民主法律時報

2015年6月号

吹田市職労現業評議会団交拒否(不誠実団交)事件――東京高裁でも勝利! 市の上告断念で7年越しで解決

弁護士 谷  真 介

1 事件の概要と経過

 吹田市では、前々市長の阪口市政時代の平成20年、トップダウンで市全体の人員削減をする計画が策定された。吹田市は、同計画に基づき、退職者不補充・非正規職員への置き換えを推進し、正規職員を段階的に減少させていった。一方で、平成  年、同  年には、吹田市職労(吹田市職労現業評議会)と吹田市との間で、市立中学校・小学校・幼稚園に配置される学校校務員(用務員)の各校あたりの配置人数に関し、あるべき配置人員に関する討議、交渉が重ねられ、一定人員の配置を約する労使協定(労働協約)が締結されていた。

 吹田市は、平成21年度以降、上記人員削減計画のもとで、労使協定を無視し、同協定の基準に満たない配置しかしなくなった。吹田市職労(現業評議会)は、協定通りの人員配置を求め、また人員配置減少に伴う労働条件への影響等に関しても当該部局である教育委員会と団体交渉を行ったが、トップダウンで決定した上記計画に基づいて行われていたため、教育委員会は同交渉の当事者能力を欠いており、全く前に進まなかった。そこで、平成  年6月、現業評議会は、人員削減計画の策定責任者である吹田市長に対し団体交渉を申し入れたが、市長は「教育委員会で対応すべき問題」として拒否した。つまり、現業評議会は、教育委員会と交渉しても「市(市長)が決めたから」と結論の説明しか受けられず、市長に申し入れても「教育委員会が説明すべき問題」として拒否されるという、「じゃあどうすればいいのか」という板挟み状態に陥ったのである。

 そこで、平成21年10月、現業評議会は大阪府労働委員会に対し、①吹田市が配置基準の協定を守らないのは支配介入、②吹田市長が交渉を拒否したことは団交拒否として、不当労働行為救済申立を行った。これが本事件である。

 平成23年8月、初審・大阪府労委では、①②も全て棄却する不当命令であった。組合は不屈の精神で中労委に再審査申立をし、巻き返した。すると中労委は、平成25年4月、②に関して逆転の救済命令(権限ある者の出席を義務づける旨の団交応諾命令)を出した(詳細は民主法律時報2013年6月号)。これに対し、維新の市長となっていた吹田市は、東京地裁に行政訴訟(取消訴訟)を提起した。

 しかし、平成26年11月、東京地裁で組合勝訴、そして今般、平成27年5月14日に東京高裁でも組合が勝利した。4月の市長選挙で維新の市長が敗退していた吹田市は上告を断念した。6年半以上もの闘いを経て、団交応諾を命ずる勝利命令を確定させたのである。

2 東京高裁の審理と判決

 東京高裁(第10民事部/大段亨裁判長)では、1回結審し、3か月後に判決言渡し期日が指定された。東京地裁判決が非常にすっきりとした事実認定、判断であったこともあり、組合・弁護団は、高裁でもまず大丈夫だろうと思っていたが、手を抜くことなく控訴理由書に反論し尽くし、結果、完全な組合(中労委)勝利の判決であった。

 現業評議会が市長に対し本件団交を申入れた前後に教育委員会が現業評議会に必要な説明や具体的な対応を行ったという吹田市の主張に対し、高裁判決は、教育委員会が行った説明会等を詳細に検討し、組合側が平成14年、15年協定の配置基準どおりに職員(学校校務員)が配置されないことで起こる様々な問題点について具体的に指摘したにもかかわらず、教育委員会は、市長部局の説明や結論を伝えるにとどまり、配置人数の削減に伴う労働条件等については抽象的に対応を回答するか、それ以降の検討や協議を約束するのみで、十分な説明や回答をしていなかった、と排斥した。

 また、組合側が団体交渉で求めていたのは平成14年協定通りの人員配置に尽きていた(それは管理運営事項そのものである)という吹田市の新たな主張に対しては、高裁判決は、組合側の交渉事項は、人員配置のみならず、人員配置の変更に伴う職務内容や職務範囲、職場環境の整備等の労働条件に関する事項についても含まれている、と的確に判断した。

 このように、高裁判決は、吹田市の主張をことごとく斥け、原判決を維持した。

 なお、東京地裁段階まで吹田市が争っていた混合組合の申立人適格の争点(なお、この論点については、大阪教育合同事件について、平成27年3月31日に最高裁の上告不受理で確定している)は、吹田市側が控訴審で控訴理由としなかったため判断されなかった。

3 最後に

 東京高裁において、本件の各論点において完全に決着が付いた。吹田市は行政訴訟提起の際に、最高裁まで争うための弁護士費用その他として600万円の予算を組み、議会の承認を得ていたが、本年4月の統一地方選で維新市長を破って当選した後藤市長は、上告断念の英断を下し、6年半以上闘ってきた本事件は終結した。

 今後は、組合と新市長との間で、充実した市政や住民サービスを実現するために必要な職員の配置や労働条件はどうあるべきかについて、中身のある議論、交渉を行うことのできる新たな労使関係が構築されることを期待したい。

(弁護団は、豊川義明、中西基、谷真介、喜田崇之)

旧社会保険庁職員分限免職処分取消請求事件について

弁護士 渡 辺 輝 人

第1 事案

 2009年12月末に社会保険庁が解体され、2010年1月4日から政府の特殊法人である日本年金機構が発足して年金業務を引き継ぎました。その際、日本年金機構法において、職員の承継規定が設けられず、「新規採用方式」が取られました。しかし、実際には多くの社会保険庁職員は引き続き勤務を続ける一方、懲戒処分歴のある職員は「基本計画」(閣議決定)において、機構に一律不採用とされました。懲戒処分歴のある職員や、525名の職員が民間の整理解雇に当たる「分限免職処分」(国家公務員法78条4号)を受けました。

 京都では、分限免職処分を受けた15名の職員(いずれも全厚生労働組合【全厚生】京都支部所属)が(1) 処分取消・慰謝料を求めて裁判所に提訴、(2)人事院に対して不服申立(審査請求)をしました。
このうち、3名については人事院で処分が取り消され、既に職場復帰しています。残る12名の処分取消請求と、15名の慰謝料請求について、2015年3月25日に大阪地方裁判所で判決が下され、残念ながら、全面敗訴の不当判決となりました。

第2 判決の問題点

1 争点
 大きく言えば、(1) そもそも政府の年金事業が今後も継続するのに職員を整理免職することが認められるのか(国公法78条4号の免職事由に該当するのか)、(2)誰が分限免職処分回避努力義務を負うのか、(3)どの程度の義務を負うのか、(4)義務は履行されたと言えるのか、が争点でした。

2 国家公務員には免職回避努力義務を受ける権利がない?――(1) について
 判決は、国の組織の在り方については、国会が自由に決めることができる、という認識を前提にして、国家公務員については民間の整理解雇四要件のような、整理免職に際して使用者である国が個々の職員に対して負っている義務は存在しない、としました(判決p51~52)。これは公務員には解雇制限に関する人権がなく、立法さえあれば解雇は自由であると言っているに等しいものです。しかし、いかに国会であれ、ひとたび国家公務員法に基づき任用した職員に対する雇用責任を負うのは当然であり、事後的な立法によりその権利を剥奪することなどできないはずです。

 その一方で、実際に整理免職処分をする際には、任命権者(京都社会保険事務局長)の裁量の範囲で免職処分回避努力をすべし、ともしました。

 使用者である国が全体で雇用責任を負わない、という判断は、憲法で保障された公務員の身分保障や、生存権、勤労権を軽視するものであり、原告ら敗訴の結論を導くための「ためにする議論」です。判決自身も「憲法の生存権の趣旨に基づく公務員の身分保障を根拠とする免職処分回避努力義務」の存在を認めている以上、その義務を負うのは憲法の名宛人である国全体としか考えようがないのです。

3 免職に追い込んだ基本計画の問題を糊塗――(2) について
 その上で、判決は、上記閣議決定が職員の整理免職処分につながったことを認定しながら、違法性の問題を生じない、という信じがたい見解を述べています(判決p54)。これは日本年金機構法において職員の採用に関する「基本事項」を内閣が定めることになっていた=懲戒処分歴のある職員の一律不採用は国会のお墨付きである、というものです。

 しかし、職員承継をしなかった機構法自体が不当であることはもちろん、内閣は採用に関する「基本事項」を定める権限があったに過ぎず、懲戒処分歴のある職員に機構の採用面接すら受けさせないことを直接決める権限があったとは思えません。そもそも、この一律不採用の方針自体、法に基づき設置された有識者会議の結論(懲戒処分歴のある職員にも採用の途を残した)を、法律が予想していない与党・自民党内部の議論がねじ曲げた結果(これは憲法 条が定める公務員の「全体の奉仕者」性を「一部」の者たちが違法に侵害するものです)なので、判決は結論に固執するあまり、行政の中立性を害する政党の横やりに屈するものになってしまっています。

 また、この判決の見解は、公務員の任用や免職に関する根本法である国家公務員法よりも、同法とは「前法・後法」または「基本法、特別法」の関係にない機構法の附則の規定を優先するものであり、実は、国家公務員法を制定した国会の立法権すら蹂躙するものです(なお、機構法附則3条を国公法の後法または特別法と捉えると、それについて国公法 条に基づき人事院による勧告が必要になりますが、そのようなことはされていません。)。

 このような見解は裁判所が遵守すべき国公法に違反し、到底許されるものではありません。

4 JR採用差別訴訟最高裁判決との矛盾――(2)について
 また、判決は、あまりにないない尽くしで、職員の人権救済の途を完全に奪ってしまっていることについてバランスを取ったつもりなのか、機構による懲戒処分歴保有者の不採用について、機構側に違法の問題が生じうるかのような記載があります(判決p53)。しかし、これは2003(平成15)年12月22日のJR採用差別訴訟の最高裁判決と矛盾します。国鉄解体と民営化(私物化)に際しては職員の新規採用方式が採られ、それが社保庁解体の「お手本」となっています。この最高裁判決では、国鉄が採用候補者名簿作成の際に行った不当労働行為(組合員の名簿非登載)の違法性について、JR側(設立委員)は原則として承継しない(不当労働行為の責任は国鉄およびそれを引き継いだ清算事業団が負う)とされました。この判決の理屈を前提にすれば、機構(設立委員)は政府が決めた本件における懲戒処分歴保有者一律不採用の違法性の責任を原則として負わないはずなのです。その責任を負いうるのはただ国のみです。

 判決は、結論に固執するあまり、重要な先例との関係での矛盾すら引き起こしています。

5 雇用責任を「任命権者」限りに矮小化――(2)について
 この判決の最大の拠り所は、任命権者(多くの原告については京都社会保険事務局長。年配の2名だけ社会保険庁長官)より上級の機関(その頂点が内閣)は、分限免職処分回避努力義務を負わない、という点です(判決p62)。その根拠となるのは、任命権者(国家公務員の任用・免職の担当者)について定めた国家公務員法 条です。しかし、同条は、あくまで任命権の所在を定めたものであり、任命権が終局的に任命権者に属し、より上級の機関がその任命権を行使できないとしても、だからといって、上級の機関が免職処分回避努力義務を負わない根拠には一切ならないはずです。実際、後述のように、判決は閣議決定によって新たに厚生労働大臣の免職処分回避努力義務を創設でき、これが処分の違法性に影響する、という判断をしています。これでは内閣が任命権者の任命権を侵害することになりそうですが、判決は意に介していないようです。逆に、このような理屈がまかり通ると、行政は末端の窓口を除き、国民に対して責任を負わないということになり、戦前の国家無答責論とほとんど言っていることが変わらなくなります。正に国民主権に反する考え方です。

 また、上級機関は下級の任命権者の任命権を行使することはできなくても、下級機関に指揮命令をすることができるので、任命権者に独立した任命権があると言っても、「だからどうした」という話でしかないのです。実際、民間企業で、支店長に採用権限がある職員に対する解雇回避努力義務は企業全体で負わなくて良い、みたいな仕組みはありません。

また、判決が任命権者のみ免職回避努力義務を負うという「任命権者論」にこだわる結果、様々な矛盾が生じます。例えば、京都の原告内部でも、任命権者が京都社会保険事務局長の原告と、社会保険庁長官の原告に分かれますが、それぞれの任命権者は相争いながら、免職回避努力義務の履行に向けた「椅子取りゲーム」をしなければならないはずです。大阪と京都の事務局長も同様に「椅子取りゲーム」をしなければなりません。このような統制のとれない行政執行は常識的に考えられません。

6 義務の不履行を免罪――(3)(4)について
 そして、原告は「任命権者論」を前提にしてもやれたはずの措置を沢山主張しましたが、裁判所は行き詰まり、何の応答もしないで無視したものがいくつもあります。判決は、厚生労働大臣についても、閣議決定の文言を根拠に回避努力義務の存在を認めましたが、厚労大臣について言えば、さらに様々な措置をできたはずで、具体的に主張もしているのですが、それらについても判断されずに無視されたり、明らかに法令違反の理由(処分時に存在しなかった事情)をつけて措置をとらなかったことを免罪したりしています。結局、判決は、自らが立てた理屈にすら不誠実な態度を取っているのです。

第3 今後の展望

 京都以外の地域でも、札幌、仙台(秋田訴訟)、東京、名古屋、高松(愛媛訴訟)の訴訟が同時に進行しており今後、結果が出て行きます。特に札幌と高松は進行度合いが京都の次に早く、今年度中の判決が見込まれます。これらの地裁が先に勝訴判決を得るかも知れません。

2 京都訴訟の控訴審
 また、京都訴訟も、大阪高裁に場所を移し、審理が続きます。既に述べたように、大阪地裁の判決は、理由が矛盾だらけで、裁判所自身が述べた理屈にも反する結論を採る支離滅裂なものになっています。あるべき姿へ是正していけば自ずと勝訴の途は見えてきます。

 また、理屈はどうあれ、大阪地裁は2008年7月29日以降の厚労大臣の回避努力義務を認定しました。一方で、厚生労働省においてできたのに取らなかった措置について軒並み判断しないという暴挙に出ました。特に、免職回避に向けて用意されていた3ヶ月間の113名の定員枠については、事後的な事情(4月1日以降の雇用に接続できる保障がなかった)という時系列的に事後の事情をもって活用しなくても良い、というとんでもないことを述べています。厚労省が取るべきであった措置を徹底的に明らかにしていこうと思っています。

 また、大阪地裁の判決は、裁判所に適正な判決を書かせるために、世論による包囲が極めて重要であることを示しました。大阪地裁判決がこのまま上訴審でも是認されれば、「公務員には人権がない」ということになってしまいます。そうなっては大変です。今後ますます、支援の輪を広げていただきますようよろしくお願いいたします。

反対!!「定額(低額)働かせホーダイ」 在阪法律家8団体共催5.21緊急集会

弁護士 中 峯 将 文

 2015年5月21日、エル・おおさかにて、在阪法律家8団体の共催で、「反対!!『定額(低額)働かせホーダイ』5.21  緊急集会」と題して、いわゆる「残業代ゼロ」法案に反対する集会を開催しました。300名が参加しました。

 最初に、城塚健之弁護士(民主法律協会・幹事長)から開会あいさつがあった後、たつみコータロー参議院議員から来賓あいさつがありました。
その後、中西基弁護士(民主法律協会・事務局長)から、法案提出までの経過や国会情勢等の報告がありました。

 また、竹信三恵子教授(和光大学)から、「女性は活躍できない、子育ても出来ない……~『残業代ゼロ』で日本が食い尽くされる。」とのテーマで、いわゆる「残業代ゼロ法案」がもたらす日本の仕組みの転換についてご講演いただきました。まず、竹信教授は、残業代ゼロ法案の年収要件について、派遣法の要件が緩和されてきた歴史を引き合いに出し、また、年収要件が省令で変更できてしまう仕組みを指摘して、一度法律が成立してしまえば、なし崩し的に年収要件が引き下げられてしまうことを説明されました。また、竹信教授は、残業代ゼロ法案が成立した場合に、①国際的にみても長時間労働者が多い日本で、労働時間規制を撤廃すれば労働者はますます長時間労働を強いられるようになり過労死を促進してしまうこと、および、②長時間労働が出来ない子育て世代の女性は非正規社員として低賃金で働かざるを得ず、家計を支えるために男性が益々長時間労働を強いられ、ますます貧困化が進むという悪循環になるということを、データを用いて分かりやすく説明されました。

 次いで、松丸正弁護士(過労死弁護団全国連絡会議代表幹事)からは、自身が過労死事件に取り組まれる中で考えた、過労死が生じる原因についてお話しいただきました。松丸弁護士は、過労死問題の一番大きな問題点は、労働時間が職場の中で適正に把握されていないことだと言います。実際、松丸弁護士から紹介された事例では、自己申告による労働時間とパソコンや警備記録から明らかになった実態との乖離はすさまじいものでした。労働時間が適正に把握されれば、労災認定も通るし、会社としての責任も自然に明らかになり、コンプライアンス機能が働くし、労働組合としても労働時間規制に取り組むことができるが、労働時間が把握されていないことが、過労死・過労自殺を生み出す一番の元凶だとのことでした。松丸弁護士は、「残業代ゼロ」法案は、労働時間の液状化現象を労働現場全体に合法的に持ち込もうとしている法案だと考えると述べられましたが、強く共感しました。

労働行政が過労死防止のスタンスを取るのか、過労死促進のスタンスを取るのか、今問われていると思います。松丸弁護士の言うように、人間としての尊厳を守るための岩盤としての労働時間規制を守る闘いをともに進めていかなければなりません。

 この後、垣沼陽輔氏(大阪ユニオンネットワーク代表)、宮木義博氏(全労働省労働組合近畿地方協議会)、寺西笑子氏(過労死防止大阪センター)、及び、北村諒氏(関西学生アルバイトユニオン)からの団体発言、労働時間法制改悪に断固反対する集会アピールの提案及び採択があり、最後に、大川一夫弁護士(連合大阪法曹団・代表幹事)からの閉会挨拶により、終了しました。

 昨年11月、過労死遺族らの奮闘により、過労死等防止対策推進法が施行されました。仕事と生活を調和させ健康で充実して働き続けることのできる社会を実現するため、協力・協同して「残業代ゼロ」法案を撤回させる運動を広げなければならないという決意を共有できた集会であったと思います。

「子どもたちに渡してはならない教科書」って? ―戦争を美化し、改憲に誘導する危険な中学校社会科教科書―

子どもと教科書大阪ネット21代表委員 永 石 幸 司
(出版労連大阪地協事務局長)

 「戦争する国」づくりに邁進する安倍政権。国会では「戦争法案」や労働法制改悪の議論が行われている中、教育の場では、今年8月までの期間、中学校教科書の採択が行われています。「歴史修正主義」勢力である「新しい歴史教科書をつくる会」系の中学校歴史・公民教科書(育鵬社・自由社)も今回の採択に付されています。

そんな中、「教育が危ない! 子どもたちの未来が危ない!」として昨年の「安倍『教育再生』NO!」の集会に引き続き、出版労連大阪地協と「子どもと教科書大阪ネット21」とが協力し各団体に賛同を呼びかけ、「5.31大阪教育集会2015 子どもを国や企業の勝手にせんといて!」の集会を2015年5月31日に大阪市内で開催しました。呼びかけ人には広川禎秀大阪市立大学名誉教授、高作正博関西大学教授をはじめ大学の先生を中心に8名の方々、そして賛同団体には民法協や関西MIC、日本ジャーナリスト会議関西支部など10の市民団体・労働組合に名を連ねていただきました。

当日は、大教組・教文部長の末光章浩先生の開会挨拶に始まり、続いて神戸女学院大学の石川康宏教授から「安倍政権は日本を何処へ導く?」という演題で、「ポツダム宣言をつまびらかに読んでいない」安倍首相が「戦後レジュームからの脱却」を宣言し「それを成し遂げるためには憲法改正が不可欠だ」として何をしてきたのかを批判的に解説されました。とくに自民党の改憲案について、天皇、不戦、家族責任、国防軍、国民の権利、靖国・秩序、家族・公務員、内乱鎮圧、道州制、改憲緩和、国民を縛るなどの観点別に問題点の指摘をされ、自民党の改憲案を改めてしっかり読むことや社会科学の基礎をしっかり学ぶことの重要性を指摘されました。

続いて、出版労連の寺川徹副委員長から「育鵬社教科書の問題点と教科書を巡る情勢」の話を具体的かつ分かりやすくしていただきました。教科書への国家統制を強化するための規制を、編集・検定・採択の3段階で行ってきた影響が今回の中学校教科書に政府見解を書かせるなどの形で如実に出てきており、社会科教科書での記述の後退が増えていることを指摘されました。

育鵬社の教科書は改訂を重ねるたびに編集の腕を上げてきており、構成を工夫して問題点を露骨に出さないよう巧みになってきています。しかしながら「戦争に協力する国民」づくりを目指し、天皇中心の歴史観を植え付け、戦争を美化し肯定的に受け止める歴史認識の育成を狙い、国や企業に従順な意識を醸成して文句を言わない国民をつくり、改憲に誘導する意図が明確なのは変わっていません。高校日本史教科書の編集者という立場から数々の記述の問題点を具体的に次のように指摘されました。

・神話をあたかも史実であるかのように扱い、誤解を招くようにしている。
・推古天皇を「中継ぎ役の女性天皇」と書いている。男系男子でないと駄目だという意識が出ている。
・日露戦争をいかにも祖国防衛戦争だったと言わんばかりで、当時戦争に反対した人の記述が全くない。
・アジア太平洋戦争を「自存自衛」のための戦争と明記している。
・戦争の記述のところでは、総じて、植民地支配の実態や、日本軍の行った加害について触れていない。
・日本国憲法のところでは「ほとんど無修正のまま採択されました。」と事実に反することを書いている。押しつけられた憲法だということをすり込むためだろう。
・公民の教科書では安倍さんの写真がなんと15枚もあり、安倍政権の 宣伝パンフレットになっている。ちなみに平成の天皇は8枚。
・憲法の国民主権を学ぶところのタイトルは多くの教科書では「国民主権と私たち」となっているが、この教科書は「国民主権と天皇」。
・しかも最初が「国民としての自覚」という小見出しで、「憲法で保障された権利を行使するには、他人や社会への配慮が大切であり、権利や自由には必ず義務と責任がともなうことを忘れてはなりません」と書いて、主権を学ぶところで「義務と責任がともなう」と強調している。
・「基本的人権の尊重」を学習するページでは「公共の福祉による制限」という小見出しがあって、「憲法は、権利の主張、自由の追求が他人への迷惑や、過剰な私利私欲の追求に陥らないように、また社会の秩序を混乱させたり社会全体の利益を損なわないように戒めています。」と、憲法には書いていないことを書いている。このような誘導形の記述も目立つ。
・側注では「多くの国の憲法では国防の義務を課しています。」と書いて、日本国憲法はそうではないと声高に言いたいようだ。
・「平和主義」を学ぶところの写真が自衛隊である。ここでも「国民に国防の義務がない徹底した平和主義は世界的には異例です。」と書いて、9条が時代遅れだという誘導をしている。

このように日本会議の主張や自民党の改憲案を先取りする記述が少なくありません。なお教科書記述の比較表は次のURLにアップしています。
http://www.suita21.net/

このような教科書は民主的な手続きでは採択されません。そこで彼らはこれまで政治家を使って教育委員会に圧力をかけてきました。今回、地方教育行政法を改悪して、 従来の教育委員長と従来の教育長を一体化した新「教育長」を首長が直接任命できるようにしました。(今年4月施行)。これにより、教育内容や教科書採択への首長への意向がより働きやすくなるシステムとなりました。大阪市の教科書採択地区はこれまで8地区ありましたが、橋下徹市長の下で任命した中原徹教育長(今年3月パワハラ問題で辞任)や橋下市長が公募で選んだ3名を教育委員に送り込み1地区に変更されました(2013年12月)。狙いは「つくる会」系の教科書採択だと言えます。

集会では各地で行われている教科書展示会に行って意見を書いてこようなどの行動提起が、子どもと教科書大阪ネット  事務局長の平井美津子さんから行われました。最後にアピール文を採択し、日本ジャーナリスト会議関西支部代表の清水正文さんの閉会挨拶で締めくくられました。

参加者は、教育や出版、歴史研究関係者、市民、弁護士など62名でした。

「直接雇用申込みみなし規定」の活用――拡大派遣労働問題研究会の報告

弁護士 大 西 克 彦

1 2015年4月28日、大阪弁護士会にて、京都弁護士会の塩見卓也弁護士から、「2015年10月施行予定の直接雇用申込みみなし規定を過去の裁判事例にあてはめた場合の分析」と題するご報告をしていだきました。当日は派遣研究会のメンバーに加え、労働組合の方や一般の方も参加され、総勢20名を超えました。

平成24年改正労働者派遣法40条の6では、派遣受入期間制限違反の派遣(3号)、派遣法などの適用を免れる目的で、請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し、労働者派遣の役務の提供を受ける場合(いわゆる偽装請負、4号)などに該当するときには、派遣先はこれらの違法行為を行った時点において当該派遣労働者にかかる労働条件と同一の労働条件で派遣労働者に対し直接雇用の申込みをしたものとみなすと制定されました。

そして本年10月に上記直接雇用申込みみなし規定が施行されることから、この規定を活用することで、これまで裁判所で救済されなることがなかった労働者を今後は救済できる可能性が高いため、これをいかに活用するかが派遣法に係わる者の課題であると派遣研究会では考え、労働組合の方などに広く知っていただくとともにその勉強をかねて、拡大派遣研究会と銘打って本会が開催されました。

 塩見弁護士の報告では、過去の23の裁判事例のうち、上記直接雇用申込みみなし規定の適用によって、労働者の救済が可能となる事例が16件、約7割にのぼるとの指摘がありました。過去の裁判所の事実認定を前提としたとしても、上記直接雇用申込みみなし規定により約7割の労働者に派遣先との直接雇用が認められることになるというものです。例えば、労働局から派遣可能期間違反の是正指導が出された事案では、これまで派遣先との労働契約が認められなかったものが、上記3号により派遣先との直接雇用が認められることになる可能性があるということになります。

また、直接雇用申込みみなし規定における成立要件、例えば「派遣先事業者の故意・過失」「適用を免れる目的」などといった解釈についても、施行前であるのでほとんど文献もないなかで、詳細な検討結果をご教示いただきました。

なお、塩見弁護士が拡大派遣研究会でお話された内容は労働法律旬報でご報告される予定のようですので、詳細はそちらを参考にしていただきたいと思います。

 直接雇用申込みみなし規定が施行されれば派遣労働者の裁判も大きく変わることが示唆される報告内容であったので、出席した方々は本年10月1日の施行後、直ちに上記直接雇用申込みみなし規定を活用したいとの思いを強く持ったものと思います。

間近に迫る施行に向けて今から準備をしていくことが必要であるので、労働組合の方などには派遣研究会へ参加していただき、活用に向けた議論を深めて行きたいと思います。

大阪争議団共闘会議結成50周年 記念レセプション

大阪争議団共闘会議 事務局長 新垣内  均

 大阪争議団共闘会議の50周年記念レセプションが2015年5月23日に国労大阪会館で開催されました。資料によると、大阪争議団は1965年に延べ50団体の労働争議で闘う仲間が「大阪争議団交流会」を立上げて、1979年「大阪争議団共闘会議」に発展して現在に至るようです。レセプションには大阪争議団交流会、結成当時に加盟されていた「化学同盟ベルマン労組」争議の杉村邦雄氏が連帯の挨拶を述べられました。

今回「大阪争議団50周年記念誌」が発行され30年誌と共に1995年から2014年までの年表と写真で綴る記録として発行され参加者に配布されました。半世紀の歴史がある大阪争議団の結成当時は、安保闘争のまっただ中に活き活きと闘う労働者(労働組合)であった事を現存する1965年の大阪争議団交流会議案書「ど性骨」が50年後の私達に伝えています。

レセプションは、大阪歌声協議会の合唱で始まりました。その間にも、続々と参加者が来場され130名の参加で用意した席は埋め尽くされました。
今回のレセプションは、実行委員会方式で開催され約1年間の議論・討議をへて開催に漕ぎ着けました。当日は実行委員長である井上巌(元:仲立争議)大阪争議団元議長の開会の挨拶から始まり川辺和宏大阪労連議長、辰巳孝太郎日本共産党参議院議員に来賓の挨拶を賜り、木下圏一(元:関西電力争議)大阪争議団元議長による乾杯の音頭で宴会が始まりました。連帯の挨拶を民法協幹事長・城塚健之弁護士、国民救援会大阪府本部会長・篠原俊一弁護士に頂きました。歓談中は、マジック・ハーモニカ演奏・フラメンコギター演奏と催し物があり参加者の笑顔と笑い声が満ちていました。歓談中に大阪争議団共闘会議  年を振り返ったDVDが上映され参加者からは、それぞれの争議の時代ごとに歓声がわき起きり昔を懐かしむ良い機会になったのではないでしょうか。元争議団も現争議団もへこたれない明るさと元気があります。集合写真の参加者の笑顔が物語っています。

労働争議は、時代によって内容が変わっても現在もあるし今後も無くなることがないでしょう。現在、大阪争議団共闘会議には9争議が加盟し日々争議解決のために頑張っています。大阪争議団共闘会議は「大阪から、すべての争議をなくそう」を目標に闘い続けます。
今後も皆様のご支援とご協力をお願い致します。