民主法律時報

2018年3月号

2018年権利討論集会を開催しました

事務局長・弁護士 須井 康雄

2018年2月17日、エル・おおさかで2018年の権利討論集会を開きました。231名がご参加くださいました。
全体会では、法政大学キャリアデザイン学部教授の上西充子さん(Twitter:@mu0283)に「安倍政権の『働き方改革』の問題点にどう取り組むか」という演題でご講演いただきました。

上西さんは、以前から安倍政権の労働政策を厳しく批判してきました。1月29日、安倍総理は、国会で、裁量労働制での労働時間は、平均的な人で比べれば一般労働者よりも短いという厚労省のデータがあると答弁しました。しかし、上西さんは、この答弁を疑問視し、厚労省のデータの問題点をインターネットで発信し、国会答弁撤回という前代未聞の事態のきっかけを作りました。
このデータをめぐり与野党が攻防を強めるさなかのご講演でした。このため、データ問題についても時間を割いてお話いただきました。
働き方改革一括法案の問題点では、安倍総理の過去の発言や政府の報告書の細かな言い回しを丹念に指摘し、真の狙いが労働時間規制の緩和にあることを的確にご指摘されました。
また、データ問題については、上西さんが安倍総理の国会答弁に疑問を持ち、調査し、ネットで社会に広く発信すると、国会で取り上げられ、全然面識のなかった専門家ともつながりができ、また新たな問題がみえてきたという、とても面白い話でした。
事実をとことん調査し、問題点を的確に発信し、市民、議員、専門家らと連携し、運動を実現するという現在進行形の活躍を、私たちもリアルに共有できました。

その後、①働き方改革反対、②非正規労働者の2018年問題への取組強化、③憲法9条改正阻止の行動提起がなされ、この①と③に関する決議に加え、④生活保護費切下と⑤大阪都構想の再度の住民投票に反対する決議を採択しました。
午後からは7つの分科会に分かれて、学習や経験交流を行いました。内容は、各分科会の報告に譲ります。

懇親会では、各参加者に争議や労働情勢への取組をご紹介いただきました。また、今年は、 SUN-DUY(サンデュー)さん(Twitter:@MSL_SNS)ら3名のグループ「Mic Sun Life」にラップを披露していただきました。SUN-DUYさんは、えん罪で無罪判決が確定し、現在、国家賠償請求事件を闘っています。ラップになじみのない方もいらしたかと思いますが、楽曲の歌詞は、さまざまな運動に取り組む私たちの心にも、すっと沁み入るものでした。
この権利討論集会で得た経験や、人とのつながりを活かし、さまざまな課題に取り組んでいきましょう。

分科会報告

第1分科会 労働争議をどうやって勝ち抜くか (報告:弁護士 片山 直弥)

 第1分科会では、「労働争議をどうやって勝ち抜くか」をテーマに32名が参加して議論が行われました。
 前半は、NTT継続雇用事件について、弁護団の井上耕史弁護士及び原告の宮崎政光さんから事案についての解説を頂きました。
まず、井上弁護士からは、争点について、詳細ながらも分かりやすい解説を頂きました。高年法がNTT継続雇用事件の争点に及ぼした影響について、06年高年法の制度趣旨及び現行高年法の改正趣旨(両者に共通するのは「雇用と年金の接続」)を踏まえて解説いただけましたので、馴染みの薄い高年法に対する理解を深めながら議論を進めることができました。
次に、宮崎さんからは、たたかいの内情について教えて頂きました。具体的には、労働組合としての組織拡大にはじまり、裁判所の固い扉を切り開くべく行った運動(例えば、団体・個人署名)、ひいては、残念ながら敗訴が続いていますがその中でいかにして士気を鼓舞してきたのかについてお話いただきました。
さて、NTTという大企業相手の裁判で、いかにして裁判所の重い腰をあげさせるかは、常々考えさせられるところがあります。決まったセオリーというものはおそらくないのでしょうが、よいご報告が頂けることを期待してやみません。
 後半は、泉佐野市不当労働行為事件について、原告の昼馬正積さん及び弁護団の増田尚弁護士から事案についての解説を頂きました。
まず、昼馬さんからは、たたかいの内情について教えて頂きました。それも具体的に、対市当局との関係で行った内容(例えば、組合機関紙での報道、要求書の提出)、対市長との関係で行った内容(例えば、庁舎前宣伝)、対市民との関係で行った内容(例えば、市民宣伝)のそれぞれについてその手応えにも触れながらお話いただきました。
次に、増田弁護士からは、たたかいの手段として労働委員会を選択した経緯等について、解説いただきました。組合への攻撃であるところに焦点を当てたい、ということで、労委闘争を選択されたようですが、当時は労働委員会に対する信頼が今ほどでなかった、ということで、非常に難しい判断を強いられたのだと思います。そのほかにも、申立適格や救済内容等でも悩みがあったということで、全面勝訴和解に至るまでの過程(裏話のようなもの)をお聞きでき、とても参考になりました。
 このほかにも、弁護団に対しては、「当事者や組合の方が読んで分かるように主張書面を書いてもらいたい。それが士気を高めることにもつながる」といった貴重な意見も頂きました。このように、第1分科会では、「労働争議をどうやって勝ち抜くか」について活発な議論が参加者間でなされました。私もこの日頂いた意見を今後の活動に活かしたいと思います。

第2分科会 2018年問題をどう闘うか (報告:弁護士 細田 直人)

第2分科会では、派遣法改悪後、最初の期間制限(3年)が2018年10月に迫る今、この2018年問題にいかに取り組み、派遣労働者の権利保護を実現していくかをテーマに、19名が参加し、報告、議論が行われた。
1 事件報告
2017年11月に一斉提訴された、派遣法40条の6、7を活用した事件(3事件)の報告がなされた。
まず、派遣法40条の6と派遣法40条の7の説明がなされ、各事件の概要や争点に関する報告がなされた(事件の内容については、民主法律時報2018年1月号参照)。
申込みなし制度について、労基による解決ができないかという問題提起があり、派遣研究会で取り組まれている事件での労基署対応をもとにした議論がなされた。また、同制度で直用化した場合の労働契約の内容や、脱法目的についての議論もなされた(労働法律旬報1887号塩見弁護士記事参照)。
2 直用化を勝ち取った組合からの報告
次に派遣労働者の派遣先での直用化を運動により勝ち取った組合からの報告がなされた。
KBS京都古住氏から、2名の派遣労働者の直用を勝ち取った経緯について、組合の方針や、組合活動(労基署対応、役員退任の運動など)について報告がなされた。次に、大学の派遣労働者について、高橋氏から、直用化の事例や、直用後の労働条件に関する議論、大学の特殊性から労働運動が盛り上がりにくい現状についての報告がなされた。
これを踏まえて、派遣先組合の姿勢について、派遣労働者に対する意識を持たせること、事業場単位の3年の期間制限の例外として必要な意見聴取手続きの重要性や、労働者代表の選出方法に関する議論がなされた。
3 2018年問題への取り組み
最後に、派遣ネット相談の報告、持ち込まれた相談をベースにした労働相談でどのようにアドバイスをするか、追加質問としてどのようなことが必要かについての議論がなされた。
偽装請負対策として、業務指示のメールの保存や録音による証拠保全や、無期雇用派遣制度に関して、今の派遣先での就労を希望するが、期間制限があり派遣先は直用を認めない場合、どのようなアドバイスが当該労働者にとって良いのかといった議論がなされるなど、2018年問題に関して活発な検討がなされた。

第3分科会 実現しよう!無期雇用 (報告:弁護士 加苅 匠)

第3分科会では、「実現しよう!無期雇用」というテーマで、労働契約法18条の無期転換をめぐる不当な雇止めの阻止、均等待遇、その他有期労働の課題について報告・意見交換が行われました。
1 無期転換を阻止する雇止め・不更新条項とのたたかい
はじめに、音楽ユニオンに加入し、団体交渉で無期転換を勝ち取られた武庫川女子大学の事例が報告されました。報告の中では、無期転換権についての認知度が広まっておらず、不当な雇止めに泣き寝入りしている人が多数いることが指摘され、無期転換権の存在を広く認識してもらう活動の必要性を学びました。
その後、谷真介弁護士から雇止め制限のルールと脱法への対応について、鶴見弁護士から無期転換ルール(労働契約法18条)について解説がありました。
関西圏大学非常勤講師組合から関西圏にある各大学の雇止めの実態とそれに対する組合の取り組みについて報告がありました。各大学で無期転換阻止の方法が異なることが分かり、他にも無期転換後労働条件を変更させられる制度を導入した事例等が報告され、使用者側が脱法のために様々な手法を用いていることが分かりました。
2 均等待遇を実現するために
 労働契約法20条をめぐる裁判の現状について河村学弁護士から解説があり、不当な労働条件格差が争われた大阪医科大学20条裁判について事例報告がありました。裁判所の考え方を検討し、組合として何ができるかを議論しました。他にも、各労働現場での均等待遇をめぐる事例が報告され、その対策を議論しました。
楠晋一弁護士から働き方改革での「同一労働同一賃金」をめぐる情勢についての報告がありました。
3 その他の課題
 その他の課題として、会計年度任用職員制度が導入された公務非常勤職員の課題や、均等待遇とセットで論じられるべき最低賃金引き上げの課題について報告がありました。
26名が参加した本分科会では、様々な現場での雇止めの実態や組合の取り組み、現在の裁判所の考え方について議論し、今後ますます激化するであろう2018年問題への対策を考えあう分科会となりました。(不更新条項Q&Aを用いた寸劇も行いました。パート研HPからご覧ください。)

第4分科会 過労死促進法?? 労基法改正を考える (報告:弁護士 和田 香)

 第4分科会では、政府が進める「働き方改革」の問題点に関する講演の後、化学、医療、府職の現場における労働時間の適正化と36協定締結の取り組みについての報告を頂きました。
 まず、「働き方改革」の問題に関して、兵庫県立大学客員研究員・大阪損保革新懇世話人松浦章さんに『「働き方改革」の本質と裁量労働制拡大の危険性』と題して講演を頂きました。
講演では、損保業界において、裁量労働制が広い範囲の営業社員に適用されており、実態が法律に先行して裁量労働制の対象を拡大していることや、より適用のハードルが低い事業場外みなし労働時間制を違法に適用することで残業代の支払いを免れようとする動きがあるという見逃せない報告がありました。
 次に、大阪過労死問題連絡会の松丸正弁護士から、『過労死防止と36協定の課題と問題点』と題して、政府の法案における 協定の上限規制では過労死を防止できないことをお話頂きました。法案では、過労死ラインを上限時間としています。これでは「人たるに値する生活を営む」権利を守るという労基法1条の目的に反します。また、法律で上限を定めることで、上限に達していないことを理由に使用者に安全配慮義務違反についての責任回避の口実を与えかねません。
 上記講演を踏まえ、各職場での労働時間の適正化と36協定締結の取り組みについて報告を頂きました。
化学一般労連書記長宮崎徹さんからは、全国の支部における 協定締結の状況についての一斉調査の結果、多くの職場では「時間外労働時間の限度に関する基準」に則った上限となっているため、法律で上限が定められればそれに合わせた変更をする職場が多いのではないかという報告がありました。
また、大阪医労連執行委員中島昌明さんからは、医療の高度化や制度の改悪等で長時間労働化しやすい医療の現場において、組合が労働者の申告した労働時間と実際の労働時間の差やメンタルの調査等を行い、使用者と掛け合って労働環境を向上させている取り組みについて報告いただきました。
そして、府職からは、36協定を締結できるとは知らなかったところから始まり、適正な36協定を締結すべく奮闘した経緯の報告がなされました。
 参加者合計31名で、それぞれの立場から積極的な討議がなされ、時間が足りず、分科会終了後も各参加者らで情報交換がなされていました。

第5分科会 “知らずして闘えない!? ”ブラック企業の手法と対抗 (報告:弁護士 清水 亮宏)

第5分科会のテーマは「“知らずして闘えない!? ”ブラック企業の手法と対抗」でした。労働組合、弁護士、修習生など24名の方に参加いただきました。
本分科会では、ブラック企業の手法のうち、近年特に関心を集めている「求人詐欺」「ソーシャルハラスメント」「固定残業代」「退職妨害・損害賠償請求」の各問題について、参加者で議論しました。
求人詐欺問題については、馬越俊佑弁護士から、本年1月に施行された職安法改正の内容や、A福祉施設求人詐欺事件判決(京都地裁平成29年3月30日)について解説いただきました。参加した労働組合からは、求人通りの労働条件を実現した例などをご報告いただきました。
ソーシャルハラスメントについては、私清水から、新しい労働問題として紹介した後、SNS上でのハラスメントやプライバシーへの介入をいかに防ぐかを解説させていただきました。参加者からは、「業務にSNSを使うこと自体を制限すべき」「SNS導入によるプライベートへの介入を防ぐために組合を通したルール作りが必要」など様々な意見が出ました。
固定残業代については、安原邦博弁護士から、裁判例等を踏まえた対抗策を説明いただきました。サービス残業を生む問題を抱えた制度であることを再認識するとともに、よくある固定残業代の事例を元に、組合としての対抗策を議論しました。
退職妨害・損害賠償請求については、中西基弁護士から、使用者からの損害賠償請求がどのように制限されているか、退職妨害にどのように対応するかについて解説いただきました。参加した労働組合からは、実際に会社から裁判を起こされた事例などについてご報告いただきました。
本分科会は、責任者の中西弁護士の発案により、グループディスカッション形式をとりました。事例を題材にグループで議論いただくことで、活発な意見交換ができたと実感しています。権利討論集会は“討論集会 ”であるべきだと改めて認識できる分科会になりました。

第6分科会 貧困・社会保障問題と労働運動~いま私たちにできること 志賀先生と学んだ「いま私たちにできること」 (報告:弁護士 西田 陽子)

1 講師のご紹介及びテーマ
当分科会は、大谷大学文学部助教である志賀信夫先生を外部講師としてお迎えし、大テーマを「貧困・社会保障問題と労働運動~いま私たちにできること」とし、共に学び、討論を行った。以下にご報告する。
2 生活保護引下げ・年金減額違憲訴訟
まず、生活保護引下げ・年金減額違憲訴訟についての報告と質疑応答が行われた。
参加者は、目視によれば 人であった。組合員、研究者、弁護士、若い学生の方々等が参加していた。
年金者組合の加納さん、大生連の秋吉さんから、現在の社会保障制度の概略及び問題点並びに裁判闘争についての報告があった。両違憲訴訟の弁護団員をつとめる喜田弁護士は、弁論で使用予定のスライドを用い、あるべき社会保障制度について語った。
3 志賀先生の講演――労働運動と反貧困運動の連携――
志賀先生は、労働運動が貧困問題を取り扱うべき理由として、貧困状態の最大の原因は労働問題(失業等)であること、労働条件の悪化を防ぐために労働者が連帯し、労働力の需給調整をする必要があること、社会保障制度は労働者間の競争抑制の機能を持つことを指摘した。
また、「食えていれば貧困ではない」という意見は、古い貧困観に基づいていること、貧困の反対は「幸福」であり、「幸福」とは他者との繋がりであるとの指摘もあった。
4 討論
参加者からは「来てよかった」「感動した」等の声が聞かれ、活発に議論が行われた。志賀先生の議論を活かし、主として、連帯ないし運動の仕方について議論がなされた。
5 まとめ
志賀先生は、労働運動と反貧困運動が連携し、全員が平等に他者と繋がれる社会を実現することが重要とし、豊川弁護士の挨拶を経て解散となった。
本分科会をきっかけとして、すべての人が他者と繋がれる社会を実現するための運動が行われることを期待する。

第7分科会 表現の自由~活動の現場で直面する問題を考える~ (報告:弁護士 篠原 俊一)

第7分科会は、前半・後半の二部構成で、前半は街頭宣伝への干渉とその対処法について討論がなされました。
まず、最初に大阪労連の菅義人さんがこれまでの街宣への干渉事例とその対処法について、報告してくださいました。
「警察を呼ばれる」、「警察から許可があるのかと詰め寄られる」、「名前を聞かれる」などがあり、これまで名前を言ってしまうケースもあった。著しく交通を妨げてないので違法ではないという正しい知識を身につけ、名前を言う必要はないということを徹底することが必要、喧嘩はしないということを強調されたうえで、公権力による妨害への対処、市民の名をかたる干渉への対応、市民感情への対処を考える必要があるという意見が述べられました。
「許可」の問題では、大阪弁護士会も許可をとりつけて宣伝行動していることや、路上ライブをする場合の許可の要否の基準がわからないというサンデューさんの質問もあって議論が盛り上がりました。原則的には許可は要らないが例外的に許可を取ることもやむを得ないのではないかという意見、それは自らの権利を売り渡すことになるのではないかという意見が出されました。
これらの討論の後、公園使用を不許可とされた松原民商公園使用拒否国賠事件、これに端を発して、宝塚市の公園利用に市の後援が必要とする内規を撤廃へと追い込んでいる経験、姫路市の駅前広場で市の使用許可を得て実施されていた発表会がプログラムの途中で、「安倍批判」があるなどとして中止命令が出された事件の報告が、それぞれ、高橋徹弁護士、杉島幸生弁護士、吉田竜一弁護士からなされました。
後半は、もしかしたら来年経験することになるかも知れない国民投票で、私たちに与えられた表現の自由を駆使することによって、どうすれば私たちの思いを伝えることができるか、討論されました。
最初に、西晃弁護士が作成した簡略版・国民投票〇、×クイズ10問が出題されました。討論の終わりに答え合わせがなされ、成績優秀者2名に憲法の条文が書かれたクリアファイルが進呈されました。
クイズの後、杉島幸生弁護士が安倍政権の狙い、国民投票の問題点の解説をしました。発議させない運動を前提に、発議された場合でも反対派の勝利可能性を安倍政権に突きつけることで、発議自体を止めることにもつながるという意見が出されました。
この第7分会、前半の終わりには、サンデューさんが冤罪での300日にわたる勾留中に作った「12の言葉」が披露され、歌ありクイズありのまさに「表現の自由」を駆使した楽しい分科会になりました。

大阪医科大学 労働契約法20条裁判 大阪地裁不当判決

弁護士 西川 大史

1 はじめに

2018年1月24日、大阪地裁(内藤裕之裁判長、前原栄智裁判官、大寄悦加裁判官)は、大阪医科大学(現・学校法人大阪医科薬科大学)の研究室秘書として業務を行ってきた有期雇用のアルバイト職員の女性が、正職員との間の基本給や賞与等の労働条件が大きく相違することは労働契約法20条に違反するとして差額賃金や損害賠償を求めた裁判について、労働契約法20条違反を認めることなく原告の請求を全面的に棄却するという不当判決を言い渡しました。

2 事案の概要

原告は、2013年1月から2016年3月まで、大学の基礎系教室(診療科のない研究室)の1つである薬理学教室で、教室秘書(アルバイト職員)として勤務してきました。各研究室には、1~2名の教室秘書(正職員、契約職員、アルバイト職員等)が配置されており、原告と他の研究室の正職員の秘書の職務内容は同じでした。
しかし、原告の給与は正社員に比べて低く、賞与もありません。年収にすると、新規採用の正職員と比較しても約2倍の格差がありました。また、アルバイト職員には夏季特別休暇もありません。私傷病によって欠勤した場合には、正社員には6ヶ月間は賃金全額が支払われ、その後も休職給が支払われるのに対して、アルバイト職員にはこのような補償はありません。

3 比較対象を「大学の正職員全体」とした判決の誤り

原告は、労働契約法20条の不合理性の判断は、他の研究室の正職員の秘書と比較すべきと主張しました。しかし、判決は、「研究室の正職員秘書は新卒一括採用され同業務に配置された結果として同業務に従事するに至ったと推認でき、他の部門に配置転換される可能性がある」として、労働契約法20条の不合理性の判断は「大学の正職員全体」と比較すべきとしたのでした。
しかし、原告と職務内容が同じ正職員がいるにもかかわらず、職務内容の異なる職員を含む正職員全体と比較すべきとの判断は誤りというほかありません。そもそも、労働条件が不合理であるか否かは、職務内容が同じ正社員と比較して初めて判断できるものであり、「大学の正職員全体」を比較対象とすべきとした判決は到底納得できません。

4 不合理な格差をも追認する判決

判決は、アルバイト職員である原告の年収は、同じ経験年数の正職員と比較して55%程度であるものの、正職員は一定の能力を有することを前提に採用されるがアルバイト職員は特定の業務を前提として採用されていること、アルバイト職員が正職員の指示を受ける立場にあること、正職員への登用試験制度がありアルバイト職員も正職員として就労する方法がないわけではなく能力や努力で労働条件の相違の克服が可能であること、年収55%という相違の程度は一定の範囲に収まっているといえること等から、不合理な労働条件の相違といえないとしました。
しかし、年収にして55%程度の水準とは、ほとんど倍の格差です。同じ経験年数の正職員と、賃金総額で倍近い格差が正当化される理由はありません。しかも、倍近い賃金格差を「本人の能力や努力で克服可能」とすること自体、非常識極まりない判断です。しかも、この判決の論理からすれば、企業において正社員登用試験制度さえ準備していれば、正社員と非正規労働者との労働条件において、どれだけの不合理な格差があろうとも、労働契約法20条違反は存在しないということになりかねません。

また、判決は、正職員には年間4・6か月支給されている賞与についても、賞与は長期雇用が想定される正職員の雇用確保に関するインセンティブだとして、正職員にのみ支給することにも一定の合理性があるとしました。このインセンティブ論は、期間の定めの有無により不合理な労働条件の格差を是正するという労働契約法20条の立法趣旨に真っ向から反するものです。しかも、この裁判では、大学側はインセンティブ論を主張していませんでした。それにもかかわらず、裁判所が、大学側の意を忖度して、インセンティブ論を持ち出したのであり、腸が煮えくり返る思いです。

さらに、判決は、夏期特別休暇や私傷病による欠勤の際の補償等についても、大学の正職員には長期雇用が想定されていることなどを強調し、不合理な労働条件の相違とまではいえないとして、原告の請求を全面的に棄却しました。

5 さいごに

大阪地裁判決は、労働契約法20条の立法趣旨をまったく理解しない、いわば正社員絶対論に陥っています。安倍政権ですら、同一労働同一賃金の実現をと一応口にしていますが、この判決には、同一労働同一賃金の実現という姿勢は微塵もありません。低い労働条件に固定され、不安定な雇用に苦しむ非正規雇用労働者の実態から目を反らし、労働条件の不当な格差是正を願う非正規雇用労働者の思いを踏みにじる不当な判断です。
控訴審では、必ずこの大阪地裁判決の不当な判断を是正させ、非正規雇用労働者の格差是正を目的とした労働契約法20条の趣旨を実現する判断を勝ち取るべく奮闘します。

(弁護団は、谷真介弁護士と西川大史)

派遣労働者にも交通費の支給を ~派遣通勤費訴訟~

弁護士 河村 学

1 はじめに

本件は、派遣労働者が、その雇用主である派遣元会社に対して、労働契約法20条を根拠に、同社の正社員に対しては支払われている通勤費を、同様に派遣労働者にも支払うよう求めるものである(なお、労働者が就労していた事業所のうち一社とは雇用主が業務委託契約を締結していたため、全てについて正確な表記ではないが、本稿では便宜上、全て「派遣」として記述する)。
2018年2月7日に大阪地裁に提訴した。本訴訟は、派遣労働者の処遇改善に資するものであり、その帰趨が社会に及ぼす影響は極めて大きい。

2 事案の概要

原告となる労働者は、2013年から、派遣元会社に有期派遣労働者として雇用され、2017年7月まで、断続的に、5カ所の派遣先事業所で、種々の業務に従事してきた。この間、チラシのポスティング業務、製品素材の検査業務、接客・販売業務、自動車輸送の手配業務、製造業務等に従事してきたが、労働条件は、賃金が派遣先に応じて変わったものの、通勤費(自宅から就労場所までの交通費)については一貫して支給されなかった。
一方、派遣元会社で、事務や営業を行っている無期契約労働者については、就業規則により、自宅から事業所までの最短距離かつ最小時間の経路の交通機関を利用した場合の通勤費実費が全額支給されることになっており、現に支給されてきた。
本件は、有期派遣労働者が、派遣元会社に対して、この間に支給されなかった通勤費相当額の損害賠償を求めるものである。

3 労働契約法20条に基づく請求

(1) 労働契約に基づき就労場所で労務を提供するという義務は、無期契約労働者か有期契約労働者か、直接雇用労働者か派遣労働者かに関わらず等しく負っており、自宅から就労場所までの交通費の負担は、その雇用形式に関わらず、また、当該労働者の職務内容、職務の内容及び変更の範囲と関わりなく生じるものである。
この通勤費について、使用者が、無期契約労働者のみ支給して、有期派遣労働者には支給しないとするのは、明らかに不平等な取扱いである。とりわけ、一般には有期契約労働者の方が無期契約労働者より賃金が低く抑えられていることからすれば、有期契約労働者は、その少ない賃金から通勤費実費を支出しなければならないのであるから、その矛盾は極めて大きい。
使用者の無期契約労働者に対する通勤費の支給は、自宅から就労場所までの通勤にかかる費用の実費補填を目的として支給されており、かつ、従事する業務内容・役職如何に関わらず決まった計算により支給されているのであるから、これを有期契約労働者(有期派遣労働者を含む)には支払わないというのはあまりに不合理というべきである。

(2) 2012年改正により規定された労働契約法20条は、無期契約労働者と有期雇用派遣労働者との間で労働条件を相違させることは、不合理と認められるものであってはならないとし、行政通達では、通勤費についての相違は、特段の事情がない限り合理的とは認められないとされた(平成24年8月10日基発810第2号)。
そして、派遣労働者についても、「派遣労働者への通勤手当の支給について」と題する周知文書が出され(平成29年2月28日職派需発0228第8号)、派遣元の無期契約労働者と有期派遣労働者との間で、通勤費について相違させることは、特段の事情がない限り合理的とは認められないとされた。
こうした法律の規定、行政解釈(国会答弁・付帯決議も含む)からみて、無期契約労働者に支給される通勤費を、有期派遣労働者に支給しないとする解釈はあり得ないというべきである。

(3) しかし、派遣元会社は、改正法が施行された2013年4月以降、もう5年もなろうとしているのに、有期派遣労働者の交通費支給について一向に改善せず、不合理な格差を放置してきた。これは、労働者から要求が出ず、運動が起きない職場では、使用者は自らの義務を果たさず、法に従うことさえ拒否することを示している。また、残念ながら、労働運動の側も、格差と貧困の問題で運動が一定の高揚をみせたときに辛うじて手に入れたこの武器を有効に活用することなく推移させてきた。これは現在の労働運動の大きな問題といわなければならない。
労働契約法20条は、労働運動の大きな足がかりとなる条文であり、さまざまな場面で活用されるべきものである。

(4) 現在、労働契約法20条の解釈としては、既に、使用者側がさまざまな屁理屈を並べ立てて支払を拒否しようと必死になっており、裁判所もまた、使用者を救済するため法律さえねじ曲げた解釈を編み出そうとしている。本件の通勤費のような明白な不合理な格差でさえ、大きな運動と世論の盛り上がりがなければ、信じられないような理屈を持ち出す可能性がある。
労働者全体の利益のために何が必要かという観点から、この問題についても、理解と支援をお願いしたい。

(弁護団は、河村学、櫻井聡)

「働き方改革」にNO! “まともな働き方”を求める 1.22集会を開催

弁護士 須井 康雄

2018年1月22日、エル・おおさかで、法律家8団体が標題の集会を開き、140名が参加した。
当協会の鎌田幸夫弁護士が開会のあいさつをし、日本労働弁護団の岡田俊宏弁護士が情勢報告を行った。改憲発議の国会審議を考えれば、遅くても3月上旬に、働き方改革一括法案の提出が見込まれる。「働き方改革」反対の運動にしっかり取り組めば、改憲発議の阻止にもつながる。

野田進九州大学名誉教授が「働き方改革にどう立ち向かうか」との演題で記念講演。均等待遇規定の内容と非正規労働者のタイプをクロスさせた一覧表に基づく解説は分かりやすかった。100時間の上限規制は、高速道路で200 の速度超過に厳罰を科すといって自慢するようなものと批判。野田先生は、勤務時間外の会社からのメール等を拒否できるという欧米でのアクセス遮断権の例も挙げ、生活時間をベースに、個々の企業の実情に配慮した労働時間を構築していこうと訴えた。

続いて、過労死家族の会の小池江利さん、労働組合の小林勝彦さん、清水裕さんによるミニシンポがあった。
小池さんの夫は、月80~140時間もの時間外労働をさせられ、脳疾患で 歳の若さで亡くなった。宿直日はたまった仕事を片付ける機会と化し、ほとんど睡眠もせず2日続けて働く結果に。いまだに過労死のご家族の相談が続いており、一人でも過労死のご家族をなくしたいと訴えられた。
運輸関連の小林さんは、トラック運転業務の労働者に、残業をして当然という感覚が根付いている面もあり、本来なら、残業しなくても一定の生活ができるように給料を上げるよう要求するなどの意識改革が必要と指摘。
介護関連の清水さんも、 日間連続夜勤の例や、タイムカード打刻後、深夜1時までサービス残業した例を紹介。経営者から、利用者のために頑張ってといわれると、まじめな人ほど現場に残ってしまうことを指摘。
インターバル規制、労働時間記録義務の法定化、8時間働けば生活できる賃金、労働サービスの利用者との連携など、様々な課題が浮かび上がった。

8名の国会議員からのメッセージも紹介。「働き方改革」というまやかしを見極め、労働者の尊厳を実現する真の働き方を求める集会アピールを採択し、閉会した。

新年も・・・ブラック企業対策! 労働判例研究ゼミに学ぶ

弁護士 西田 陽子

1 新年のゼミ開催!
2018年1月17日、新年のブラック企業対策!判例ゼミが開催されました。今回から新しい試みとして、お菓子を用意する等、なごやかなムードを大切にすることにしました。
当日は71期修習予定者や 期の新人弁護士にもご参加いただき、「契約更新時の不利益変更」をテーマに、活発に議論が行われました。責任者の中西基弁護士が残念ながらインフルエンザに罹患し欠席でしたが(皆様、まだまだ感染にはお気を付けて!)、谷真介弁護士が率先して議論を引き締めてくれました。今回も、その勉強内容をご紹介します。

2 ゼミの内容
①日本ヒルトン事件(東京高判平成14年11月26日・労判843号20頁)
担当は清水亮宏弁護士。契約更新時において、使用者から労働条件引下げの申込みがあり、労働者が異議をとどめて承諾したものの、申込みを拒絶したと評価され雇止めとなった場合につき、労働条件引下げがやむをえず、社会通念上合理性があることから、雇止めが有効とされた事例です。留保付き承諾の有効性につき、労働者側に有利な解説も紹介しました。
②河合塾事件(最三小判平成22年4月27日・労判1009号5頁)
担当は西田陽子弁護士(本稿執筆者)。学習塾講師の出講契約更新の際に、担当コマ数が削減されることにつき合意に至らず、出講契約が更新されなかったことは、雇止めにあたらず、不法行為にもならないとされた事例です。1審、2審、最高裁と判断が異なり多数の論点を含むため準備は大変でしたが、議論が盛り上がりよかったです。
③ドコモ・サービス(雇止め)事件(東京地判平成22年3月30日・判タ1361号165頁)
担当は安原邦博弁護士。就業規則の変更等の手続を取ることなく、労働条件の引下げ(賃金減額等)に同意しない労働者を雇止めしたことは、手段・経緯に合理性を欠くことから、雇止めは無効になると判断された事例です。就業規則の不利益変更により労働条件を変更できたと読める判示にひっかかり、皆で悩みました。

3 終了後懇親会
新人弁護士による事件相談等も行われ、懇親だけでなく仕事にも有意義でした。
4 今後の日程等について
次回は3月20日(火)の開催を予定しています。判例ゼミは、予約不要、参加費無料であり、終了後に懇親会がございます(新人弁護士、修習生、法科大学院生等は無料)。お菓子の持ち寄り歓迎です。是非いらしてください。

真夜中の労働ホットライン報告

弁護士 清水 亮宏

1 ホットラインを開催しました
2018年1月19日、ブラック企業被害対策弁護団との共催で、「深夜の労働ホットライン~『働き方』は本当に変わったか~」と題するホットラインを開催しました。大阪だけでなく、北海道、宮城、東京、広島、福岡でも同時開催しました。ブラック企業被害対策弁護団の深夜のホットライン開催は、今回で5回目となります。

2 今回のホットラインの趣旨

「働き方改革」という言葉をよく聞くようになりました。しかし、本当に働き方は変わっているのでしょうか。むしろジタハラ(時短ハラスメント)やサービス残業が増えていないでしょうか。今回ホットラインは、現状を明らかにするために開催したものです。当日は、電話回線を3回線設置したほか、深夜まで働く労働者からも相談を受け付けられるようにするため、時間帯は20時から26時までとしました。

3 ホットラインの結果の概要
当日は約10名の弁護士が相談を担当しました。テレビや新聞で報じられたこともあり、非常に多くの相談を寄せていただきました。相談件数は全体として32件となりました(参考までに、2016年に実施した真夜中の労働ホットラインの相談件数は38件でした。)。
相談内容は、いじめ・差別・ハラスメント(10件)、長時間労働(9件)、残業代不払い(9件)に関するものが多くを占めました(複数回答です)。
相談結果から、依然として、長時間労働やサービス残業、ハラスメントがなくなっていない実態が明らかとなりました。「労働時間が管理されていない」「タイムカードに打刻する前に業務をさせられる」「業務が終了する前にタイムカードに打刻するよう指示される」「業務量は変わらないが残業時間を減らすよう指示されている」など、サービス残業やジタハラ(時短ハラスメント)に関する相談も複数ありました。また、ハラスメントに関する相談も多く、対策の必要性を再認識しました。
特徴的だったのは、前回のホットラインでは若者からの相談が中心であったのに対し、今回のホットラインは50代以上からの相談が多くを占めたことでした。

4 さいごに
ホットラインにご参加いただいた皆様、宣伝いただいた皆様、誠にありがとうございました。ホットラインの結果から明らかになった長時間労働、サービス残業、時短ハラスメント等の実態を発信していきたいと思います。

心によりそう労働相談 ―労働相談懇談会報告―

弁護士 西田 陽子

1 はじめに
2018年1月30日、国労大阪会館1階ホールにおいて、2018年度第1回労働相談懇談会が開催されました。
主催者挨拶は、大阪労連議長の川辺和宏さん。その後、民法協の西川大史弁護士より、最近の労働裁判についての報告があり、大阪職対連事務局長の藤野ゆきさんが講師となって、メンタル・ハラスメント相談に関する学習会が行われました。

2 「最近の労働裁判に見られる特徴」(報告:西川大史弁護士)
西川弁護士が、慣れたようすで2017年10月から2018年1月までの主な労働情勢に関する報告をしました。労契法20条違反を主張した1月 日付大阪医科大事件の不当判決についても、悔しさをにじませながらの報告がありました。

3 学習会「メンタル・ハラスメント相談について」(講師:藤野ゆきさん)
講師を担当した藤野さんは、大阪職対連等で労働者の健康を守る運動(相談会や学習会等)に関わっておられ、大学等の非常勤講師として社会福祉、社会政策(労働問題)なども教えています。その柔らかく芯のある語り口に、長年相談者の疲れた心によりそってきたあたたかさを感じました。
学習会においては、相談者の「本当の訴え」のつかみ方という弁護士でも悩むテーマから始まり、相談者との距離感等、試行錯誤した経験からのテクニックが満載でした。例えば、「病気を治すのは原則として本人と主治医」という一言は、心を病んだ相談者と接した経験からもわかりやすい距離感だと思いました。
また、藤野さんが紹介した相談事例においては、いずれも職場復帰を果たしており、参加した民法協幹事長の鎌田幸夫弁護士や谷真介弁護士とともに、大きくうなずいてしまう内容でした。
労災、団交や訴訟に対するスタンスも、弁護士とは少し違った切り口の物の見方であり、大変参考になりました。

4 エピローグ
この学習会に参加して、当事者にとって一番よい解決策に関する新しい視点を得ることができました。その後、私のアンケートに目をとめた藤野さんより、直接ご連絡をいただき、先日の権利討論集会にもご参加いただきました。
皆様も、学びにより新しいつながりを持つまたとない機会ですので、是非次回の労働相談懇談会(5月17日18時30分~)にご出席ください。

新人学習会 「労働相談入門講座」を受けて

弁護士 加苅 匠

1 新人学習会「労働相談入門講座」
2018年1月31日に、大阪弁護士会で新人弁護士を対象に、労働相談入門講座と題した新人学習会が開かれました。須井康雄事務局長が講師をしてくださり、新人弁護士7名が参加しました。
新人学習会では、弁護士が労働者の方から法律相談を受けた際に注意すべき点、事情を聴きとる際のポイントなどを、須井先生の実体験を踏まえながら、労働問題について具体的網羅的に解説していただきました。

2 事実の聞き取りの重要性
一口に労働相談といっても、多種多様な労働問題についての相談が考えられます。法律関係が複雑・不明瞭なケース、契約書等の資料がないケース、労働者の生活がかかっているケース…。どのような労働相談でも一番大切となるのが事実の聞き取りです。
当事者の把握として、勤め先の支店名はもちろんのこと、所属する部や課、室、そして具体的な指揮命令の流れを聞きだし、組織図、関係図を明らかにすることが、労働者が抱える問題を適切に把握するためには不可欠です。
また評価との峻別も重要です。事実と労働者が事実であると勘違いしたこと・思い込んでいることとは全くの別物で慎重な判断が要求されます。会社から解雇されたとの相談があっても、実際は上司との口論の中で「辞めてやる!」と言っていたケースもあるとのことです。重要な発言や場面は、労働者に実際に演じてもらい、実態を把握することが重要であることを学びました。

3 2018年問題!
学習会の中では、今年4月から適用される有期雇用契約の無期転換権(労契法18条)をめぐる不当な雇止めや不更新条項の問題、今年 10月に3年を迎える期間制限違法派遣の直接雇用みなし制度をめぐる派遣切りなど、今まさにホットな問題についても解説して頂きました。非常に難しい問題を抱える分野であり、法律的な対策を考えていかなければならないこと、労働組合と協力した活動を広げていくことによる解決の模索が必要であることを学びました。

4 新人学習会で学んだことを活かして
労働事件は、事実関係が複雑なうえに証拠が少ない場合も多く、法律だけでなく業種ごとの通達や基準などソフトローにも気をつけなければならないなど事件の見通しを立てることが難しいことも多いです。そして、労働問題の解決手段も多岐にわたります。労働者の権利救済にとって何が最善であるのかを見極めるためにも、今回の労働相談入門講座を活かした法律相談をしていきたいと思います。

SNS活用法講座 ② Facebookを始めよう!

弁護士 清水 亮宏

1 はじめに
SNSは、人と人がネット上でコミュニケーションをとるためのツールとして利用されます。メッセージを送ったり、友達の投稿内容を読んで情報収集したり、自分から情報発信したりと、使い方は様々です。
今回は、よく活用されているFacebookについて、簡単に紹介します。

2  Facebookってどんなサービス?
Facebookは、実名登録という点が特徴的です。実際に知っている人と繋がり、相互にコミュニケーションをとるという使われ方をすることが多いです。

3 アカウントを作成する(メールアドレスが必要です)
まずはアカウント(サービスを使う権利のようなもの)を作成しましょう。パソコンで始める方は「Facebook」と検索してFacebookのページに移動してください。スマートフォンで始める方はFacebookのアプリをダウンロードしましょう。
ページに移動すると(アプリを開くと)、「アカウントを作成」と表示されていると思います。そこを選択して、後は画面に表示される指示に従ってください。

4 友人を検索して友達申請してみよう
アカウントの作成が完了したら、まずは知っている友人とFacebook上で“友達 ”になりましょう。ページの上部に検索ボックス(「検索」と表示された部分)があるはずです。知っている友達の名前を検索してみましょう。その人がFacebookのアカウントを持っていれば、検索がヒットするはずです。名前を選択すれば、その人のページが表示されるので、実際の知り合いであると確認できれば、「友達になる」を選択して友達申請をしましょう(なりすましに注意!)。その人が友達申請を承認すれば、晴れてFacebook上で“友達”になることができます。
誰かと友達になれば、自分が意見や情報を投稿したときに、その人のページに自分の投稿が表示されるようになります。逆に、その人が投稿したときに、自分のページ(「タイムライン」といいます)にその投稿が表示されるようになります。「コメントする」を選択すれば友人の投稿にコメントをすることができますし、「いいね!」を選択すれば、その投稿に共感したことを友人に伝えることができます。このような形で、相互に情報をやり取りできるようになるのです。

5 投稿してみよう
まずは何か投稿してみましょう。自分のページの上部に「今なにしてる?」と表示された部分があるはずです。そこを選択すると入力画面に移ります。「Facebookを始めました。」と入力し「投稿する」(あるいは「シェアする」)を選択してみましょう。これで、あなたが「Facebook始めました。」と投稿したことになり、Facebook上の“友達 ”がこの投稿を見れるようになります。
慣れないうちは難しいかもしれませんが、慣れると簡単に投稿できるようになります。ぜひ、諦めずにチャレンジしてみてください。何度か投稿していると、友人がコメントをくれるかもしれません。

6 友達を増やしましょう
さて、一息ついたところで、“友達 ”を増やしていきましょう。せっかく有益な情報を発信しても見てくれる人が少ないと寂しいですし、友人から入ってくる情報が少ないと楽しくありません。知っている人を思い浮かべて積極的に友達申請をしていきましょう。

7 友達の投稿を参考にしよう
ある程度“友達 ”が増えてきたら、自分のページが友達の投稿でいっぱいになるはずです。“友達 ”の投稿を読んで勉強・情報収集をするのも楽しみの一つですが、“友達 ”がどんな投稿をしているかに着目してみましょう。日常生活についてコメントする、イベントの写真を投稿する、ニュースを引用して意見発信するなど、様々な形で投稿していると思います。友達の投稿を見て、自分の投稿の参考にしてみてください。

8 最後に
今回は、初めてFacebookを始める人向けに基本的な知識を説明しました。
これに対し、Facebookと並んでよく活用されるTwitterは、Facebookと異なり、実際に交友関係にない人とも繋がりを持つことが多いです。影響力のある人と繋がりを作ることで有益な情報が即時に入ってくるようになります。次回はTwitterの始め方を説明する予定ですので、乞うご期待。