民主法律時報

2016年9月号

民法協60周年記念行事、盛大に開催

60周年記念行事実行委員会 委員長 城塚 健之

2016年、設立60年を迎えた民法協。その記念行事が、8月27日の総会に引き続き、ヴィアーレ大阪にて開催され、第1部(記念講演とミニパネルディスカッション)132名、第2部(レセプション)127名と、多数のみなさまにご参加いただきました。

第一部の記念講演は森岡孝二・関西大学名誉教授による「新自由主義の席捲は雇用関係に何をもたらしたか」。新自由主義のばっこは、ちょうど労働者派遣法が成立した1985年ころから始まりますが、森岡先生は、その後の  年間に進行した雇用の非正規化と「雇用身分社会」出現の経過を歴史的に明らかにされました。それではこれに労働側はどう対抗したらいいのか。続いてのミニパネルディスカッションでは、清水亮宏(弁護士・POSSE)、川西玲子(ASU-NET副代表理事)、林田時夫(JMITU特別執行委員)、豊川義明(副会長)の4氏が、鎌田幸夫幹事長の司会のもと、「新たな運動の萌芽と展望」を探りました。労働者の権利擁護のアクターとしてのNPOや、職種別ユニオンの構築という提起は新鮮でした。会場からは「これまでの運動がうまくいかなった理由をきちんと明らかにすべき」との指摘もなされ、この課題は民法協の重要課題として今後も引き続き考えていくべきことが示されました。

第二部のレセプションは、大阪のみならず、兵庫民法協、京都、滋賀からも含めて、各地から多彩な方にご参加いただき、大きな盛り上がりを見せました。ご挨拶をいただいた方も多士済々で、民法協の懐の広さを示すものとなりました。ここでは、紙幅の都合上、プログラムでご紹介した方のみを記しておきます。
山口健一・大阪弁護士会会長
徳住堅治・日本労働弁護団会長
大川一夫・連合大阪法曹団代表幹事
七堂眞紀・大阪労働者弁護団副代表
萩田満・兵庫県民主法律協会事務局長
今村幸次郎・自由法曹団幹事長
原和良・青年法律家協会弁護士学者合同部会議長
古賀一志・旬報社労働法律旬報編集長

あわせて、私が編集責任者を務めた60周年記念誌についても一言。題名の『激動の時代を闘い抜いて』は森岡先生のご提案によるものですが、まさにこの  年の民法協を体現するものといえます。
第一部は、この間、民法協会員がたたかった労働事件がわが国全体の労働規範においていかなる前進面を勝ちとったかを明らかにしようとする、野心的なものでした。また、「新たな運動の展望」として、過労死防止法立法闘争、泉南アスベスト国賠訴訟から、劇団きづがわ・憲法ミュージカルにまでふれているのは出色です。かつて「九条の会」の呼びかけ人である奥平康弘先生は、「憲法を守る運動は文化を守る運動である。だから呼びかけ人9人のうち憲法学者は自分だけで、あとはすべて文化人なのだ。」とお話されていましたが、まさにこれを意識したものです。さらに、第二部「研究者と民法協」では、学者会員に論文ではなく民法協への熱い思いを、第三部「先進者に学ぶ」では、民法協の草創期にご活躍いただいた  期以前の先輩弁護士に思い出を書いていただき、まことに民法協らしい冊子となりました。

最後に、裏方を支えていただいた専従事務局の長田保子さんと、記念誌編集にご尽力いただいたかんきょうムーブの國本園子さんに深く感謝を申し上げると共に、今回の記念行事が会員諸氏の明日の力となりますことを祈念いたします。

第61回定期総会報告

事務局長 井上 耕史

2016年8月27日、ヴィアーレ大阪において、第61回定期総会が開催され、91名の皆さんが参加されました。今年は、総会後に続けて民法協創立60周年記念行事を開催するため、日程を午後1時から3時までの2時間に短縮しての開催です。

議案書に基づいて2016年度の活動総括と2017年度の活動方針案が提案された後、以下の4件の特別報告を受けました。
①大阪市思想調査アンケート事件・勝利判決確定(西晃弁護士)
②フジ住宅ヘイトハラスメント裁判(金星姫弁護士・原告本人)
③教科書採択問題(原野早知子弁護士)
④マイナンバー違憲訴訟(辰巳創史弁護士)
このうちヘイトハラスメント裁判は、在日コリアン3世の女性が民法協の「ブラック派遣・ブラックバイト」ホットラインに電話相談したことがきっかけとなりました。「民法協がなければ、今の私はありませんでした。」という原告本人の言葉が、参加者の感動を呼びました。
この後、討論を行い、安保法制廃止・憲法改悪阻止の活動、改悪派遣法の下でどうたたかうか、などの活発な意見交換がなされました。

活動方針案、決算報告・予算案については、いずれも満場一致で採択されました。続いて、以下の2本の決議も満場一致で採択されました。
・安倍政権による労働法制改悪を許さず、労働政策決定プロセスの形骸化に反対する決議
・憲法違反の安保関連法の廃止を求めるとともに、安倍政権など改憲勢力がすすめる緊急事態条項等の明文改憲に反対する決議
2017年度の役員選出が行われ、退任事務局2名、新任事務局5名から挨拶をいただき、総会を閉じました。

7月参院選の結果、自公与党と維新など補完勢力が3分の2を占める状況の下で、憲法改悪・労働法制改悪の動きが加速するおそれがあります。厳しくもやりがいのある情勢ともいえます。新執行部のもとで、諸課題に力強く取り組んでいきましょう。

全日本建設交運一般労働組合テーエス支部 第2次行政取消訴訟勝訴判決のご報告

弁護士 山室 匡史

1 テーエス運輸株式会社の労使関係

テーエス運輸株式会社(以下「会社」といいます。)は、日本エアリキード株式会社の100%出資子会社であり、同社のみを取引先として、液体ガスの運輸を業として行っている株式会社です。

1973年にテーエス運輸労働組合(テーエス支部の前身)が、全国自動車運輸労働組合(現在の全日本建設交運一般労働組合の前身)に組織加盟しようとした際、会社は、これを嫌って、脱会工作を図ってきたことがありました。兵庫県地方労働委員会において会社側証人であった職制が経理者の指示により組合弱体化工作をはかったことを証言したことを受け、労働委員会は和解を勧告し、会社とテーエス支部との間で会社が不当労働行為を認めて謝罪することをはじめとする和解協定が成立しました。

会社には、全日本建設交運一般労働組合テーエス支部(以下「テーエス支部」といいます。)と兵庫県交通一般産業労働組合テーエス労働組合(以下「交通労連」といいます。)の2つの労働組合が組織されています。

2 熾烈な組合攻撃

和解協定締結以来、会社は、労働条件の変更等については建交労と真摯に協議して決定してきたのですが、2006年1月に社長が交代すると様相が変わりました。社長は、「謝罪は終わりました。」と一方的に宣告して、2008年3月にテーエス支部との労使協定を破棄し、それまで毎年4000円以上行ってきた定期昇給を廃止しました。

テーエス支部が定期昇給をできない理由を明らかにするように求めると、社長は、①テーエス支部の組合員にのみ夏季一時金を支給しない、②年末一時金について他組合や未組織従業員と差別して低額の支給にする、③36協定の締結主体からテーエス支部をはずすためにテーエス支部組合員を他の営業所に転勤させる、④テーエス支部と交通労連のパワーバランスをはかるためにテーエス支部の役員(現執行委員長を含む)を地方の営業所に転勤させる、⑤④につき、神戸地裁が配転無効の仮処分を発令しても従わず、転勤先で就業しないことを理由に転勤対象者の給料を支払わない、⑥テーエス支部の方針に従う組合員を乗車勤務からはずして時間外労働をさせずに恣意的に収入を下げる、⑦テーエス支部の組合員を定年後再雇用しないなど、乱暴な手段を連発してテーエス支部を屈服させようとしてきました。

3 事案の概要

今回組合勝訴判決が確定したのは、上記の②の事件です。2008年年末一時金支給に際して、会社は、建前は、従業員に対する業績評価を行って、その評価にしたがって最大5万円を一時金に加算するという収益改善協力金の導入を提案してきました。しかし、ふたを開けてみれば、テーエス支部組合員に対しては平均2万円程度しか支給されていないのに対して、交通労連組合員に対しては全員に最高額5万円が支給されていたというものです。また、社長は、業績評価を行う管理職に対して「組合から離れてがんばった人」を高く評価するようにメールで指示を出し、実際にテーエス支部を脱退した従業員には最高額が支給されていました。

4 裁判闘争の経緯

これを受けて、テーエス支部は、2009年11月17日に兵庫県労働委員会に不当労働行為救済申立てを行いましたが、2012年1月26日、兵庫県労働委員会は、組合間の明らかな支給額の格差や上記のメールの存在を無視して、申立てを棄却する命令を発令しました。

テーエス支部は、同年6月29日に神戸地裁に上記命令の取消を求める行政訴訟を提起しましたが、神戸地裁は2014年11月17日に請求棄却判決を下しました。

同月26日、テーエス支部は大阪高裁に控訴し、大阪高裁は2015年7月10日に原判決を破棄し、収益改善協力金の差別支給が労組法の不利益取扱いないし支配介入に当たるとする組合勝訴判決を下しました。

これに対して兵庫県と会社が上告及び上告受理申立てを行いましたが、2016年7月5日に最高裁判所が上告棄却及び上告不受理の決定を下し、組合勝訴判決が確定しました。

5 総括

① 及び⑥については既にテーエス支部に対する不当労働行為を認める判決が確定しており、③についても仮処分ながら不当労働行為が認定されています。今回の判決は、これらの一連の不当労働行為を認める判断に続き、よたび裁判所が会社の不当労働行為を認めたものです。

今後はこの命令取消判決を受けて、本年10月以降に兵庫県労働委員会で再調査が実施される予定です。収益改善協力金の問題に限っても、団体交渉時から起算すると、足かけ8年以上をかけてようやく組合攻撃が正しく認定されることになります。

昨年、テーエス支部のオルグ活動が功を奏して会社の複数の管理職がテーエス支部に加入したことを受け、ついに社長が更迭されました。そのため、現在、会社の組合攻撃は一応小康状態にはあります。

しかしながら、前社長の負の遺産ともいうべき裁判闘争は多数残っており、今後どのように解決していくのかという点については、予断を許さない状況にあるといえます。引き続き、皆様のご支援をいただければ、大変うれしく思います。

(弁護団は、杉島幸生、中筋利朗、山室匡史)

日本放送協会事件(地位確認等請求事件)大阪高裁不当判決の報告

弁護士 辰巳 創史

1 事案の概要及び争点

本件は、協会の地域スタッフ(受信料の取次・集金等を行うスタッフ)で構成される組合(全日本放送受信料労働組合堺支部。以下、「全受労」という。)の執行委員長であったXが、日本放送協会(NHK)から、休業期間中に契約の中途解約をされたことに関して、①契約上の権利を有する地位にあることの確認、②休業見舞金や解約日以降の事務費(実質的に給与である。)等の報酬等請求、③慰謝料請求をした事案です。

本件の争点は、(1)本件中途解約の有効性について、(2)本件契約更新の当否について、(3)「事務費」及び「給付」請求の当否について、(4)慰謝料請求の当否についての4点でした。
これらの争点を判断する前提として、地域スタッフが労働契約法上の労働者に当たるか、労働組合法上の労働者に当たるかが問題となりました。

2 大阪地裁の判断

大阪地裁平成27年11月30日判決(菊井一夫裁判官)は、(1)について、地域スタッフは労働基準法及び労働契約法上の労働者であるということはできないとしながらも、地域スタッフは個人であること、本件契約は民法上の労務供給契約にあたること、地域スタッフは被告の業務従事地域の指示に対して諾否の自由を有しないことなどを根拠に、原告が労働契約法上の労働者に準じる程度に従属して労務を提供していたと評価できるとして、契約の継続および終了において原告を保護すべき必要性は労働契約法上の労働者とさほど異なるところはないとして、労働契約法17条1項を類推適用するのが相当であるとし、本件中途解約を無効であると判断しました。

(2)契約更新については、本件契約に労働契約法19条の類推適用がありうることを認めたものの、原告の業績不良等を根拠に、被告の更新拒絶は、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であるとして、平成26年3月31日に期間満了により終了したと判断しました。

(3)は、被告が本件契約に基づき休業見舞金や通常の事務費等の事務費・給付の支払い義務があると判断しました。(4)は、慰謝料請求を否定しました。詳細は、紙面の都合上割愛致します。

3 大阪高裁の不当判決

大阪地裁の判決に原被告双方が控訴しましたが、大阪高裁第14民事部は、平成28年7月29日、第1審被告敗訴部分を取り消し、第1審原告の請求を棄却する判決をしました。

高裁判決は、労働契約法上の労働者性の判断基準については、1審の判断基準をほぼ引用した上で、諾否の自由あり、業務遂行上の指揮監督を受けていない、勤務場所・勤務時間の拘束性は極めて緩やか、代替性あり、報酬の労務対償性は乏しい等と認定し、使用従属性を認めることはできず、労契法上の労働者性を否定し、類推適用も否定しました。

労組法上の労働者性については、仮にXが労組法上の労働者に該当するとしても、不当労働行為は認められないとして、直接の判断はしませんでした。

4 最高裁に上告・上告受理申立を行う

大阪高裁の不当判決を受けて、原告・弁護団は直ちに上告・上告受理申立を行いました。
先行する類似事件が、すでに上告不受理となっており、苦しいたたかいとなりますが、NHKの地域スタッフの実態は労組法上の労働者であることは当然として、明らかに労契法上の労働者です。
あきらめずに最後までたたかう所存ですので、引き続きご支援をお願いします。

(弁護団は、河村学、井上耕史、辰巳創史、西澤真介)

JMITUダイトク分会不当労働行為救済申立事件――徹底的な組合敵視との闘い

弁護士 冨田 真平

1 はじめに

株式会社ダイトクによる、JMITU地本傘下の地域支部きずなダイトク分会の組合員である沖野氏に対する不利益取り扱い及び不誠実団交についての救済を求める申立を、2016年5月30日、大阪府労働委員会に申し立てました。

2 事案の概要

株式ダイトクは、トラックスケールや産業用・空港用はかりの製造販売業等を業とする株式会社であり、従業員は20名程度です。ダイトクは、かねてからサービス残業が蔓延するような状態で、従業員が低賃金の中で働かされていました。
そのダイトクにおいて、JMIU地域支部きずなダイトク分会が結成されたのは、平成24年11月のことでした。サービス残業問題でJMIU地本の事務所に相談に来た沖野氏と突然「協調性がない」との理由で解雇された藤村氏がJMIUに加入し、その後藤村氏の裁判をともに闘うために、ダイトク分会が結成されました。

翌年1月には、組合の結成をダイトクに通告し、組合の公然化を行いました。すると、ダイトクからの組合に対する嫌がらせがはじまり、沖野氏の賃上げが全く行われなくなるとともに一時金もわずか10万円程度のものになりました。組合は、このようなダイトクの態度に抗議を行い、藤村氏の解雇問題や賃上げや一時金の問題について、会社と団交を重ねてきました。しかし、ダイトクは、取締役などの役員を団交の場に出席させない、組合の質問に答えないなど、団交において一貫して不誠実な態度をとり続けました。
このような中で本件救済申立に至りました。

3 不利益取り扱い

本件救済申立の柱の一つは、賃金・一時金差別です。組合員である沖野氏は、組合加入の公然化後、一切の昇給がありません。また、会社では、夏期・年末に一時金がそれぞれ20万円程度支給されていましたが、現在は10万円程度しか支給されていません。組合は、この「昇給なし・一時金減額」について、会社に対して納得のいく説明をするよう求めましたが、未だに納得できる説明はなされていません。

申立では、平成25年1月の組合加入公然化以後、沖野氏が、上司から不合理な叱責を受ける、後輩だった従業員から挑発を受ける、職場の人間の態度がそっけなくなるなどの過酷な状況に置かれることを踏まえると、上記の「昇給なし・一時金減額」は、組合加入を理由とする不当な昇給差別・一時金差別としか考えられないとして、会社が非組合員と同額の昇給・一時金を支払うよう求めています。

4 不誠実団交

本件救済申立のもう一つの柱は、不誠実団交です。組合との団交において、会社側は一貫して不誠実な態度を取ってきました。社長などの役員が団交の場に姿を見せず、担当者に経営資料も持たせず、さらに驚くべきことに団体交渉において、会社側の担当者は、組合の質問に対し、ほとんど答えず無言を貫いています。

申立では、一時金や賃上げ、未払い残業代の調査・支払い、藤村氏の解雇撤回・職場復帰などの要求事項について、一時金の要求については、低額回答を行いながら、売上・経常利益の額のみ答え、それ以上は組合側の質問に全く答えず、経営資料の開示も一切行っていない点、それ以外の賃上げや未払い賃金などの要求事項については、一切組合の質問に答えていない点について、不誠実団交にあたると主張しています。

5 さいごに

大きな利益を上げているにもかかわらず、労働者に低賃金やサービス残業を押しつけ組合敵視を続けるダイトクに対し、労働委員会の場でしっかりと追及し、不誠実団交や賃金・一時金差別についての救済命令を獲得して、ダイトクをまともな職場にしていけるように、一丸となって闘っていきたいと思います。
今後ともご支援のほどお願い申し上げます。

(弁護団は、鎌田幸夫弁護士、清水亮宏弁護士、及び冨田真平)

認知されつつある求人詐欺(ブラック求人)問題

弁護士 清水 亮宏

 ①「基本給30万円」「完全週休2日制」などの魅力的な条件の求人に惹かれて入社したが、入社してみると、基本給は20万円で、残り10万円は固定残業代として扱われていた。②正社員との求人を見て応募したが、入社してみるとアルバイトとして扱われていた。
このように、好条件の労働条件を示して労働者を獲得し、実際にはより悪条件で働かせるという採用手法は、「求人詐欺」「ブラック求人」などと呼ばれ、社会的関心を集めています。

この「求人詐欺」は、応募した労働者本人が不利益を被るのはもちろんのこと、求人全体の信頼が損なわれることで採用活動・就職活動が停滞するなど、社会全体にも悪影響を及ぼすものです。
特に、求人に固定残業代についての十分な記載がなく、入社後に固定残業代が導入されていることを知るというトラブルが頻発しています。実際に、2015年度に全国のハローワークの窓口やハローワーク求人ホットラインに寄せられた相談や苦情は1万件以上に上るそうです。

そのような中で、厚生労働省は、青少年の雇用の促進等に関する法律(いわゆる「若者雇用促進法)の公布(2015年9月18日)を受けて、同年9月30日に、「青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針」を告示しました。この指針は、求人者に対し、求人段階において、固定残業代についての十分な記載をするよう求めています。
ところが、求人段階において固定残業代の記載が不十分なものはまだまだ存在します。私が担当している事件の中にも、求人に「基本給に〇時間分の残業代が含まれている」という記載がなかったという事案があります。

そもそも、この問題の根幹には、入社するまで労働契約の内容がわからないという日本の実態が根幹にあるように思います。内定段階から、使用者に一定の労働条件を通知するよう求めていくことが、今後の運動の課題ではないかと思います。

裁判・府労委委員会報告―― 大阪高裁での労働事件の動向について

弁護士 長瀬 信明

2016年7月13日、エル・おおさか南館7階71号室において、大阪市思想差別アンケート事件・JAL整理解雇事件の大阪高裁判決を題材に、大阪高裁での労働事件の動向について、裁判・地労委委員会を開催した。争議団、弁護士を中心に30 名以上の方が参加し、大阪高裁での労働事件の闘い方について、忌憚なく意見交換をした。

原野早知子弁護士から開会挨拶、趣旨説明の後、西晃弁護士から「最近の大阪高裁判決から~大阪市思想差別アンケート事件・JAL整理解雇事件」と題して、両事案の概要、判決の概要、地裁と高裁とで判断を分けたポイント、高裁の問題点、反省点等について詳細な報告がなされた。併せて、大阪高裁の裁判官について、修習期別の人数を示すなどして分析された。

続いて、当職から、大阪高裁の労働事件以外も含めた近時の全体の傾向について、事案の概要、判決内容等を元に報告を行なった。
その後、参加者で実際に控訴審で当事者となっている方々や弁護団からの報告等がなされ、今後にどのように取り組むべきか討論がなされた。
会の終了後も、懇親会において、引き続き、議論がなされた。

裁判・府労委委員会では、権利討論集会の分科会のみでは時間が足りないとの認識の下、年に数回例会的に委員会を開催し、議論を深めていく予定である。今回のような情報交換・意見交換は有意義であり、定期的に行っていく必要があるので、会員の皆さまには、積極的に参加・情報提供をしていただきたい。

第3回労働相談懇談会 短時間労働者の社会保険適用拡大学習会に参加して

おおさかパルコープ労働組合 中井 智美

 2016年10月1日から「税と社会保障の一体改革」による法改正(年金機能強化法)で、社会保険適用拡大が始まります。現在は、週30時間以上働く人が社会保険加入の対象ですが、週20時間以上働く人なども対象となり対象者数は25万人と発表されていますが、果たしてどのくらいの人が魅力を感じているでしょう。

まず、事業所が特定適用事業所であることが要件とされます。厚生年金保険の被保険者数の合計が1年で6ヶ月以上、500人を超えることが見込まれる場合、特定事業所として短時間労働者は適用拡大の対象となります。短時間労働者の加入要件は(1)週の所定労働時間が20時間以上であること、(2)雇用期間が1年以上見込まれること、(3)賃金月額8.8万円以上であること、(4)学生でないこと、があげられています。

(3)の賃金の月額については、週給、日額、時間給を月額換算したものに、各諸手当等を含めた所定内賃金額が8.8万円以上の場合となりますが、臨時に支払われる賃金や1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金の「結婚手当」「賞与」、時間外労働や休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金の「割増賃金」、最低賃金法で算入されない「精皆勤手当」「通勤手当」「家族手当」などは対象外です。低すぎる賃金に社会保険料負担ばかりが増え、可処分所得が減少してしまいます。小手先のやり方に過ぎません。お金がないと生きていけない社会、賃金に依存する社会では、ひとりで自立して生きていくこともできません。賃金と社会保障をセットにして考えていくことが求められています。

職場では、昨年の秋に労働組合が理事会に呼びかけ、労理共催で学習会に取り組みました。適用拡大の内容を労働組合と理事会で共有し、問題点を一致させたいと考えました。労働者には、契約が不利益変更にならないよう、本人が働き方を選択できる契約のあり方を考えようと呼びかけました。社会保険に加入した場合のメリット、国民年金第2号、第3号、第1号被保険者の3つのパターンで社労士に説明を受け、個別相談会にしました。年収制限が必要とする労働者は、契約時間を削減せざるを得ません。その一方、パートで世帯主が増えています。ダブルワークなどで生計を立てる労働者にとって、今よりも契約時間を延長したい要求があります。社会保険適用拡大を機に、労働者の要求に答えるよう理事会に働きかけ、話し合いを進めています。