民主法律時報

2017年10月号

労働者の生活・権利擁護に背を向ける裁判所を批判する――吹田非常勤職員雇止め事件大阪高裁判決

弁護士 河 村   学

1 事案の概要

本件は、吹田市において、生活指導員として21年ないし25年間にわたって任用(任期は1年)を継続してきた非常勤職員2名が、その担っていた職務の民間委託に伴い雇止めされた事件である。担っていた職務は高齢者・障害者福祉事業(デイサービス等の事業)であり、事業廃止に伴い、同職務に従事していた正職員は転任され、当該非常勤職員は、「(最後は6か月とされた)任期が終了した」という理由で雇止めされた。

民間であれば、労働契約法19条が適用され、吹田市が雇止めを行う合理的理由は何もないので、雇止めが無効とされる事案である。この事案について、非正規公務員も、民間労働者と同じように、その仕事に誇りを持ち、その仕事で生計を立てているのに、民間の使用者なら権利の濫用とされる行為が国・自治体が使用者なら許される、こんなことが裁判所で通用するのかが問われた。

しかし、本件につき、大阪地裁(大阪地判平28・10・12。裁判官―内藤裕之・菊井一夫・新城博士)、大阪高裁(大阪高判平29・8・22。裁判官―河合裕行・永井尚子・丸山徹)は、労働者の請求を棄却した。国・自治体がすれば「こんなこと」も通用するし、労働者の誇りや生活など裁判所が気にすることではないから考慮もしないという、極めて冷淡な判決であった。

2 判決の内容

(1) 裁判所は、判断の冒頭で、「任用予定期間経過後に再び非常勤職員として採用される権利若しくは採用を要求する権利を有しているものではないし、当該非常勤職員が任用の継続を期待することは合理的であるとはいえず、控訴人らの上記期待それ自体法的保護に値する利益とは認められ」ないと断定する。

この点、別件で同様に公務非常勤職員の雇止めが問題となった守口市非常勤職員雇止め事件(大阪高判平29・4・14。裁判官―山下郁夫、杉江佳治、久末裕子。地裁判決は本件の裁判体と同じ)では、「雇止め制限や解雇に関する法理が類推適用される余地はない」「労働契約法19条を類推適用することができないことは明らか」「信義則違反又は権利濫用により違法かどうか…について判断するまでも」ないとまで述べている。

公務員には、民間労働者に認められている雇止め制限法理及びその根拠となっている労働者の雇用継続に対する期待の保護を一切認めないという内容である。

(2) では、その理由は何か。裁判所の理由は次の3つである。①公務員の任用は行政処分である。②非常勤職員の採用は地公法17条1項に基づいて行われる公法行為である。③地公法15条は職員の任用は成績・能力に基づき選考しなければならないと定めている。

細かな理屈は省略するが、これらはいずれも裁判官による断定であって、なぜその解釈が正しく・妥当なのかについては何ら述べていない。裁判所が最も強調するのは③であり、結局、裁判所が理由とするのは、選考という自治体の任用「行為」がない以上、任用は認められないという点に尽きる。極端にいえば、自治体が思想差別・男女差別等の目的で一部の非常勤職員だけ排除しても、自治体が定年まで必ず任用を更新するとの明確な約束を反故にしても、自治体の任用「行為」がない以上、労働者は職員としての地位を守ることができない、自治体の信義則違反や権利濫用があっても同じである、というものである。

本件判決では、労働者が希望すればその実績に問題がない限り当然に更新が行われてきたとの主張に対して、「選考がなされたことを否定するような事情(…)も見出せない」から選考はあった旨の判断を行っている。自らの結論に合わせるために、選考がなかったという証拠はないから選考はあったという解釈までしている。

3 公平でも人権の砦でもない裁判所

(1) この間、情報開示によって、平成27年12月11日、最高裁判所の組織である司法研修所が主催して、大阪・東京の労働部裁判官などを集め、「労働事件をめぐる実務上の諸問題」と題する研究会を行っていたことが判った。講師の一人は大阪地裁労働部の内藤裕之裁判官であった。そして、この研究会の場では、「任期付き公務員の任用が継続されるとの期待と国家賠償責任」とのタイトルで討論が行われていた。

その討論の内容や、研究会の持ち方など問題は多いが、問題の一つがその設例である。設例とされた事案は、前記守口非常勤職員事件(裁判長は内藤裁判官)と瓜二つであり、しかも、同事件は、この研究会が開催された当時、未だ争点整理の段階で、証人尋問も行われてはいなかった。そのような時期に、同事件で大きな争点となっていた労使合意の内容に関し、当局側の主張に沿った事実認定を前提に損害賠償請求の可否が議論されていたのである。労働者側の必死の訴訟活動をよそに、予断をもって結論を決め(そう見える)、これを前提に請求の可否について最高裁主催の裁判官の集まりで検討していたのであれば、およそ公平な裁判所とはいえない。

(2) 
今年5月、地公法が改正され、会計年度任用職員制度が創設された。その結果、明文上は、任期付き職員をどのような公務職場にも恒常的に利用でき、かつ、何時でも、どのような理由でも雇止めできる職員が生まれることになる。この職員は、明文上、労働契約法18~20条の保護もないため、任用継続に対する期待も全く保護されず、正職員の労働条件との不合理な相違さえ是正されない、労働基本権も制約されるため、争議権を行使できず、労働委員会への救済申立てもできない。この日本でもっとも権利・生活が保護されない労働者が誕生する。

(3) 
政府も、裁判所も、とりわけ非正規労働者に対しては、労働者の誇りや生活を顧みないということで一致し、貧困と格差を助長し、労働の商品化を推進しているのが現状である。

戦後、ある最高裁判事は、「裁判官は体制的でなければならない。体制に批判的な考えをもつ人は裁判官をやめて、政治活動をすべきだ。…。悪法といえども法は法であり、その法律に従うことが裁判官の職務上の義務でもある」と述べた。現行憲法を擁し、少数者・弱者の自由権・生存権・労働権を保障するこの国において、その保障を求める訴えを政治活動と非難し、裁判所は体制的であるべきとする体質は、現在も続いている。

本件は、上告受理申立てを行い、最高裁に係属している。

(弁護団は、豊川義明、城塚健之、中西基、谷真介、楠晋一、河村学)

大阪市組合事務所団交拒否救済申立事件

弁護士 冨 田 真 平

1 はじめに

橋下市政以降続いてきた大阪市の組合事務所の問題について、2017年9月11日、大阪市による、大阪市労組の組合事務所の供与についての団交申し入れに対する団交拒否について救済を求める申立を、大阪府労働委員会に申し立てました。

2 大阪市組合事務所についての裁判・労働委員会での闘争

大阪市労組の組合事務所については、2006年7月、本庁舎地下1階に組合事務所を置くことが合意され、それ以降、形式は行政財産の目的外使用許可申請を行い、これが許可される形で組合事務所の使用を継続してきました。

しかし、大阪市は、2011年12月に就任した橋下市長の全ての便宜供与を廃止するという方針のもと、2012年度の使用許可申請について不許可処分を行い、その後も組合の申請を不許可としてきました。

大阪市労組は、このような大阪市の不当労働行為に対し、裁判・労働委員会で闘う方針で意思統一し、地裁への提訴、労働委員会への救済申立を行い、裁判・労働委員会での闘争を続けました。

労働委員会では、大阪府労委命令(2012年2月20日)・中労委命令(2015年10月21日)において、大阪市の不当労働行為が断罪され、同命令に基づいて、2015年12月15日、大阪市が誓約文を手交するに至りました。

他方で、裁判については、地裁判決において全面勝訴したものの、高裁判決で逆転敗訴し、2017年2月1日、最高裁判所第二小法廷(裁判長 菅野博之)が、市労組らの上告を棄却・不受理とする不当な決定を行いました。この最高裁の不当な決定を受け、2017年3月16日、大阪市労組は、断腸の思いでこれまで守り抜いてきた本庁舎の組合事務所を明け渡しました。

3 大阪市の団交拒否

大阪市労組は、裁判・労働委員会での闘争と並行して、大阪市に対し、2012年度使用不許可処分時以降、毎年のように、使用許可申請や同不許可処分の前後に、組合事務所の使用その他を交渉議題とする団体交渉を開催するよう申し入れてきました。しかし、大阪市は、管理運営事項(地公法55条3項)や労使関係条例を口実として、一貫して団体交渉に応じない態度をとってきました。

そして、そのような大阪市の態度は中労委命令が出されて以降も変わることもなく、本年3月に行った団交申し入れに対しても、約2ヶ月以上放置した上で、団体交渉の開催を拒否する回答を行いました。

そこで、この大阪市の団交拒否に対し、労働委員会に救済の申立を行うこととなりました。

4 闘いは再び府労委に

橋下市政以降続く大阪市との闘いは、再び府労委に闘いの場所を移すこととなりました。

労働組合にとって活動の基盤である組合事務所の問題は、まさに労働組合の存続に関わる重大な問題であり、団体的労使関係の運営に関する事項として、当然団体交渉の対象となるべき事項です。

最高裁の不当な決定を受け、組合事務所を明け渡すことにはなりましたが、今後も組合事務所の供与を求めることは、組合の当然の要求であり、これについて管理運営事項や労使関係条例を盾に一切団体交渉に応じない大阪市の態度は許されるものではありません。

このような大阪市の不当な態度に、労働委員会でノーを突きつけ、労働組合が自由な活動を展開できる正常な労使関係を取り戻すため、一丸となって闘っていきたいと思います。

今後ともご支援のほどお願い申し上げます。

(弁護団員は、豊川義明弁護士、城塚健之弁護士、谷真介弁護士、及び冨田の4名です。)

日東電工復職拒否事件について

弁護士 中 西  基

1 はじめに

障害のある労働者が合理的配慮の提供を受けられないまま復職を拒否された事件について、地位確認・賃金請求と慰謝料請求の裁判を2017年8月17日、大阪地裁に提訴しましたのでご報告します。

2 事案の概要

原告は提訴時43歳の男性です。被告日東電工株式会社は、半導体関連材料を製造する東証一部上場の企業です。液晶パネルに使われている偏光板の製造では世界シェアトップの企業です。本社は大阪で、仙台、深谷、豊橋、亀山、草津、茨木、尾道に生産・研究拠点があります。

原告は、国立大学の大学院工学研究科を修了後、1999年に被告に入社し、生産技術の研究開発業務に従事してきました。2004年から3年間はアメリカの大学に研究員として派遣され、国際学会で報告したこともありました。帰国後、広島県尾道市にある生産拠点で生産技術開発の業務に従事し、社内で功労表彰を何度も受け、多数の特許も出願してきました。

原告は、オフロードバイク(モトクロス)を趣味にしており、休日である2014年5月3日にモトクロスの練習中に他車と正面衝突する事故に遭って、頸骨骨折、頸髄損傷等の傷害を負いました。事故翌日からは年休を取得し、年休を消化した同年7月4日からは欠勤扱いとなり、同年 月4日からは休職扱いとなりました。社内規定により休職期間は27ヶ月、休職期間満了日は2017年2月3日とされました。なお、就業規則には、「休職期間中において、休職の事由が消滅したと会社が認めた場合は、原則として復職させる。」との規定があります。また、「社員が次の各号の一に該当したときは、社員としての資格を失う。」との規定があり、その事由の1つとして「休職期間が満了したとき」が規定されています。

原告は、2015年9月30日に症状固定となり、その後、障害者自立生活訓練センターに入所して自立生活の訓練を受け、2016年6月30日に同センターを退所して、自宅(神戸市)に戻りました。

原告は、頸髄損傷の後遺症により、下肢の完全麻痺、上肢の不全麻痺(車椅子の自操は可能、パソコンの操作は可能、スプーンで食事を摂ることは可能)、排尿排便障害(排尿は勤務中はバルーンカテーテルを留置、排便は週2回午後から早退して自宅で訪問看護により実施)などが残りましたが、従前の生産技術開発業務に従事することは十分に可能と考えられました。なお、自宅(神戸市)は車椅子生活のために改装工事を済ませており、また、両親や親族が近くに住んでいるため、自宅(神戸市)以外に転居することは難しい状況でした。

原告は、同年8月上旬、上司に対して、復職したいとの意思を伝えました。原告は、尾道事業所に通勤して勤務するのではなく在宅勤務制度による在宅勤務が第1希望であるが、復職を最優先に考えているので、勤務形態や勤務場所については状況に応じて相談させてもらいたいと伝えました。また、もし自宅(神戸市)から尾道事業所まで通勤する場合には、新神戸から新尾道まで新幹線を利用し、新尾道から事業所まで福祉タクシーを利用することになるため、その交通費を会社で負担してもらいたいと申し出ました。

この間、何度か上司や産業医と面談が実施されましたが、復職に向けた具体的な条件や、復職後の合理的配慮の具体的な内容についての話し合いは行われませんでした。

会社からは、主治医による復職の可否についての診断書を提出するように指示されたため、原告は主治医の診断書を提出しました。診断書には、「後遺障害あるも症状安定している。就業規則どおりの勤務(月~金の週5日、午前8時~午後4時45分、休憩12時~12時50分)は問題なく可能である」、「四肢障害の後遺症はあるも不安定な疾病はないため、業務に伴う疾病悪化リスクもない」、「下肢完全麻痺・上肢不全麻痺であり車いす移動(自身での移動は可能)のため、可能な業務はその範囲でのものに限定される」、「病状的に禁忌制限としているものはない」などと記載されていました。

2017年1月27日に復職判定会議が開催されましたが、結局、会社は、同月31日に、理由は一切明らかにしないまま、「復職は不可との結論になりました」とのみ通知し、さらに、同年2月3日に「休職期間満了」により「退職となる」と通知して、それ以降、就労を拒否しています。

3 障害のある労働者に対する合理的配慮の提供義務

2016年4月から施行されている改正障害者雇用促進法では、障害のある労働者を雇用する使用者には、「合理的配慮」の提供が義務付けられています。「合理的配慮」とは、障害のある人が障害のない人と平等に人権を享受し行使できるよう、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための個別の調整や変更のことをいいます。例えば、車いすを利用している労働者に対しては、職場にスロープを設けたり、高いところにある物を手が届く位置に移したりなどが考えられます。どのような「合理的配慮」が提供されるべきかについては、労働者の状況のみならず、職場の状況、担当する仕事の内容等によって千差万別ですので、使用者と労働者が十分に協議して決定していく必要があります。

本件では、合理的配慮の提供のための協議が尽くされないまま、結果的に、何の合理的配慮も提供されず、一方的に、復職が拒否されています。

裁判では、合理的配慮の提供にむけての協議のあり方、どのような配慮の提供が義務付けられるのか、協議を拒否したまま休職期間満了となった場合の法律関係などが争点になろうと思われます。

ぜひご注目ください。

(弁護団は、田中俊、村山雅信、中西基)

法律家団体による街頭宣伝を行いました!

弁護士 清 水 亮 宏

 9月11日18時から、淀屋橋駅前で街頭宣伝を行いました。民法協・大阪労働者弁護団・過労死を考える家族の会のメンバーを中心に、22名が淀屋橋駅前に集まりました。団体の垣根を越えて、労働組合、弁護士、家族の会の方々がマイクを握り、それぞれの立場から働き方改革関連法案を批判し、まともな働き方の実現を訴えました。

過労死ラインの長時間労働を容認する上限規制、いくら働いても労働時間が一定の時間とみなされる裁量労働制の拡大、一定の年収以上の労働者について残業代が支払われなくなる高度プロフェッショナル制度(残業代ゼロ)、それぞれの問題点を批判し、「このままでは過労死はなくならない」「まともな働き方を実現する必要がある」と訴えました。

また、労働時間の上限規制と裁量労働制の拡大・高度プロフェッショナル制度を一本化した点、改革の主な目的が生産性の向上にある点について、その問題点を指摘しました。

当日は、日本労働弁護団が作成した働き方改革解説リーフレットを配布しました。日本労働弁護団のホームページで内容を見ることができます。法案の問題点が非常にわかりやすくまとまっているので、ぜひご参照ください。

今回の街頭宣伝を経て、働き方改革関連法案の問題点が市民に広く伝わっていないのではないかと感じました。自分とは関係がないと考えられがちな裁量労働制や高度プロフェッショナル制度についても、安易な導入を許せば労働者全体の働き方に影響し得ます。法案の問題点を継続的・効果的に伝えていく必要があると思います。

今後は、民法協・大阪労働者弁護団・連合大阪法曹団の共催で、継続して街頭宣伝を行う予定です。ぜひ、ご参加ください!

期限のない仕事に 期限をつけて雇用するな――17/9/23なくそう! 官製ワーキングプア 第5回大阪集会

実行委員 川 西 玲 子

 「期限のない仕事に期限をつけて雇用するな」を合言葉に、労働運動の潮流を越えて、現場の非正規職員・正規職員・OB・OG・弁護士・研究者など多彩なメンバーが共同して実行委員会を結成し、民法協を始めとする弁護士団体、NPOなどが共催団体となって、今年で5回目の開催となり午前・午後のべ245人の参加があった。

今年の集会の特徴は、5月の地方公務員法・地方自治法改定で「会計年度任用職員」が新設され非正規公務員がますます不安定な身分に位置づけられたことにある。その狙いと内容を学習し市民にとっても、働く側にとってもどんな問題があるのかを明らかにして2020年施行までにやるべきことを学習し交流した。

参加者は任用替えに乗じた雇止め、欠員状態を口実にした民営化、今回の改定の水準が低く不利益変更になるのでは、などの不安を抱えての参加だった。また民間では来年4月には労働契約法による無期雇用への転換が始まり、それを避けるための雇止めも起こっている。非正規労働者にとっては民も官も「有期雇用」が大きな問題になっている。今問われている「まともな働き方」の根幹である「期限のない仕事に期限をつけて雇用するな!」「コマ切れ雇用をやめろ」を社会的に問う集会となった。

午前中の「官製ワーキングプア入門」講座では今回の法改正のポイント、実態と法のかい離など分かりやすく解説し当該の非正規はもちろん、自治体議員の参加も多く豊富な資料が喜ばれた。今後自治体ごとの条例化が大きな争点になっていくため、議員に理解を求める活動は大変重要となる。「韓国ソウル市の労働政策を学ぶ」分科会では、非正規の正職化はほぼ完了し委託先を直営にもどす段階に入った驚きの報告と、ソウル市の「労働尊重特別市」の「7大約束」の具体的な数値を上げた到達の報告には「なぜソウル市はそんなことができるのか」「もっと知りたい」という感想が多数寄せられた。官製ワーキングプア研究会はこれまで何度も独自にソウル市調査に行ってきたが、引き続き日本が参考にできる最新の労働情報を発信していきたい。

午後からの全体会のリレートークでは雇止め裁判の吹田・大阪大学、労契法20条裁判の郵政・大阪医科大、労働基本権はく奪問題で大阪教育合同が現場からのリアルな報告をした。特に直前に判決があり不合理な労働条件の相違を認めさせ、これまでの20条裁判の消極的判決の流れを変えて、非正規の格差是正の扉を開かせた郵政ユニオンの報告は大きな拍手で迎えられた。引き続く西日本判決(2/21 )と大阪医科大(1/24 )の事件でも勝利判決を目指していく決意が語られた。

基調講演は上林陽治氏の~地公法・地方自治法改定と総務省マニュアルを読み解く~
「それでも今後に何を見いだすのか、賃金・労働条件・雇用継続」と題して、問題点の指摘と同時に2020年(法施行)までにできることをしておく、攻めの戦術を学ぶ重要な学習となった。基調講演を受けて「これからの非正規公務員」をテーマに竹信三恵子さんがコーディネーターのパネルディスカッションでは非正規職員・正規職員・弁護士・議員の4人の立場からの発言で「今回の地公法改正は有期雇用を恒常的・基幹的に活用し、いつでも雇止めできる制度でありさらに拡大していく狙いをもっている」ことを浮き彫りにした。「まだ改定を知らない当該職員や市民・議員に知らせ、ひっくり返っている現状をもう一度ひっくり返して現状と政治を変えていこう」と結んだ。

今回の集会で早急に改善したい問題として報告したのは、臨時・非常勤の労災の差別的取り扱いだ。神奈川県・北九州市・石川県津幡町で公務災害事案がこの間立て続けに問題となったが、公務災害の申請が非正規本人も遺族からも申請できない制度であり正規職員との差別的取り扱いをなくす法改正の提起である。石川県の事案に光を当て今年の「貧困ジャーナリズム賞」を受賞した共同通信の國枝記者も会場から発言し「この問題を社会化していくことの必要性を強く感じた」と思いを語った。また「誇りをもって仕事をしている。命までも差別されるのは許せない」と同じ立場の非正規から発言があり共感を呼んだ。今後運動を広げ早期の法改正を求めて行きたい。

総括コメントは森岡孝二関西大学名誉教授から、差し迫っている労働時間の一括審議の危険性と真の働く者のための法改正を目指す重要性が指摘された。

5年目ともなると近畿2府4県からはもとより、北は北海道から南は鹿児島まで東京・神奈川・埼玉・名古屋・香川・広島・福岡など参加が広がった。北海学園大学川村正則教授の挨拶では、今年2回目となる札幌の「なくそう官製ワーキングプア集会」の準備を進めておりこの運動がさらに広がりネットワークを結ぶことを期待したい。メディアの問題意識も高く7社が参加しこれまでにない関心を寄せていただいた。

派遣ネット相談、始まりました!

弁護士 西 田 陽 子

1 はじめに

2017年9月、非正規労働者の権利実現全国会議(代表:脇田滋元龍谷大学教授、事務局長:村田浩治弁護士)が主体となり、インターネット上で派遣労働者に対しアンケートを行い、無料で有志の弁護士や学者が法律相談に答える「派遣ネット相談」(URL:http://www.hiseiki.jp/haken2018/)が始まりました。今回は、派遣ネット相談を立ち上げるきっかけとなった派遣法改正に関する諸問題や、現在の運用状況につき御報告いたします。

2 改正派遣法の問題点と派遣労働実態把握の重要性

2015年9月、改正派遣法が施行され、企業が永続的に派遣労働者を使い続けることができる一方で、個々の派遣労働者の方が同一の企業(の同一の組織)で働けるのは最大3年までとなりました。

2018年10月には、改正派遣法の施行から3年を迎えます。上記の改正により、2015年10月以降に新たに契約を締結した派遣労働者の方は、原則として3年を超えて現在の職場で継続して働くことができなくなり、職を失う危険があります。他方、2015年10月1日から、派遣労働者の方が、同じ職場で3年を超えて働いている場合等に、派遣先に直接雇用を求めることができる制度(直接雇用の申込みみなし制度)も施行されました。しかしながら、派遣労働者の方が自らこれらの法改正から生じうる問題に対応することは困難です。

このような状況の中、派遣労働者の方の労働実態を調査するアンケート及び法律相談を行い、実情を把握することが違法行為の防止にとって重要であると考えられ、「派遣ネット相談」が開始されることとなりました。

3 現在の運用状況

現在、民法協会員をはじめとする有志の弁護士が2人1組となってローテーションを組み、上記URLの回答フォームに入力された御相談に対応しています。回答は相談から1週間以内を目標に行われており、回答担当弁護士だけではなく、その他の弁護士及び学者によって、全体のメーリングリストにおいて検討される等、質の高いものとなっています。2017年10月5日現在までに、3件の相談に対して回答がなされました。

4 今後について

以上のとおり、なるべく多くのアンケート結果及び法律相談を集積して派遣労働者の方の労働実態を把握し、違法行為を防止する必要がありますが、まだまだこのような有益な活動がなされていることは十分に認知されていません。今後メンバー一同さらなる広報活動に力を入れていくとともに、民法協会員の皆様におかれましては、「派遣ネット相談」の周知に御協力いただきたくお願い申し上げます。