民主法律時報

2017年7月号

まともな働き方実現! ~安倍式働き方改革のウソ・マコト 6.16法律8団体共催集会

弁護士 細田 直人

2017年6月16日エル・おおさかで、法律8団体共催集会「まともな働き方実現!~安倍式働き方改革のウソ・マコト」が開催され、192名が参加しました。
この日は、民主主義を踏みにじるかのような強行採決で共謀罪が成立した日であり、本集会は、民法協幹事長鎌田弁護士から、政府与党の行動に対する抗議声明で幕が開けました。

まず、日弁連労働法制対策委員会委員の久堀文弁護士から、同一労働同一賃金についての現在の議論の内容や、働き方改革における法定外労働の上限規制についての最新の議論の内容が報告されました。
基調講演では、毎日新聞新潟支局長東海林智さんから「労働(働く者)の尊厳は守られているか~安倍政権下で働き方生き方を考える~」というテーマで講演いただきました。

 東海林さんの講演は、フィラデルフィア宣言をもとに「まともな働き方とは、人として尊厳が守られる働き方である」との強い言葉で始まりました。安倍政権の働き方は、企業が働かせやすい労働環境を整えるもの、すなわち、労働法の適用のない社会を作るというものです。フリーランスによるバラ色の未来を描き、個人請負を増加させるなどして、労働法適用のない仕事形態を増加させ、労働の商品化を推進する。ダブル・トリプルワークを推奨して、低賃金の中小企業で従事する労働者の労働時間をますます増加させる。高度プロフェッショナルなどの聞こえのいい言葉を使って、経団連が提言する400万円で働かせ放題の制度さえも作り出そうとしている。このような、働き方改革では、労働者が勝ち取ってきた尊厳が失われていくということでした。最後に、宮古島で組合活動を始めたことでパワハラなどの不当労働行為をうけながらも戦い続ける女性新聞記者の言葉が紹介されて締めくくられました。その記者の言葉は、ペンを奪われても、理不尽な対応を受けても人間の尊厳を奪われないため声を上げともに戦う仲間がいる。宮古島の子ども・後輩のために何か残したい。全国の仲間が連帯し応援してくれる」といった、運動により声を上げる必要性・連帯について心に残る言葉でした。

現場・各分野からの報告では、ヤマト運輸労組の田中さん、兵庫過労死を考える家族の会の西垣さん・全労働の丹野さん・龍谷大学の妹尾さんからの報告がありました。
妹尾さんからは、ソウル市の運動をもとに、真の労働政策はトップダウンにより実現されるものではないということの報告でした。ソウル市は、国に率先して独自の労働モデルを提案し実現する。その上で、企業に対しても同様の取扱いを求めています。ソウル市から、韓国全体へとの意気込みで労働者の尊厳を確保しようとしています。この動きの根底には、活発な市民運動があり、労働組合・市民活動家の運動が、市の政策を変え、国政を変えようとしているとのことで、日本においても、今こそ、国政を変えさせる市民運動が必要と感じさせるものでした。

この集会には、民進党の辻元清美議員、日本共産党の清水忠史議員が国会から駆けつけてくださいました。両議員からは、安倍政権が強行可決した共謀罪、働き方改革について、今後、政府与党に対し毅然と対峙していくという強い言葉を戴きました。
最後に、出席者全員で、「過労死ラインの長時間労働NO!」「実現!まともな働き方」というポテッカーを掲げての集会アピールが行われ、閉会の挨拶では、連合大阪法曹団大阪支部の大川一夫弁護士から、連帯して安倍政権と闘う意思を改めて確認されました。

共謀罪の強行成立の当日の集会とあって、集会全体として現政府をただすという気概を共有する集会でした。その実現のためにも、連帯して声を上げ、大阪から全国へ、安倍式働き方改革を、労働者の尊厳を守る真の働き方改革に変えるための運動の必要性を改めて考えさせられる集会でした。

泉佐野市不当労働行為事件で全面勝利解決

弁護士 増田 尚

 6月23日、泉佐野市職員労働組合・同現業支部と泉佐野市との間で、一連の不当労働行為につき全面的に解決を図る合意をして、大阪地裁(内藤裕之裁判長)での取消訴訟が市の取下げによって終結した。残る2件の取消訴訟(最高裁、東京地裁)も、合意に基づいて市が取り下げて終結した。千代松市長が就任してから6年あまり、最初の府労委への救済申立てから4年あまりで、一連の不当労働行為に対して実質的な救済が図られ、労使関係の正常化への第一歩を踏み出す勝利解決を図ることができた。

事の始まりは、職員給与削減を公約に掲げて当選した千代松市長が当選直後の2011年5月に、20%もの大幅な給与削減を市職労に提示し、説明も協議もしないまま、条例案を議会に上程することを強行したことであった。議会では、削減率を8%に修正されたものの、組合との協議を軽視・無視し、組合の存在意義を否定する強権的な手法は、これまでの労使関係を破壊するものであった。

組合は、こうした一方的な給与削減に対し、公平委員会への措置要求運動を展開した。8%の給与削減は、若年の職員の中には、月例給で生活保護基準を下回る者も出るなどの異常なものであり、千代松市長の強引なやり方も相まって、職員に怒りの声が広がり、全職員の7割に相当する515名もの職員が措置要求を行った。市公平委員会は、2012年4月10日の判定において、結論として棄却したものの、「当局側が労使交渉において十分な説明を行ったとは評価しがたい」、「法 条の趣旨(職員団体に対する当局の交渉応諾義務等)から見て遺憾な面がないではない」などの異例の意見を付して、市の姿勢を厳しく批判した。

しかし、千代松市長は、団交軽視・組合否認の不当労働行為をエスカレートさせていった。団体交渉でまともに説明をしないまま打ち切って、給与削減や勤務条件の不利益変更を一方的に強行したり、組合事務所の使用料減免申請を承認せず、使用料を徴収する処分をしたり、組合費のチェック・オフに際し手数料を徴収するよう要求し、組合がこれに応じなかったことを理由にチェック・オフを中止したり、組合攻撃を繰り返した。組合は、これらの不当労働行為に対し、6件もの救済申立てを行って、不当労働行為の是正や、市への謝罪を求めてたたかった。

6件もの救済申立ては(併合により4件が並行して審査された)、やむにやまれぬ選択の結果ではあったが、日常的な組合活動や職務をこなしながら、労委闘争を進めることは、相当な負担であった。しかし、千代松市長による強権的な手法の異常さを相乗的に浮き彫りにして、府労委への市長に対する厳しい姿勢を貫かせることができた。府労委は、組合からの2度にわたる実効確保措置の申立てに対し、口頭で、市に対し、労使紛争を拡大させないように要望を行った。これにより、市は、事務所の使用料をめぐっては救済申立ての結果を待つとする暫定的な合意を組合と行ったり、チェック・オフの中止の時期を遅らせたりする対応をせざるを得なくなった。4件の救済命令すべてで、市の不当労働行為が認められ、最後の件では、ポスト・ノーティス(市庁舎玄関への掲示)を命じるまでに至った。

こうした労働委員会の厳しい判断は、市当局を追い込んでいった。市は、中労委への再審査申立てや、取消訴訟を提起したが、議会でも、紛争を長期化させ、予算を支出することについて厳しい意見が目立つようになった。中労委命令の取消訴訟提起の際には、公明会派の議員が退席するなどの反応も見られた。また、一方的に削減した夏期休暇の日数も、組合との交渉によって、順次、回復することとなった。

このような不当労働行為の該当性は、司法判断でも維持された。しかし、チェック・オフに関する大阪地裁、大阪高裁の各判決は、地公法適用職員は労働委員会の救済を申し立てることができないとする誤った解釈をして、いわゆる混合組合に対しても救済を図ってきた労働委員会の実務を否定し、公務員労組に分断を持ち込む不当な判断をした。このような不当判決に対し、控訴審、上告審と弁護団を拡充し、上告審では総勢81名の代理人による上告受理申立て理由書を提出した。

そうした中で、4件目の府労委救済命令の取消訴訟で、チェック・オフ事件で判決を出した内藤裕之裁判長からの打診で、進行協議により、解決が探られることとなった。労使間での協議を詰め、裁判所からの合意勧告を受け、労使双方がこれを受諾し、①市が、各救済命令において不当労働行為と認定されたことを受け止め、今後、不当労働行為を行わないことを誓約し、相互理解に立って、円滑な労使関係の確立に努めること、②チェック・オフも全組合員につき無償にて再開すること、③組合事務所の使用料についても全額減免とすること、④給与・勤務条件についての組合からの団交申入れに対し、市は、合意達成の可能性を模索する姿勢を持って、根拠となる資料を可能な限り提示して説明を尽くすなどして誠実に対応することなどを約束し、すべての取消訴訟を取り下げて終結させることを合意した。チェック・オフについて法適用の区別なく全組合員につき無償での再開をさせたことは、大阪地裁・高裁の不当判決を事実上覆し、実質的な労働基本権の回復を図るという大きな成果を得ることができた。

市が、この合意(和解)によって、不当労働行為を改め、職員の給与・勤務条件に関しては労使の協議を十分に尽くし、団結権を保障する姿勢に転換することになれば、泉佐野市はもちろん、各地の自治体においても、労働者の権利と住民の福祉をともに発展させる流れを加速させることにつながるものである。府下や他府県でも少なくない自治体で公務員労働組合に対する支配介入がなされていることからすれば、公務員労働組合の団結権保障にとって本件合意の持つ意味はきわめて重いというべきである。

本件闘争については、市民連絡会における市民との共同、支援共闘会議での民間労組を含む各層からの支援があり、勝利解決を図ることができた。また、上告審から民法協会員を中心として多くの弁護士に代理人に加わってもらったことが、チェック・オフの不当判決を事実上覆す成果を獲得することにつながった。これらの支援に対し、紙面を借りて、改めて感謝を申し述べる次第である。

弁護団は、大江洋一、半田みどり、谷真介各弁護士と当職であり、チェック・オフ取消訴訟の控訴審から豊川義明、城塚健之各弁護士に加わっていただき、同上告審から宮里邦雄、徳住堅治両弁護士などに加わっていただいた。

酷いいじめや嫌がらせがあっても、 労災保険法上の精神疾患ではない?! ―― パナソニックアドバンステクノロジー事件に対する不当判決に抗議する ――

弁護士 村田 浩治

1 いじめパワハラを巡る社会的常識に逆行する判断

株式会社の社長といえば、最高権力者である。2007年3月9日、その社長から「殺すぞ」「殴ったるで」「アホ」「馬鹿」「人間力ゼロ」と侮辱され、机を多数にわたって叩く怒鳴るという行為を繰り返されSさんが、適応障害を発症したのは当然であった。
Sさんは労災請求をすることに不安を抑えられなかった。
しかし、常識的にみて、業務指導の範囲を逸脱したひどい嫌がらせやいじめにあたることに多くの人は異論はないだろう。

2017年4月26日、一審の大阪地裁第5民事部(内藤裕之裁判長、三重野真人、新城博士)は、ひどい嫌がらせやいじめであると認定しながら「社会通念上客観的にみて、精神疾患を発症させるに足りる強度の精神的負荷とまで認めることは出来ない」として、原告が発症した適応障害の業務起因性を否定した。私の「客観的な社会通念」に従えば、判決は限りなく非常識な判断であったと言わざるを得ない。

判決は、労災保険法上の精神疾患の認定基準に縛られないとしながらも結局のところ、国が主張する精神疾患の判断基準の枠組みにそった結論をほぼそのまま是認した。

本件は、もともと、組合執行部が会社の賃金引き下げに同意して全く反対意見を集約しようとしない実情は民主的な観点からもよくないと原告が考え、職場委員としての活動を展開したところ、労使協調の会社執行部の役員が原告の就業時間中の組合活動を上司に注進し、原告が就業時間内組合活動を非難されることに端を発したのであった。なお、原告の組合活動は、その後、結局労働組合が介入して始末書の提出も免れた。

しかし、判決は原告の組合活動は正当でないと切り捨て、会社が始末書の提出を求めたことは正当、社長が人格否定の暴言を行っても、①面談そのものは原告が求め(原告は否認)録音機を準備して臨んでいること、②上司ら5名の出席も事前に認識していたこと、③本件前も社長と面談しているが、その際は脅迫的発言をしていない、④面談における社長の発言は、組合活動の謝罪をせず正当化した原告にも原因があったこと、⑤激しく叱責していても押し黙っていたわけではない(恣意的認定でありテープを聴いていない可能性あり)などと認定した。要するにパワハラの原因が被害者にあることなどを「総合的」に考慮して「社会通念上客観的にみて、精神疾患を発症させるに足りる強度の精神的負荷であるとまで認められない」との判断を示した。

しかし被害者本人の態度に原因があり、録音機を用意しており、直後に異常行動などの病的行動がなければ、強度の精神的負荷でないとの判断が許されるならば、あらゆるパワハラは、社会通念上客観的にみて強度の精神的負荷ではないと言わざるを得ない。

2 適応障害に対する理解を欠いた判断

判決はパワハラによる精神的負荷に関する非常識な判断の他にも、労災段階では全く問題にせず訴訟になって突如国が言い出した、原告が請求時には治癒したという主張も追認した。

裁判官が、適応障害という精神疾病に対する理解を欠いていることにも起因しているが、労災保険が本来の労働者救済の趣旨に沿わず、訴訟も勝つためになりふり構わない対応に対しても何ら批判をしない点も不当である。控訴審にこの判決を是認させてはならない。多くの関心と支援の集中を求める。

(弁護団は、立野嘉英、和田香、村田)

闘い取った判例に反する 地方公務員法改正

官製ワーキングプア研究会 川西 玲子

1 地方公務員法改正で「会計年度任用職員」という身分を創設

地公法・地方自治法の改正は、全国 万人の臨時・非常勤の永年の悲願であった。法の谷間からの脱却、不安定な身分、均等待遇からの置き去りを改善させるためには法改正は必然であった。しかし残念ながら無残な結果となった。現行の臨時・非常勤を新たに創設した「会計年度任用職員」という身分に移行させるという。そもそも総務省が苦肉の策でひねり出した「会計年度任用職員」とはいかに実態とかい離している代物か。また公務非正規の「雇止め」と「手当支給」の貴重な判例の到達にいかに反しているのか今回の法改正を考えてみる。

2 「雇止め」――「中野区非常勤保育士事件」のような判決をさせないための改「正」

中野区非常勤保育士再任用拒否事件(東京高裁)では、私法上の解雇権乱用法理は認められなかったが、「解雇権乱用法理を類推すべき程度にまで、違法性が強い」と認定し期待権を認め、報酬の1年間分に相当する慰謝料を認めた。その上で、「公法上の任用関係にある労働者が私法上の雇用契約に比して不利となることは確かに不合理」「反復継続して任用されてきた非常勤に関する公法上の任用関係においても実質的に即応した法の整備が必要」とした。しかし今回の法改正は、法の整備どころか、二度とこのような判決が出ないようにするための念の入れ方である。身分の呼称に「会計年度」「任用」といれ、その上これまでは非常勤には期限の規定がなかったが、「上限1年」と法に明記した。更に「条件付き採用」とし再度任用された場合でもそのたびに試用期間1ケ月をつける。これでもかと期待権を持たせない意図がみえみえである。労働契約法が適用除外のため、必要なら何度でも任用できる(しかし更新ではない新たな任用)、いらなくなればいつでも雇止めできる(解雇ではない期間満了)、入口規制も出口規制もない。民間でこのような雇用をすればブラックと呼ばれることは間違いない。

さらに問題なのは現在22万人いる特別職非常勤職員の労働基本権が一方的に奪われることだ。雇止めはストを配置したり、労働委員会を活用して闘ってきたが、これまでの労働協約は無効となり労働組合を解散して制限の多い職員団体を結成することになる。代償措置として人事委員会や公平委員会が活用できるとされているが、人事委員会がこれまで非正規の賃金について具体的に勧告している実績は皆無である。また、公平委員会が「再度の任用がされるはずだとする雇止め問題」を扱うのか大いに疑問である。再度の任用をしないことは行政処分ではないとして審査請求は対象外とはねつけられる可能性は大きい。改正法で雇止めの撤回どころか期待権すらさらに厳しい状況におかれることは間違いない。

3 「手当支給」――枚方市・東村山市判決に明確に反する

現行の地方自治法における非常勤職員(一般職非常勤職員)への手当支給は判例では「常勤職員の勤務時間の4分の3以上勤務」ないしは「勤務の内容、態様あるいはその役割、また待遇等の取り扱いなどの諸事情を総合的に考慮して」条例化で支給可能となっている。しかし今回の法改正によると「会計年度任用職員」については勤務時間4分の3に関係なく「フル(週38時間45分)」と「パート(週38時間45分未満)」に分けパート職員には期末手当以外は支給しないと地方自治法に明記して今後の権利を奪った。厳密にいえばフルタイムより1分でも少なければ期末手当以外は支給できないとなる。しかしこの間判例に沿って、フルタイムでなくても勤勉手当や退職手当など人材確保のために条例・規則・要綱等整備して処遇改善に努力してきた自治体もある。現状の到達を引き下げることは許されない。法改正に先立ち設置された研究会報告(総務省)では「民間や国家公務員との制度的な均衡を図る観点から、まずは常勤職員と同様に給料及び手当の支給対象とするよう給付体系を見直す立法的な対応を検討すべき」と結論を出した。しかし土壇場になってフルとパートで大きな格差をつける法案となって出てきた。現状でも正規と職務内容に違いがないにも関わらず勤務時間を10~15分ほど少なくして手当支給を免れてきた実態がある。今回の改正ではさらに非正規の間での格差を容認することになる。また、判例に反するばかりでなく「同一労働同一賃金」ガイドラインや、パート労働法8条、労働契約法 条にも抵触する。

4 身分移管を機に民間委託の推進 も

そもそも「会計年度任用職員」とは会計年度内で処理できる業務につく職員と考えるのが当たり前だが、その名前と実態は大きくかい離している。総務省調査(平成28年)で10年以上同一人を繰り返し任用しているのは保育士では41%、給食調理員では31%、消費生活相談員では32%の自治体があることがわかった。人材不足の折から、どこの自治体でも募集しても人が集まらないと頭を抱えている。総務省は臨時・非常勤の身分移管の際には、現に存在する職を漫然と存続させるのではなく、民間委託の推進など、簡素で効率的な行政を実現せよと要請している。

今回の法改正が働き方改革の公務員版と言われるように安上がりの非正規の活用とパブリック分野での企業の利潤追求が狙われていることは明らかだ。
法の施行は平成32年4月、これからは闘いの場は国会から自治体に移る。今年も第5回「なくそう! 官製ワーキングプア」大阪集会を9月23日(祝)にエル・おおさかで開催する(午前分科会・午後全体会)。民法協にも共催団体になっていただいており、大いに学び、交流し元気を蓄えて闘いに備える集会にしたい。たくさんのご参加をお待ちしています。

どうなる子どもと教育――大阪教育集会2017を開催しました

子どもと教科書大阪ネット 運営委員・弁護士 楠 晋一

2017年6月3日、PLP会館にて大阪教育集会2017を開催しました。70名を超える参加をいただきました。

講演の前半は、大阪教文センター事務局長の山口隆さんが、新学習指導要領、道徳の教科化等に関して、現在学校で起きていることとその背景についてお話しされました。大津市のいじめ自死問題を端緒として、いじめ対策とは無関係の道徳の教科化をねじ込んでいきました(大津市の学校は、事件当時からすでに道徳教育の指定校でした。)。また、文科省は道徳の教科について数値による評価を行わないと述べていますが、一部の地域で道徳の市販テスト(4択問題を答えさせる)を活用する動きがあり、教員の多忙化に付けこむ形で数値評価を行う動きもあるようです。新学習指導要領の下では、それまでの学習時間を削ることなく英語の早期教育が追加されるため、小学4年生で1989年に週6日で実施していた年間1015時間を週5日でこなす必要に迫られることになりました。そのため、小学校では、休み明け直後の短縮授業がなくなり、連日1日6時間の授業を受けるという(下手すれば1日7時間の日も出てくる)中学3年生と同じスケジュールで学ばされる事態になっています。その他にも、小学校には英語の教員免許取得者が少ないにもかかわらず、英語の早期教育が実施されるため、無免許者による指導が行われる見通しであること、技はのどと心臓を「突く」しかなく、競技人口わずか3万人余り(そのうち8割が自衛隊関係者)しかいない銃剣道が中学校体育に取り入れられようとしていること、幼稚園教育要領や保育指針に「国歌に親しむ」と記載され幼児期からの洗脳を進めようとしていることなどが語られました。

後半は、子どもと教科書大阪ネット21の道徳教科書検討チームが、「感謝」「礼儀」「伝統と文化、国や郷土を愛する態度」「国際理解・国際親善」「家族愛、家庭生活の充実」「勤労、公共の精神」「規則の尊重」というテーマから、実際の教科書はどのような題材が取り上げられ、そこにはどのような意図が込められているのかについて報告しました。生の教材を示しながら、問題点を説明することで、参加者からも非常に分かりやすかったという感想をいただきました。

本来であれば教育は、憲法、教育基本法の理念にのっとり、自分も、他人も、個人として尊重し、多様な価値観を育む場でなければなりません。ところが、道徳は国語や社会など他の教科と異なり、学問的な標準が存在しません。そのため「あなたも正しい、私も正しい」という場面が多分に存在します。それにもかかわらず、教科書が提示する断片的な物語が唯一の正しい考え方であるかのような教え方に誘導することは、かえって画一的な価値観を植え付けることになりかねません。

道徳教科書の検討で浮かび上がってきた問題は行きつくところ、道徳の教科化の問題、ひいては安倍第1次政権から推し進められている教育改悪の問題にたどり着きます。

来年は中学校道徳教科書の検定があり、育鵬社も教科書を出版します。しかし、今回の検定で明らかになったのは、育鵬社の執筆メンバーが小学校道徳教科書でも各出版社の執筆メンバーに入り込み、彼らの見解に近いものを作って、小学生に考え方を刷り込もうとしている現実です。引き続き、道徳教科書の問題に皆さまも注目していただきますようお願いします。

シンポジウム 「“働き方改革”を斬る ~これでは過労死は防げない~」・過労死110番報告

弁護士 和田 香

1 シンポジウムのご報告

大阪過労死問題連絡会では、2017年6月14日、「“働き方改革 ”を斬る~これでは過労死は防げない~」と題し、全国一斉過労死110番(同月17日に実施)のプレシンポジウムをエル・おおさかで開催しました。

これは、現在進められている、残業の上限を1か月あたり100時間未満とする等の労基法改正が過労死・過労自殺を生み出す長時間労働を合法化することにつながるという強い危機感から開催したものです。

現在、残業は一定の手続を踏めば何時間させても違法ではない青天井ですから、残業の上限を1か月あたり100時間未満に規制することを評価する声もあります。

しかし、そもそも脳・心臓疾患による労災認定の基準は月平均80時間の時間外労働を目安としていますし、精神障害の労災認定の基準は連続した30日間における100時間の時間外労働時間を目安としており、現行の行政の基準に照らしても労基法で100時間未満の残業を合法化することが不合理であることは明らかです。

シンポジウムでは、冒頭に連絡会会長の森岡孝二さんが「働き方改革」の問題点について講演し、日本ではこれまで何度にもわたって労働時間制度の規制緩和が進められてきたこと、まともな労働時間規制のために残業の上限を週15時間、月45時間、年間360時間に限定すべきことなどを話されました。

また、実際に過労死・過労自殺問題に取り組む弁護士の立場から、松丸正弁護士より、1日あたりの労働時間が最長9時間程度で1か月あたり70~77時間程度の残業時間であるものの(十分長時間労働ですが)、休日が半年間に4日しかなかったという労災認定されたケースがあることに触れ、労基法で100時間未満の時間外労働を合法化することがいかに間違ったことであるか力強く説明頂きました。

続いて、脇田滋さんから、韓国で新政権が誕生したことに触れつつ、ソウル市が労働時間短縮を推進するなど、最近になって労働時間の短縮が急速に進められていることについて基調講演がありました。この中で、私は、労働時間の短縮を進める一方で、市庁舎の清掃の仕事をしていた非正規の女性を正社員化するなどの取組みが併せて行われているという点に興味を感じました。日本では、短時間勤務は往々にして雇用の多様性の名の下に非正規など不安定雇用に繋がりやすいですが、そうではないモデルがお隣の国で進められていることは大変心強く、見習いたいものだと思います。

 最後に、全国過労死を考える家族の会の代表世話人寺西笑子さんより、遺族の立場から、100時間未満の残業で過労死・過労自殺が頻発している実情と、100時間未満の残業を合法化することは許されないものであることについて、過労死等防止対策推進法制定後の国会情勢を踏まえてご説明頂きました。
シンポジウムの参加者は53名で、会場はほぼ満席の中、現在の労基法改正の流れでは過労死・過労自殺を防止できないことについて多角的な視点から議論がされたシンポジウムでした。

2 過労死110番のご報告

今回の過労死110番は、全国的な問題意識の高まりもあって、全国で281件(内大阪33件)の相談が寄せられました。
相談内容は、主として長時間労働やハラスメントの多い職場の改善に関するご本人やご家族からのご相談であり、労働現場では依然として長時間労働やハラスメントが横行していることがよくわかる相談会となりました。

労働相談懇談会に参加して

出版ユニオン大阪 大久保 武則

 6月15日に国労会館1階ホールで行われた、2017年第2回労働相談懇談会に参加しました。この懇談会には、弁護士、大阪労働相談センター、相談を受けて解決に向けて活動している地域労組の組合員など、30名が参加しました。

懇談会は、主催者挨拶、西川大史弁護士による「最近の労働裁判に見られる特徴」に続いて、清水亮宏弁護士による「採用・内定・入社を巡る労働問題~近年注目を集める求人トラブルへの対応を踏まえて~」の学習会が行われました。

学習会では、①求人と実態が異なる問題「求人詐欺(ブラック求人)」、②詐欺求人問題の構造、③労働条件の明示等に関する現行法上の規制、④求人と実態が異なる場合にどう争うかについて、 ページにわたるレジュメを基に話されました。

この話のなかで、私がレジュメにメモ書きしたことは、職業安定法 条「求人企業は当該募集に応じようとする労働者に誤解を生じさせることのないように平易な表現をもちいる等その的確な表示に努めなければならない」は努力義務でしかないこと、労働基準法 条第1項の中の「労働条約の締結」時点とは「採用内定」時点であることなどです。

また、職業安定法の改正(職業紹介の機能強化及び求人情報等の適正化)中、「採用時の条件があらかじめ示した条件と異なる場合等に、その内容を求職者に明示することを義務付ける」とありますが、説明を受ければ同意したとみられる危険があるということですから、同意できないという意思表示が大切であると思いました。

「求人詐欺」は、応募した労働者本人が不利益を被るのはもちろんのこと、社会全体に悪影響を及ぼすものですが、ブラック企業の一要素としても取り上げられました。しかし、講師の話がよかったのか、相談する事例が少ないということか、ほとんど質問はなく、予定時間より早く終了しました。

なお、純中立の出版労連組合員である私が参加したのは、当時労働相談員をされていた杉山氏(全印総連出身)から誘われ、オブザーバーの立場でした。現在は民法協との共催になり、民法協会員として参加しています。