民主法律時報

2015年10月号

「ヘイトハラスメント裁判」にご支援よろしくお願いします!

弁護士 金   星 姫

本年8月31日に提訴したフジ住宅「ヘイトハラスメント裁判」について、弁護団を代表し、ご報告させていただきます。

1 事件の概要

フジ住宅株式会社は、みなさまご存知のとおり、大阪に本社を置く分譲住宅事業・住宅流通事業等を行う株式会社であり、1000人規模の従業員を抱える東証一部上場の大企業です。フジ住宅株式会社に約13年勤務するパート社員の在日コリアン女性である原告は、フジ住宅株式会社と代表取締役(会長)を相手取り、今回、裁判を起こしました。

まず、フジ住宅株式会社では、業務内容とは一切関連のない資料が、連日、大量に配布されており、その資料の中には「ヘイトスピーチ」に該当するものが複数含まれているのです。一部例示すると以下のような記載です。
「韓国は(略)嘘をついても責任を取らない、嘘が蔓延している民族性」
「自分の都合の良い事しか考えないという中国、韓国の国民性は私も大嫌いです。」
「在日特権のありえない控除内容に驚きです。市県民税も所得税もなく、その上問題になっている生活保護の不正受給でお金まで貰えて、在日の人からすれば日本は本当に居心地の良い国と思います。それをまともな日本人が支えているようなもので、逆差別のような状況を生む特権は無くすべきです。日本人のための日本国であって欲しいです。」
(※当然ですが、フジ住宅は、原告の給与から所得税等を源泉徴収しており、このような内容の資料を配布するということは、上記記述が虚偽であることを知ったうえで殊更配布しているとしか考えられません。)

そして、このような記述には、各文章ごとに、会長が◯印や下線を引くなどして強調し、会長が同記載内容につき賛同していることが、全社員に宛てて表明されているのです。
また、フジ住宅株式会社では、「日本の自虐史観」を批判し、南京大虐殺や従軍慰安婦制度を否定するといった内容の資料が極めて大量に配布されています。
さらに、フジ住宅株式会社及び会長は、資料配布行為にとどまらず、パート社員を含む全社員を、業務時間中に、育鵬社教科書採択運動へ動員するといった行為にまで及んでいるのです。

配布物には、原告と接点のある従業員が書いた文章も複数挙がっており、原告は、「職場の同僚が、韓国人や中国人等への誹謗中傷をしている。在日韓国人である自分も彼らから憎まれたり疎まれたりしているのではないか。」等と考え、恐怖や怒り不安などといった感情を抱え、職場において極めて多大な精神的苦痛を被っており、社内での対人関係においても悩まざるを得ない状況です。育鵬社教科書採択運動等への動員についても、「やりたくない」ということを会社に対して表明せざるを得ず、このような意見表明は、原告にとって精神的苦痛をもたらすものです。
被告らの以上の行為は、原告の就業環境を乱すものであり、原告の人格権を殊更侵害するものだといえます。

2 本件訴訟への想い

この事件と私の出会いは、2014年5月10日に開催された、民主法律協会派遣ホットラインでした。電話を受けた私は、「ヘイトスピーチや極めて偏った思想に晒されながらの就労は、どんなに苦しいだろうか。」と、原告が会社で置かれている現状を想像し、胸が痛みましたし、同じ在日コリアンとして、とても他人事とは思えませんでした。
また、これは、原告一人の問題ではなく、日本社会全体の問題であるとも思いました。会社やその代表者の思想信条を労働者に押し付けるようなことがあってはならない、企業に勤める全ての人々がいきいきと働ける就業環境を作らなければならない、そのような想いで相談を聞いていました。

ホットラインに同席していた村田浩治弁護士と南部秀一郎弁護士と3名で弁護団を結成し、何度も打ち合わせをし、改善申入れや大阪弁護士会への人権救済申立てをするなど、1年以上かけて取り組んできました。ですが、改善が見られることはなく、訴訟に踏み切る形となりました。
本件は、本年8月31日に大阪地裁岸和田支部に提訴しましたが、合議体のある堺支部に回付され係属しました。第1回期日は11月12日午前10時~です。
提訴後もフジ住宅株式会社では上記のような資料配布は続き、また、現在では、社内で、会社を提訴した原告を非難する内容の文書までもが配布されている状況です。勤務を継続しながらの訴訟は、原告にとって負担が大きいものだと痛感していますが、弁護団一同、原告を支えて共に闘って行こうと強く決心しています。
みなさま、この訴訟に関心を持って頂き、たくさんの支援をくださいますようお願い申し上げます。

労働者派遣法「改正」後こそ権利闘争を強めよう

弁護士 村 田 浩 治

1 まるで「解釈改憲」の2015年派遣法改悪

2014年から二度にわたって廃案とされてきた労働者派遣法改正案が当初の施行日を10日も過ぎたため施行日を9月30日にずらすために衆議院の再議決を経て9月11日に成立した。今回の「改正」のポイントは3点である。
(1) これまであった派遣受入可能期間の制限がある業務と制限のない業務の区別がなくなった。
(2) 派遣可能な業務で派遣先が受け入れる期間は、原則一律3年以内と決まったが、その制限は、派遣先企業が派遣先労働者の過半数代表に対する意見聴取だけで延長が出来る。つまり事実上、派遣先企業のフリーハンドとなった。
(3) 派遣労働者は、派遣元で無期雇用されない限り、3年以上同じ業務には派遣労働者として就労出来ない。つまり3年毎にクビか派遣先(部署もしくは企業)の変更を強いられる。

法改正で常用代替禁止の原則(派遣法制定時から)が変更されたわけではないが、派遣先企業が意見さえきけば、無制限に派遣労働者を受け入れることが可能となったことで事実上放棄された。建前と規定がこれだけかけ離れ、派遣法があくまで働き方として例外であるということを示していた原則が放棄されたことは、集団的自衛権を否定していた政府の憲法解釈を変えてしまったのと同じくらいの暴挙だ。戦後守られてきた理念を掘り崩す改正であり安保法と同じくらいの暴挙だと言っても過言ではない。

2 2012年改正法との関係

2015年改正派遣法がなぜわずか19日で施行されたのか。それは2012年改正法の「派遣受入期間の制限違反による直用申込みみなし規定」の適用を回避するためだ。
従来は、政令で指定された26の業務(通訳や放送機器の操作、事務機器の操作、ファイリングなど)については派遣先企業の受入期間が制限されず、期間制限違反の違法派遣が横行していた。労働局などに申告して、「直接雇用を含む雇用の安定をはかりなさい」という「指導」がされることが後を絶たない。しかし「指導」では、直接雇用が強制されない。裁判に訴えてもきわめて権利保護には不十分だった。2012年法は10月1日から、このような期間制限違反の場合、派遣先企業が「直接雇用の申込みをしたものとみなす」ことになるから派遣労働者が「承諾」さえすれば、地位が保障されることになるから10月1日以降は裁判で勝つことが容易になるはずだった。

3 附帯決議を生かした権利闘争を

参議院では、法改正以前からの派遣期間制限違反の場合、過去の契約が続いている場合には、みなし規定の適用はないとの政府見解が表明された。しかし、10年以上も法違反があった場合でも、法律が出来たらリセットされるというのはどう考えても道理がない。参議院で、すでに長年にわたって派遣で働いている労働者の声があつまり大きな議論となり、衆議院での再可決となった成立時には  項目もの附帯決議がふされ、雇用の安定をはかる措置をとることが盛り込まれた。
2012年法は、受入期間制限違反の旧規定なのだから、旧法時代の期間制限違反の場合にも「みなし規定が適用される」という解釈も成り立ちうる。この解釈で裁判所に訴えたり、附帯決議を活用して交渉したりできる。また派遣法が施行されたことで、実際に3年後の首切りという契約書を示されてる派遣労働者の声が寄せられている。派遣労働者の権利がないがしろにされる危険が高まった今こそ、闘いを強めるべきだ。

マイナンバー違憲訴訟に参加しませんか

弁護士 辰 巳 創 史

 2013年5月24日、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(マイナンバー法)が成立しました。
マイナンバー法は、すべての国民、外国人住民、法人に対し、年金、医療、介護保険、福祉、労働保険、税務等の税と社会保障に関わる各行政分野に共通して利用される識別番号(共通番号)を付番し、情報の名寄せ・統合(データマッチング)をし、併せて本人確認を行うものです。データマッチングの対象となる情報は、市民生活の全般(税務分野においては私人間の取引も含まれる。)に及ぶ極めて広範囲にわたるものであり、政府は、個人に付された番号により、住所、氏名、年齢のみならず家族構成や病歴などのセンシティブ情報、収入や資産などの財産情報までをも、一望して管理することが容易になります。

マイナンバー法は、政府による個人情報等の一元管理化を強めるものであり、憲法13条の保障するプライバシー権を侵害し、監視国家を出現させるものです。マイナンバー法は特定秘密保護法とセットで、戦争する国づくりに向けた国家による情報管理の手段です。また、個人情報が漏洩し、不正アクセスやなりすまし等の違法行為が多発することは間違いありません。さらに、マイナンバー導入のためのインフラ整備には、初期費用だけで3000億円もの費用が必要とされており、税金の無駄遣いというほかありません。

大阪ではかねてより、自由法曹団大阪支部が呼びかけて、国民救援会や大阪労連、民商などのメンバーが参加する共通番号制反対連絡会が活動を継続してきました。この連絡会には、もちろん民主法律協会も参加しています。
今年の10月にはいよいよ個人に12桁の番号を記した通知カードが交付されます。日本年金機構で125万件という大量の個人情報漏えい事件が発覚したこともあり、テレビや新聞などのマスコミも、この段階になってようやくマイナンバー制度の危険性について報道するようになりました。
市民の不安を反映するかのように、共通番号制反対連絡会の事務局的立場の私にも、マイナンバーの学習会の依頼がひっきりなしに来ています。今こそ、廃止に向けた取り組みが必要です。

マイナンバー法の廃止に向けては広範な運動が必要ですが、その一つとして、今年の12月1日に全国各地でマイナンバー違憲訴訟(プライバシー権侵害を理由とする差止及び国家賠償)を提起する予定です。もちろん、大阪でも提訴いたします。
民主法律協会の会員の弁護士の皆様は、常任・非常任いずれでも結構ですので、是非このマイナンバー違憲訴訟に弁護団としてご参加ください。また、学者の先生方は、専門家として弁護団にお知恵をお貸しください。さらに、労働組合の皆様も、原告としてこの違憲訴訟にご参加ください。一緒に訴訟をたたかい、運動でも盛り上げ、マイナンバー法を廃止に追い込みましょう。
訴訟参加のご連絡は、私の方までお願いします。
連絡先:堺総合法律事務所
電 話:072―221―0016
FAX:072―232―7036

「見守り弁護団@関西」の活動

弁護士 遠 地 靖 志

 「戦争法案、絶対廃案!」「憲法守れ!」というコールが響いた戦争法案反対の集会やデモ。SEALsやSADLなどの若者が注目されたが、彼らの集会やデモに、「弁護士」の腕章を付けた人たちがいたのをご存じだろうか。「見守り弁護団@関西」の弁護士たちである。私も見守り弁護団の一員として、デモや集会の見守りに参加した。
見守り弁護団は、SEALs KANSAIやSADLなどからの要請を受けて、集会やデモの際に、警察からの過剰な規制や戦争法賛成派からの妨害や挑発に対応したりしている。

例えば、2万人が参加した8月30日のデモでは、  名以上の弁護士が見守りとして参加した。この日はサウンドカー(荷台などに音響設備を載せて、デモのコールに合わせた音楽を流しながらデモを先導する車)が6台参加したが、各サウンドカーに警察官が数名べったりと張りつき、サウンドカー横の横断幕が沿道の人から見えなくなるという事態があった。そこで、その場にいた弁護士が警察官と話をして、警察を少し離したところで随行させるようにした。また、SEALs KANSAIが行っている梅田ヨドバシカメラ前の集会では、警察から法令上の根拠なく、「ビラを配布するな」と言われたのを、道路交通法に基づいて問い質し、ビラ配布を認めさせた。集会の様子をビデオで撮影しようとするのに対しても抗議をしてやめさせるなどしている。また、妨害者が挑発してきたときには、デモ参加者との間に入ってトラブルを防ぎ、場合によっては警察に対応を引き継ぐなどした。

もともと、見守り弁護団は、個別に見守りの依頼を受けた弁護士がばらばらに参加し、見守り活動を行っていた。しかし、7月19日の靫公園から難波までのデモでは、衆議院での強行採決を受けて、予想をはるかに超える8000人以上が参加し、個々の弁護士だけでは対応できない事態となってきた。そこで、参加していた弁護士が連絡を取り合い、見守り弁護団を結成したのである。
もっとも、見守り弁護団といっても、団長がいて、弁護団会議を定期的に開くなどの通常の「弁護団」ではない。むしろ、ネットワークというのが相応しい。弁護団のメーリングリストに登録すれば、弁護団の一員である。メーリスでは、集会やデモの情報を流し、その都度、各自が参加できるかどうかを表明する。もちろん、日常業務や家庭の事情で見守り活動に参加できない人もいる。人数が足りない場合には、民法協などのメーリスなどを通じて、見守りを呼びかけることもある。そのようにして、当日、見守り活動をできる人で見守りを行うのである。
私も含めて見守りに参加した弁護士は、ほとんどがこのような活動が初めてである。参加は表明したけれども、「何をしたらいいのか、よくわからない。」という人も多い。しかし、参加した弁護士はみな、若い世代が行動しているのを見て、彼らの活動が妨害されたりしないよう、弁護士としてできることをしたい、という気持ちで参加しているのである。

9月19日未明、戦争法は成立した。しかし、同月25日にSEALs KANSAIが主催した梅田ヨドバシカメラ前の集会では、戦争法を許さない、という思いをもった人が4600人も集まった。そこでも、見守り弁護団は活動し、さまざまな問題に対応した。
戦争法反対の集会やデモはいったん終了したが、戦争法廃止の運動はこれからも続く。また、デモや集会が行われるであろう。そのときには、また見守り弁護団が求められる。そのときにはぜひ多くの弁護士、とくに若手の弁護士に見守り弁護団に参加していただきたい。

「乗り鉄」の日々

弁護士 井 上 耕 史

 私は鉄道の乗りつぶしを趣味にしている。大学合格直後の1992年3月から始めて、ちょうど  年後の2012年3月に全線完乗した(その後北陸新幹線が延長開業したが未乗)。司法修習生として大阪に配属された私は、平日夜に青法協や民法協の例会などに出る一方、休日は近畿圏の鉄道を乗りに出かける日々だった。大阪修習の1年間で100路線ほど乗ったと思う。

よく質問されるのが、「ケーブルカーは乗るの? ロープウェーは?」というもの。私は、「ケーブルカーは対象で、ロープウェーは対象外」と答える。鉄道事業法上、ケーブルカーは「鋼索鉄道」で、ロープウェーは「索道」だから。「索道」にはリフトも含まれるので、さすがに雪山のスキー場にリフトだけ乗りに行くのも…ということで、私は「鉄道」「軌道」だけを対象にしている。
ちなみに、日本では立山黒部アルペンルートだけに残るトロリーバスは、レールはないけど「無軌条電車」という鉄道の仲間。だから、「日本で一番高い場所にある鉄道駅は?」というクイズの答えは、「室堂」駅(標高2450m)である。

大阪の路線では、南海高野線(通称汐見橋線)の汐見橋―岸里玉出が面白い。汐見橋駅は、南海高野線の起点だが、高野山方面へのレールは岸里玉出で分断されて直通列車はない。駅舎に立つと、昭和  年代の観光地図が掲げられて、かつて玄関口であった名残を感じるが、それだけに寂寥感も増す。疎らな人影、1面2線の行き止まりホーム、ここが大阪市内とは思えない、異空間に立ち入った感じ。
汐見橋駅は、難波から1駅西の地下鉄・阪神の桜川駅に隣接しており、アクセスは悪くない。小旅行気分を味わいたい方はどうぞ。