民主法律時報

2015年7月号

大阪市労組・組合事務所事件――大阪高裁で事務所明け渡しを命ずる許しがたい不当判決

弁護士 谷  真 介

1 はじめに

 大阪市役所労働組合(市労組)・大阪市労働組合総連合(市労組連)が平成18年以来使用を継続してきた大阪市役所本庁舎地下1階の組合事務所について、平成24年度以降も引き続き使用許可申請をしたことに対し、大阪市がこれを不許可としたことは違法とし、不許可処分の取消し・使用許可の義務付け及び損害賠償を求めていた訴訟(なお大阪市側も明け渡し訴訟を提起。市労組は権利の濫用としてこれを争っていた)で、平成27年6月26日、大阪高裁(第1民事部・志田博文裁判長)は、組合側全面勝訴であった大阪地裁判決を変更し、大阪市の不許可処分について平成24年度のみの違法に留め、平成25年度・平成26年度について適法とし、市労組らに組合事務所の明け渡しを命ずる不当判決を言い渡した。

2 大阪地裁判決と高裁の審理

 昨年9月10日の大阪地裁判決では、自治体労働組合が組合活動の拠点として組合事務所を庁舎内に設置する必要性があることを出発点とした判断枠組みを採用した上で、本件組合事務所の明け渡しにおける橋下市長の団結権侵害の意図の存在及びこれがその後も一貫して継続していたことを認定し、一連の使用不許可処分を全て違法と判断した。そして、明け渡し通告の後に市議会で成立した労使関係条例12条(労働組合に対する便宜供与の全面禁止)については、同条例が適用されなければ違法とされる大阪市の行為を適法化するために適用される限りにおいて、憲法28条又は労組法7条に違反して無効であるとして適用違憲の判断をし、組合を勝訴させた。

 この地裁判決に対し、「地裁ごときの判断で市長の判断が覆されるべきではない」として、橋下市長は控訴。高裁で、大阪市側は、橋下市長は「健全かつ適正な労使関係」を志向しただけで団結権侵害意図はないという独自の主張に終始し、労使関係条例の違憲・違法性については、主張らしい主張はしなかった。目的外使用許可の違法性の判断枠組みの一般論に関して大阪大学の小嶌典明教授の意見書が提出されたが、組合側はがっぷり四つで論争を行い、3回の弁論で平成27年3月に高裁での審理が終結した。

 判決直前の6月2日、同じく橋下市長から組合事務所の退去を求められ、退去しながら争っていた自治労・大阪市労連の事件で、大阪高裁14部(森義之裁判長)が地裁判決を変更し、平成24年度の違法に留める逆転判決を言い渡し、市労連・大阪市ともに上告せず確定していた。なりふり構わない大阪市は、同判決とその確定証明書を結審している市労組の事件に「上申書」に添付して提出するという暴挙に出た。組合側は、かかる大阪市の行為は裁判官の独立を侵害し、また民訴法上も違法である旨の意見書を提出し裁判官に面談を迫ったが、裁判官は判決言い渡しまでこれを無視するという、不穏な空気の下で高裁判決の日を迎えた。

3 大阪高裁判決

 大阪高裁判決は、自治労・市労連の高裁判決と全く同じ結論(平成24年度のみ違法、25年度・26年度は適法)であり、言い渡し後の法廷には「不当判決!」の声が上がった。というのも、市労連と異なり、市労組らは組合事務所を明け渡さずに闘っていたのであるが、その組合事務所の明け渡しを命じるという、許し難い判決であったからである。またその判決理由も、大阪市の主張を丸呑みする(あるいはそれ以上の)酷い内容であった。

 高裁判決は、①行政財産の目的外使用許可の裁量権行使の判断枠組みについて、市長に極めて広範な裁量権を認め、(違法行為であるはずの)不当労働行為が認められたとしても、それだけでは不許可の違法性は認められないとまで言い切った。また、②橋下市長の団結権侵害(支配介入)について、橋下市長は労働組合の活動を市民感覚に合うように是正改善していく方針であったことから、組合に対する支配介入の意思を有しているとまでは認められないとした。そして、③労使関係条例12条(便宜供与の一律全面禁止)の違憲・違法性について、憲法28条や労組法7条には違反せず適法であるとし、一方で同条例を前提にしても市長が議会から責任追及されることを覚悟で使用許可することも理論上は可能であるとしつつ、本件では市庁舎に行政スペースが不足していたという誤った事実認定を下に、平成25年度・26年度の各使用不許可処分を適法とした。なお、条例施行前の平成24年度の使用不許可処分に関しては、明け渡し通告が性急すぎたことのみを理由に違法とし、市労組らへ各11万円の損害賠償を命じている。

 しかし上記判断のうち、①は、憲法28条の労働組合の団結権保障に基づいて庁舎内に継続的に組合事務所を使用してきたことの実態を全くみず、その重要性を市長の裁量権行使の考慮要素として著しく軽視するものである。また②は、団結権侵害(支配加入)は、使用者の行為が労働組合の活動に与える影響やその影響についての使用者の認識・意図、使用者の行為の必要性・相当性、労使関係の経緯などの事情から客観的に判断されるべきものであるにもかかわらず、橋下市長の言説の一言隻句をとらえて不当労働行為性を否定するという極めて非常識な判断である。また、仮に橋下市長の言説を前提にしたとしても、一方当事者である使用者が他方当事者を不適正と一方的に判断してその組織・活動に影響力を行使する行為は、自主性・独立性を奪う支配介入行為そのものであることを看過している。さらに、③は、労働組合の団結権保障に基づく組合事務所の使用を軽視するものであり、少なくとも継続的に供与をしてきた組合事務所を廃止する際に、便宜供与を一律全面禁止をしている同条例を理由に不許可処分を下すことは、団結権を保障した憲法28条や労組法7条3号に違反する結果となるはずである。

 結局のところ、高裁判決には、「行政は悪をなさない」という強固な意思が貫徹されており、平成24年当初の橋下市長就任下での大阪市役所の異常な労働組合攻撃の実態を無視した、全く世間離れした判断といわざるをえない。

 なお、この判決を言い渡した志田裁判長(修習34期)は、前週にも公務災害の遺族年金に関する男女格差の違憲性を問う裁判で、逆転合憲判決を言い渡していた。2週連続、大阪地裁第5民事部の違憲判決を覆して行政側を勝たせたわけであるが、何と本判決の5日後、定年まで数年を残したまま、突然依願退官している。

4 最高裁での逆転勝利に向けて

 7月2日、市労組らは最高裁闘争でこの不当判決を絶対に覆す決意のもとで最高裁に上告した。すでに平成27年度の使用不許可処分を受けている苦しい状況下であるが、この点に関してももう一度何としても地裁でも勝利し、最高裁で上告を受理させるために弾みをつけなければならない。

 この橋下維新による議会とも一体となった組合事務所攻撃は、すべての労働組合に向けられた攻撃である。市労組と大阪自治労連、弁護団は、さらに団結を強固にし、全国の労働者・労働組合と連帯を深め、この不当判決に屈さず、大阪市庁舎の組合事務所を守り抜く決意である。是非とも、皆様の知恵とお力をお貸しいただきたい。

(常任弁護団は、豊川義明、大江洋一、城塚健之、河村学、増田尚、中西基、谷真介、喜田崇之、宮本亜紀)

なみはや交通事件の勝訴判決報告

弁護士 高 橋  徹

1 はじめに

 自交総連大阪地方連合会なみはや交通労働組合を結成した組合員全員に対する懲戒解雇事件について、大阪地方裁判所で勝訴判決を得ましたので、報告します。
 なお、なみはや交通は、門真市を拠点とし、車両台数44台、乗務員約70名を擁する新興のタクシー会社です。社長一族が経営する同族会社で、これまで社内に労働組合はありませんでした。本件判決後には、オアシスという会社に営業譲渡をし、組合員の雇用を奪うという態度を貫いています。

2 事実経過

 会社側は、2013年夏頃から、種々の労働条件の切り下げを行い、2014年1月には、燃料費の高騰を理由に、賃金カットを強行しました。
この会社側の仕打ちに業を煮やした乗務員7名は、2014年2月、自交総連傘下の労働組合を結成し、この賃金カットの撤回を求め、団体交渉を要求しました。

 2014年2月下旬に第1回目の団体交渉が行われたのですが、会社側からは、一乗務員から急遽、顧問や労務担当に抜擢された人物が出席し、組合否認の発言を繰り返しました(録音あり)。また、その翌日には、この「顧問」が組合の委員長に対し、「委員長が反目やったら、うちのSが動いたら、警察、右翼、暴力団、日本の行政機関、全部手を回せますわ。せやから、もしあんたらが徹底的にやるでというなら、明日から公安つきますわ」などと、脅迫する始末でした(これも録音あり)。

 当然に、組合と会社側の話し合いは平行線に終始し、3月中旬に第2回目の団体交渉が予定されましたが、その前日に、組合員7名全員を懲戒解雇にする旨の解雇通知が発せられました。しかし、この解雇通知には、どのような理由で懲戒解雇としたのか、その具体的な理由は、一切記載されていませんでした。先の団体交渉の経過からも、労働組合を放逐しようとした不当労働行為であることは、明白でした。

3 地位保全等仮処分命令申立事件

 組合員7名は、懲戒解雇の無効を主張し、従業員の地位保全と、賃金の仮払いを求めて、大阪地方裁判所に仮処分事件の申立をしました(大阪地方裁判所平成26年(ヨ)第10030号)。担当は、第5民事部の菊井一夫裁判官です。

 2014年4月8日に申立をしましたが、合計7回の審尋期日を経て、8月20日に賃金の仮払いを命じる仮処分決定が出ました。決定では、本件懲戒解雇について、「本件組合を消滅させるために行われたことが強く推認される」と断じています。ちなみに、地位保全申立は却下、賃金の仮払いは第1審判決まで、支払額は解雇前賃金の約8割の水準に限定されました。

 本件は、労働組合を嫌悪した(不当労働行為)、違法な懲戒解雇であることが明らかな事案であり、会社側も大した主張をしていなかったにもかかわらず、夏季休廷前の多忙さからか、決定が先送りとなり、その分仮払いの開始時期が遅れたことに不満が残りました。

4 従業員地位確認等請求事件(本訴)

 その後、起訴命令を受けて、2014年9月7日、組合側が本訴を提起しました(大阪地方裁判所平成26年(ワ)第8787号)。本訴では、各組合員の従業員地位確認、賃金の支払い、違法な懲戒解雇(不当労働行為であり、不法行為)に対する無形損害の賠償と、組合自身の無形損害の賠償を請求しました。無形損害の賠償請求については、社長個人も被告に加えました(連帯責任)。担当は、第5民事部(労働部)の笹井三佳裁判官です。

 和解協議が決裂したことから、尋問を経て、2015年5月28日、組合側の言い分を全面的に認める勝訴判決を得ました。従業員地位確認、賃金支払いに加え、各組合員の無形損害として各6万円の賠償、組合の無形損害として55万円の賠償を命じる内容でした(無形損害の賠償については、会社と社長の連帯責任)。判決書は、詳細で、よく検討がなされており、本件懲戒解雇が不当労働行為に該当する違法な行為であるとして、不法行為に基づく損害賠償責任を負うと断じています。

 本件では、懲戒解雇の無効については当然の結論であり、特に導き出すべき教訓もないのですが、社長の行った懲戒解雇について、会社法350条を適用して連帯責任を認めた点は、なるほどと感心しました。

5 さいごに

 以上のとおり、なみはや交通事件は、裁判闘争としては、完全勝利の判決でしたが、冒頭で記載したとおり、会社側は、他の会社にタクシー営業のすべてを譲渡し(営業譲渡)、組合員の雇用を奪う方針を貫徹しています。今後は、この点に対するたたかいをどう組み立てて行くのかが課題です。

(弁護団は、藤木邦顕、横山精一、中筋利朗、高橋徹)

第23回 非正規ではたらくなかまの全国交流集会in大阪

大阪労連 嘉 満 智 子

2015年6月13・14日(土・日)、エルおおさかを会場に「第  回非正規ではたらくなかまの全国交流集会in大阪」が開催され、13日の全体会に506人、14日の分科会に390人が参加しました。

 記念講演は雨宮処凛さん、東海林智さんによる「生きづらさを克服する働き方へ」と題してトークセッション。雨宮さんは「自分の世代は非正規雇用が当たり前の世代。非正規雇用という働き方や長時間労働が当たり前のブラック企業での働き方を強いられる中で、職場のいじめも多く、心を病む人も多い。『自己責任』とあきらめる人も多い。非正規労働者の私が労働組合に入れるとも思っていなかった。けれども私は、こうした働き方は構造的問題だと気付いた。個人の問題ではないと気がついた。非正規も労働法に守られているとわかってきた。そしてフリーター全般労組を結成した。怒れる主体となるのが労働組合だ。怒っていいんだとわかること、怒ることも練習。500人で始めたデモは1000人を超えるものになった。」と自身の経験から労働組合の重要性について語られました。また、東海林さんは東京のメトロコマースで働く女性非正規労働者の均等待遇を求めるたたかいや、現在の労働法制改悪反対の運動を紹介しました。

基調報告を全労連非正規雇用労働者全国センター大西玲子事務局長が行い「暴走する安倍政権は、国民のいのちくらしを切り捨てて、誰のための政治を行っているのか。非正規労働者は  年「新時代の日本的経営」発表後増え続けている。度重なる労働法制の改悪で正規も非正規も雇用環境が悪化している。派遣法、労働時間法制の改悪によりさらに雇用が劣化していく。今国会での労働法制改悪は何としてもストップさせていく。集まって、語り合って、手をつないで労働組合を大きくしていこう」と運動を呼びかけました。

たたかい・運動の報告では大阪から、1年間にわたる東大阪楠根学童指導員の不当解雇撤回闘争が全面勝利し、職場復帰を勝ち取った特別報告をはじめ、介護職場で組合を結成した福祉保育労滋賀支部あいサポート分会、職場の要求実現仲間作りを進めている関空検疫所労働組合、派遣元に正規雇用されながら、派遣切りされ、闘っている江東区労連の仲間、民放労連から格差是正・正社員化の取り組み、郵政  条裁判の闘いの報告がありました。

 二日目は、  の分科会・講座で学習・交流を深め、集会終了後は、大阪市役所前まで、350人でパレードを行いました。

かえせ☆生活時間プロジェクト大阪フォーラム準備会

弁護士 中 西  基

1 はじめに

「かえせ☆生活時間プロジェクト」は、浅倉むつ子(早稲田)、浜村彰(法政)、毛塚勝利(元・中央)、唐津博(中央)、長谷川聡(専修)、圷由美子(弁護士)が発起人となって、2015年3月6日に東京で設立準備シンポジウムを開催し、4月27日は東京フォーラムを開催しています。
大阪でもフォーラムを開催できないかと呼びかけがあり、6月28日に準備会が開かれましたので、ご報告します。

2 問題提起①(浜村彰さん)

はじめに、プロジェクトの発起人の1人である浜村彰さんより、「なぜ今、かえせ生活時間なのか」という視点から、プロジェクト設立の趣旨等について説明がありました。

日本の労働時間は、1987年の労基法改正により週40時間制が導入されから以降、統計上は、短縮しているように見えます。しかし、それは短時間労働者の増加による影響が大きく、一般労働者の労働時間は年間2000時間前後とまだまだ長時間労働です。

国会に提出されている労基法改正法案の最大の特徴は、「高度プロフェッショナル制度」の導入によって労基法の時間保護が及ばない労働者を拡大させようとする「働かせ放題」の法案だということです。現行の労基法  条の管理監督者には出退勤時間の裁量権があり、2007年に法案要綱まで策定されたホワイトカラーエグゼンプション(自己管理型労働)にも働き方の自由がありました。ところが、今回の改正案は、「業務遂行の裁量権」には一言も触れていません。
これでは、労働者がまっとうな家族生活や社会生活を営むことはできませんし、配偶者や子ども、地域社会に大きなしわよせを及ぼすことになります。

いま求められているのは、人間らしい普通の生活を営む権利を守ることです。「かえせ生活時間」を提起したのは、そうした運動を幅広く呼びかけたいと思ったからです。残業したら、残業手当を支払わせるというよりは、時間で取り戻す制度、あるいは、生活時間確保の観点からの労働時間法制度のあり方などについても考えていきたいと思っています。

3 問題提起②(渥美由喜さん)

内閣府少子化危機突破タスクフォース・政策推進チームリーダーである渥美由喜さんより、ワーク・ライフ・バランスから考える労働時間法制改悪の問題というテーマでお話いただきました。渥美さんは、外資系IT企業で管理職として働く妻と共働きで、2人の子どもを育て、また、実父を介護されています。また、下の子どもさんには難病がおありとのことです。

まず、改正法案では「成果に応じた報酬」について一言も触れられていません。それなのに、今回の法案であたかもそれが実現できるように宣伝するのは詐欺に近いのではないでしょうか。

パートナーのキャリアも、子どもと過ごす時間も、介護や看護の時間もすべて誰かに押し付けて、24時間365日仕事だけをこなす人生でよいのかが問われています。仕事以外のオフの時間はイノベーションの源泉でもあります。新しいビジネスのニーズやシーズは現場にあります(職場にはありません)。これからの人口減少社会では、職業人・家庭人・地域人と一人三役をこなさなければなりません。必然的に効率のよい生産性の高い働き方が求められます。仕事も重視・高密度、生活も重視・高密度の「イキイキ社員」を増やさなければならないのに、今回の改正案は、時間という制約を外してしまいます。生産性が高いかどうかは時間という分母があってこそ把握できるものです。

いま求められているのは、如何にして効率的に働くか、キャリアとライフを両立させるかです。

4 意見交換

お二人の問題提起を受けて、会場の参加者で意見交換しました。西谷敏先生(大阪市立大学名誉教授)や森岡孝二先生(関西大学名誉教授)も参加され、活発な意見交換が行われました。
以下は、当日の意見交換を踏まえた筆者の感想・意見です。

戦前の女工哀史の時代から、日本の長時間労働の実態はほとんど変わっていません。今でも日本には1日16時間働いている人が少なからずいて、男性フルタイム正社員の実労働時間は週53時間、年2700時間です。なぜ、日本人はこんなに働くのか。なぜ、日本の労働者は、労働時間短縮よりも、割増賃金を優先するのか。そこを解明しなければならないのではないでしょうか。

また、日本の男性中心の企業社会、性別役割分担が強固に根づいている日本社会においては、そもそも男性労働者には生活時間というものが存在していなかったとも言えます。大阪では1990年代に「アフター5の会」の取り組みがありました。「アフター5は自分と家族のもの」というスローガンで、男性労働者も生活時間を創り出そうという取り組みでした。ただ、バブル崩壊とその後のリストラの嵐のなかで、労働組合のなかでは、時短を求める運動が下火になってしまいました。

いま国会に提出されている労働基準法改正法案は、もはや労働者や労働組合だけの問題ではありません。労働者の健康や余暇が削られるだけでなく、家族の時間が奪われ、今よりもさらに家事負担が偏ることになります。親の介護や地域での交流もできなくなります。国民生活の様々な局面に大きな影響を与える問題です。この法案に反対する運動は、普通の市民の視点からの広がりをもった運動にしなければなりません。職場で労働時間をどう減らすのかという運動ではなく、生活者として生活時間をどう取り戻すのかという切り口で、誰もが生活者の立場から対等に声を上げることができるような運動が求められているのではないでしょうか。キーポイントは、運動の「担い手」だと思います。

かえせ☆生活時間プロジェクトは、生活時間という観点からあらたな時間政策法規制のあり方を考えるべきだという重要な問題提起をしています。これに応えて全国各地で、生活者の立場から労働時間規制を考える場をつくっていくことが必要ではないでしょうか。

元自衛官が語る集団的自衛権・戦争立法――大阪弁護士9条の会 泥憲和さん講演

弁護士 松 本 七 哉

 大阪弁護士9条の会は、2015年6月29日、弁護士会館にて、「元自衛官が語る集団的自衛権・戦争立法」と題して、元自衛官の泥憲和さんを講師に招き学習会を行いました。
大阪弁護士9条の会呼びかけ人の石田法子弁護士の開会のあいさつで始まり、泥さんの講演のあとは、大阪弁護士会憲法委員会からの行動提起が武村二三夫弁護士、弁護士9条の会からの行動提起が愛須勝也弁護士、閉会のあいさつが森野俊彦弁護士9条の会新事務局長(元裁判官)と、そうそうたるメンバーがお話しをされました。
参加者は、120名を超え、大阪弁護士9条の会としては、初めて立ち見が出る盛況ぶりで、情勢が緊迫していることを示すものだと思いました。

 泥さんは、中学卒業後、陸上自衛隊に入隊し、少年工科学校を経てホーク地対空ミサイル部隊に配属されていた方です。国防の第一線で働きたいと、当時の仮想敵であった対ソ連防衛線である北海道の部隊に志願して配属されていたそうです。今でも自衛隊合憲論者であり、「日本が攻撃されたときは、自衛官は命をかけて国民を守ります」と述べておられます。そのような泥さんだからこそ、いかに現在の集団的自衛権の論議や、戦争法案をめぐる議論が空疎なものであるかがわかるのです。

 泥さんは、「安全保障の危機」というまやかし、「憲法は無力だ」というまやかし、「テロとの戦いは正義だ」というまやかしの3本柱で語られました。
○○脅威論というのが、デマで作り上げられたものであること等が、いずれも豊富な資料に裏打ちされた論拠で論破され、なるほどと呻らされました。
とくに、「憲法は無力か」で、紹介された、フィリピン・ミンダナオ島のJバードの取り組みは、聞いていて胸をうつもので、ドキュメンタリー番組を見ているようでした。憲法9条の思想が、紛争地域にあっても平和をもたらす力となることが、具体的に理解することができました。
「テロとの戦い」では、アメリカ軍の教科書を示し、アメリカ軍がテロを「低強度紛争」と位置付け、「テロ支援戦略の成功はアメリカの利益および法と一致」すると記載されていることを示し、アメリカ軍自身がテロを利用していることがわかりました。

 最後に具体的な複数の自衛隊幹部の名前を挙げて、その集団的自衛権の行使に反対する発言を紹介されました。泥さんの愛国心の原点が、「国民の中には自衛隊に反対し、その存在を認めない意見もある。しかし、諸君の任務は、国民が我々を否定することができる自由な社会を防衛することである。ゆえに、我々の任務は重く、崇高なのである」との自衛隊幹部の言葉であることが冒頭で語られています。泥さんの著書の中には、「自衛隊は日本最大の反戦団体だ」という冗談が、半ば本気で自衛隊内で語られているという記述があります。今、戦争法案の議論を「あほなこと言うなよ」と、一番切実な思いで聞いているのは自衛官かもしれません。

 戦争法案をめぐる、本当に経験もしたことのないようなせめぎ合いは、いよいよ最終盤です。これを廃案に追い込めば、憲法をめぐるたたかいに一定の決着をつけることができるのではないでしょうか。大阪弁護士9条の会も、これからもその先頭にたってたたかう決意です。