民主法律時報

2017年9月号

誰もが自由に使える公園を勝ち取った! ~松原中央公園使用拒否事件~

弁護士 遠地 靖志

1 はじめに

本件は、松原民主商工会(松原民商)が創立50周年の記念行事「松原民商まつり」を松原中央公園で開催しようとして松原市に同公園の使用許可を申請したところ、松原市が不許可決定をしたため、違法な不許可決定により、損害を被ったとして、国家賠償を求めた事件である(2014年12月提訴)。

2016年11月15日、大阪地裁堺支部は原告全面勝利の判決を言い渡した。松原市が控訴したが、2017年7月12日、大阪高裁は控訴を棄却、その後、松原市が上告を断念したため、原告全面勝利の地裁判決が確定した。

2 松原市のお墨付きがないと公園が使えない「許可審査基準」

松原中央公園は、松原市の中心部に位置し、交通の便もよく、また市内の4つの公園のうち一番大きなものであるため、過去、様々な団体により種々のイベントが開催されてきた。松原民商も、民商まつりやDJ盆踊り大会、40周年記念まつりなどを開催してきた。

市の都市公園条例では、①公序良俗を害するおそれがある、②暴力団への利益供与のおそれがある、③公園の管理に支障がある、という場合以外は公園の使用を認めてきた(松原市都市公園条例)。しかし、2014年6月、市は、内規にすぎない公園許可設置基準を変更し、「市の協賛・後援」がない集会等については、公園の使用を許可しないという基準を設けた。つまり、市にとって気にくわない団体が開催する集会に対しては、「協賛・後援」を承認しないことで市の公園を使わせない、という仕組みをつくったのである。

松原民商は、2014年11月に民商まつりを開催すべく、市に対して、松原中央公園の使用許可申請とともに市の後援承認も申請した。しかし、市は、「主催団体の宣伝、売名を目的とする」ものとして「協賛・後援」を不承認とし、その上で「市の協賛・後援が得られなかった」として、公園についても使用不許可決定とした。

3 地裁・高裁判決の意義

(1) 大阪地裁堺支部は、市の不許可決定を違法と認め、市に対し、非財産的損害80万円を含む90万6200円の損害賠償を命じた。

判決は、憲法の保障する集会の自由の不当な制限にならないよう、「客観的な事実に照らして明らかに予測される場合に初めて」不許可にできると判示し、本件はそのような場合にはあたらないとして不許可決定を違法とした。さらに、本件許可審査基準についても「集会の目的や集会を主催する団体の性格そのものを理由として使用を許可せず、あるいは不当に差別的に取り扱うことになる危険性をはらむ余地があり、その運用次第では問題がある仕組みである。」と厳しく指摘した。

また50周年という節目の年に記念行事を行うことができなかったことや一年以上もかけて実行委員会を重ねてきた労力が無駄になったことを考慮して、財産的損害のほかに、 万円の非財産的損害を認めた。

(2) 高裁判決も一審判決を全面的に支持した。

高裁判決は、公園使用を「集会の自由という民主主義社会の存立の基盤をなす最も重要な基本的人権の一つに根ざす」ものと指摘した上で、本件審査基準は「『市の協賛・後援の許可』を要件とすることで、本来行うべき調整を行わず、使用の拒否の判断に当たって考慮すべきでないものを考慮」するもので、「使用の許否の判断には不要であり、原判決も指摘するとおり、時に有害ともなりかねない。」として、地裁判決に続いて市を厳しく断罪した。また、損害についても、第一審の判断を維持した。

4 上告断念と今後の課題

その後、松原市は上告を断念し、地裁判決が確定した。しかし、「協賛・後援」要件はまだ撤廃されていない。裁判は終わったが、「協賛・後援」要件を撤廃し、市民が自由に使える公園を求める闘いはまだ続く。

(弁護団は、松尾直嗣、岩嶋修治、長岡麻寿恵、髙橋徹、遠地靖志)

教育の機会均等のために―― 朝鮮学校高校無償化裁判

弁護士 金 星姫

 2010年に施行されたいわゆる「高校無償化制度」の対象から、全国の朝鮮高級学校を除外した国の処分につき、2017年7月28日、大阪地方裁判所第2民事部は歴史的な判決を言い渡しました。①文部科学大臣が大阪朝鮮学園に対してなした、就学支援金の支給対象校に指定しないという処分を、政治的な判断に基づきなした処分であって違法・無効であると断じ、②大阪朝鮮高級学校は要件を満たしているので、支給対象校として指定せよという義務付けの判決を言い渡したのです。

主文が言い渡された瞬間、法廷いっぱいに拍手と歓声が響き渡り、傍聴席にいた人も原告代理人席の弁護士も皆、手を取り合ったり抱き合ったりして歴史的なこの判決に立ち会えた感動を分かち合っていました。この瞬間を、私は一生忘れることはできません。

思い起こせば、2012年の秋、私は、ちょうど、司法試験に合格し司法修習生になっていました。高校無償化法が施行されてから2年程経ったにもかかわらず、朝鮮学校の指定については審査手続が凍結されたままであり、この問題を巡って弁護団が結成され、勉強会や会議が行われていたところでした。私はまだ弁護士ではありませんでしたが、丹羽雅雄弁護団長や原告である学校法人大阪朝鮮学園の了解のもと、弁護団会議に出席し、議論の状況を勉強させていただきました。また、7月集会において「朝鮮学校授業料無償化適用排除問題を考える」と題した分科会を開き、この問題を広く知ってもらうための活動もしました。「弁護士でなくても、今、自分にできることを精一杯やろう」という気持ちでいっぱいでした。

私が弁護士登録をしてすぐの2014年1月に、大阪が先陣をきって提訴をし、裁判が始まりました。私もすぐさま弁護団に加入し、弁護士としてこの裁判に携わり始めました。弁護団の諸先輩方の背中を追いかけながら、議論を積み重ね、弁護団全員の魂がこもった書面を毎度提出し、裁判所に訴えかけました。今回のこの素晴らしい判決は、弁護団だけの力ではなく、朝鮮学校の生徒達や教員の方々が、忙しい中、時間を作って署名活動や街宣活動に立ち、支援の会のみなさんが雨の日も風の日も府庁前で「火曜日行動」に立って子どもたちの学ぶ権利を保障せよと訴え、みんなの力で得られた勝利の判決です。

また、裁判の結果にかかわりなく、当事者、支援の会、そして弁護団が手に手を取り合って、4年半もの長い間、行政の差別的取り扱いに屈することなく、声を上げ闘い続けたこと自体が大きな大きな勝利だと思います。

しかし、まだ、闘いは終わっていません。大阪の判決に先立って、7月19日に広島地裁が判決を言い渡しましたが、その判決は、大阪判決とはかけ離れた内容であり、「高等学校等における教育に係る経済的負担の軽減を図り、もって教育の機会均等に寄与する」(第1条)という高校無償化法の素晴らしい理念が一切汲まれていない極めて残念な内容でした。

広島では控訴審が始まりますし、大阪でも国が控訴したため控訴審が始まることとなりました。また、東京・愛知・福岡でも裁判が続いています。東京では9月13日に第一審判決がでる予定です。

一日も早く、全ての朝鮮高級学校が就学支援金の対象校に指定され、朝鮮学校に通う生徒たちが就学支援金を受けてのびのびと学ぶことができるよう、引き続き、弁護団の一員として全力で励む所存です。今後ともこの裁判に大きな関心を寄せていただきますようお願い致します。

(弁護団は、丹羽雅雄弁護士(弁護団長)、金英哲弁護士ほか、合計22名)

民法協 第62回定期総会報告

前事務局長・弁護士 井上 耕史

2017年8月26日、民法協第62回定期総会を大阪グリーン会館2階大ホールで開催し、79名が参加しました。
萬井会長は、開会あいさつで、総会の目的の一つとして民法協の活動の全体を知ることができることを挙げ、幅広い分野で会員が自主的に活発な取組みが行われていることを紹介しました。

第1部の記念講演は、脇田滋龍谷大学名誉教授に、「労働尊重社会実現の課題――日韓『働き方改革』論議を比較して」との演題で講演していただきました。

脇田先生は、政府による労働規制緩和の歴史と雇用の急激な劣化を指摘し、とりわけ85年制定の派遣法を「毒の缶詰」と厳しく批判しました。そして、安倍政権の労働政策の核心は解雇の自由拡大と派遣法改悪による正社員ゼロにあること、「働き方改革」は長時間労働の追認・悪化であり、「同一労働同一賃金」も名ばかりであることを明らかにしました。これと対比して、韓国では、朴元淳ソウル市長により非正規職の正規職転換等の労働政策改革が進められ、韓国新政府もソウル市の改革を受け入れていること、これらの改革が日本の革新自治体の政策から学んでいることを紹介しました。日韓の違いの原因として、韓国の労組は企業別から産別への切替えが進みつつあり、最も弱い労働者を引き上げる取組みをしていること、これは民法協の活動にも共通しており、日本の労働運動前進のカギがそこにあることを指摘されました。

第2部の総会議事では、「民主法律」総会特集号に基づき、2017年度の活動報告と2018年度の活動方針案の提案の後、以下の5件の特別報告がありました。
①泉佐野市不当労働行為事件勝利解決(増田尚弁護士)
②松原中央公園使用拒否事件全面勝訴(長岡麻寿恵弁護士)
③「リスペクトの政治をつくる大阪弁護士有志の会」の活動(中平史弁護士)
④裁判・労働委員会闘争と弁護士会の課題(原野早知子弁護士)
⑤労働法教育をめぐる情勢と課題(清水亮宏弁護士)

この後討論を行い、道徳の教科化、教科書問題、9条改憲の情勢、労働運動・裁判闘争のあり方、ヘイトハラスメント裁判について意見交換しました。
幅広い分野の課題を扱いながらもそれぞれが関連しあっていることがわかる、民法協らしい報告、討論になりました。
活動方針案、決算報告・予算案については、いずれも満場一致で採択されました。続いて、以下の2本の決議も満場一致で採択されました。
・憲法の破壊、9条の改悪を許さず、その阻止のために力を尽くす決議
・真の長時間労働是正と非正規労働格差是正を実現するための労働法制の抜本的改正を求める決議
また、2018年度の役員選出が行われ、退任・新任事務局から挨拶があり、総会を閉じました。
総会後の懇親会には、46名が参加して懇親を深めました。

今秋の臨時国会では、「働き方改革」一括法案や、自民党改憲原案が提出される可能性があり、まともな働き方実現と憲法改悪阻止が大きな課題です。また、有期雇用の無期転換、派遣労働者受入れの上限といった「2018年問題」もあります。須井新事務局長をはじめとする執行部のもとで、学習・宣伝活動、相談・事件活動を飛躍的に強めていきましょう。

裁判・府労委委員会例会報告 ――パナソニック遠隔地配転事件をテーマとして

弁護士 原野 早知子

 2017年7月31日、裁判・府労委委員会の例会を開催した(エルおおさか第1研修室)。個別事件検討の第1弾として、パナソニック遠隔地配転事件をテーマに取り上げた。参加者は30名だった。
弁護団の中西基弁護士及び電機・情報ユニオン大阪支部西野健一委員長より報告いただいた。

2 事案の概要

2014年8月1日、パナソニック社は回路部品事業部SAWデバイス事業を、別会社(スカイワークス社)に事業譲渡した。同事業に従事する労働者179名について、2015年3月末まではスカイワークス社に在籍出向、2015年4月1日よりスカイワークス社に転籍させる計画を立てた。

2014年9月より、スカイワークス社への転籍に同意するように面談(2~3回)が実施されたが、同年10月20日の転籍同意書の提出締切には、179名中36名が同意書を提出しなかった。

2014年12月1日、転籍に同意しなかった 名に対して、パナソニック社は2015年1月1日付での遠隔地(北海道、福井、但馬)への配転を発令した。

配転命令を受けて、36名のうち12名が電機・情報ユニオンに加入した。団体交渉の結果、12名のうち6名(身体障害4名及び地域限定社員経験者2名)について遠隔地配転が撤回され、門真勤務となった(2015年2月)。また、1名は配転先が北海道から福井に変更となった。

原告は、門真工場から福井の工場への配転命令がなされた勤続 年以上の女性労働者で(入社以来大阪ないし京田辺で勤務)、大阪市内で両親( 歳の父・ 歳の母)と同居していた。2015年5月、大阪地裁に提訴したが、2016年10月6日の一審判決は敗訴だった(内藤裕之裁判官・単独)。

控訴して大阪高裁で本年2017年7月11日に結審、10月26日に控訴審判決言渡予定である。

 中西弁護士の報告では、事案及び争点の概要、一審判決が東亜ペイント最高裁判決の規範を形式的に適用したこととその法的な問題点を解説いただいた。

西野委員長は、電機情報関連産業で大リストラが進んでおり、中でもパナソニックの人員削減が最大であること、電機産業のリストラでは会社分割・事業譲渡の手法が多用されていることを報告した。本件は訴訟は一審敗訴したが、12名の労働者が電機ユニオンに加入し、団体交渉での6名の配転撤回はパナソニック相手に最大の成果を上げた団体交渉であったこと、一方で会社分割・事業譲渡のスキームに係る法令等を組合が学習して知識をつけ、労働局の活用や要請行動などあらゆる方法で闘うことが重要だと指摘した。

 報告後の質疑・議論は非常に活発だった。

転籍が個別合意により、労働契約承継法によらなかったことについての質疑があった。転籍後将来、労働条件を下げることが予定されているからではないかとの指摘があった。

また、裁判官が東亜ペイント最高裁判決から一歩も出ないことについての問題が指摘されるとともに、東亜ペイント最高裁判決を前提とするとしても、本件で不当な動機・目的や、労働者の著しい不利益が認定されなかった原因についても議論した。背景として、連合の労組が事業譲渡・転籍のスキームに同意していることや、ILO家族的責任条約(本件原告の場合、父母が高齢のところ転居を伴う遠隔地配転となり、毎週福井から大阪に帰っている)に対する裁判官の理解の乏しさなどが指摘された。

運動については、「正社員である以上、会社の言うことに逆らえない」という意識(マインド)が、会社及び社会の中にないか、それを乗り越える運動が必要なのではという議論がなされた。団体交渉や国際機関への訴えなど運動の幅を広げられないかという意見も出た。

法律上の論点及び運動論の双方について、有益な意見交換がなされ、議論が深まったと思う(懇親会含む)。個別事件について、多数・集団で討議することの重要性を改めて感じた。

 本件は、会社の方針(事業譲渡に伴う転籍)に従わなかった労働者への報復・見せしめの色濃いものであり、労働者の生活への不利益も大きい(私事であるが、親と離れて生活している筆者から見て、原告の負担は他人事とは思えない)。高裁では問題意識を持った審理を行ったようであり、裁判所と運動の双方で、一審を乗り越える結果を期待したい。

また、こうした問題ある事例・判決であるにも関わらず、これまで民法協で正式に報告されていなかったようである。本件に限らず、会員には個別事案についての節目節目での報告をぜひお願いしたい。

《書籍紹介》萬井隆令著『労働者派遣法論』――原理原則から語る労働者派遣の本質論

弁護士  村田 浩治

1 本書の内容

このたび、民法協会長の萬井隆令先生の著書『労働者派遣法論』が出版された。4つの章で構成されているが、第1章「戦後労働法と労働者派遣」のタイトルをみるだけでも本書がこれまで労働者派遣を扱ってきた他の本と全く違うことは分かるだろう。

「労働者派遣」をテーマにした本を探すとノウハウと行政解釈を解説するだけのものが目立つなかで、原理原則に溯って労働者派遣制度から説き起こそうとする本は異色である。

第1章では、労働は商品ではないと宣言した「フィラディルフィア宣言」から「直接雇用の原則」を考え、直接雇用の原則からその例外である「労働者派遣」制度を批判的に検討する。偽装請負と、違法派遣、労働者供給の解釈をめぐる学説、黙示の労働契約をめぐる学説、団体交渉における使用者概念と派遣先使用者をめぐる論点を自説を展開するだけでなく、判例、学説における反対説に対し目配りをして丁寧に説き起こされておりそれが1章から4章にわたって展開される。

2 本書の魅力

本書は、労働者派遣制度を「物心ついた頃にはすでに派遣という働き方が当たり前に存在した」若い学者が「それをネガティブにみることには」「違和感しか感じない」として、労働者派遣を「価値中立的」概念として疑わない姿勢を批判し、原理原則に溯って検討する萬井先生の自説を丁寧に説き起こすため、少々難しいかもしれないが、しかし、労働者派遣を考えるときの基礎的な論点は網羅されている。

労働組合の方々(弁護士も)その多くが働き始めた時は「すでに労働者派遣があった」ため違和感を感じていないであろう。そのような労働者派遣を根本から疑うという姿勢で逃げることなく、その違法性の根本に光をあてて議論をすることは、きわめて重要だ。労働者派遣の事件の取組が大変な中で、この本が多くの方々に読まれ、議論されることを期待している。

但し、日頃議論をしていない者が通読するのは簡単ではないと思われる。じっくり議論をしながら読んで頂きたい。労働組合役員の方々には少なくとも第1章と第4章を読んでいただければ、「労働者派遣」の相談にも必要な知識と観点をもって、事件相談に当たれるようになること間違いない。今後派遣研究会でも通読教材とする予定である。

旬報社 2017年7月25日発行
定価 4600円+税
※民法協で少しお安くお求めいただけます。