民主法律時報

2015年12月号

大阪市労組・組合事務所事件―中労委で勝利命令! 最高裁で反転攻勢へ

弁護士 谷  真 介

 今年6月大阪高裁(志田博文裁判長)において逆転実質敗訴(最高裁に上告中)、明け渡しを命じられた大阪市労組・組合事務所事件で、中央労働委員会は、11月26日(命令は10月21 日付け)、大阪市・市労組双方の再審査を棄却し、昨年2月の市労組を救済する府労委命令を維持した。
高裁敗訴で逆風が吹く中(大阪市側は、結審している中労委に高裁判決をわざわざ提出していた)、橋下市長による団結権侵害が吹き荒れた大阪市の実態を直視し、これを労働委員会として明快に断罪をした命令であった。

 平成23 年12月に大阪市長に就任した橋下氏は、「組合適正化」の御旗を掲げ、その「いの一番」として、市労組を含む各労働組合が長年市庁舎地下1階に構えてきた組合事務所について、平成24年4月以降の使用を不許可とし、明け渡しを迫った。連合傘下の市労連は早々に退去したが、市労組・市労組連(市労組や市教職員組合等5労組の連合団体)は、一歩も引かず、占有を継続したまま、平成24年3月に使用不許可処分取消訴訟を提起(その後、市から明渡し訴訟も提起)、また府労委に不当労働行為救済申立てを行った。大阪市は、裁判・労働委員会で、①市庁舎の行政事務スペース不足、②労働組合の市庁舎における違法・不適切な政治活動をするおそれの払拭という2つの明渡し理由を主張し、さらにその後、平成24年8月に施行された労働組合への便宜供与を禁止する労使関係条例を、理由に追加した。

平成26年2月の府労委命令は、橋下市長の団結権侵害(不当労働行為)意思については言及を避けつつ、市の主張する①②は理由にならず、これらを組合に提示して協議するなどの解決も図ろうとしていないことから支配介入の不当労働行為にあたるとし、大阪市に誓約文の手交を命じた。同判断は、その後橋下市長の組合嫌悪意思について明確に認めた地裁判決(平成  年9月)からは若干見劣りするものであった。さらにその後の高裁判決では、橋下市長の目的は労使関係を市民感覚に是正するところにあり専ら組合嫌悪の意思によってなしたものではない、仮に不当労働行為があっても直ちに市長の裁量権の逸脱の違法があるとはいえない、組合には組合事務所を求める権利はないため労使関係条例が団結権を侵害することはない、市庁舎の行政事務スペースも最初から狭かった等、実態から乖離した耳を疑うべき判決が出されていた。

 市労組は不退転の決意で不当な高裁判決に上告、また平成27年9月には平成  年度の不許可処分について追加で大阪地裁に提訴する中、中労委から命令交付の連絡を受けた。これで負けたらトドメをさされるのではないか、と不安の中で出された命令でもあった。

まず中労委は、そもそも市労組は労使癒着を指摘される問題とは一線を画する活動をしていたにもかかわらず、橋下市長が自らと異なる労働組合の政治活動を問題視して組合事務所の退去要求を主導しており、その意図は労働組合が市長選挙で対立候補を支援したとの事情があったとみざるをえないとした。また行政事務スペースの必要性についても、大阪高裁の認定とは真逆で、大阪市の行政事務スペースについての検討は極めて不十分と断罪、明け渡しの主たる理由は前記②にあると断罪した。そして、大阪市は「市労組の不利益を認識しながらあえて無視又は殊更に軽視して本件退去通告及び本件不許可処分を行ったといわざるを得」ないとして、いわば「故意」の不当労働行為意思を認めた。不当労働行為意思を否定した高裁判決はもちろんのこと、この点の判断を避けた府労委命令よりも相当に前進し、実態を直視したものであった。

さらに労使関係条例については、「労使関係条例を前提としてもその個別の適用において将来にわたり不当労働行為が成立する余地がなくなるとはいえず、そのような場合でも労使関係条例故に不当労働行為の救済がおよそなしえなくなるとも解し難い」、「本件の経緯に鑑みれば、市が同種の支配介入行為に及ぶ可能性は存在する」とし、条例施行をもって救済の利益は失われないとした。これは労使関係条例を絶対視し、条例のみを理由に使用不許可処分を行うことをすべからく適法とした高裁判決への批判が含まれているとみることができる。

一方で中労委は、組合事務所を使用させなければならない命令を出すべきという市労組の再審査申立も棄却した。しかし、これは単に市労組が、労働委員会では裁判とは異なり、最初の退去通告と平成  年度の不許可処分のみを対象として申し立てていたからにすぎない。そのような中でも、中労委は、「労働委員会の命令により、市に対して  年度における本件スペースの使用不許可について同様の対応を繰り返さないように表明させることにより、今後の市の施設管理に係る権限の行使において、判断の慎重さの要求がより高まることが期待できる」とし、平成  年度以降も大阪市が慎重に判断せずこれまで同様に不許可処分が出された場合(実際そうであった)は、(労使関係条例があっても)やはり同様に不当労働行為になることを認めたものである。

中労委において、(部会ではなく)全員で協議し一致した中で、これだけの内容が示された本命令の意義は極めて大きい。維新流手法を肯定した高裁判決を厳しく批判し、不当労働行為救済を目的とする労働委員会の使命を果たそうという意地と信念を感じさせる素晴らしい命令であった。

 命令交付直前に行われたダブル選では残念ながら維新の市長が当選し、労使関係の混乱はまだ続くことが予想される。明け渡しを命じた不当な高裁判決があるため、決着は最高裁、となる可能性が高い。しかし、大阪市側は、橋下市長も入った協議において、中労委命令に対して取消訴訟を提起することはせず、この命令を受け入れて誓約文を市労組に手交することを明らかにしている。橋下市政が誕生して4年、逆風の市庁舎の中で市民と共同して闘ってきた市労組に対し、市が不当労働行為を認めたことは大きな成果である。引き続き、最高裁と2次訴訟での組合事務所闘争、また市役所内での維新大阪市政との対峙は続く。不当な高裁判決を最高裁で絶対に跳ね返す、反転攻勢の第一歩としたい。

(常任弁護団は、豊川義明、大江洋一、城塚健之、河村学、増田尚、中西基、谷真介、喜田崇之、宮本亜紀。最高裁では全国から262名の弁護士に就任していただき大弁護団で闘っている。)

日本放送協会事件(地位確認等請求事件)大阪地裁判決の報告

弁護士 西 澤 真 介

1 事案の概要及び争点

本件は、協会の地域スタッフ(受信料の取次・集金等を行うスタッフ)で構成される組合(全日本放送受信料労働組合堺支部。以下、「全受労」という。)の執行委員長であった原告が、被告である日本放送協会(NHK。以下、「協会」という。)から、休業期間中に契約の中途解約をされたことに関して、①契約上の権利を有する地位にあることの確認、②休業見舞金や解約日以降の事務費(実質的に給与である。)等の報酬等請求、③慰謝料請求をした事案です。
本件の争点は、(1)本件中途解約の有効性について、(2)本件契約更新の当否について、(3)「事務費」及び「給付」請求の当否について、(4)慰謝料請求の当否についての4点でした。
これらの争点を判断する前提として、地域スタッフが労働契約法上の労働者に当たるか、労働組合法上の労働者に当たるか、不当労働行為があったかどうかが問題となりました。

2 大阪地裁の判断

(1) 争点(1)について
大阪地裁平成27年11月30 日判決(菊井一夫裁判官)は、本件中途解約を無効であると判断しました。
地域スタッフは労働基準法及び労働契約法上の労働者であるということはできないとしながらも、地域スタッフは個人であること、本件契約は民法上の労務供給契約にあたること、地域スタッフは被告の業務従事地域の指示に対して諾否の自由を有しないことなどを根拠に、原告が労働契約法上の労働者に準じる程度に従属して労務を提供していたと評価できるとして、契約の継続および終了において原告を保護すべき必要性は労働契約法上の労働者とさほど異なるところはないとして、期間の定めのある本件契約の中途解約については、労働契約法17条1項を類推適用するのが相当であると判断しました。
その上で、労働契約法17条1項にいう「やむを得ない事由」はないと判断しました。

(2) 争点(2)について
大阪地裁は、本件契約に労働契約法19条の類推適用がありうることを認めたものの、原告の業績不良等を根拠に、被告の更新拒絶は、客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であるとして,平成26 年3月31日に期間満了により終了したと判断しました。

(3) 争点(3)、(4)について
大阪地裁は、(3)は、被告が本件契約に基づき休業見舞金や通常の事務費等の事務費・給付の支払い義務があると判断しました。(4)は、慰謝料請求を否定しました。詳細は、紙面の都合上割愛致します。

3 本判決の持つ法的・実践的意義

(1) 先行する神戸事件について
先行する同種事案の神戸事件については、本年の9月11日に大阪高裁で逆転敗訴判決が出たところでした。神戸事件の高裁判決は、協会と地域スタッフの間の契約を労働契約ではないと判断しました。

(2) 本件について
本件は、地域スタッフの労働契約法上の労働者性に関して、地域スタッフの実情を詳細に検討したうえで、地域スタッフが労働契約法上の労働者に準じる程度に従属して労務を提供していたと評価することができるとして、契約の継続および終了において原告を保護すべき必要性は労働契約法上の労働者とさほど異なるところはないとし、期間の定めのある本件契約の中途解約については労働契約法17条1項を類推適用するのが相当であると判断した点に意義があります。
なお、類推適用という法律構成を許容した理由として、労働契約法は純然たる民事法であるから刑事法の性質を有する労働基準法とは異なると説明しています。
地域スタッフが労働契約法上の労働者に類するとの判断を得たことは、NHKで働く地域スタッフの労働者としての地位を勝ち取る上で大きな進歩といえます。この点で大きな法的・実践的な意義があるといえます。
他方で、更新拒絶を有効と判断されたことは、原告特有の事情を軽視した上で、原告の業績不良等の認定がされており、不満が残ります。

4 最後に

協会は本判決を不服として控訴しました。引き続く裁判等へのご支援を宜しくお願い致します。

(弁護団は、河村学、井上耕史、辰巳創史、西澤真介)

日本労働弁護団の全国総会に参加しました

弁護士 長 瀬 信 明

2015年11月6日(金)から7日(土)にかけて、日本労働弁護団第59回全国総会が群馬県みなかみ町の源泉湯の宿「松乃井」で開催されました。民法協の会員も多数参加しておりますが、民法協の事務局次長として、あらたに日本労働弁護団の常任幹事に就任いたしましたので、当職よりご報告いたします。
初日は、鵜飼良昭会長のご挨拶からはじまりました。近時、派遣労働者自身が声をあげるようになったり、戦争法案に反対に多くの市民が声をあげるなど運動の広がりをみせており、そうした流れを労働法制改悪阻止につなげていくことの重要性を述べられていました。

その後、橋爪健群馬弁護士会会長のご挨拶、高木太朗幹事長から報告を経て、野田進九州大学教授による記念講演「労働時間の規制とその課題―フランス法の視点から」が行われました。とても勉強になることばかりでしたが、例えば、フランスでは、労働組合の組織率は3%程度だそうですが、非組合員にも協約が適用されるため、組織率は問題ではないそうです。また、個別合意も協約が前提となるため、日本のように使用者からの提案に抗えない危惧感はないということにも驚かされました。さらに、フランスでは、労働時間に絶対的上限が設けられ、それがそれなりに機能している点についても驚かされました。これがわが国に導入された場合を考えますと、実効性を担保するためにどうするのか、そもそも労働時間を把握できるのか等いくつも問題があることもわかりました。鎌田幸夫弁護士から、いの一番に質問されるなど、講演の後も活発な議論がなされました。
講演の後、闘争本部の棗一郎弁護士、菅俊治事務局長による報告、各地から報告が行われ(大阪からは中西基弁護士が報告されました。)、その後、討議がなされました。三六協定の問題点、残業代が生活の基盤となっていて残業を減らせといえない現状についての報告もありました。

2日目は、愛知のブラックバイト対策弁護団からの特別報告から始まり、青少年の雇用の促進等に関する法律、女性活躍推進法、過労死等防止対策推進法についての解説がなされ、労働法教育(ワークルール教育)の重要性についても訴えがありました。
また、大阪から、村田浩治弁護士によるヘイトハラスメント裁判への支援の要請、中西基弁護士による大阪市職員組合の市役所庁舎からの退去訴訟についての報告がなされました。
その後、新旧役員人事、新旧役員のご挨拶があり、日本の労働者のため、労働組合のためという日本労働弁護団の目的が確認され、終わりました。
今回、総会が行われた群馬県みなかみ町は、かつての賑わいはないようですが、再生に向けて取り組んでいるところのようです。ちょうど見頃を迎えた紅葉とすばらしい温泉に何かと疲れ気味の我々はすっかり癒やされました。

厚生労働省主催 「過労死等防止対策推進シンポジウム」が開かれました!

弁護士 上 出 恭 子

 2014年6月に念願の過労死等防止対策推進法(以下「防止法」と略すこともあります。)が制定され11月から施行されたことを受けて、毎年11月が「過労死等防止啓発月間」と定められ、今年は、全国各地で初の厚生労働省主催の「過労死等防止対策推進 シンポジウム」が開かれることになりました。
大阪では、2015年11月9日にグランフロント大阪のコングレコンベンションセンターにて開かれ(後援・大阪府、協力・過労死防止大阪センター他)、207名という多数の方が参加されました。企業の人事担当者にも防止法のことをもっと知ってもらいたいということで、大阪府下の相当数の企業にDMを送った結果、普段の集会ではあまり見慣れない企業からの参加者も多数見受けられました。

大阪労働局労働基準部の高井吉昭部長による開会挨拶で始まり、続いて、岩城穣弁護士(過労死防止全国センター事務局長)による基調講演Ⅰ「過労死防止大綱の内容と企業にもとめられるもの」、そして、過労死問題の実態を理解してもらうために6名の過労死・過労自死遺族から遺族の思いをお話いただきました。過労死問題の解決に向けての原点である大切な家族を奪われた遺族の身を切るような痛切な訴えは、会場の参加者の胸に響き、会場のあちらこちらですすり泣きされる声が聞こえました。参加者の中には、遺族のお話を初めて聞かれた方もいらしたようで、この問題の実態を知っていただく貴重な機会になったと確信します。

その後、基調講演Ⅱとして、過労死等防止対策推進協議会の委員もなさっていた山崎喜比古日本福祉大特認教授より、「過労死を出さない職場づくりをどうするか」と題してお話をいただきました。山崎先生ご自身が前任校で過重労働に従事されたご経験がおありだったようで、過労死遺族のお話に大変共感された中でのお話でした。
後半では、各分野からの報告ということで、岩城弁護士の司会でリレートーク形式で、  鈴木成美氏(茨木地域産業保健センター・コーディネーター)、  西野方庸(氏(関西労働者安全センター事務局長)、  寺西笑子氏(全国過労死を考える家族の会代表、  柏原英人氏(過労死防止大阪センター事務局長)からこれまでの取組についてご報告をいただきました。松丸正弁護士(過労死防止大阪センター代表)の閉会の挨拶で3時間にわたる充実した シンポジウムを終えました。

会場の横断幕に書かれた「主催:厚生労働省」の文字に、過労死事件の認定を巡っては、時として、敵味方の関係にあった経過を思い起こすと、少々、大げさですが隔世の感がありました。何よりも、始まったばかりの国を挙げての過労死防止の取り組みが実効性あるものとなるよう、新たな一歩に向けて日々の取り組みに尽力せねばと、参加者それぞれが思い返す貴重な機会となったことを願ってやみません。

共謀罪・通信傍受・司法取引は、刑事司法の人権保障機能を抹殺する―大阪弁護士会主催15/11/21「共謀罪」学習会の報告

弁護士 伊 賀 興 一

 実に中身の濃い、いい集会でした。
折りしもパリのテロ事件が起こったことを受けて自民党幹事長が共謀罪新設の必要性を発言し、通信傍受の拡大と司法取引という日本になじみのない制度の新設が含まれている刑事訴訟法一部改正案が継続審議となっているという状況から、この3つの制度が成立したら日本の刑事司法はどうなる?という関心が高まっている中で開かれました。集会参加は日程的に無理がありましたが、125名の参加をいただきました。ご協力ありがとうございました。

メインの講演は、元北海道警幹部の原田宏二さんです。演題を「腐敗する警察の権限拡大を許してはならない」として、約40分話されました。かねてから警察の市民観と市民の警察観という論点は民法協の中でも、また皆さんの団体の中でも意識されてきた問題だと思います。原田さんは冒頭から、警察学校の教科書で、「事前捜査積極説」・「司法警察と行政警察の区分不要論」が教えられている事実を知ってますか、という驚くべき問題提起から講演が始まりました。

いうまでもなく、司法警察は国家刑罰権に基づく犯罪捜査活動です。憲法、刑事訴訟法等によって、一定の要件の下で強制権限が付与されると同時に、令状主義やデュープロセスなどの人権保障機能の制約を受けています。令状主義の実態についても、原田さんから、逮捕状請求の際の疎明資料などは、捜査官同士で復命書などをでっち上げることがしばしばだ、などという衝撃の事実も体験に基づき告発されました。
その意味では人権保障機能は風前の灯ともいえる実体です。が、司法警察と、犯罪予防や生活安全活動というジャンルを担当する行政警察との区分は不要だという見解を警察学校で初任警察官に教えている、ということには私も大きな衝撃を受けました。

労働運動や市民運動、さらには青年運動が戦争法廃止を軸に、立憲主義、平和主義、民主主義擁護の共通課題で大いに活発化し、これまでの保守対革新という図式では測れない市民的エネルギーの発揮が想定されています。まさにこの時に、警察権限の肥大化を是とし、抑制原理としての「消極・比例の原則」などが不必要だと警察学校で教え込まれている事態が進んでいることは、運動弾圧を警戒し、弾圧と戦う立場からすると、決して見逃せない動きです。

原田さんの講演を受けて、新聞労連の日比野さん、弁護士の永嶋靖久さんの3人で行われたシンポジュームも大変熱の入った議論となりました。
日比野さんからは、日本の治安は犯罪発生率などから見ても他国に比べて、安全な国といわれているのに、政府や警察の広報は「体感治安」という表現で、不安感をあおって警察権限強化の世論づくりが進んでいる、との警鐘を鳴らされました。永嶋さんからは、フランスはアルジェリア問題を抱えてきたことから、1980年代には「対テロ法制」をほぼ完備している国として有名だが、パリでのテロ行為を防げなかった。日本でテロ対策をどう考えるか、という点で大変示唆するものがある、やはり、テロの標的になるような政治情勢をこそ排除すべきと指摘されました。

シンポでは、話し合っただけで犯罪とするという共謀罪、市民や団体の通信や会話を警察が盗聴する制度、さらには、人の犯罪に関する情報を警察に提供することで、自分の犯罪の処罰の減免の取引ができる司法取引などが、市民生活監視が強化されるとともに、虚偽の情報提供で司法取引を行い自分の罪を免れようとする風潮を法律が作り出すなど、人権保障機能を根幹とする日本の刑事司法の原則を抹殺するもの、と強くアッピールされたことを報告します。

原田さんの講演や3人の議論を全て紹介することはこの場では不可能です。ただ、この学習会を企画した大阪弁護士会刑事法制委員会では、この集会の議論を反訳し、パンフレットにして多くの団体や市民に参考にしてもらおうと考えています。ぜひとも活用してほしいと思います。
来年の参議院選挙後には、いずれの提案も国会で議論されると思われます。旺盛に学習会を行いましょう。自由法曹団も、団員がそれぞれ勉強して、皆さんの学習の協力ができるように頑張りたいと思います。原田さんに講師をお願いする学習会も大いにお勧めします。
警察による市民監視を当然とする警察国家は、市民の目と耳をふさぐ秘密国家、戦争国家への道です。戦争法の廃止とともに、こうした動きを許さない戦いを、みんなで構築したいものです。

最後に、この集会は当初日弁連の後援が受けられる予定でした。しかし集会直前に、日弁連から後援しないという連絡を受けました。日弁連としては推進している可視化の法制化案が入っている刑事訴訟法一部改正案に賛成しており、その中に入っている通信傍受の拡大や司法取引の新設に反対する学習会を後援することは、可視化の法制化推進の障害になる、というのでしょう。
弁護士会内部もなかなか大変だということを付け加えておきます。

改正派遣法学習会 「改正派遣法を知って裁判と団体交渉に活かそう!」が開かれました

弁護士 南 部 秀一郎

2015年11月24日、エルおおさか701号会議室にて、改正派遣法学習会「改正派遣法を知って裁判と団体交渉に活かそう!」が行われました。この学習会は、9月の改正派遣法成立そして10月からの施行を受けて、民法協主催で開かれたものです。その主眼としては、駆け足で成立、施行した改正派遣法について、学習することで、利用をしていこうというところにあります。当日は、各組合、ユニオンから30人を超える参加者が集まりました。

学習会では、講師の村田浩治弁護士から、まず、改正派遣法について説明がありました。村田弁護士からはまず、この改正派遣法は、2010年改正法で導入された違法派遣の「雇用申し込みみなし制度」の適用を待たずに改正したもので、改正の経緯は異常であるとの説明がありました。また、改正とともに50項目にもわたる付帯決議がつき、改正後即、修正がされています。
次に、厚生労働省の「改正労働者派遣法について」という説明資料を用いて、改正法について説明されましたが、そこで明確になったのは、制度をわかりやすくするとのもとで、専門  業務がなくなる、届け出制の特定労働者派遣をなくすなどしていますが、実際は派遣会社に対する規制が強くなったことはなく、また派遣労働者を守るはずの雇用安定措置も派遣元に義務が課せられ、実効性に疑問符がつくものであるとのことでした。

一方で、今回の改正で一番の問題点になっているのは、期間制限です。これまでの業務単位から、事業所単位3年、人単位3年へと変わり、個々の派遣労働者は3年で契約を切られるのに、事業所単位では、延長により派遣の受け入れを続けられるというものです。このことによって、過去の判例でいうと、マツダ事件の山口地裁判決が問題にした、派遣の期間制限を潜脱するために、一時的な直用と派遣契約を繰り返す行為を行う必要がなくなり、派遣がより広がりやすくなります。そこで大事になるのが、派遣の受け入れ期間延長の際に求められる、「派遣先労働者の過半数代表の意見聴取手続」です。この手続きについて、村田弁護士からは「派遣受け入れ期間の延長を行わなければ、人単位の問題が起こらない。しかし、組合で知識がなければ、延長に異議が言えない。」との問題提起がありました。民法協に参加されている組合にも、この延長についてしっかりとした取組をしていただくことが求められます。

次に、村田弁護士からは今回改正で、政府側が標的にした「雇用申し込みみなし制度」について、改正前に違法であったものは従前の例によるとされているとの大臣答弁がされたとの説明がありました。村田弁護士からはこのような場合について積極的に争っていくべきだとの指摘があったので、派遣研究会では事案を取り上げていきたいとのことでした。
このような村田弁護士の説明を受け、個々の組合から事例の報告や質問があった。改正派遣法は、安倍政権成立後、長期間にわたる改正論議で、労働者たちの反対の声を押し切り、強引に導入されたものではありますが、改正後でも、活用は可能です。参加者の間にそのような認識が広がり、組合でも学習が広がることを希望します。