。

レイバーノーツは、社会変革をする、人を動かすという運動において人の話を聞くのが重要であると、ごく当たり前のことを改めて強調する(たしかに、人の話を聞かなければ、共通する問題(要求)の共有も、団結も、何もできない)。これは、私たち活動家が、ともすればこの基本中の基本を忘れているか、またはうまく実践できていない、ということであろう。

来年(2019年)春に、レイバーノーツ・アジア大会を日本で開催することが計画中である。また、2020年は次回のレイバーノーツ大会(米国)である。運動の方法論(レシピ)を各国の活動家と学びあう絶好の機会となるので、今度は、是非、民法協で参加団を作ることができればと思う。

【書籍紹介】
『職場を変える秘密のレシピ 』 http://roudou-bengodan.org/secrets/
★民法協で少しお安くお求めいただけます。

過労死110番30周年 シンポジウム

弁護士 和田 香

 大阪過労死問題連絡会では、過労死110番を始めて30周年であることを記念して、2018年4月12日、記念シンポジウムを開催しました。
冒頭に、同会の代表である森岡孝二関西大学名誉教授から現状の日本の労働法制の問題について、政府が進める「働き方改革」が韓国やその他の諸外国と比較して労働者を働かせ放題にするものであり許されないこと、これでは過労死110番の必要性がなくなることはないという挨拶がありました。

そして、30年前の1回目の110番から遺族の相談に乗ってきた松丸正弁護士から、連絡会が結成されて37年間の歴史について報告がなされました。
私は、連絡会に所属していますが、歴史をきちんと聞いたのは初めてでした。

まず、田尻俊一郎医師が連絡会結成前から遺族の相談に乗り、医師の立場から意見を述べ、労基署を説得して十数件の認定を勝ち取ってこられたこと、連絡会の結成総会のときに医師、弁護士、すでに過労死問題に取り組み始めていた労働組合が90名も集まったと聞いてびっくりしました。

もっとも、当時は年に数件の相談しか来ず、認定は年に1件あるかどうか。社会のニーズがないのではないかという懸念を持ちながら、認定基準が少し変わった30年前に開催した110番が最初の電話相談会でした。そして、その110番は、電話が鳴り止まなかったそうです。

そこから30年、最初の10年は働き盛りの夫を亡くした妻からの相談、さらにそこから10年は精神障害による自殺の相談、さらにそこから10年である最近は、若者の過労死について親からの相談、というのが特徴的な傾向ということです。

そして、今回のシンポジウムのメインイベントの1つが110番の第1号相談者である平岡チエ子さんの労災認定までを追ったテレビドキュメンタリー『過労死・妻たちは告発する』とそれを製作した織田さんからのご講演です。

今はお孫さんが就職するほどのご年齢の平岡さんですが、30年前の夫を亡くしたばかりで悲しみに暮れる若い頃の姿、1か月あたり160時間を超える残業をさせておきながら取材に対して「本人が好きで働いた」と悪びれもせず答える会社を追ったドキュメンタリー映像を流すと、涙を拭う参加者が多数おられました。

私も、ついつい涙、涙でしたが、どうして過労死・過労自殺はこんなに第三者でさえ気持ちを揺さぶられるのか、織田さんのコメントを聞いて初めてわかりました。

過労死は、災害死・事故死とは異なり、その人の未来だけでなく生きている間の人生も奪っている、というのです。事実、過労死・過労自殺は、働きすぎて人間らしい生活ができなくなった末に亡くなる方が多くおられます。平岡さんもそうでした。未来はもちろんのこと、生きている間でさえ、その人や周囲の人の幸せな時間を奪っているのです。今生きている人も、そこに自分を重ね合わせ、自分や家族らの働き方を思い、亡くなった方の無念を感じて涙が出る、という織田さんのお話は本当に考えさせられるものでした。

最後に、平岡さんを含め、3名の過労死・過労自殺の遺族の方のリレートークがありました。平岡さん以外の方は、夫を自死で亡くした寺西笑子さん、息子を過労自殺で亡くしたお父様です。ご遺族のお話を聞くと、人間たるに値する働き方、これが普通で、それ以上の働き方をさせない、万が一求められてもNOといえる社会にしないということを強く思いました。

過労死・過労自殺110番の必要がなくなることが一番ですが、今はまだ、その段階に至っていません。手助けを必要とされている遺族の方につながれるよう、今年の110番もみんなで頑張りたいと思います。

労働審判「懇談・交流会」を開催

大阪労連 遠近 照雄

2018年4月17日(火)午後6時30分より、国労大阪会館1階ホールにおいて労働審判「懇談・交流会」を開催し、21人が参加しました。今回の開催は、大阪労連推薦の労働審判員として8年間ご尽力いただいた長岡佳代子さんが3月一杯をもって退任されることから、お礼と慰労をかねた会となりました。

おおさか労働審判支援センターを代表して開会に際し、鎌田幸夫弁護士から、労働審判制が導入されて11年を過ぎ、支援センター立ち上げ当初は、リーフ作成、街宣活動など旺盛な運動があったが、労働審判が一定浸透してからは、長岡さんをはじめ、労働審判員の皆さんとの懇談が中心となっているが意義のある内容になっている。長岡さんに、8年もの長きにわたり労働審判員としてかかわっていただいたことに感謝し、引き続き民法協の取り組みに参加をお願いしたいとの挨拶がありました。

続いて1部では、長岡さんから「8年間の労働審判員としての経験から」と題したお話をいただきました。長岡さんは8年間で50件弱の審判にかかわってこられたこと。労働審判は7割以上が調停成立で解決しているが、申立当事者の納得度を重視して審理がすすめられていること。女性の審判員が非常に少ないとの指摘もありました。

2部は、労働審判員の甲斐隆雄さんの乾杯ではじまり、参加者全員から長岡さんへお礼と慰労の言葉が述べられました。大阪労連推薦の労働審判員の紹介では、引き続き審判員としてご尽力いただく、甲斐隆雄さん、宮崎徹さん、そして4月から審判員としてご活躍いただく嘉満智子さんを紹介し、嘉満さんからは裁判所の研修がすでに入っており、勉強もしながら長岡さんの後を継いでいきたいとの表明がありました。

長岡さんに参加者全員からの花束と記念品の贈呈が行われ、長岡さんは、今後も労働者の権利向上のため様々な取り組みに参加していきたいと語られました。最後に、大阪労連議長の川辺和宏さんから、長岡さんへのお礼と、労働審判員は近畿でも一人しか選出できていない県もあり、全労連、近畿ブロックとしても引き続き労働審判員の皆さんが交流できる場の設定や、制度改善等に取り組んでいきたいとの挨拶で交流会を終えました。

裁判・府労委委員会例会報告 ―― 労働契約法20条裁判について

弁護士 西川 大史

1 はじめに
2018年4月19日、裁判・府労委委員会の例会がエル・おおさかで開催されました。今回は、労働契約法20条裁判(大阪医科大事件、郵政西日本事件)をテーマとしました。参加者は22名でした。

2 大阪医科大事件について
大阪医科大の20条裁判について、谷真介弁護士から報告をいただきました。大阪医科大事件は、大阪医科大の研究室秘書として業務を行ってきた有期雇用のアルバイト職員の女性が、正職員との間の基本給や賞与等の労働条件が大きく相違することは労働契約法20条に違反するとして提訴した事件です。事案の概要や判決の骨子などは、民主法律時報2018年2月号の拙稿を参照ください。

大阪医科大事件は、原告の請求を全面的に棄却した不当判決ですが、谷弁護士は、判決が、①労働条件の相違の不合理性について、同一・類似の職務内容の正社員労働者がいるのに、大学の正職員全体を比較対象としたこと、②「年収55%」の相違を本人の能力や努力で克服可能で不合理ではないとしたこと、③被告が主張すらしていない「長期雇用のインセンティブ」を強調して、正職員にのみ賞与を支給することも合理性があるとしたことなどの判決の不当性を強調しました。

3 郵政西日本事件について
郵政西日本20条裁判については、河村学弁護士と原告の方から報告をいただきました。郵政20条裁判は、集配業務等を担当する期間雇用社員らが、正社員に支払われている各種手当の支払是正を求めて提訴した事件です。大阪地裁判決は、原告らが請求した手当のうち、年末年始勤務手当、住居手当、扶養手当について不合理な労働条件の相違と判断しており、原告の一部勝訴判決でした。事件の概要や判決の骨子などは、民主法律時報2018年4月号の河村学弁護士の原稿をご覧ください。

河村弁護士からは、判決について詳細な説明をいただき、そのうえで、労働契約法20条は、ワーキングプアと格差克服を目指す非正規労働者保護の運動と社会的世論の高まりの中で、運動の成果として成立したものであること、非正規労働者の労働条件を引き上げる大きな可能性を秘めていることを強調するとともに、積極的な活用と運動の展開を問題提起いただきました。

また、原告の方からは、正社員と同じ仕事をしていたのに正社員と同じように手当が支払われず、しかも年末年始には長期にわたって家族とゆっくり過ごすことができず多忙な業務に力を注いだにもかかわらず、正社員にのみ年末年始勤務手当が支払われていたことなどが悔しくて、原告になることを決意したとの裁判への思いを語っていただきました。また、職場では正社員・非正規社員問わずみんなが裁判を注目していたことなどの報告もありました。

なお、日本郵政では、判決直後に、正社員の住居手当を廃止すると発表しました。判決で、不合理な労働条件の相違であると認定されたにもかかわらず、その住居手当を廃止することに、河村弁護士や原告、参加者からは怒りの声があげられました。

4 意見交換
皆さんの労働契約法20条についての関心は高く、労働契約法20条や両事件についての質問が相次ぎました。
たとえば、両事件ともに、同じ大阪地裁の労働部(裁判長はいずれも内藤裕之裁判長)の判決なのに、結論が異なるのはなぜかといった、裁判府労委委員会ならではの質問も出されました。さらには、本来、非正規労働者の労働条件を引き上げて正社員との格差を是正するための労働契約法 条が、正社員の処遇を下げることで非正規労働者との格差を是正する方向で用いられることの危険性や、非正規労働者の権利を実現すべく裁判所を動かすためにも今後の運動がより一層重要であるなどの意見も出され、闊達な議論・意見交換がなされました。

過労死防止大阪センターシンポに参加

弁護士 須井 康雄

2018年4月20日エルおおさか本館視聴覚室で表記のシンポが開催された。
過労死防止大阪センターは、2014年の過労死等防止対策推進法の成立・施行を受け、2015年3月13日に発足し、大阪で過労死等の防止と救済に取り組むことを目的としている。

シンポの冒頭、当協会の会員でもある松丸正センター代表幹事と来賓の綿貫直大阪労働局労働基準部監督課課長より挨拶があった。

その後、大和田敢太滋賀大学名誉教授より「過労死と職場のハラスメント」という演題でご講演があった。大和田先生は、ハラスメントの類型が30種類以上ある現状では、被害者側がハラスメントの類型を立証しなければならないため、包括的なハラスメントの定義が必要だとされた。また、日本に特徴的な業務型ハラスメント(長時間労働、過重なノルマ、指導研修、懲罰的労働など)では、加害者側も被害者も、業務という形をとるがゆえに、ハラスメントであることを自覚しにくいため、当事者の心がけの取組だけに終わらせず、仕事配分のあいまいさや不均衡是正といった労働組織の問題点にまで踏み込んだ対策・規制が必要だと指摘した。なお、さらに詳しく知りたい方は、2月に出版されたばかりの大和田先生著「職場のハラスメント なぜ起こり、どう対処すべきか」(中公新書)をご覧ください。

その後、棗一郎日本労働弁護団幹事長より働き方改革をめぐる国会情勢の報告があり、続いて、当協会の会員でもある岩城穣弁護士から、過労死防止法と大綱の改正課題について報告があった。過労死防止法では、施行後3年をめどとして必要な措置を講じることとされている。岩城弁護士は、労働時間を正確に把握し、残業代をきちんと払うことが精神的なストレスの減少につながることが国の調査で明らかになったことや、今後、自動車運転業務、教員、ITなど重点業種について調査が行われること、国に対して、労働時間の適正把握、ハラスメント対策の法制化などの意見を出していくと報告した。

最後に、過労自死で息子さんを亡くされたご遺族の訴えがあり、過労死等をなくすためさらに活動を発展させていくことを確認し、シンポは幕を閉じた。

自民党改憲を許さない4.23大阪集会を開催

弁護士 須井 康雄

2018年4月23日午後6時30分から大阪弁護士会202号室で民主法律協会も含む在阪の法律家団体や代表者ら13名・団体が呼びかけ人となり表記の集会を開催した。
2018年3月24日に自民党が憲法9条、緊急事態条項、選挙区の合区解消、教育の無償化、の4条項について改憲案を公表した。この危険性について学習し、どのように訴えていくかを集会の目的とした。

大阪社会文化法律センターの池田直樹弁護士の挨拶に続き、丹羽徹龍谷大学法学部教授による「自民党改憲提案をどう読むか」という演題のご講演があった。

丹羽教授は、9条の2に自衛隊を明記した場合、自衛隊の活動に歯止めがきかず、憲法上特別な地位を得て、戦前の統帥権のような第4の権力機関になる危険もあると指摘された。

緊急事態条項については、「大地震その他の異常かつ大規模な災害」と規定されているが、9条の改正と合わせれば、軍事的公共性があるとして軍事的な場面でも適用されることが容易に想定される一方で、現行憲法でも参議院の緊急集会制度があり、戦前の緊急勅令と同じ力を持つ緊急事態条項は不要であると指摘された。

合区の解消については、国会議員は全国民の代表とする考え方に抵触すること、日本の国会議員がそもそも少ないことが問題であることなどを指摘された。

教育の無償化については、自民党の改憲案は努力義務にとどまり、無償化がむしろ後退していること、公金支出対象が可能な団体も「公の監督」が及ぶ団体とされ、私立学校に対しても国が教育に介入する糸口になる危険があることを指摘された。

最後に、丹羽教授は、立憲主義と民主主義の回復のためには、政権交代による権力監視機能を高めることが必要であると締めくくられた。

続いて、当協会の冨田真平弁護士から、パワーポイントを使った学習会の実演があった。イラストを多用したQ&A形式で大変わかりやすいもので活用が望まれる。
最後に、リスペクトの政治を目指す大阪弁護士有志の会代表の大川一夫弁護士の閉会挨拶で集会は終わった。

SNS活用法講座 ④ 情報発信のネタ

弁護士 清水 亮宏

1 はじめに
SNS活用法講座、第4回は“情報発信のネタ ”です。SNSで情報発信といっても、何から始めればよいのかと迷ってしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、おすすめの投稿ネタをご紹介します。

2 ニュース・時事ネタ・他の人の投稿をコメント付きでシェアしよう
一番手軽にできる情報発信の方法です。FacebookやTwitterでは、インターネットのニュース記事や他の人の投稿などを簡単にシェアできます。ニュースサイトにシェアボタンがある場合はシェアボタンの選択を、ない場合は投稿内容にURLを貼り付ける方法でシェアできます。自分のコメントを付けたうえでシェアできるのも特徴です。自分で長い記事を書かなくとも、既にあるニュース記事にコメントをつけてシェアすることで、情報や意見を共有することができます。
コメントを付ける場合は、短くわかりやすいコメントを心掛けましょう。情報量の多いSNSでは、長い文章は読み飛ばされてしまう傾向にあります。

3 自己の活動を積極的に発信しよう
次におすすめしたいのが活動内容の発信です。団体交渉の経緯(※チラシ等と同様、内容にはご注意ください。)、担当事件の結果報告、相談会・ホットライン・イベントなどの告知宣伝などです。
自己の活動を発信することの意義は、単なる宣伝にとどまりません。有意義な活動をしていても、SNSでの(活動内容についての)情報発信が少なければ、その人・団体がどのような活動をしているのか、外部からイメージを持ちにくいことが少なくありません。活動内容を情報発信していれば、活動内容をイメージでき、安心感・信頼感を高めることができます。また、社会的認知度を高める効果もありますし、SNSの投稿をマスコミがキャッチしてニュースに繋がるケースもあります。

4 投稿ネタに困ったら
話題になっている時事ネタは市民の関心が高く、SNSで拡散されやすい傾向にあります。投稿するネタに困った場合は、話題になっていることを調べてみましょう。「Googleトレンド」というサイトなどで、話題になっている時事ネタを調べることができます。
また、投稿ネタに困った時には、昔の投稿をリサイクルすることも有効です。

5 最後に
今回は、情報発信のネタについて簡単に紹介しました。文章で説明しましたが、SNSを使いこなしている人の投稿や、多くの「いいね!」「リツイート」を獲得している投稿もぜひ参考にしてみてください。
次回からは、多くの人に見てもらうための拡散のコツについて紹介いたします。