民主法律時報

2018年1月号

言語道断 ――年頭のごあいさつ

会長 萬井 隆令

「言語道断」とは、手元の『辞林』(三省堂)によれば、「言葉で言い表しようのないほど、ひどいさま」とある。2017年、そう呼ぶべき事件が相次いだ。

核兵器禁止条約が国連で初めて採択された。信じ難いことだが、「非核3原則」をとるという日本政府は同条約に反対した。他方で、陸上イージスやミサイルをはじめ超高額の防衛装備をアメリカの「言い値」により購入し、対話による平和的解決を目指すのではなく、北朝鮮へ軍事的圧力をかけるアメリカに追随し続けている。憲法に、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と謳う国の政府の態度であろうか。沖縄では小学校の校庭に、アメリカ軍ヘリCH53Eの操縦室の窓枠が落下したが、構造の問題ではなく「人的ミス」で片づけて、飛行を再開し、政府は直ちに容認した。人間はミスすることもあるから、ミスがあっても外れて落ちることはない構造にすべきで、そうなっていないことは「構造の問題」ではないのか。国民の生命、安全を守るべき任を果たすことなく、アメリカの主張を何から何まで容認するとは、言語道断である。

ちなみに、安倍首相は韓国の外相や大使と会談する時、一段高い、豪華にみえる花柄の椅子を使い、相手を見下す形で会っている(写真を見た)。まるでチャップリンの『独裁者』でみるヒットラーで、外交儀礼にも悖るだろうが、それに何も言わない外相ら補佐役も含めて、言語道断。

2016年8月の内閣改造の際に提唱して以降、「働き方改革」という言葉が巷に出回っている。コンサルタント会社などは、業務のあり方を見直したら残業が12%減ったなどと「働き方改革」の効果を宣伝している。以前は「合理化」と呼んでいたことで、政府の「働き方改革」は結局は企業が合理化を進める基盤を整備する改革であり、それを労働者にとって有益なことのように宣伝するのは労働者・国民を欺くものである。政府も、それを復唱するだけのマスコミも言語道断である。

森友学園に対して土地を売る際に、学園側がないと言っているゴミが地下にあったことにすれば、値引きできると国が持ちかける様子の録音が発覚した。「忖度」という言葉が流行り、「丁寧に 謙虚で真摯に くぐり抜け」(池附の綱)。税金の無駄遣いそのもの、言語道断である。

リニアモーターカー建設に絡んで、大林組、清水建設など4つのゼネコンが、これまでに受注した15件のすべてにおいて、「受注調整」して4社均等になるように談合していた容疑で、東京地検特捜部と公正取引委員会が捜査を始めた。そもそも、リニアモーターカーは建設の可否自体が大問題であるし、関連工事は当初、すべてJR東海が負担する予定であったが、安倍政権は公的資金を注ぎ込むという。これも税金の無駄遣いで、言語道断である。

高速増殖炉「もんじゅ」では、空気や水と触れると爆発的に燃焼する液体ナトリュウムが冷却用に用いられているが、それを取り出す装置が設置されていない。核燃料は、何かの事故があった際は至急に引き出して爆発を防ぐ必要があるが、その核燃料の引き出しも容易ではないという。緊急時の核燃料や冷却材の取り出し、さらには廃炉さえも想定しないで設計し、建設し、運転していた。フランスでは廃炉を決定した同型の炉からの液体ナトリュウムの回収が20年経って、ようやく最終段階に入ったと伝えられる。日本原子力機構は具体的な計画もないまま、廃炉の方針を発表した。言語道断そのもの。

幾つかのメーカーの商品に関わるデータの捏造、無資格者による新造車両の点検、異臭・異音の報告を無視した新幹線の運行等々、他にも性格も規模も異なるが、「言語道断」が多すぎる。放置すれば、日本の将来は闇に突入する以外にない。

国民の生命を尊重する政治への転換、公正な国家財政の運営、民主主義の確立等々、私達に課せられた課題は明確である。今は、実践あるのみ。昨年の選挙では幾つも市民連合が生まれて成果を上げ、政治を変える一つの道筋を示した。厳しい年になるが、「明けない夜はない」。おおらかに前へ進みたい。

〔追記〕 言うべきことが多すぎて、約束の字数の倍になった。これは言語道断……ではない。

国に対しても雇用責任の追及を ~医療刑務所偽装請負事件~

弁護士 河村 学

1 はじめに

本件は、偽装請負の状態で、刑務所及び少年鑑別所の車両運転業務に従事していた労働者が、国を相手に、採用その他適切な措置を講じること、損害賠償を支払うことなどを求めた事案である。2017年11月21日大阪地裁に提訴した。
本件は、2012年に改正された労働者派遣法40条の7を活用した初めての訴訟となる。

2 事案の概要

(1) 原告は、2012年4月から2017年3月末まで、6年間にわたって、大阪医療刑務所及び大阪少年鑑別所において車両運転業務に従事してきた。形式上の雇用主はいくつか変わったが、業務自体は全く同じ業務を継続的に行ってきた。

具体的な業務内容は、マイクロバスを運転しての施設収容者の移送・移入の護送を行う業務、救急車を運転して同所収容者の病院(外医診察)への護送を行う業務、官用車を運転して会計課の用務等の送迎業務等で、医療刑務所に用いられている発電機のメンテナンス、施設間の連絡用のバイクのメンテナンスなどの業務にも従事していた。

これらの業務は、国の職員が毎朝作成し原告に示す運行計画に基づいて行われ、また、計画書にない個別の運行指示・整備指示などにより行われていた。

まさに、偽装請負(違法派遣)状態での就労であった。

(2) 原告は、好き勝手に原告を使っておきながら、何か問題が生じた際には、請負会社を使って幕引きを図るという国のやり方が問題と考え、大阪労働局に是正申告を行い、同年11月16日、同局は労働者派遣法違反の事実を認定し施設に対し是正指導を行った。

その後、国は、就労関係を労働者派遣に切り替えようとしたが、医療刑務所から少年鑑別所への派遣は二重派遣にあたり違法であるなどと労働局からさらに指摘され、違法状態は解消されないままであった。

(3) ところが、その直後、国は、2017年4月1日からの運行管理業務の入札を行い、同業務を落札した請負会社(この会社は、かつて同業務につき原告の雇用主であった)は、今回は原告を雇用しないとし、原告は現雇用主より雇止めされた。

3 労働者派遣法40条の7に基づく請求

(1) 労働者派遣法40条の7は、国又は地方公共団体が偽装請負等派遣法違反の行為を行った場合、行為が終了した日から1年を経過する日までの間に、労働者が同一の業務に従事することを求めるときには、採用その他適切な措置を講じなければならないとしている。

しかし、本件において、医療刑務所は、労働者の雇用の安定に資する何らの措置もとらないばかりか、これまで事実上、請負会社が変わっても同業務に従事させ続けてきたのに、今回は、まさに偽装請負状態を利用し、おそらくは請負会社と図って原告を職場から放逐した。

このような違法行為を国が率先して行うことは許されない。

(2) 請求の構成は、「採用その他適切な措置」を講じないことの不作為確認請求と、その義務付け請求、損害賠償請求からなる。

国又は地方公共団体については、民間会社が派遣先の場合に適用される労働契約のみなし申込み制度(労働者派遣法40条の6)が適用されないため、訴訟上の工夫は必要であり、また、脱法の意図や、故意・過失などあいまいな要件も付加されている。しかし、国会答弁でも、同法40条の7は、みなし申込み制度と同様の措置をとるものとされおり、就労実態を真摯にみれば適切な判断をなし得る事案である。

国・地方公共団体の雇用責任をどう判断するのか、まさに司法の真価が問われる訴訟である。

4 労働者全体の利益を代表する運動を

労働者派遣の問題に限らず、国・地方公共団体の一部は、民間会社と競い合うようにして、生活のため抵抗できない非正規労働者を買いたたき、使い捨て、極めて貧弱な労働者保護法制すら守らずに済まそうとしている。そして、その行為を支えているのが、何をしても裁判所は国・地方公共団体の味方、困難を排して抵抗に立ち上がった労働者がいても、きっと裁判所がその労働者を叩きのめしてくれる、見せしめにしてくれるという自信である。

労働組合をはじめ労働運動に携わる人たちは、このことを忘れず、連帯を強め、政治を変え、裁判所を変える運動を強めることが必要である。

(弁護団は、村田浩治、河村学、小野順子)

東リ伊丹工場みなし雇用確認事件 ―― 19年間の「偽装請負」から派遣法で社員化を目指す5名の闘い――

弁護士 村田 浩治

1 事実経過

床材、カーペット、カーテン、住宅建材等の製造販売をする東リ株式会社の伊丹工場では、その主力製品である巾木(部屋の床と壁の狭間に使用される建材)工程に遅くとも 年前から株式会社ライフイズアート(LIA)に所属する労働者が仕事をしてきた。契約上は、構内で巾木と化成品の工程は業務委託の形式で 名が働き、他の工程と事務の労働者派遣が6名という陣容だが代表者一人の事務所はマンション一部屋の個人会社であり、代表者が工程に関わることは全くなく、派遣先も東リだけの実質個人事業者だった。

2015年夏、派遣法改悪の最中、代表者のパワハラに我慢できず、連合兵庫ユニオン傘下の労働組合が結成され、瞬く間に80パーセントの従業員が組合員となった。当初は、LIA社長のパワハラに抗議し割増賃金を求め、未締結の36協定を締結するなどしていたが、やがて、東リからの契約次第で賃金が決定する会社から賃下げが一方的にされるなどの不当労働行為が起きた。これがきっかけとなり、組合が相談にやってきた。

2 偽装業務委託(偽装請負)の実態

しかし、就労の実態を聞く限り、彼らが、東リの組織に組み込まれ、毎日ノートやメールを通じて製造課、品質管理課から指示がされ、さらに東リ社員と何ら変わりなく、クレーム対応や品質改善の報告書を提出させられているという実情を知るにいたった。このような実態は労働者派遣に間違いないと判断した代理人の助言を受けて組合執行部は、LIA所属の就労から抜けだし東リの直用を求める方針を打ち出すにいたった。2015年10月1日から施行された労働者派遣法のみなし規定(40条の6、5項)の適用に基づいて、2017年3月に内容証明郵便にて「承諾通知」を発信し、3月27日付で東リに対し承諾による契約成立後の労働条件を協議するための団体交渉を申し入れたが、東リがこれを拒否したため、2017年11月21日、神戸地方裁判所に提訴するにいたった。

3 新会社による採用拒否の不利益取扱と団交拒否で不当労働行為救済申立

実は東リは、2017年4月から大手人材派遣会社に切り替え、従前のLIA従業員らを全員新会社に移籍させ、なんと労働者派遣契約を締結しなおした。労働組合内では承諾通知を発送する方針を巡って、16名いた組合員の大半が組合を脱退し、5名の組合員が残留したが、残留した組合員5名だけが新会社から「不採用通知」を受けたため4月に兵庫県労働委員会に対し東リと採用拒否した新会社であるシグマテックに対し、不利益取扱と団体交渉拒否の救済を求める申立も行っており、現在調査期日を重ねている。

4 訴訟の争点と課題

残留した組合員は、仕事を奪われ、雇用保険とアルバイトで生活を支えながら、労働委員会闘争と訴訟を余儀なくされている。長い者で19年、短い者でも4年以上、工場内で東リ社員と変わりなく仕事をしていた人達である。派遣法のみなし規定の適用には、会社が派遣法の適用を免れる目的をもっていたこと、違法であることを知っていたか知らなかったことに過失があることが必要とされる。しかし、製造業が許されていなかった19年前から偽装請負を続け、派遣法施行後もその契約を継続したうえ、当然2017年4月から突然労働者派遣契約に切り替えた会社に労働者派遣法の適用を免れれる目的がなく、善意無過失である等という判断を裁判所にさせてはならないと考える。当事者は連合兵庫ユニオン加盟のまま闘いを続けているが、今のところ上部団体からの支援は受けられず、孤独な闘いを続けている。民法協の組合の応援もぜひお願いしたい。

(弁護団は、村田浩治、大西克彦、安原邦博)

派遣先に対する 労働者派遣法40条の6に基づく直用化訴訟 ~全港湾阪神支部・名古屋支部の組合員らによる日検名古屋支部に対する直接雇用地位確認訴訟~

弁護士 冨田 真平

1 はじめに

全港湾阪神支部・名古屋支部の組合員である日興サービス株式会社の従業員16名が、派遣先である一般社団法人日本貨物検数協会(日検)名古屋支部に対して労働者派遣法40条の6(直接雇用申込みみなし制度)に基づき、直接雇用される地位にあることを確認する訴訟を、2017年11月27日、名古屋地方裁判所に起こしました。本件は、2015年10月に施行された申込みみなし制度を使った(弁護団が把握している限りでは)2例目の裁判になります。

2 日興サービスの従業員の日検での就労実態

日検は、国際物流の検数、検量、検査などを営む一般社団法人です。日検の事業の一つである検数業務とは、港での荷物の積卸の員数を検数して、荷主側と船会社の相互間に介在し、貨物の正確な個数・重量等を受け渡すというものです。検数業務には専門的技術を要するため、日検など4つの協会の職員や、これらの協会の指定事業体(関連会社)の労働者でなければ行うことができません。

日検の指定事業体の一つに名古屋市に本社を置く日興サービス株式会社があります。日興サービスの従業員は、入社後検数業務について日検名古屋支部の職員から説明・指導を受け、勤務場所・時間についても日検名古屋支部の職員からメールや電話で指示を受けるなど、日検名古屋支部の職員の指揮命令の下、日検名古屋支部が受託した検数業務に従事しています。

このように日興サービスの従業員の就労実態はまさに派遣労働であり、日興サービスの従業員にとって日検は実質的に派遣先なのです。

3 直接雇用を実施するとの確認書の締結

全港湾阪神支部及び名古屋支部は、従前から日検及び日興サービスに対し、日興サービスの従業員の低賃金・長時間労働の改善等を強く要求するとともに日検への直接雇用を求めて組合活動を活発に行ってきました。これに対し、日興サービス及び日検は、これらの組合活動を嫌悪し、日興サービスで働く全港湾阪神支部及び名古屋支部に所属する組合員に対して、就労差別などの不当労働行為を繰り返してきました。そこで、全港湾阪神支部及び名古屋支部は、2016年3月に、愛知県労働委員会に対して不当労働行為救済申立を行い、その後日検からの申し出により和解に至りました。その中で、日検は、全港湾阪神支部に対して、「指定事業体からの職員採用に関しては、平成28年度から平成30年度まで、毎年度約120名の採用を実施するよう努力する」ことについても文書で確認しました。

4 不当労働行為救済申立・その中で明らかになった日検の偽装請負

全港湾阪神支部は、同確認に基づいて、日検に対して、日興サービスで働く全港湾の組合員を採用するよう申し入れました。しかし、これに対し、日検はこの確認を一方的に反故にし、日興サービスの従業員と労使関係にないとして団体交渉を拒否しました。そこでやむを得ず、2016年11月に大阪府労働委員会に不当労働行為救済を申し立てました。

上記府労委での審査が進む中で、労働委員会から日検に対し、日興サービスの従業員が労働者派遣法上の派遣労働者であることの確認や日検と日興サービスとの間の契約内容を明らかにするよう求める求釈明がされましたが、日検はなかなかこれらを明らかにしませんでした。これを不信に感じた組合が日興サービスとの団体交渉において今までの日検との契約形態を明らかにするよう求めたところ、請負形式で行っていたことを明らかになり、偽装請負が発覚しました。さらには、日検と日興サービスが2016年1月に労働者には一切明らかにせず秘密裏にその請負契約を派遣契約に切り替えていたことも明らかになりました。

しかし、偽装請負が発覚した後も、日検の態度は一向に変わりませんでしたので、本件提訴に至りました。

5 日検に使用者としての責任を認めさせるために

様々な違法に加えて、偽装請負・直接雇用拒否という違法を重ねる日検に使用者としての責任を認めさせ、派遣労働者の雇用の安定を図るために、一丸となって労働委員会と本裁判を抜く所存です。皆様におかれましても本件提訴へのご支援のほどお願いいたします。

(弁護団は、坂田宗彦、増田尚、西川大史各弁護士と冨田真平)

またもや、 生活保護基準の引き下げ! 都市部の世帯、子どものいる世帯、母子世帯に大きな被害がおよぶ!

全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連) 会長 大口 耕吉郎

今年から3年かけて引き下げようとしている厚生労働省案とは

安倍政権は、2013年~2015年にかけて生活保護の生活扶助基準(衣食その他の日常生活の需要を満たす扶助費)の引き下げ(最大マイナス10%、平均マイナス6.5%、マイナス670億円、戦後最大の引き下げ)、さらに、2015年には住宅扶助の削減(マイナス190億円)と冬季加算の削減(マイナス30億円)を行いました。今回の引き下げ案はこれに続くものです。

厚生労働省案では、2018年から3年かけて生活扶助費をはじめ、母子加算、児童養育加算、学習支援費などの削減を行おうとしています。

名古屋市立大学の専任講師・桜井啓太氏によると、母子加算は月額2万1000円(平均)から1万7000円に削減(マイナス69億8千万円)。減額されると生活保護を利用している母子世帯の子ども18万8千人が影響を受けます。児童養育加算は、月額1万5千円から1万円に減額(マイナス13億3千万円)されます。対象となるのは0~2歳の児童2万2305人です。学習支援(年額)は小学生3万1560円、中学生5万3400円、高校生6万1800円が大幅にカットされます(改悪案:支援はクラブ活動にかかる費用のみとする)。実施されると18万9千人の子どもに影響が出ます。

生活扶助費の削減も強行しようとしています。とくに都市部の保護世帯に狙いを定めています。桜井氏の試算によると、大阪市などの大都市部の1級地の1の生活扶助の引き下げは表のようになります。

 

2017年

2018年

30代夫婦と子(3~5歳)

14万8380円

14万4760円

40代夫婦と子2人(小学生・中学生)

18万5270円

17万6007円

40代母子と子2人(小学生・中学生)

15万5250円

14万7488円

75歳単身世帯

7万4630円

7万0899円


現実を見ないギマンに満ちた基準引き下げ

今回の引き下げ根拠は、第1・十分位の消費水準に合わせたものです。第1・十分位とは、所得階層を に分けた下位10%の所得階層です。しかし、日本の生活保護の捕捉率(生活保護を利用しなければならない世帯のうちどれだけ捕捉しているかの率)は20%未満しかありません。したがって第1・十分位の階層の中には生活保護以下の所得の人たちが多くふくまれています。この階層を「基準」にすれば、引き下げに歯止めがかからなくなるでしょう。

厚生労働省の生活保護基準部会(2017年12月14日)でも第1・十分位の単身高齢世帯の消費水準が低すぎるという意見が出ています。

今回の引き下げ案は、生活保護法第1条の「日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障」するという理念を放棄するものであり、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と定めた憲法25条を完全に否定するものです。

引き下げは、生活保護の問題だけではない

生活保護基準は1級地から3級地まであります。1級地は大阪市や堺市など、2級地は富田林市など都心部から離れた市、3級地は岬町や能勢町です。住民税非課税となる所得限度額が1級地35万円、2級地31万5千円、3級地28万円と定められています。

2013年に生活保護基準が引き下げられましたが、住民税非課税基準は引き下げられていません。これは各種制度に与える影響が大きいため、国は今のところ引き下げをストップしています。同時に生活と健康を守る会をはじめとする多くの団体の運動のがんばりによるものです。

吉永純(あつし)花園大学教授によると、もし、住民税非課税の限度額が引き下げられ、それまで非課税だった人が課税されると、医療費の自己負担限度額は3万5400円から8万円以上になり、障害児・者の居宅・通所サービス料を免除されていた人が、9300円~3万7200円以下の負担を強いられます。

最低賃金法にも影響します。最低賃金は生活保護基準と整合性を持たせると明記しています。また各種減免制度も生活保護基準を目安にしています。就学援助は引き下げられ28万人(2015年時点)の生徒が認定除外となりました。

これからの運動

2013年の生活保護基準引き下げでは、生活と健康を守る会をはじめ、全国の反貧困団体が怒りを込め、1万件以上の審査請求をおこないました。それまでの生活保護の審査請求数は2009年の約1000件が過去最大でした。現在、全国で900人以上の生活保護利用者が裁判を闘っています。昨年は裁判を支援する全国の会「いのちのとりで裁判全国アクション」が結成されました。今回の引き下げはこれまでの運動を上まわる闘いが求められています。全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)は多くの団体・個人と共に頑張る決意です。

民法協学習会  “職場における人格権”を考える

弁護士 馬越 俊佑

1 はじめに
2017年12月1日に、「職場における人格権を考える」と題しまして、学習会を開催いたしましたので、ご報告させていただきます。参加者は33名であり、盛況となりました。

2 開会の挨拶
初めに、村田浩治弁護士より開会の挨拶をして頂きました。概要は以下のとおりです。

最近は、「自分の家庭を仕事に捧げる」、「仕事に支配されている」という感覚がすみずみまで行き渡ってしまっている、という印象を受ける。「いかに熱心に会社に捧げるか」になってしまっている。一見すると関連しない事件にも思える「ひげ裁判」と「ヘイトハラスメント裁判」であるが、簡単にいうと会社に文句を言えないような風潮があり、両事件とも「職場における人格権」が問題になっている。本日は普遍的に議論していただく、西谷先生に講演をしていただくことになった。議論を深めていただきたい。

3 講演
続いて西谷敏大阪市立大学名誉教授より、「職場における人格権の保障――使用者による労働者の思想信条の自由と私的領域への侵害に抗して――」と題しまして、講演していただきました。概要は以下のとおりです。

ひげ裁判とヘイトハラスメント裁判に共通するのは「職場における人格権侵害」という点である。背景には使用者との従属関係が進展し、労働者の自由な人格権と抵触してしまっているという事実がある。労働者は一人の主体であるにも関わらず、会社に従属する一部とされてしまっている。

労働者が一人の権利者として尊重される権利、これが人格権である。出発点は、「 時間自由な一人の個人としての労働者」であり、職場秩序というものを前提としてはならない。

労働者個人は性別、国籍、思想等、様々な属性を持っており、これをダイバーシティ(多様性)という。自己決定権を尊重することがダイバーシティである。

人格権の制約根拠は労働契約である。労働契約上の労働義務と個人の自由、自己決定権をどの点で折り合うかが、人格権の保障の範囲の問題である。これを侵害すると不法行為になる。

ひげ裁判でいうと、本来、服装・ひげを生やすかどうかは労働者の自由な自己決定に委ねられている。問題は、労働義務との関係で、それが職務の性質上、職務遂行に明らかな悪影響を及ぼすか否かである。例えば、結婚式場の従業員が「喪章」をつけることは、悪影響があるから認められない。しかし、重要なのは悪影響があるか否かを判断する顧客は「憲法と法律の精神をふまえた良識ある市民」を基準としなければならない点である。良識ある市民から見てもひどい、という場合は制約を受けることになる。従来の判例によれば、本件は明らかに行き過ぎである。

ヘイトハラスメント裁判でいうと、そもそも、人種・国籍は労働者の努力でどうすることもできない、平等原則の根幹である。本件で会社から配布された資料は、労働者個人への攻撃が直接的な目的ではなくても、毎日、原告に嫌悪感を覚えさせる宣伝である。被侵害利益は「自分の属性をいわれなく非難されない権利」「良好な職場環境で就労する権利」「自由な人間関係を形成する権利」といったものになるだろう。使用者にも言論の自由はあるが、労働関係における場合、特別の考慮を必要とする。本件でいえば、あまりに大量な嫌韓資料を、会長が嫌韓の言説部分等に印までつけて配布しているのであって、良好な職場環境を侵害しているといえる。

4 事件報告
ヘイトハラスメント弁護団、ひげ裁判弁護団から、事件の報告をしていただき、原告からご発言いただきました。各弁護団から詳細な報告を頂き、原告からも切実な被害についてご発言いただきました。

5 まとめ
職場における人格権について考えるよい機会となり、大変勉強になりました。西谷先生、各訴訟の原告や参加された皆様、ありがとうございました。

法律家団体による街頭宣伝のご報告

弁護士 清水 亮宏

1 働き方改革関連法案に反対する街頭宣伝を行いました!
2017年12月7日18時から、淀屋橋駅前で街頭宣伝を行いました。民法協・大阪労働者弁護団・労働組合などを中心に、十数名が淀屋橋駅前に集まりました。弁護士は法的観点から、労働組合は働き方の実態から、働き方改革関連法案を批判し、まともな法規制を求めて声を上げました。

今回の街頭宣伝では、法律家団体の有志でビラを作成し、ティッシュと一緒に配布しました。ティッシュと一緒に配布したこともあり、多くの方にビラを手に取っていただくことができました。

2 日本労働弁護団日比谷集会との中継
同じ日時に、日本労働弁護団が日比谷公園で働き方改革に関する集会を開催していました。この集会では、集会の会場と各地方(北海道・福岡・大阪)と中継をするという珍しい試みがありました。大阪からは、淀屋橋での街頭宣伝の様子を中継するという形で参加させていただき、これまで開催した集会の内容や街頭宣伝等の取組みについて紹介しました。また、弁護士や労働組合の街頭宣伝の様子の中継も行いました。

カメラワーク・進行法・話し方など、反省すべき点が多々ありましたが、中継の試みは、集会を盛り上げるための面白いアイデアだと感じました。今後、同様の取り組みが計画された場合には、今回の反省を活かしたいと思います。

3 今後も継続して街頭宣伝を行います!
まだまだ働き方改革関連法案の問題点が市民に伝わっていないのではないかと感じます。2018年は、働き方改革関連法案の議論が本格化する時期ですので、過労死ラインを容認する上限規制や裁量労働制・高度プロ制の問題点等について、わかりやすくアピールしていく必要があります。長時間労働と残業代の問題については、市民の関心が高いように感じますので、これらに関連させて問題点をアピールすることが重要だと思います。
今後も継続して街頭宣伝を行う予定です。次回以降の街頭宣伝にぜひご参加ください。

第50回働くもののいのちと健康を守る学習交流集会――「ホワイト」な働き方を労働者の手で

弁護士 馬越 俊佑

第1 はじめに
2017年12月9日に、第50回いの健学習交流集会がございましたので、報告させていただきます。

第2 午前の部
1 開会の挨拶
大阪職対連福田副会長の司会により始まり、はじめに川辺和宏実行委員長より開会の挨拶をしていただきました。概要は以下のとおりです。
昨今、新聞でも過労死、長時間労働の話題が大きく取り上げられている。この問題は根が深い、 協定を労働組合と結ばなければ、長時間労働はさせられないのであり、労働組合が闘わなければならない。どういう風に組合が存在意義を発揮するかが重要になる。労働者の処遇も含めて社会的にどう闘って行くか、職場からどうやって跳ね返していくかが重要である。

2 記念講演

続いて、全労働省労働組合近畿地方協議会の宮木義博氏から、「政府のすすめる『働き方改革』いのちと健康を守るために」と題しまして、記念講演をしていただきました。
以下、内容の概要を紹介いたします。

現政権の根底には「新自由主義」がある。中身は小さな政府と自由な競争である。小さな政府とは税負担の最小化、その反面となる社会保障などの縮小である。医療費や介護費用、年金を削減し、子育て支援とは言いつつ、育児環境整備が遅れ、現状は親が見るしかない状態である。自由な競争とは経済の活性化、その反面となる貧富の格差の拡大である。労働組合の存在を否定し、労働生産性の向上を重視する、これによる低所得者層の「爆発」を抑えるために最低限の「生きていける」状況を作るというものである。

長時間労働の是正についていうと、時間外労働の上限については年720時間とされているが、80時間の月平均の上限規制から720時間を12ヶ月で割った60時間を差し引いた20時間を休日労働時間に逃せば、結局は80時間×12ヶ月の960時間は時間外労働がさせられるということである。また、時間管理義務についても規定されなかった。ここを管理させないと結局意味がない。

高度プロフェッショナル制度「特定高度専門業務・成果型労働性」についていえば、重要なのは、成果型とはいいながら、この制度の中に、「成果を上げれば、賃金を上げる」などとは一切書かれていない点である。使用者側が始業、終業時間を決めることになっており、労働者側が決めるとはされていない。

安衛法の改正についても、一見すると、医師の権限が強化されたように見えるが、結局は会社との契約で成り立っている産業医であるため、どれだけ権限を行使できるのかは疑問である。

3 支援の訴え
パナソニックアドバンストテクノロジー事件訴訟について原告から支援のお願いがありました。職場でのパワハラ、いじめを根絶するための重要な訴訟であり、支援をお願いいたします。

第3 午後の部
1 分科会
午後から分科会がありましたが、私は第1分科会職場のメンタルヘルス~メンタルヘルスの基本と経験を学ぼう~に参加いたしました。
国本医師から、メンタルヘルスの基本的な知識を教えていただきました。現在では、これまでの「モデル」では説明できない類型が議論されてきている、最近では、「恐怖症」に類似しているのではないかという議論もある、というお話をお聞きし、大変勉強になりました。
また、各参加者から、労働現場の現状についてお話いただき、職場の現状を知る良い機会となりました。

2 閉会集会
分科会後、閉会集会が開かれました。各分科会の報告をし、真野実行委員会事務局長から閉会の挨拶がありました。
「いのちと健康の問題には、特効薬はないが、学んで取り組むということを常備薬にしてがんばっていきましょう。」という言葉が印象に残っています。
全大会の参加人数は73名、第1分科会23名、第2分科会9名、第3分科会25名と大変盛況となりました。次回はぜひ皆様にも参加していただきたいと思います。

北河内権利討論集会の報告

弁護士 鶴見 泰之

 2017年12月10日、寝屋川市にて、第 回北河内権利討論集会が開催されました。民法協からは、須井、小林、愛須、長瀬、片山、鶴見の計6名の弁護士が参加しました。
午前中の全体会では、須井弁護士から、「改憲発議を許さない運動の先頭に立とう」というテーマでの講演が行われました。

昼食休憩を挟み、午後からは、①「各職場での要求実現への経験交流」、②「職場の悩み、権利侵害等交流会」、③「非正規から正規への無期転換 労契法 条の活用と課題」の3つの分科会が実施されました。私が担当した③の分科会では、30分程度で無期転換ルールの説明を行い、1時間30分を質疑応答や参加者同士の議論の時間に充てました。参加者から受けた質問を2つ紹介したいと思います。

1つ目の質問は、業務委託に関するものです。事例を交えて質問内容を紹介しますと、Y社から業務委託を受けたA社が、Y社の工場でA社が雇用する有期契約労働者Xらを指揮命令した上で3年間就労させていましたが、次期競争入札でY社の業務をA社が落札できずにB社が落札し、A社の労働者をB社が引き継ぐことになり、Xらは、B社との間で新たに有期労働契約を締結し、Xらは、これまで通りにY社の工場で新たに2年間継続して就労している(Xらは、通算、Y社の工場で5年間就労してきた)という事案において、「XらのY社での就労期間が5年を超えていれば、XらはB社に対して、無期転換の申込みができるのか?」と質問を受けました。

無期転換ルールとは、同一の使用者の下で、有期労働契約が反復更新され、契約期間が通算で5年を超えたときに、労働者の申込みにより、使用者は無期転換の申込みを承諾したものとみなし、有期労働契約が無期労働契約に転換される制度のことをいいます(労働契約法 条)。
Y社の工場で5年以上就労していたとしても、Xらの使用者がA社からB社に切り替わっていますので(同一の使用者ではありませんので)、この場合、無期転換ルールは適用されません。

2つ目の質問は、「派遣労働の場合、労働者と派遣先との間で無期労働契約が成立するのか?」というものです。

労働契約は、労働者と派遣元事業主との間で結ばれていますので、無期労働契約は派遣元事業主との間で成立し、派遣先とは契約は成立しません。

参加者からは、派遣先との間で、無期労働契約が成立しないと、雇用の安定にはつながらないのではないかとの感想が寄せられました。
これらの質問以外にも、無期転換された労働者に適用される労働条件が、就業規則などの「別段の定め」により、従前の労働条件よりも不利益な内容に変更される場合のことなどを議論しました。
今後も、無期転換ルールについての議論を深めていきたいと感じる分科会でした。

SNS活用法講座 ① ~SNSを活用すべき理由~

弁護士 清水 亮宏

1 SNSは社会に欠かせないツールに
今や、7割以上の人が主要なSNS(LINE、Facebook、Twitter等)を利用する状況にあります(2017年の総務省情報通信白書より)。スマートフォンの普及に伴い利用率が上昇し、若者世代では、ほとんどの人が何らかのSNSを利用する状況にあります。

今や、SNSは社会に欠かせないものであり、社会運動においても必要不可欠なツールとなっていると言っても過言ではないでしょう。特に社会運動において積極的に活用されているFacebookとTwitterについては、次回以降で、具体的な使用方法を紹介する予定ですが、今回は、社会運動に関わる人がSNSを活用すべき理由を紹介します。

2 効果的な情報発信のために
何といっても、外部への情報発信のために必要です。

①SNSの影響力
街頭宣伝と同じくらいの労力をSNSに割くべきです。SNSでは、一瞬で、簡単に、多くの人に情報を伝えることができます。多くの人に情報が伝達されるための「拡散」の仕組み(リツイート等)も用意されています。情報発信力がまだまだ不十分な人でも、影響力の大きい人に「拡散」してもらうことができれば、そこから多くの人に情報を届けることができます。
さらに、人間は知っている人の意見に影響を受けやすいという点を無視できません。SNSでは、繋がりのある人に情報発信することになりますから、知らない人に情報発信するよりも効果的な場合があります。

 ②イメージアップに
実際には意義のある活動をしていても、その活動が外部からわからないと、信用できる団体なのか判断に迷うことがあります。定期的に情報発信していると「この団体はちゃんと活動しているだな。」と感じてもらうことができ、イメージアップにつながります。

 ③SNS発のニュースを
社会問題に関連する話題を活動家等がSNSで取り上げ、SNS内で議論が盛り上がることで、それがニュースで取り上げられるケースが増えています。「SNS発のニュース」が増えているのです。労働組合や弁護士のSNSでの発言が記者の目に留まり、取材を求められるケースもあります。

3 情報共有や人的交流のために(情報発信だけではない)
忘れがちですが、SNSは情報発信だけのためのツールではありません。SNSで繋がった仲間が共有するニュースやコメントを見て、自ら情報収集ができるのです。新聞やテレビなども重要な情報源ですが、繋がった仲間のコメントや意見から学ぶものも多いです。

また、集会やイベント等で知り合った人との関係は、その場限りで終わってしまうこともありますが、一度SNSで繋がってしまえば、投稿に対するコメントなどを通じて定期的に交流ができますし、その人自身のことや多様な意見に触れることができます。連絡したい場合には、気軽にメッセージを送ることもできます。
情報発信するだけがSNSではありません。とりあえず、アカウントを作ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。