民主法律時報

2015年11月号

国土交通省団交拒否事件東京地裁判決― 国の「使用者」性否定の不当判決

弁護士 中 筋 利 朗

 国土交通省事件は、中国及び九州地方整備局の国道・河川事務所の車両管理業務を受託した会社(日本総合サービス)の従業員が、国道・河川事務所で、車両の運行・管理等の業務に従事していましたが、実際には、国交省職員の指揮命令等のもと車両の運行等を行っていた、いわゆる偽装請負に関する事件です。平成20年12月以降、同社の従業員7名は、広島、福岡等の労働局に是正申告を行い、平成21年2、3月に日本総合サービス及び従業員が業務に従事する各国道・河川事務所に是正指導がなされましたが、平成21年3月に実施された競争入札で日本総合サービスが落札できなかったことから、先の従業員7名は長期間雇用されていたにもかかわらず、3月末日で解雇されてしまいました。従業員7名は原告組合(スクラムユニオン)に加入し、中国、九州地方整備局長等に対し、雇用確保等に関して団体交渉を求めましたが、中国、九州地方整備局長等は、団体交渉に応ずべき地位にないとして団体交渉を拒否したことから、団体交渉拒否の不当労働行為にあたるとして、労働委員会に救済申立を行いました(日本総合サービスに対しては別途裁判手続きを行い、和解で終了しています)。

広島県労委は、国(国土交通省)が労組法7条の「使用者」にあたることを認め、組合員らの雇用の確保(直接雇用(任用)を除く)に関する団体交渉に応じることを命じましたが、中労委は、国(国土交通省)が、団交申入れの交渉事項につき労組法7条の「使用者」にあたらないとして、広島県労委が団体交渉を命じた部分を取り消して、救済申立を棄却しました。これを不服として組合が提起した訴訟の判決が、9月10日、東京地裁が行った判決です(裁判長裁判官清水響、裁判官伊東由紀子、同島尻香織)。

 本件の争点は、国(国土交通省)が労組法7条の「使用者」に該当するのか、ということですが、東京地裁判決は、雇用関係のない事業主については、「当該労働者の基本的な労働条件等に対し、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的な支配力を有している者や、近い将来において労働者と雇用関係が成立する現実的かつ具体的な可能性がある者など、雇用関係に近似し、又は隣接する関係を基盤とする者であることを要する」としたうえで、本件の国(国土交通省)について、原告組合員7名の車両管理業務を行う際の運行先、運行時間及び業務内容等の労働条件について、雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的に支配決定することができる地位にあるといえ、その限りにおいて「使用者」にあたるとしましたが、それ以外の事項、採用及び労働契約の内容の決定や、雇用を継続するか解雇するかの決定については、日本総合サービスの判断で行われており、現実的かつ具体的な支配力を有していないとして、原告組合員7名についての雇用継続について労組法7条の「使用者」にあたることを否定し、また、近い将来、雇用関係が成立する現実的かつ具体的な可能性も認められないとして、国(国土交通省)が労組法7条の「使用者」にあたることを否定し、結論として原告の請求を棄却しました。

 近時、中労委では、使用者について上記と同様の枠組みのもと、派遣先等の使用者性を否定する判断がなされており、本件判決は、この判断を追認するものですが、労組法7条の「使用者」についてのこのような考え方は、労働組合にとっての団体交渉の果たす役割と重要性、不当労働行為制度の趣旨を全く理解しないものというほかありません。特に、本件では、国(国土交通書)がいわゆる偽装請負状態の下、使用者としての権限を違法に行使していることや、法を遵守して派遣の形態をとっていれば、直接雇用の申し込み義務が生じているのに、そのことについて全くと言ってよいほど考慮がされておらず、このような場合も、団体交渉にすら応じなくてよいということとなると、法を守るよりも、守らない方が得をするという結果となり、実質的にも不当と言うほかはありません。

最近は、派遣・請負等で雇用主ではない事業主との間で関係を持つ場合が増えており、このままでは労働組合の団体交渉権を十分に保障することができません。
控訴審では、東京地裁判決の労組法7条の「使用者」判断枠組みの不当性を指摘し、東京高裁ではぜひとも国(国土交通省)の使用者性を認めさせて、逆転の勝訴判決を得たいと思っています。

(弁護団は、村田浩治、河村学、井上耕史(以上大阪)、平田かおり、佐藤真奈美(以上広島)、渡辺晶子(福岡)と中筋です)。

会場使用拒否事件―「松原民商まつり」中央公園使用不許可裁判へのご支援を

松原民主商工会 専務理事 梅 木 佳 章

松原民主商工会は、昭和39年2月に創立して昨年で50周年、その間に民商会員だけでなく、松原市の中小零細業者、市民とともに歩んできました。平成9年と松原民商創立40周年の平成16年にも松原中央公園で「民商まつり」を開催し、そして昨年50周年を記念して、営業とくらしを守り、市民の健康増進を図ることを目的に、また、収益を東日本大震災被災地に寄付するとして、11月に「民商健康まつり」を企画し、松原市に松原中央公園の使用申請をしました。

「松原民商健康まつり」は、市民誰でも参加できる祭りで「健康」をテーマに、舞台では、和太鼓の演奏や、健康体操、バンド音楽、子どもダンス、消防署によるAED講習、河内音頭などを、広場では、子どもから大人まで体を動かす遊技で、参加者が「健康」に関心を持ってもらう取組を、広場の周りでは、「物品販売」として、縁日(ゲーム・飲食・販売)を行う予定でした。

しかし松原市は、6月に市民に知らせずに「市の後援」が無ければ公園を貸さないとする新たな「松原市都市公園行為許可審査基準」を作りました。松原民商は、松原市に後援等名義使用申請と中央公園の使用申請をしましたが、松原市から松原民商に対して「後援」しない、「公園」も貸さないという決定通知が届きました。「後援」の不承認理由は、主催団体の宣伝又は売名を目的とするものと類推される恐れがある。また、「公園の使用」については、市の協賛・後援の許可を受けた書類がない、市の協賛・後援が無い申請は、公園の管理上支障があり、不許可とする。とするものでありました。

私たちは、今般の松原市が行った公園の使用不許可の処分は、憲法21条「集会の自由」に違反し、地方自治法244条2項・3項の「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない」「不当な差別的扱いをしてはならない」ことにも違反していると、昨年12月に、松原市を被告として、中央公園の使用を不許可としたことで被った損害の賠償を求める訴えを南大阪法律事務所の松尾直嗣・岩嶋修治・長岡麻寿恵・高橋徹・遠地靖志弁護士にお願いして、大阪地方裁判所堺支部に行いました。

1月13日の第1回公判では、松原民商の三原会長が「市民のため、だれでも利用できるように公園は許可すべき」と意見陳述しました。50人の傍聴席は松原民商の裁判を支援する沢山の支援者でいっぱいになり、入れない人も出る程でした。公判後、裁判所の近くで原告弁護団からの報告集会を行いました。

9月13日の第6回公判まで、原告弁護団は、『松原市が、不許可の「正当な理由」を何ら説明をしていない。また、公園使用許可申請に対して条例外の「松原市都市公園行為許可審査基準」の市の協賛・後援の許可を受けたものという要件を加重しての不許可決定は、憲法の「集会の自由」を侵害し、市長の裁量権を逸脱・濫用した違法がある、と反論陳述を行い、それに対して、被告・松原市は、「民商健康まつり」は民商の売名行為だと批判して、松原中央公園は「近隣公園」に位置づけられ、目的は専ら近隣住民の憩いに供されるもので、宣伝又は売名をすることは認められない。「まつり」が誰でも参加できる行事であれば効果がより大きく、民商の会則に「中小業者の営業と生活の繁栄を図ることを目的」とし、「不合理な税制を改革する運動を行います」等の活動を行う団体であり、創立  周年を機に内外に向けて団体としての活動の宣伝又は売名にあたることは明らかである。などと市民・団体運動を敵視するような反論を行っています。

また、原告の求釈明申立により、被告側からの過去6年間の中央公園利用実績表が出されました。6年間の間、110件の使用申請に対して、不許可とされたのは平成25年の松原保育連絡会・松原市職員労働組合等、民主団体が主催する「松原子どもまつり」と「松原民商まつり」だけでした。

次回・第7回公判は、原告・松原民商の反論を行い、証人尋問の日程が決まる予定です。
今年、姫路市において西播労連主催の「姫路駅前文化祭」での「安倍批判」に対して、市が集会を中止させた事件で、姫路市が憲法21条に違反する事態が生じたことを謝罪したように、「松原民商健康まつり」も憲法で保障された「集会の自由」、地方自治法の「不当な差別的取扱いをしてはならない」とする、当たり前なことが守られる松原市にするために、裁判へのご支援をお願いします。

「派遣労働者のためのホットライン」を実施しました

弁護士 中 西   基

2015年9月30日、「改正」労働者派遣法の施行日に合わせて、「派遣労働者のためのホットライン」を実施しました。
今回の「改正」は、これまでの労働者派遣制度を大きく変容する大改正ですが、9月11日の成立から施行までわずか3週間足らずの期間しかありませんでした。そのため、現場では様々な混乱が生じていることが予想されます。
今回のホットラインは、民法協と大阪労働者弁護団、連合大阪法曹団の3団体の共催で実施しました。この間、「改正」反対のための運動を共闘で取り組んできた経緯もあり、今後とも、共闘できる場面では共闘を進めていくことができればよいと思います。

当日は、電話3回線で13 時から21 時までホットラインを実施し、3団体の所属弁護士のべ17名が相談対応し、合計33件の電話がありました。
「派遣労働者のための」と銘打っているにもかかわらず、派遣元企業や派遣先企業の経営者からも電話がかかってきました。派遣元企業からの電話は、「改正で何がどう変わるのか、労働局に聞いても教えてもらえない。」というもので、労働局としても対応が間に合っていない実態がよくわかりました。
派遣労働者からの相談では、次のような相談がありました。
・派遣期間に関する相談(16 件)
・改正法の内容がわからないので 知りたいという相談(8件)
・個人単位3年ルールに対する 不安・不満(7件)
・地位や待遇に関する相談(4件)
・直用みなし規定に関する相談(2件)

今回のホットラインは、時宜にかなった開催であったため、事前にマスコミでも報道され、当日もテレビ2局が取材に来ました。その結果、相談件数も多くなりました。
今後も、改正法をめぐって現場では様々な混乱や違法・脱法行為が生じるだろうと思われます。派遣労働者のニーズに合致した相談体制をどう整備していくのかが課題であろうと思います。また、電話相談だけで終わってしまうのではなく、解決までの道筋をどうやって作っていくのかも課題です。
まずは、改正法(附帯決議も含めて)の内容を学習するところから始めなけれなばなりません。民法協では、11月24 日(火)18時30分から、エルおおさか701号室にて改正派遣法の学習会(講師は村田浩治弁護士)を開催します。ぜひご参加下さい。

街頭宣伝の自由確立をめざす各界懇談会(街宣懇) 第4回総会

弁護士 南 部 秀一郎

2015年10月15日、午後6時30分より、国労会館3階の中会議室にて、街宣問題懇話会(以下「街宣懇」といいます。)の総会が開かれたので、報告します。
街宣懇は、2012年に労働組合の街頭宣伝に対して、警察等が干渉・介入してくる事例が増え、また、その態様に変化があり、各団体での一体的な取組が必要なのではないかとのことで、復活しました。復活後、大阪維新による圧政、安倍政権の憲法をないがしろにした動きが続いていましたが、一方でこれらの悪政に対する運動が自然発生的に広がっていきました。特に2015年は、大阪では都構想反対運動が党派を超えた大運動になり、そして、大阪も含む全国各地では安保法制反対運動がかつてないほどの広がりを見せ、SADL、SEALDs、ママの会など、既存の団体ではない数々の新しい取組が見られました。そこで、今年の総会では、住民投票運動、安保法制反対運動の教訓を今後にいかすということで、自由法曹団の伊賀興一弁護士にお話し頂きました。

講演において伊賀弁護士は、まず、それぞれの運動において、特に安保法制反対運動において、過去、なかなか行われなかったデモが繰り返し、大規模で行われたことに触れ、街宣活動の優位性が示された活動であったと総括されました。

また、都構想の住民投票における反対運動において、公職選挙法の規制がほとんど適用されず、自由に運動が行えたことで、逆に、公選法規制が有権者の知る権利を侵害し、選挙の自由を妨げていることを実感させられたとして、自由な選挙に向けた公選法改正運動を提言されました。その中で、伊賀弁護士は、公選法の規定の目的及びそれがもたらす弊害について、立法事実があるのか、公平、公正という抽象概念で選挙の自由を侵害しているのではないかという点で、法律家による分析の必要性があると述べられました。この法律の分析という点では、民法協が実際に労働運動を行う組合と、法律家、研究者が集っている団体という特性をもっており、民法協にとっても、検討すべき課題であると私は考えます。

更に、伊賀弁護士は、安保法制反対デモに対する様々な妨害と、見守弁護士や運動前の相談といった対処行動の経験を語られ、当事者の心情に寄り添い、街宣運動の自由を守ることが、多数の参加者が集まるデモに結実し、運動の質を上げると、運動の成果を強調されました。民法協に参加されている方々も、実際に多数がデモに参加をしておられますし、また労働組合では日々の街宣活動によるノウハウがあります。今後の活動に安保法制反対運動の経験を活かしていく展望が開けているのではないでしょうか。

この伊賀先生のお話に対し、大阪府下各地、あるいは、日頃の労働組合の経験について、参加者が語られ、意見交流がされました。また、街宣懇からは、この1年の活動内容等が報告され、パンフレットの普及、参加団体の拡大、干渉事例の報告の三本柱で、懇談会の活動に参加していただきたい旨の話がありました。
安保法制についても、大阪維新との闘いについても、まだ闘いは続きます。過去の経験を今後活かせるように、街宣懇の活動に皆様のご協力をいただけますようお願いいたします。

労働相談懇談会(15年10月16日開催)報告

弁護士 谷  真 介

  労働相談懇談会は、おおさか労働相談センターと民法協の共催で約3か月に1度開催しています。毎回、おおさか労働相談センターの相談員や弁護士だけでなく、地域労組おおさかや大阪労連に加盟する産別労働組合の相談担当者も多数参加していただいています。

冒頭・恒例の西川大史弁護士の最近の労働裁判に関する情勢報告に引き続き、今回は、中西基・民法協前事務局長にお越しいただき、「メンタルヘルス不全と休職に関する諸問題」というテーマで、学習会を行いました。

最近では、ハラスメントや過重労働等によるメンタルヘルス不全に関する相談の一形態として、休職・復職に伴う会社とのトラブルが増えています。中西弁護士からは、使用者の休職命令権の有無、使用者の休職命令を行う義務の有無、休職中の賃金請求権の有無、休職後の解雇の有効性の判断基準やその実例、復職が認められる場合はどのような場合か、どのような場合にトラブルになるのか、その場合の対応方法や手段等について、法関係や裁判例(片山組事件最高裁判決その他)に基づいて、網羅的に、かつ各論点について掘り下げた実戦的な解説をいただきました。

参加者からも、「一般的には復職可能だが、医師からは当該会社に戻ると病状が悪化すると言われている場合にはどうすれば良いか」、「就業規則が存在しない場合に休職を命じないでいきなり解雇された場合は争えるか」、「復職の際に主治医の診断書だけではなく産業医の診断を受けるように言われた場合、従わなければならないか」、「復職後、長期間リハビリ出勤が続き元の職場に戻さないというのは許されるのか」、「復職可能の立証はどの程度の立証が必要か、どのような手段があるか」、「就業規則において休職期間が『1か月』という著しく短い期間が設定されており、休職期間満了後に復職困難だからという理由で自然退職とされたが、おかしくないか」等の活発な質問が出され、講師を交えて、参加者皆で議論・意見交換をしました。休職・復職は身分にかかわる問題であり相談担当者としても慎重に対応しなければいけませんが、現場での即時の対応が求められる場面もありますので、今回の学習会は貴重な講義、意見交換となったと思います。

なお、その他、学習会のテーマに拘らず、現場の相談員の方から、現在、地域労組で取り組んでいる事案での対応について相談が出され、意見交換をしました。
労働相談懇談会では、毎回、色々なテーマで普段の労働相談で悩んでいる事例を題材にして学習会や意見交換をしており、大変有意義なものになっています。次回は来年1月21 日午後6時30分より国労会館において開催します(テーマは未定、希望があればぜひおっしゃってください)。多数のご出席をお待ちしています。相談事例もどんどん持ち込んで下されば幸いです。

「とりあえず延期!」「マイナンバーを使わない! 使わせない!」― マイナンバー制度を考える学習決起集会

弁護士 井 上 耕 史

2015年10月から各人の個人番号(マイナンバー)を記載した通知カードの交付が始まった。制度の概要とその弊害は先月号の辰巳創史弁護士の記事に譲るが、来年1月からの番号利用開始を前に、どう対応していいのか、不安や疑問を持つ人は多い。私にしても、出産内祝ギフトでネット利用した2社に相次いで個人情報を漏洩されてしまった。今のところ「投資にマンション買いませんか」と電話がかかってくる程度の被害だが。

10月20日、共通番号制反対連絡会が主催した学習決起集会は、まさに時宜を得た企画で、会場を埋める115名が参加した。講師の黒田充さん(大阪自治体問題研究所理事・自治体情報政策研究所代表)が「危険なマイナンバーの本質とは何か」と題して講演し、問題点を解明しつつ、「本番はこれから」であり、政府・財界の本当の狙いを踏まえた運動の重要性を指摘した。これを受けた意見交換は、大商連、地方議員、自治労連、救援会、SADL等々の活発な発言で盛り上がり、違憲訴訟弁護団長である大江洋一弁護士(民法協副会長)の挨拶で締めとなった。

この集会に参加して私が思ったことを3点述べたい。
第1に、国民がよく知らないまま実施をすべきではないこと。「とりあえず延期!」の声を広げたい。

第2に、個人番号の提供をしない、させないこと。事業者は従業員の番号を収集して税務署に申告する義務が課されるが、それで集めた番号を漏らせば民事上・刑事上の責任を問われかねない。他方、従業員が自己の番号を申告する義務はない。従業員が拒否すれば事業者としては番号を収集・申告しなくても良い。この点を踏まえ、事業者は従業員の意思に反して番号を集めないこと。他方、労働組合は、職場の労働者に使用者への番号提供が義務ではないことを知らせるとともに、使用者に対して番号提供を強制するなと交渉すべきではないだろうか。

第3に、個人番号の利用を広げないこと。政府は国民全員に個人番号を付けて「通知カード」を送付するが、これには「個人番号カード」の申請書がついてくる。顔写真と個人番号が書かれたカードを国民に持たせ、これを広く利用させて個人情報の収集を狙うものである。しかし、「個人番号カード」の取得は義務ではない。これを普及させないことが制度拡大の歯止めとなるから、「個人番号カード」の申請はしない方が良い。

マイナンバーにどう対峙するのか、多くの労働組合、民主団体で学習会を開いて考えることを呼びかけたい。

自治体のコンプライアンスを問う―「なくそう! 官製ワーキングプア」第3回大阪集会

「なくそう!官製ワーキングプア」大阪実行委員会 川 西 玲 子

2015年11月1日、エルおおさかで「なくそう! 官製ワーキングブア」第3回大阪集会を開催しました。今年で3回目の開催となります。主催は同実行委員会で、共催は民法協・大阪労働者弁護団・非正規の権利実現全国会議・NPO労働と人権サポートセンター大阪・NPO官製ワーキングプア研究会でした。

午前中は5つの分科会・分散会を開催し、①官製ワーキングプア入門講座②運動の報告と交流の分散会1・2③自治体議員・市民対象の特別講座④混合組合の団結権&少数組合に学ぶ、にのべ103人、午後からの全体会に143人の参加者があり、集会参加延べ人数は246人でした。民法協からは、萬井隆令会長はじめ、多数の弁護士、労働組合、団体の皆さんがご参加いただき熱心な討論がされました。
また、西谷敏大阪市立大学名誉教授、森岡孝二関西大学名誉教授、チャールズ・ウェザーズ大阪市立大学教授、上林陽治さんなど学者・研究者の皆さんにもご協力をいただき、午前中の分科会から全体会のミニ講演、その後の交流会までお付き合い頂き大いに盛り上がりました。

「臨時・非常勤の50のワークルール」調査を実施

今年の集会の特徴は公務職場で増え続ける非正規労働者の働かせ方のコンプライアンスを告発したことです。集会に先駆けて実行委員会では大阪府・大阪市を含む44自治体の臨時・非常勤の50 項目のワークルールチェック調査を行い自治体当局に回答していただきました(調査期間8月4日~9月30 日/自治労連単組協力・その他は市長あてに郵送)。その結果  自治体が回答し回収率は90.91%でした。

この50のチェックポイントは「こうだったらいいのにな」という要求段階のものではなく、法令、行政通知、判例において確定している項目に限定したものです。50項目が措置されていないことは不正な取り扱いということになり、項目によっては違法な取り扱いで損害賠償の対象にもなるものです。しかし、当該の非正規労働者も、使用する立場の当局も公務非正規がどういうワークルールのもとにあるのか理解していないことが多く、そればかりか法知識がないことに付け込んだ自治体の取り扱いさえうかがえます。

調査項目にはそれぞれの項目ごとに根拠となる法令や判例、総務省通知を示し今後の改善に向けて労使で活用できるものにしています。集会では各自治体の項目ごとの回答をそのまま公表し措置率も明らかにして検証しました。一番よくルールが守られている自治体の最高値は92.59  %(一般職非常勤)、反対に最低な自治体は  40.74%(臨時職員)でした。全体的に言えることは、フルタイムで働きながら、短期間の更新を繰り返す臨時職員のワークルールが特に問題が多いこと、継続雇用、雇用継続延長は半数以上で不安定となっています。同じ女性でありながら母性保護では違法も多く人権侵害ともいえる実態もあります。また同一の労働でも待遇面での格差があることを使用者も認めているなど多くの事が読み取れます。まだ本格的な分析はこれからですがこの調査を通して公務非正規のワークルールが社会的に可視化され、公務職場から率先して「働くルール」が改善されるために活用していただけたらと思います。

「現場からの報告」では吹田市雇い止め撤回裁判、阪大地位確認裁判、ハローワーク雇い止め裁判、都庁を相手にストを決行し駆けつけた東京職業訓練校CAD講師雇い止め裁判、郵政の均等処遇を求める裁判等当事者から元気な報告と支援の訴えがあり、東大阪楠根学童保育からは嬉しい勝利判決後の職場復帰の報告もありました。

「『無法地帯』の公務非正規労働者」

ミニ講演は「『無法地帯』の公務非正規労働者」と題して西谷敏氏にご講演いただきました。短い時間でしたが、なぜこのような「無法地帯」が出現したのかという原因に遡り、根本は公務員制度そのものにあると歴史的経過を踏まえて指摘されました。通知等から見る総務省の現在の政策は必要に応じて臨時・非常勤をうまく使いながら、裁判になっても不利にならないように備えをしておくことを指導しているにすぎないとバッサリと切り、「無法地帯」は力が支配する世界である。私たちが正しい秩序の形成(法律改正)を展望しつつ、それぞれのところで力をつけることではないかと話されました。これからの方向が展望できる大変わかりやすい内容で「来てよかった!」という多くの感想が寄せられました。

集会の締めくくりのコメントでは森岡孝二氏からは「公共性の本質的要素のひとつは「規範性」である。公共部門から法やルールや基準が失われるとまさに「無法地帯」と化し今や官民が逆転する実態にある」と  月末に岩波新書から発売されたご自身の著書「雇用身分社会」の内容にもふれながら「なくそう! 官製ワーキングプア」の運動は、官民を問わずまともな雇用を実現し、貧困をなくす運動そのものであると結ばれました。

最後に共催団体でもある非正規労働者の権利実現全国会議から村田浩治弁護士より、問題だらけのまま強行可決した派遣法の問題点を指摘し、さらに運動を強めようという訴えがありました。

正規・非正規、組織・未組織、ナショナルセンターの枠組みを越えて

参加者の所属は今年も66 組織と広がり、大学生6人、自治体議員6人、議員事務所2人、マスコミも新聞4社、そして地域的にも広がりをみせ近畿では、京都・大阪・奈良・兵庫からの参加があり、東京、福岡、そして来年にはこのような集会を北海道でも開催したいと遠く北海道からの参加もありました。

正規・非正規、組織・未組織、ナショナルセンターの枠組みを越えて「なくそう!官製ワーキングプア」という一致点で非正規労働者が草の根から積み上げている運動をこれからも見守りご支援ください。