民主法律時報

2015年9月号

民法協 第60回定期総会報告

前事務局長 中 西   基

 2015年8月29日に第60 回の定期総会を開催しました。
諸課題が山積するなかでの開催でしたが、79名の会員が参加されました。

記念講演では、元・自衛官の泥憲和さんに、「戦争のリアルと憲法9条輝き」というテーマでお話しいただきました。新聞やテレビではほとんど報じられない戦場でのリアルな話を、豊富な写真や資料とともにご紹介いただきました。補給部隊のトラック車列が攻撃され炎上している写真を見れば、「自衛隊は後方支援だから安全だ」という政府答弁がまったくの虚言であることがよくわかりました。中国や北朝鮮の脅威をあおるマスコミ報道も、歪められたり、誇張されたものだということを、資料に基づいて明らかにされました。日本人が、銃を持たない民生支援によって、アフガニスタンの砂漠を緑化したり、フィリピンに学校を建設したりして、内紛を和平に導いているという、憲法9条をもっている日本だからこそ成し遂げることができる国際貢献についても、具体的にお話ししていただきました。

総会では、議案書に基づいて2015年度の活動総括と2016年度の活動方針案が提案された後、以下の5名の方から特別報告がありました。会場の参加者からも活発な発言が相次ぎ、あらためて、民法協の活動の幅広さとその先進性を感じました。
①大阪における争議の状況(大阪争議団共闘会議・新垣内さん)
②橋下・維新市政とのたたかい(大阪市役所労働組合・田所さん)
③教科書採択問題(出版労連・永石さん)
④生活保護をめぐる状況(大生連・大口さん)
⑤マイナンバー制度違憲訴訟(小林徹也弁護士)
2016年度活動方針案、決算報告、予算案については、いずれも満場一致で可決されました。また、以下の2本の決議を採択しました。
「労働法制の改悪を許さない決議」
「安全保障関連法案(戦争法案)の廃案を求める決議」

総会後の懇親会には、記念講演の泥さんを含めて38名の参加があり、懇親を深めることができました。
来年は民法協が設立されて60周年の年にあたります。日本社会は、民法協設立以来、いまもっとも、危機的な局面に直面しているのだろうと思います。この厳しい局面において、新執行部のもと、民法協としての存在意義を思う存分に発揮していきましょう!

手数料徴収することなくチェック・オフを再開せよ!―泉佐野市・千代松市長の不当労働行為を三たび断罪―

弁護士 増 田   尚

 泉佐野市の千代松市長による泉佐野市職労・同現業支部に対して、大阪府労委は、1月に、職員基本条例等についての不誠実団交・平成25年度組合事務所使用料減免申請不承認・給与減額等についての不誠実団交等について、5月に、平成26年度減免申請不承認等について、それぞれ支配介入・団交拒否の不当労働行為を認定し、救済命令を発してきた。さらに、7月30日、組合費のチェック・オフにつき事務手数料を徴収するよう迫り、団体交渉申入れにも応じることなく、組合が事務手数料徴収に同意しなかったことを理由に、チェック・オフを中止したことが支配介入・団交拒否の不当労働行為に該当するとして、①手数料を徴収することなくチェック・オフを再開すること、②チェック・オフが廃止されたために組合が自動送金により組合費を徴収したことにより生じた送金手数料相当額(1口座1回当たり27円)の実損を回復すること、③同様の不当労働行為を繰り返さない旨の誓約文の手交を命じる救済命令を交付しました(命令は28日付)。

 泉佐野市では、長年にわたり、条例の定めに基づき、組合員である職員に支給すべき給与から、あらかじめ組合費を控除し、組合の口座に送金をするチェック・オフが行われてきました。
 ところが、市は、2014年2月10日、組合に対し、行政改革の一環であるなどとして、同年4月以降、チェック・オフについて組合費の額の3%に相当する事務手数料を徴収するとして、2月28日までに、組合費集金契約書に合意をしなければ、チェック・オフを中止すると通告しました。そこで、組合は、従前どおり無償でチェック・オフを行うことや、事務手数料を徴収することとした理由を説明することなどを求めて、市当局に団体交渉を申し入れました。しかし、市当局は、管理運営事項であるとして、これを拒否しました。

 そこで、組合は、同月20日、府労委に、市の行為は、支配介入・団交拒否であるとして、救済命令を申し立てるとともに、事務手数料を徴収したり、チェック・オフを中止したりしないよう求める実効確保措置の勧告をするよう申し立てました。府労委は、実効確保の措置はとらなかったものの、同月26日、市に対し、労使紛争の拡大防止に努めるよう口頭で要望しました。
 市は、チェック・オフの中止の時期を6月1日に延期したものの、その間にも団体交渉に応じることなく、組合が集金契約書に合意をしなかったことから、6月1日をもって、チェック・オフを中止しました。そのため、組合は、組合員に自動送金の手続をとってもらう方法により組合費を集金することを余儀なくされました。

 そこで、組合は、7月18日、事務手数料を徴収するよう通告し、これに組合が応じなかったことを理由としてチェック・オフを中止したことが支配介入であり、団体交渉に応じなかったことが団交拒否の各不当労働行為に該当するとして、①チェック・オフの再開、②振替手数料相当額の損害の補填、③団交応諾、④謝罪文の掲示(ポスト・ノーティス)の救済命令を申し立てました。

 命令は、「長期間継続されてきたチェック・オフを中止又は変更するには、合理的な理由が必要であり、市は、組合に対し、その理由を明らかにして説明を行い、理解を得る努力を行う必要がある」とした上で、財政健全化という市の理由についても、慎重な検討を行わず、拙速な対応であり、組合に対する説明を行おうとしていたとは理解できないと厳しく批判しました。
 また、管理運営事項に該当するとの団交拒否の理由についても、チェック・オフのような給与からの控除については条例等の法令の根拠が必要であり、長の裁量によってなしうるものでないから、そもそも管理運営事項に当たらないし、団体的労使関係事項であって義務的団交事項であるとして、正当な理由とはいえないとしました。

 このように、命令は、市の対応を厳しく不当労働行為と断罪しており、自治体の首長による組合攻撃に対し、労働組合法の観点から許されないものであると警告を発しているといえます。また、救済の内容についても、手数料を徴求することなくチェック・オフを再開することや、実損を回復することを原状回復として命じており、組合の権利侵害の実態に即したものと評価できます。

 市は、命令を不服として、8月28日、取消訴訟を大阪地裁に提起しました。組合は、府労委に補助参加し、勝利命令を維持する訴訟活動をするとともに、市に対し、直ちに命令を履行するよう求めています。

 先行2事件は中労委に継続し、年末ころに審問が予定されています。また、さらなる給与削減をめぐる不誠実団交についも府労委に継続中で、10月に審問を行います。一連の救済申立事件で勝利命令を得て、労使関係の正常化を図り、職員の勤務条件の向上と職場の民主化のために、組合活動を旺盛に展開することこそ、千代松市長の攻撃に対する最大の反撃になります。引き続き支援をお願いします。

(弁護団は大江洋一、半田みどり、谷真介と当職)

辺野古・高江の今

北大阪総合法律事務所 事務局 三 澤 裕 香
(写真提供も三澤さん)

 2015年8月29日から9月1日まで、高江・辺野古に行ってきました。
沖縄を訪れるのは今回で6回目。4回目までは沖縄=観光地でしたが、昨年11月に知事選挙の応援で訪れてからは、沖縄はもっと身近で守るべき大切な場所になりました。
選挙の応援では、辺野古のある名護の事務所に配置され、朝から晩まで練り歩きやポスティング等、沖縄ならではの選挙活動を体験しました。知事選挙の結果は、みなさんご存じのとおり、新基地建設反対の翁長さんが当選しました。その前に行われた名護市長選挙でも同じく反対派の稲嶺さんが市長になり、その後に行われた衆議院選挙でも反対派の候補者が当選し、新基地建設反対が沖縄の圧倒的民意であることが明らかになりました。

衆議院選挙が終わったとき、これだけみんなが反対しているのだから新基地建設は中止されると思いました。しかしながら、実際は中止どころか、国は工事を強行したのです。そのとき、民主主義って何なのか?と思わずにはいられませんでした。圧倒的な民意がたやすく踏みにじられる、その現実にぞっとしました。そして、この問題は沖縄だけの問題ではないのだと改めて実感しました。大げさかも知れませんが、これは民主主義を守るための、全国民の問題なのだと思うようになったのです。

今回、高江と辺野古を訪問しました。
高江は、沖縄本島の北部、やんばるの森の中にある集落です。豊かな自然の中、米軍のヘリパッドが建設されようとしています。2007年から6か所のヘリパッド建設が始まり、現在2か所のヘリパッドが完成してしまいました。訪れたのが日曜だったので静かでしたが、高江のヘリパッドにはオスプレイも離着陸します。
高江のテントは、非暴力・不服従の意思表明をする場なのだと説明されました。ヘリパッド建設を中止することはできていないけれど、反対運動をしていなければ、とっくにヘリパッドは全て完成していた、激流の中でただ立ち続けるだけでもどんなに大変なことか想像してみてください。静かな口調でしたが、日々の暮らしの中、何年もの間、毎日抗議行動を続けることがどんなに大変なことなのかがよく伝わりました。

 辺野古では、知事選挙のときに友だちになった抗議船の船長と行動を共にしたおかげで、朝8時からの船団・カヌー隊のミーティングに始まり、汀間(ティマ)漁港で船を陸から海に入れる作業、海上行動、カヌー隊を辺野古の港に牽引する作業、汀間漁港に戻って船を海からあげる作業、最後のミーティングまで、ほぼ丸一日の作業を体験させてもらうことができました。
朝、汀間漁港から出港すると、海上にオレンジのフロート(浮具)が見えてきました。これは制限区域を示す目印です。カヌー隊が簡単に乗り越えられないように1玉がかなり大きくて、なんと1玉1万5000円もするのだとか。いったい何玉あるのか・・・。
制限区域に近づくと、すぐに警備船が数隻近寄ってきて警告を始めました。「制限区域だから出て行くように」機械的な声で繰り返しアナウンスが続きます。海上には「ODB(沖縄防衛局)」の旗を掲げた小型漁船が何隻も浮かんでいます。監視役として、地元の漁師たちが1日5万円で雇われているとのこと。生活のためにやむなく監視船に乗っている人も多いそうで、お金で地元を分断させる汚いやり方だと腹が立ちました。

私たちが辺野古を訪れたときは、ちょうど移設に関わる全ての工事が中断されている最中で、沖縄県が珊瑚の損傷状況を確認するべく、潜水調査を開始した日でした。ところが、昼前にキャンプシュワブの浜に浮き桟橋が設置されたのです。全工事が中断されるはずだと、浮き桟橋の撤去を求めて、カヌー隊・船による海上抗議行動が始まりました。私たちもハンドマイクを握りました。みんなで抗議をした甲斐あって、浮き桟橋は無事撤去されました。しかし、その前日に沖縄を訪れた菅官房長官が「期限を過ぎれば工事を再開する」と明言しており、油断も隙もありません。

海では、抗議行動だけでなく、自然豊かな美しい辺野古の海を見せてもらうことができました。400年の歴史をもつハマサンゴが見える場所に連れて行ってもらい、箱メガネで水中をのぞいたら、青いきれいな魚も見えました。この美しい海を埋め立てて、基地を作ろうとしているのです。今、海底に沈められたブロックやそれに繋がる鎖が、海底の珊瑚を傷つけています。それだけでも環境破壊なのに、この海に土砂を流し込めば、生態系が一瞬のうちに崩れてしまうことぐらい、素人の私でも分かります。この美しい海を埋め立てること、軍事基地をつくること、絶対に許せません。

 3泊4日でしたが、観光をする暇もないぐらい、高江・辺野古一色でした。辺野古では、ゲート前の座り込みにも参加しました。当初、工事が中断されたと聞いて、ゲート前で体を張って工事車両の進入を止める気満々だった私たちは、行ってもすることあるのかなと思っていましたが、そんな心配は無用でした。辺野古でも高江でも、工事が中止されるまで、毎日が闘いなのです。日々頑張っている現地のみなさんには本当に頭が下がります。

まだ、辺野古や高江に行ったことがない方は、ぜひ行ってください。実際に行って、自分の目で見て、聞いて、肌で感じないと分からないことがたくさんあります。でも、なかなか難しいですよね。実際に現地を訪れた私たちがすべきこと、それは自分が見聞きしたことを少しでも多くの人に伝えることだと思います。私のつたない文章を読んで、少しでも多くの方に辺野古・高江に関心を寄せてもらえたなら、とてもありがたいです。

大川真郎 著 『裁判に尊厳を懸ける 勇気ある人びとの軌跡』

弁護士 宇賀神   直

 人が困難な裁判に臨むとき、試されるのは信念、勇気、忍耐、すなわち人間性である。事件の当事者はいかにして裁判を乗り越えるのか。その思いから大川真郎弁護士は自分が担当した事件から当事者らの知られざる素顔を描き出す思いで7つの裁判の当事者の闘いを書いています。私の読後感ではその思いは達成されています。

 その7つの裁判は、第1話 権力犯罪とたたかった二人の青年―和歌山大学生「公務執行妨害」事件。第2話 守り抜いた憲法の理念―杉山弁護士接見妨害。第3話 暴力から議会制民主主義を守った市議―斎藤八尾市議会議員除名事件。第4話 私たちに青空を―四日市公害訴訟。第5話 それでも私は働き続けたい―日本シェ―リング労働裁判。第6話 『嘘構の嵐』に立ち向かった医師―近畿大学「医療過誤」裁判。第7話 美しい島を後世に―豊島産業廃棄物不法投棄事件。

 この7つの裁判のどれもが裁判本人の苦労と奮闘の足跡が事実に裏付けられて書かれております。民法協の会員には是非とも読んで欲しいと思うのですが、私が特に奨めたいのは第5話の日本シェ―リングの労働裁判闘争です。この会社と労働者、労働組合ではあらゆる不当労働行為と権利侵害の手本がある、と言う、会社から攻撃を受けた労働組合と労働者が20年間も永きに亘り闘い東京地裁(中労委命令に対する会社の取消訴訟)で全面的な解決の和解が成立した。この  年の闘いを振りかえり、その間の単組と上部団体、そして弁護団との時には厳しい遣り取りが書かれています。特に組合員の1人1人が厳しい中での宣伝活動、会社への抗議・申入れ活動などが書かれています。読めば沢山の知恵が付きそれとやる気が起きます。

 大川弁護士は民法協で活動し、労働事件の裁判闘争で頑張り大きな成果を挙げ、その後、国際法律家協会の活動に、そして弁護士会の活動に足を入れて力を出し、日弁連の事務総長、日本司法支援センタ―の常務理事に就きそれをやり遂げて現在に至っています。私は「裁判に尊厳を懸ける」を読んで以前の大川弁護士を思い出しました。

 この本は大川、村松、坂本法律事務所で手にすることが出来ます。
 1700円を1500円で
 電話06―6361―0309

発行 日本評論社
定価 1700円+税