民主法律時報

2016年12月号

松原民商まつり会場使用拒否事件 勝訴報告

弁護士 長岡 麻寿恵

 2016年11月15日、大阪地方裁判所堺支部第2民事部(橋本眞一裁判長)は、松原民商が民商まつり開催のために申請した松原中央公園の使用を不許可とした松原市の決定を違法と認め、市に対し民商への90万6200円の損害賠償を命じました。

2 提訴に至る経緯

2014年9月、松原民商は、設立50周年を記念して松原中央公園において「松原民商まつり」を開催することを計画し、公園の使用許可を申請しました。

松原中央公園は、その名のとおり松原市の中央部にあり公共施設にも隣接する、交通至便な松原市最大の公園で、同民商はこれまでも同公園で、設立20周年、40周年を記念した「松原民商まつり」を開催し、それぞれ4000人、5000人を超える市民が参加しました。今回のまつりも、体操やAED講習、河内音頭や腕相撲大会、ヨーヨー釣りなどの縁日、たこ焼きや焼きそば等模擬店など、誰でもが参加できる楽しいまつりとして企画されました。

松原市都市公園条例では、(1)公の秩序を乱し善良な風俗を害するおそれがある(2)暴力団の利益になり又はそのおそれがある(3)公園の管理上支障があると市長が認めるとき、には使用を許可しないとされており、逆に言えば、上記3つの場合に該当しない場合には許可しなければなりません。松原市では、平成 年に橋下元大阪市長の応援を受けた現市長が、松原民商理事の対立候補を破って当選、平成 年に同じ対決構図で再選されています。現市長は、上記条例について市の内規である許可審査基準を変更し、公園の使用許可には「市の協賛・後援の許可」を要件としてしまいました。

そして、松原民商まつりの公園使用許可について、市は平成 年9月「市の協賛・後援がない」ことを理由に上記条例の(3)に該当するとして不許可としました。松原民商は、後援名義使用承認も申請しましたが、市は「主催団体の宣伝、売名を目的とするものと類推されるおそれがある」(!)として不承認としたため、公園の使用は不可能になってしまったのです。

市の協賛・後援を要件とする上記「審査基準」により、公園を市民が自由に利用することはできなくなり、それまでは活発に行われていた労働組合による催し物、集会、メーデー会場、デモの出発点としての使用、学童保育OBによる運動会、個人のイベント等は行われなくなり、専ら市の催しや官製イベントだけが行われるようになりました。

33回もの長きに亘って市内諸団体の実行委員会形式で開催されてきた中央公園の「ちびっこまつり」も、平成24年までは松原市教育委員会が後援していたのに、市は平成25年には一旦付与した後援をわざわざ取り消しました。そして平成26年の34回まつりでは、労働組合が実行委員会に参加していることを理由に「政治活動を類推することにつながる恐れがある」として市の後援名義の使用は不許可とされ、公園を使用することができなくなったのです。やむなく労働組合に実行委員会から脱退してもらい、「子どもまつり」として企画しましたが、今度は「初めて開催される事業であるから事業遂行能力に疑義がある」(!)とされて後援名義を得ることはできませんでした。ところが、市の商工会が中心となった「松っこフェスタ」は、同じような内容のこども対象のイベントで初めて開催されるものであったにもかかわらず、市は速やかに後援を承認し、松原中央公園を使用させました。

このように、「市の協賛・後援」要件を通して、松原市の公園使用許可は極めて恣意的に運用されるようになったのです。

3 判決の内容

判決はまず、本件公園は地方自治法244条にいう公の施設に該当するから、市は正当な理由がない限り住民がこれを利用することを拒んではならず、不当な差別的扱いをしてはならないとした上、管理者が正当な理由なく住民の利用を拒否するときには、憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながると指摘し、公園管理上の支障が主観による予測だけではなく「客観的な事実に照らして明らかに予測される場合に初めて」不許可とできると判示しました。

そして、本件まつりの使用によって生じる「管理上の支障」として市が主張した内容は、「集会による使用について当然生ずる支障として通常想定される範囲を超えるもの」ではないとし、本件「審査基準」については「後援等承認をする要件は、必ずしも公園の管理上支障があることを徴表するものとは言えない。むしろ、上記のような仕組みは、被告から後援等承認を受けられた者は公園の使用の許可を得ることができるが、これを受けられなかった者は、公園の使用の許可を得られないこととなり、公の施設である公園の使用の拒否を決するにあたり、集会の目的や集会を主催する団体の性格そのものを理由として使用を許可せず、あるいは不当に差別的に取り扱うことになる危険性をはらむ余地があり、その運用次第では問題がある仕組みである。」と断じました。そして、市に対し、慰謝料80万円、弁護士費用9万円、実損害1万6200円の合計90万6200円の支払いを命じました。

4 本判決の内容

(1) 憲法上保障された集会の自由
本件判決は、市福祉会館の使用不許可処分について「(管理上の支障発生が)客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されたものということはできない」と判示して違法とした最高裁平成8年3月15日第2小法廷判決(上尾市福祉会館事件)をベースとして、市民による公園の使用についても、「管理上の支障」により不許可とするには、憲法上の集会の自由を不当に制限することのないよう、客観的な事実に照らして明らかに予測される場合に限定したものです。

公園の利用は、1939年アメリカ連邦最高裁のHague v.CIO判決によるまでもなく、「集会や市民の間での思想の伝達、公の問題の討論という目的のために用いられてきた」ものであり、憲法上の重要な権利です。他方、この裁判で松原市が、他の地方公共団体における公園使用の規制、後援等を要件とする要綱を提出してきましたが、実際には問題のある規制がかなりの市の内規レベルで行われているようです。昨年姫路市が安倍政権を批判する駅前広場の集会を中止させた事件もあったように、今、集会等に対する地方公共団体の萎縮が目立つ中、本判決は、公園を市民が様々な集会に自由に使用する実践のために重要な意義を持ちます。

(2) 「協賛・後援」要件の問題性を指摘
松原市では、前述のように、橋下元市長や維新議員の応援を受けた市長が、「市の協賛・後援」要件を用いて、労働組合等の団体を敵視した運用を行っています。

このような公園の「私物化」に対して、本判決が「集会の目的や集会を主催する団体の性格そのものを理由として使用を許可せず、あるいは不当に差別的に取り扱うことになる危険性をはらむ余地があ」るとして問題のある仕組みであると指摘したことも大きな意義があります。松原市に対し、判決に従い、上記審査基準を廃止して憲法・地方自治法と条例を遵守するよう働きかけていかなければなりません。

かつてのように、松原中央公園で、子どもまつりや学童の運動会だけではなくメーデーの集会やデモ出発のための集会を自由に開くことを目指し、引き続き頑張りたいと思います。

(弁護団は、松尾直嗣、岩嶋修治、高橋徹、遠地靖志、長岡麻寿恵)

個人事業主に消費税分の負担を 押し付けるな!~消費税相当分の支払い等を求めた訴訟解決のご報告

弁護士 西念 京祐

 中小零細事業主のための独禁法研究会に、東淀川区民商を通じてご相談いただいた案件が、その後、訴訟となり、先頃、和解により解決しましたので報告します。

◆事案の概要◆

Aさんは、もともとB社の契約社員として家電量販店の店頭で、ケーブルテレビやインターネットサービス等の新規顧客獲得業務に従事していました。その成績が良好であったため、B社から独立を提案され、個人事業主としてB社と業務委託契約を締結し、同じ業務に従事することとなりました。個人事業主となることによって、Aさんには、基本委託料に加えて、顧客との契約獲得件数に応じたインセンティブ委託料の支払いを受けることが出来るようになるメリットがありました。

両者の間で交わされた、「委託料に関する覚書」という書面には、これらの委託料の金額が(消費税別)と明記の上、記載されていました。

ところが、B社は契約開始直後の1か月分についてはきちんと消費税分を加えて支払いましたが、2か月目からは消費税相当分を支払いませんでした。

疑問に思ったAさんが確認すると、B社の担当者(元上司)は、「Aさんは、まだ免税事業者だから支払えない」と説明したと言います。しかし、その後、Aさんが免税事業者ではなくなっても消費税相当分は支払われないままでした。

Aさんは、インセンティブの一部未払いや担当店舗から外された際のB社の対応にも強い疑問を抱き、当研究会にご相談されました。この時点で消費税相当分の未払い期間は5年10か月にも及んでいましたが、我々に相談するまで、消費税分が支払われないことを半ばあきらめてしまっていました。

◆消費税相当分の位置づけ◆

契約に際し業務委託料の金額が消費税別とされている場合、実際に支払うべき委託料の額は、消費税相当分を加えた額となります。この額が当事者間で合意した業務の対価に他なりませんので、これを支払わない行為は単なる債務不履行です。

また、取引先が、事業開始直後等で消費税の納税が免除されている事業者であったとしても、消費税相当分を不払いとすることは認められません。これを理由とする減額は不当な要請であり、本件より後である平成25年10月に施行された消費税転嫁対策特別措置法が禁ずる減額に他なりません。

したがって、消費税相当分は当然に払ってもらう必要があるのです。

◆和解による解決◆

Aさんの闘いは訴訟となり、消費税分の未払いの論点の他、インセンティブの前提となる顧客獲得件数のカウント方法や、Aさんの契約上の地位と担当店舗との関係に関する契約解釈等が争点となり争われました。

消費税分について、本件では覚書に明記されていたことが決定的となりました。B社は、最終的には、社内での連絡の行き違いにより生じた誤解によるものである等として、非を認めざるを得ませんでした。結局、裁判所からの強い働きかけもあり、5年10か月の消費税相当分の未払額約250万円を含む総額300万円の支払いを受ける条件での和解が成立しました。消費税相当分については、消滅時効が完成している部分についても支払を受けたこととなります。

消費税の税率がさらに上昇すると言われている中で、中小零細事業者が不当な負担を押しつけられることなく、受け取るべき正当な対価をきちんと受け取ることが出来るように、我々研究会では力を尽くしていきたいと思っています。

本件は、吉岡良治、喜田崇之、西田敦、岩佐賢次、金星姫、野条健人および西念が担当しました。

A信用組合事件不当判決

弁護士 馬越 俊佑

1 はじめに
平成28年11月18日、A信用組合事件が判決を迎えましたので、ご報告いたします。

2 事案の概要

原告は、筆記試験や2回の面接を経て、A信用組合から内定を受けました。内定後も原告は金融関係の資格をとり、採用前アルバイトにも卒業式以外全て出勤するなど、真面目に取り組んでいました。
入組後も、原告は一度も遅刻欠席をせず、真面目に就労していましたが、A信用組合はコミュニケーション能力が不足している等として、見習期間を3ヶ月延長しました。

原告は見習期間延長後も、A信用組合が義務付けている全国信用組合中央協会主催の通信教育において高得点を取得し、表彰を受け、また銀行業務検定法務4級を取得するなど、真面目に就労してきました。

しかし、A信用組合は、「初歩的な事務処理の内容が理解できず、正しい判断ができない」などとして、解雇したのです。
原告は城北友愛会、金融ユニオンに加入し、3回にわたり団交を行いましたが、A信用組合が解雇撤回に応じることはありませんでした。
そこで、解雇無効確認等請求訴訟を提訴したのが本件です。

3 争点

本件の争点は、①見習期間延長の有効性と②解雇事由の有無です。

4 裁判で明らかになった事実

裁判では、A信用組合が主張している事実が見習期間を延長するような事実でないことが明らかになりました。例えば、A信用組合は、原告に伝票を取ってくるように頼んでも「ハイ」と言って立ち上がったまま立ち尽くした、伝票の意味を分かっていなかったなどと主張しました。しかし、伝票がある棚は縦三列横十数列あり、入組後一ヶ月の新人が直ぐに見つけられないことは明らかでした。このような事実をもって理解力がないなどとは到底言えません。

また、尋問では、コミュニケーション能力を付けるためにチラシ配りをさせていたという被告の主張について、原告代理人が当時の原告の研修担当者に対して、通常の研修から離れてなぜチラシ配りをさせていたのかという質問に、職員の夏季休暇の関係であったと思う、などと証言するなど、明らかに被告の主張と矛盾するような証言もされました。このことは、チラシ配りが原告のコミュニケーション能力不足を補うためでなく、A信用組合の宣伝として行われていたことを示しています。

さらに、原告の問題点について、研修担当者らが口を揃えて、一番の問題はコミュニケーション能力であるなどと述べましたが、原告と話をしてみれば明らかなとおり、コミュニケーション能力に問題があるような青年ではありません。このことは端的にA信用組合があげる原告の些細な失敗について、研修担当者が重視すべきものではないと考えられていたことを示しています。

このように、裁判ではA信用組合の主張の矛盾がいくつも明らかになりました。

5 不当判決

しかしながら、大阪地方裁判所は、①本件見習期間の延長は有効であるとし、②本件解雇は留保解約権の行使として客観的に合理的な理由があるとしました。

①見習期間延長の主な理由は、原告のコミュニケーション能力不足を指摘するものですが、原告は研修担当者からコミュニケーション能力の不足を指摘されたことはなく、研修ノートにそのような注意も見受けられません。明らかに誤った認定と言えます。

また、②解雇を有効とする主な理由は、原告が、チラシ配りに時間を費やされ不十分となった研修、及び退職勧奨を受けながらプレッシャーの中で記載した研修過程における顧客宅での「伝票の書き間違い」でした。新人であれば、研修中の書き間違いはありうるものであり、間違いを指摘されながら成長するものですが、まさに若者の成長を止めるような事実認定と言わざるを得ません。

弁護団は、判決を受け、直ちに控訴致しました。

6 この裁判の意義

原告は極めて真面目な人物です。裁判でも裁判官がA信用組合側に、「原告は真面目なんでしょう」と質問したのに対して、A信用組合側の複数の証人がこれを肯定する証言もしています。また、原告は今年のある国家試験では上位で合格するような能力面も極めて優秀な人物です。

真面目で成長しようとすることを怠らない若者が成長過程での失敗を理由に解雇されるのであれば、若者の成長はありえません。
私たち弁護団は、成長しようとする若者の努力を認めない企業と徹底的に闘っていきます。

(弁護団は、鎌田幸夫、馬越俊佑)

なくそう! 官製ワーキングプア 大阪集会Vol.4

ハローワーク雇止め裁判原告 時任 玲子

 毎年秋に開催されるこの集会も、第4回目に至り、ますます充実した盛りだくさんの内容で締めくくることができたように思います。今年は秋晴れの下、2016年11月3日(祝)エル・おおさかにて開催されました。

最初に言い訳ですが、私は第1回目の集会は職場の記念式典の行事と重なり、夜の交流会からの参加になりましたが、毎年顔を出して首を突っ込んでおります。今年は全体会の司会を担当することになり、学習内容についてほとんどメモを取れていません。なので、きちんとした報告文としてはまずは及第点が取れないであろうことはどうかお許しいただきたいのです。

午前は、①官製ワーキングプア入門講座、②雇止めなどの判例・通知を学ぶ、③均等待遇を目指して到達と課題、④運動の報告と交流、というそれぞれの分科会に分かれての報告・学習でした。途中、④で非正規雇用労働者の正社員化の成功の経緯についてお話しいただいた京都放送労働組合の、講師の古住さんと当事者松野さんには、場所を移動して、②の分科会でもう一度お願いすることになりました。それだけ多くの人に知ってもらいたい事例でした。

午後は、裁判係争中(ハローワークは終了)の当事者たちからの訴えと報告、安原邦博弁護士からのコメントも交え、5人の発言がありました。つくづく『任用』という化け物がはびこっていると実感しました。 条裁判についても、前日に東京高裁で逆転敗訴するというニュースが流れ、理不尽なことに対して司法が救おうとしないのかと疑念がふつふつと湧き上がるのを抑えられませんでした。皆さんの魂の訴えは心に響いたと思います。特別報告は、「大阪府内の自治体の臨時・非常勤のワークルール第2次調査から見えてきたことと課題」というタイトルで、おひとりでの登壇でプレッシャーかと思いましたが、それをものともしない久米由希子さんの堂々とした発表でした。今回非常に高い精度の大阪府下の自治体調査の重要な役割を果たされた武久英紀さんの、一刻も早いご回復を祈ります。

印象に残ったのは、地方自治体総合研究所の上林陽治さんの総務省調査結果の総括でした。配布されるレジュメなしで、それは「証拠を残さないため」、スクリーンを写真に撮ろうとされた方へ、「写真もできれば撮られたくない」とストップをかけられたところで、これは政府が知られたくないことを握っている!ヤバい情報をつかんでいる!というただならぬ雰囲気が漂う発表でした。確実に、行政の足元で働くこの官製ワーキングプアの存在を、国はヤバいと考えていて、でも手を付けるにはあまりにも大ごとで、適法に不利益を強いられる我々を「どうしていいのか僕わかんない」状態であることが伝わりました。私たちが知って、感じて、声を上げていくことが、現状を動かすエネルギーになるはずです。

休憩をはさんで、ソウル市における労働政策の報告です。なぜ、ソウルでは非正規雇用労働者を正規雇用に変更できて、日本ではそれができないのか。首長の意気込みの差なのでしょうか? 脇田滋先生と白石孝官製ワーキングプア研究会理事の対談でした。

 そして今回の目玉企画である、生活困窮者政策で注目の、山中善彰滋賀県野洲市長を迎えた、「公共サービスと公務労働を考えるシンポジウム」は、期待通り盛り上がりました。税金の滞納者を追いかけて、細やかなケアを施す、申請主義のお役所の常識をおよそ覆す政策を推し進めて、全国から注目されている山中市長のみずみずしい感覚に、移住してくる人たちが後を絶たない現象もうなずけました。「それがいいかどうかは市民が決める」という山中市長の言葉には、確かな響きがありました。コーディネーターの読売新聞原記者のやりとりでは、正規雇用の職員はサボりがちということではないという反論も聞かれましたが、家庭児童相談員の西村聖子さんが、「野洲市に住みたい気持ちにはなるけれど、そこで非正規で働きたいかというとちょっと待てよ、という気になる」という言葉が、私は心に残っています。

総括コメントは、これまでの集会に皆勤賞の西谷敏先生の登場です。西谷先生も上林さんの報告に言及され、感じるものを抱かれたようでした。いつかは「なくそう! 官製ワーキングプア」の集会が必要なくなる日がくることを祈っております。でも、道のりはまだまだ厳しいものがありそうですね。途中で参加費500円の領収証がなくなって、受付担当者が実行委員へ、渡した領収証の回収を依頼された場面がありました。想定以上の数の参加者があったことがうかがえました。150人は超えたでしょう。会場でのカンパも40,884円集まり、熱気冷めやらぬ良質な集会でしたことをご報告いたします。

街宣懇第5回総会のご報告

弁護士 西川 大史

1 はじめに

労働組合や民主団体の街頭宣伝に対して、警察等が干渉・介入してくる事例が急増することに危惧を抱き、組織的な対応が必要であるとの共通認識から、「街頭宣伝の自由確立をめざす各界懇談会」(街宣懇)が2012年4月に再開されました。
そして、2016年11月4日に第5回の総会が開催され、47名の参加がありました。

2 福崎町長選挙に見る警察の選挙妨害干渉の実態について

総会では、濱嶋隆昌さん(国民救援会中央常任委員・兵庫県本部事務局次長)を講師にお招きして、「福崎町長選挙に見る警察の選挙妨害干渉の実態…言論表現活動の封殺を許すな…」とのテーマで、兵庫県福崎町長選挙における警察の選挙妨害干渉の実態をとてもリアルに講演いただきました。

福崎町では昨年12月に町長選挙がおこなわれ、これまで5期20年続いた嶋田民主町政の継承・発展を掲げた前副町長が当選しました。ところが、選挙中から警察は、内部文書である後援会ニュースを示して「郵便物が届いてないか」「後援会に入会しているか」「後援会員でないならば文書に署名して欲しい」などと全戸規模で聞き込みをおこなったのです。そのため、「恐いから選挙に行きたくない」と口にする町民もいたそうです。また、投票を済ませた人に警察手帳を見せて「誰に投票したのか」と聞くなど、あからさまな選挙妨害の不当捜査を行っていました。さらに、警察は、後援会員に届けた連絡文書を違法文書と決めつけ、選挙後には、後援会役員やその手伝いをした町民らに対し、連日の出頭呼び出し、聞き込みの不当捜査を行っており、今もまだ捜査は終結していないとのことです。なお、福崎町での弾圧・不当捜査については、日本共産党の清水ただし衆議院議員が今年の3月の衆議院法務委員会で鋭く追及しています。

濱嶋さんからは、このような警察による弾圧・違法な捜査をリアルにお話しいただき、不当な干渉・弾圧を絶対に許さず勝利することはもちろん、このような選挙弾圧を絶対に定着させない闘いを繰り広げることが大事だということを強調されました。そして、濱嶋さんは、公職選挙法が言論活動の封殺となっていることや、国際的にも時代遅れであることを厳しく批判され、「選挙運動が自由化されることで、世の中がもっと良くなるに違いない」と心強い発言をいただきました。

3 街宣活動に対する不当な干渉と闘う!!

街頭宣伝に対する警察等からの不当な干渉は相変わらず繰り返されています。「許可をとったのか」、「音がうるさい」、「苦情の電話があった」などが大半ですが、近時では、警察が「警告する」と告げて強権的に妨害する事態が増えています。干渉事例の集約と分析、必要な対応と運動化が今後も一層重要であることが共通認識となりました。
街宣活動に対する干渉等がありましたら、街宣懇までご報告をお願いします。また、不当な干渉、妨害に対する対応として、街宣懇が作成したQ&Aリーフがありますので、是非ご参考にしていただくとともに、普及にご協力下さい。

真夜中の労働ホットライン 報告

弁護士 清水 亮宏

2016年10月上旬に報道された電通事件、同時期に厚労省から発表された過労死白書などを受け、過労死問題に対する社会的関心が高まっています。また、過労死そのもののみでなく、その背景にある過酷な長時間労働やパワハラなどの問題についても社会的関心が集まり、議論を呼んでいます。

 このような情勢を受け、本年11月4日21~26時に、過労死の背景にある長時間労働・ハラスメントの問題に焦点を当てたホットラインを開催しました。東京との同時開催で、大阪では、民主法律協会とブラック企業被害対策弁護団の共催で行いました。会員約10名が参加しています。電通事件の衝撃から約1か月経過していましたが、過労死問題(特に長時間労働の問題)に対する社会的関心は高く、多くのメディアに事前告知や当日のホットラインの様子について報道いただきました。また、会員の皆様方にも、SNS等での発信にご協力いただきました。誠にありがとうございました。大阪で行われたホットラインの結果を簡単に紹介いたします。

当日は、相談が殺到し、21時から26時まで電話が鳴り続ける状態で、全体として38件の相談が寄せられました(東京の35件と合わせると合計73件)。相談内容としては、長時間労働(17件)、過密労働 (15件)、残業代不払い(13件)、労災(8件)、いじめ・差別・ハラスメント(8件)についての相談が多く寄せられました(複数回答です)。

あくまで確認できる範囲内のものですが、過労死ラインを超えていると疑われるものが16件あり、そのうち、残業時間が月120時間を超える危険な状態にあるものが6件ありました。また、20代、30代の若者からの相談が半数を占めている点も特徴的でした。若者が長時間労働で使い潰されている実態を読み取ることができます。

個別の内容を見ても、「朝から晩までの長時間労働」「休みたいけど休めない」「有給が取れない」「残業代が一切払われない」「固定残業代」「精神疾患を発症している」など、ブラック企業で見られる典型的な問題が多く含まれていました。

今回のホットラインは、過労死問題が社会的関心を集める中で行われたものです。個別の相談で終わらせるのではなく、得られた結果を元に、長時間労働やハラスメントの問題について社会に発進していきたいと思います。

第49回働くもののいのちと健康を守る学習交流集会「いのちの格差」はどこから?~分断された働き方を考える~

弁護士 馬越 俊佑

第1 はじめに
2016年11月5日に、80名が参加し「第 回働くもののいのちと健康を守る学習交流集会」が開催されましたので、報告致します。

第2 午前の部
1 開会挨拶
初めに、川辺和宏実行委員長より、労働組合として何ができるのか、働きがいのある職場をどう作っていくのかが課題だと思っています、労働者の権利を守るという大きな闘いをしていきましょう、との挨拶がありました。

2 記念講演『安倍政権の「働き方改革」を斬る』
続いて、中村和雄弁護士の記念講演『安倍政権の「働き方改革」を斬る』がありました。
初めに若者の労働状況について、中村先生が担当しておられる事件を例に挙げて本当にひどい状況だとの報告がありました。

また、安倍政権の「働き方改革」は、これまで私たちが掲げてきたスローガンとほぼ同じであり、安倍首相がこういうことを言わないといけない状況になっているということを確認しなければならない、とのことでした。
2016年5月18日に出された「ニッポン一億総活躍プラン」は実現会議のメンバーに労働者側は連合会長一人しかいない。つまり、労働者側を切り離して、労働者を守るのではなく、経営者側から働き方を変えていこうと言っている。しかし、逆に言えば、労働者の賃金を上げるしかないという状況に来ていることを確認しなければならない、とのことでした。

その他、長時間労働の是正やインターバル規制(一日終わったあとに次の仕事までの時間を確保するという規制)の必要、高齢者の就労促進、最低賃金の引き上げ、同一労働同一賃金について、わかりやすくご講演いただき、最後に「労働組合は憲法による保障があります。労働組合は社会に必要だからです。組合として、全労働者のために他の市民団体と一緒になって運動をしていきましょう。」との激励の言葉がありました。

3 特別報告
(1) 福祉・介護職場の実態と労安活動
福保労の小林聡美さんより、福祉・介護職場の実態について以下のとおり報告がありました。
私は民間の社会福祉法人で障害者の介護をしていますが、社会福祉の現場は「自己責任」のもと、攻撃を受けてきました。しかし、労使が協力して、一人の介護者を職場復帰させた事例があります。
私たちは大阪社会医学研究所に協力を仰ぎ、労使が協力して職場全体で安全衛生活動に取り組みました。専門的な知識と理論をもった社会医学研究所の助力が必要不可欠であったと思います。労使共同での労働安全衛生活動が必要です。今後も取り組んで行きたいと思っています。

(2) いじめ・パワハラ訴訟支援の訴え
電気情報ユニオンより、いじめ・パワハラ訴訟支援の訴えについて以下のとおり報告がありました。
組合活動が原因でパワハラのターゲットとされ、社長らの威圧的な面談や、社員らの暴言等により精神疾患を煩い、現在不当解雇裁判とパワハラ労災裁判が継続しています。ご支援お願いします。

(3) 争議の訴え
ア 組合事務所退去事件について
不当労働行為を認めた地裁判決を高裁判決はひっくり返してしまいましたが、最高裁への上告受理に向けて活動を続けています。是非とも裁判に勝って労働者の砦となる組合事務所を守っていきたいので、ご支援の方をよろしくお願いします。
イ 大阪医科大学事件
原告は、フルタイムのアルバイトとして正職員と同じ仕事をしていましたが、賃金ははるかに低いものでした。そこで、労働契約法 条に基づいて差額請求を行っています。来年の春には証人尋問があると思います。是非ともみなさんの応援を頂きたいです。

第3 午後の部
1 分科会
午後からは、第1分科会「職場のメンタルヘルス」、第2分科会「安全問題」、第3分科会「労働安全衛生活動」の3つの分科会が行われました。私は第2分科会(安全問題)に出席致しましたので、ご報告致します。

2 平成28年度府下での事故発生・労災認定状況の傾向と分析
まず初めに、全労働大阪基準支部の丹野弘さんより、平成 年度における大阪府下での事故発生状況と労災認定の状況について報告がありました。
平成 年以降労災死傷者件数の減少がほとんどないことなどが報告され、対策について議論となりました。
参加者は 名で、各人の労働現場における実態が報告され、組合としては、労働災害があった場合には、どんな状況で、どういった災害があったのかという情報を広げて、各労働者と共有する必要があるとの意見が挙げられました。また、増加傾向にあるメンタルヘルスの問題について、同僚とのコミュニケーションをとることが重要であるが、若者とのコミュニケーションの図り方について難しい部分があるとの意見もありました。

3 郵政職場の実態と労安活動

次に、郵政ユニオンの森田さんより、郵政職場の実態について報告がありました。
時間労働が4日連続で続く問題があったが、組合からの要求により、連続して2日になることになった。しかしながら、組合からは廃止を求めているとの報告や、労働相談ではパワハラの相談が多かったなどの報告がありました。

第4 閉会集会
1 各分科会からの報告
各分科会から議論についての報告がありました。どの分科会でも、各人から労働現場の状況について報告があり、活発な議論となったようです。
2 閉会挨拶
最後に村田浩久事務局長より、閉会の挨拶がありました。
それぞれの職場に持ち帰り、よりよいものにしていこうということで挨拶にしたいと思います、とのことでした。

第5 感想
各労働現場の状況が聞ける大変貴重な学習会となりました。中村先生の講演も大変わかりやすく、安倍政権の狙いや危険性を改めて確認できました。参加されなかった方もぜひ次回はご参加ください。

労働相談懇談会(おおさか労働相談センター・民法協共催)~人事権を濫用した退職強要に対するたたかい方~

大阪労災職業病対策連絡会 藤野 ゆき

2016年11月8日(火)に国労会館で2016年度第4回労働相談懇談会が開催された。
恒例となっている西川大史弁護士からの「労働情勢報告」では、電通過労自殺事件の報道とも重なるように、長時間労働問題、うつ病、自殺などの労災に関わる事件が数多く報告された。

河村学弁護士による「人事権を濫用した退職強要に対するたたかい方」の学習会では、冒頭に大阪を中心とした実状を踏まえて分析、報告があった。近年、労働者に厳しい判決が続いており、使用者と対立した場合、退職しかないとする判断がされる傾向となっている。裁判で労働者側に厳しい判断がされていることからも、労働組合による話し合いでの解決が期待される。退職強要の事例としては「労働者に不利益を強いる配転、左遷的な配転」「不当に低い人事評価、降格」、業務命令による差別、就労場所の差別(隔離部屋)」「懲戒権の濫用」などがあげられ、これらの退職強要は、解雇による紛争リスクの回避、使用者の心理的負担の回避、他の従業員や労働組合との対立の回避などが背景にあると考えられる。

退職強要に対しては、「仲間づくり」「証拠づくり」「意思づくり」があり、そのためにも労働組合の役割が重要となる。現在は労働組合のない職場も多く、労働運動の知識のない労働者も数多く存在することから、労働者への十分な配慮と教育が求められている。一方で、相談をもちかけてくる労働者とともに進めていくために、実状に応じた活動を模索しながら、一つ一つの事件を個人の利益のためだけではなく、労働者全体の利益につながるという認識をもつことが重要である。

人事権行使と裁判については、「配転」を題材として、判例をもとに進められた。配置転換とは職種や基本的な職務内容の変更、もしくは勤務地の変更をさしている。配置転換を争う場合、まず「配転命令権」が存在しなければならない。労働協約及び就業規則に定めがあるか、その根拠などが問われる。配転命令権は濫用してはならないが、退職に追い込むような不当な動機、目的で行われている事件もある。配置転換に対する争い方としては、第一に就業規則等の規定内容や配転の実態を十分に確認する必要がある。可能な限り団体交渉等での解決を目指し、その手段として裁判を考えていくことが有効であり、裁判を考えるとしても団体交渉での情報収集が重要となってくる。不当査定・降格、懲戒権の濫用、業務上の差別、その他の嫌がらせなどについても、基本は同じである。

労働者側に不利な裁判所の姿勢に対して、河村弁護士は冷静に分析しながらも、強い憤りにあふれていた。労働者を迅速に、かつ労働者にとって適切な解決に至るためにも労働組合による解決が期待されていることが熱く語られた。労働相談を受けて争議に関わることがある立場としては、訴訟になる前にやるべきことはたくさんあり、そこに真摯に向き合う必要があることを改めて考える時間となった。

日本労働弁護団第60回全国総会

弁護士 谷  真介

2016年11月11日~12日、北九州八幡ロイヤルホテルにおいて、第60回日本労働弁護団総会が開催され、全国の多数の労働弁護士が参加しました。

冒頭、九州大学・野田進名誉教授より、「非正規労働者の労働条件格差に関する法的対応」として基調講演がありました。安倍政権が働き方改革の目玉の一つとして「同一労働同一賃金」を打ち出す一方、労契法20条を巡って長澤運輸事件で「定年後の賃金減額が社会的に容認されている」ことを理由に労契法20条に違反しないとされた東京高裁判決が出た直後ということもあり、非常に興味深い講演でした。野田教授は、安倍政権の働き方改革でいわれる「格差是正」が経済政策の延長上で出てきたものであり、労働者・労働組合が求める格差是正とは出発点が異なることを押さえた上で、パート法や労契法、派遣法等で定められた格差是正規定について整理をいただきました。各規定は微妙に沿革や規定の仕方が異なり、要件や内容、効果等がどのように解釈されるべきかは難しい問題もあります。年末には厚労省がガイドラインを出すこととなっており注視が必要です。

総会では、働き方改革のもう一つの目玉である長時間労働是正に向けた厚労省の検討状況や労働弁護団の提言、予断を許さない解雇の金銭解決制度導入の動きについて報告と活発な議論がなされました。これをチャンスととらえ、「企業が世界一活躍できる日本」にする改革ではなく「労働者が世界一働きやすい社会」を実現するための改革にすべく全国で闘おうと強い意見が出されたことが印象的でした。

そのほか、労働審判制度の全国での運用状況や支部拡大の取組み、新派遣法下での取組み、女性労働問題、ワークルール教育の推進と法制化への運動、労働運動におけるSNS活用やストライキ活用講座・実例報告など、労働分野の様々な課題が活発に報告・議論されました。個人的には、京都の塩見卓也弁護士が報告されたきょうとユニオンiWAi分会での301日間に及ぶ職場占拠を伴うストライキによって(ストライキの正当性を認める仮処分抗告審決定を勝ち取られています)整理解雇争議を大勝利解決に導いた報告にとても感銘を受け、元気をもらいました。

なお、今年の労働弁護団賞は、過労自死事件で画期的な和解を勝ち取られたワタミ事件弁護団、退職金制度の不利益変更に関する労働者の合意を否定した最高裁判決を勝ちとられた山梨県民信用組合事件弁護団が受賞されました。
来年の総会は、日本労働弁護団60年の節目ということで、60周年記念行事を兼ねて、東京・浅草で行われる予定です。