民主法律時報

2015年3月号

労働時間法制の改悪に反対!

事務局・弁護士 和 田   香

1 「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)」について
厚生労働省労政審議会は、2015年2月13日、①働き過ぎ防止のための法制度の整備等、②フレックスタイム制の見直し、③裁量労働制の見直し、④高度プロフェッショナル制度の創設等を盛り込んだ「今後の労働時間法制等の在り方について(報告)」(以下、「報告」という。)をとりまとめ、厚生労働大臣へ建議した。現在、厚生労働省は、当該報告に基づき、本通常国会へ法案の提出を行おうとしている。
報告では、企画業務型裁量労働制の対象業務を拡大させ、労基法の労働時間規制を受けない「高度プロフェッショナル制度」を設けることが提言されている。これは、際限のない長時間労働や残業代不払いを合法化するものであり、到底受け入れられない。何より、過労死等防止対策基本法が施行されるなど、長時間労働の抑制が国の重要課題である現在において、長時間労働を誘発することが明らかな労働時間法制の改悪は許されない。

2 ①働き過ぎ防止のための法制度の整備等
報告は、過重労働等の撲滅に向けた監督指導の徹底、長時間労働抑制や年次有給休暇取得促進等に向けた労使の自主的取組の促進を、働き過ぎ防止のための法制度の整備として挙げている。
しかし、その内容は、年次有給休暇について付与日数が10日以上ある労働者につき、その内の5日分を使用者に時季指定をするなどして確実に取得させること義務づける点が新しい程度で、その他はすでに厚生労働省が実施してきた過重労働対策の域を出るものでない。残業時間の上限規制や休息時間(勤務間インターバル規制)には何ら踏み込んでおらず、まったく不十分な内容である。

3 ②フレックスタイム制の見直し
報告は、フレックスタイム制の清算期間の上限を現行の1か月から3か月に延長することを提案する。しかし、清算期間が長くなると、1日あたりの労働時間をより長時間にすることが可能になり、長時間働く日が増加することが考えられる。この点、清算期間内の1か月ごとに1週間平均50時間を超えた労働時間については当該月における割増賃金の支払い対象とすることが適当とされているが、それでも残業代を支払わなくてよい時間が増加することは明白である。

4 ③裁量労働制の見直し
報告は、裁量労働制の見直しとして、企画業務型裁量労働制について「企画立案調査分析と一体的に行う商品やサービス内容に係る課題解決型提案営業の業務」や、「事業の運営に関する事項の実施管理とその実施状況の検証結果に基づく事業の運営に関する事項の企画立案調査分析を一体的に行う業務」についても対象業務範囲とすることを提案する。
しかし、前者については、営業を対象業務にするものであるが、顧客のニーズ等を調査するなどして顧客に合った商品やサービスを提供するということは、一般的に行われている営業手法である。また、後者については、「事業の運営に関する事項の実施管理」は一般的な労働者が日常的に行っている業務である。後述の高度プロフェッショナル制度と異なり、企画業務型裁量労働制の対象労働者については、年収基準が設けられておらず、対象範囲が真に裁量をもって企業の中枢的な業務に従事する労働者のみならず、一般労働者にも際限なく拡大される恐れがある。
そもそも、裁量労働制については使用者が割増賃金の支払いを免れるために法の趣旨を潜脱して悪用している問題が指摘されているところ、このように営業業務や実施管理業務にも適用を広げることは更なる問題の拡大が懸念される。

5 ④特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)
高度プロフェッショナル制度とは、特定の職種で年収1075万円以上の労働者について、時間外・休日労働協定の締結や時間外・休日・深夜の割増賃金の支払義務等の労基法上の労働時間規制の適用を除外する新たな労働時間制度の提案である。
報告は、当該制度の導入については希望しない労働者には制度が適用されないようにするとしているが、実際に個別労働者が制度の適用を拒否できるとは到底考え難い。また、長時間労働による健康被害の対策のため、医師による面接指導の実施を義務づけるとするが、対象労働者は1月あたり100時間という過労死・過労自殺のラインを超える時間外労働に従事した者であり、実質的な健康被害の歯止めになるとはいえない。
報告では、制度の対象となる労働者について、「高度の専門的知識、技術又は経験を要する」とともに「業務に従事した時間と成果との関連性が強くない」といった性質を有する者として金融関係のアナリストなどを例示する。しかし、その詳細は法案成立後に省令で規定するとされており、実際は専門業務や企画業務が広く対象とされて、IT産業のSEなども対象になると言われている。また、年収要件についても、昨年8月14日の日本経済新聞は政府が「大企業の課長級の平均である年収800万円超の社員で、勤務時間を自分の判断で決められる中堅以上の社員を想定している」と報道しており、今後なし崩し的に緩和されていくことが容易に予想される。
高度専門業務に携わる労働者は、専門的・管理的業務従事者が多いと考えられるところ、2013年度の過労自殺(精神障害)に係わる労災請求において専門・管理職が26%(1409件中の365件)を占めている。年収1075万円以上の労働者は30代後半と40代のホワイトカラーに集中しているが、この所得階層は長時間労働に従事している割合が高く、過労死・過労自殺が最も多い年齢層である。労働時間が賃金に何ら加味されないとなれば、仕事で成果を出すべく必然的に長時間労働に従事せざるを得なくなり、該当する労働者の長時間労働が一層長時間化して健康被害が増加することも必至である。この制度は、第1次安倍政権時代の2007年に政府が導入を目指したが、世論の強い反対によって断念せざるを得なかったホワイトカラー・エグゼンプションとその本質において何ら変わりはない。

6 まとめ
労働者の命と健康を守るために、労働時間を適正な範囲内に制限することが必要であることは周知の事実であり、報告の内容は到底許されるものではない。
民法協では、報告記載の内容が法制化されることを阻止するため、2月25日にNPO法人働き方ASU―NET等との共催で「ストップ! エグゼンプション緊急集会 ――残業代ゼロ法案を許すな!」を開催し、3月2日には大阪労働者弁護団と共同して街頭宣伝を行うなどしている。
今後も、3月18日に12 時から13時にかけて南森町で街頭宣伝を行う予定ですので、多数のご参加をお願いします。

派遣法「改正」を阻止せよ!

事務局次長・弁護士 古 本 剛 之

 安倍内閣は、2014年3月に労働者派遣法「改正」案を第186通常国会に提出しましたが、重大な誤記があったために6月に廃案となりました。その後、第187臨時国会に再度提出しましたが、衆議院の解散によって同年11月に再び廃案となりました。
しかし、安倍内閣は、ほぼ同内容の法案を三度、第189通常国会に提出する方針を明らかにしています。公明党の申し入れを受けて多少の修正が入りましたが、小手先だけの修正で、本体部分に何ら変わりはありません。
同法案では、派遣労働者を、派遣元との間で雇用期間の定めをしていないか(無期雇用派遣)、しているか(有期雇用派遣)に分け、無期雇用派遣については派遣先が無制限に利用できるものとしています。
有期雇用派遣については一定の「制限」を設けるとしていますが、その「制限」とは、同じ派遣労働者の継続的な受け入れは同一組織単位で3年まで、同じ事業所での派遣労働者の継続的な受け入れは3年まで(過半数労働組合等から意見聴取さえすれば繰り返し延長可能)とするに過ぎません。
この仕組みでは、派遣先は、たとえ過半数労働組合等が反対しても、永続的に派遣労働を受け入れることが可能で、また、同じ派遣労働者を継続的に使用したい場合には、部署(組織単位)を変更することにより永続的に使用することができるのです。
これによって派遣期間制限は容易にすり抜けることができ、ほとんど意味のない制限になってしまいます。2015年10月1日からは、違法派遣状態(期間制限違反等)の場合に、派遣先が労働者に直接雇用申し込みをしたとみなす改正派遣法40条の6が施行されますが、その適用場面を大幅に減らして骨抜きにするものでもあります。
また、同法案では、派遣先が派遣労働(派遣労働者)を不要とするときは何時でも契約解除できることは従前と全く変わりありません。また、均等待遇を義務づける規定は盛り込まれておらず、劣悪な派遣労働者の労働条件について何らの改善を図るものではありません。さらに、キャリアアップの資料にするという名目で、派遣先が派遣元に労働者の働きぶりに関する情報を提供することとなっていますが、これはむしろ派遣先が好ましく思わない労働者の差し替えを求めるために利用される危険性が大きいものです。
同法案は、労働者の生活と権利を守る不可欠の原則として認められてきた直接雇用の原則を実質的に破棄するもので、「正社員ゼロ」「一生涯派遣」「労働者の無制約な使い捨て」につながるものです。労働者の権利と生活の保障を奪ってひたすら搾取するような社会には未来はありません。
民法協においても、大阪労働者弁護団などと共催の街頭宣伝に取り組んでいます。4月17日には、金沢大学名誉教授の伍賀一道先生講演の学習会も予定しています。みなさん、是非ご参加をお願いします。そして、この悪法を必ず三度の廃案に追い込みましょう。

オレンジコープ不当解雇事件が和解解決―― 職場復帰する労組員に更なる支援を

弁護士 南 部 秀一郎

1 はじめに
大阪府泉南市に本拠を置く消費生活協同組合オレンジコープで、配送担当者が労働組合を組織し、団体交渉を行っていたところ、労組員全員が解雇された事件につき、2月5日大阪地方裁判所堺支部において、地位確認及び不当労働行為に対する損害賠償を求める訴訟(以下「本訴」という。)について、和解が成立しました。この和解によって、雇用継続を求めたオレンジコープ労組の労組員2人について、4月1日より職場復帰することとなりました。本件については、民主法律時報において数度にわたり記事が掲載されています(2012年9月号、2013年5月号、2014年6月号)。事案の詳細や法的手続の経過等はそれらの記事に譲り、本稿では、本訴の状況、そして和解の意義、今後の課題についてお伝えします。

2 地位確認請求等の提起
本件については、2013年4月10日、大阪地裁岸和田支部にて、地位確認の仮処分決定を受けました。この仮処分決定を受け、早速2013年5月20日に地位確認の本訴を提起しました。その後、2013年9月11日に、労組員であることを理由とする解雇、団体交渉の場で行われた労組に対する嫌悪発言、組合員名簿を警察に提出するとする生協理事長の支配介入発言など、オレンジコープ労組、個々の労組員、及び上部団体である生協労連関西地連に対する不当労働行為について、損害賠償を追加請求し、事件は大阪地裁堺支部第1民事部に回付されました。

3 本訴の進行
本訴の進行については、仮処分、本訴と同時進行していた、大阪府労働委員会での不当労働行為救済申し立て事件で、2013年10月までに関係者の審問が終わっていましたので、審問調書を証拠として提出し、不当労働行為による損害論の立証に重きをおきました。そして、2014年5月29日に、大阪府労働委員会での全面勝利命令を受け、11月20日の証人尋問となりました。

4 和解勧告
証人尋問後、裁判所は、労組、生協双方に強く和解を勧告しました。裁判所は原告らに対し、「職場に旗を残す」という言葉を使い、労組員が職場復帰することを当然の前提として、和解条件の交渉を行うようすすめました。そして、3ヶ月の交渉の末、和解が成立しました。

5 職場復帰と労組の活動を保障する和解内容
和解では、職場復帰を求めた労組員が、2015年4月1日に生協に復帰することになりました。また、不当労働行為を受けた、オレンジコープ労組及び生協労連関西地連に対する解決金の支払いも、内容となりました。
加えて、不当解雇以前には、「生協施設を使わせない」とする生協側の行為があった団体交渉について生協施設の使用を認めることや、生協側の労組活動の尊重条項、組合費のチェックオフなど、労組の活動を保障する和解内容となりました。また、労組結成のきっかけとなった、残業代の未払いについて、タイムカードによる労働時間管理が明記されました。
更に、生協からは解雇及び本件訴訟に至った経緯について遺憾の意が示され、労組員の復職、生協が労組と共に円満な労使関係の形成に努めることを、生協の従業員及び生協組合員に公表することが盛り込まれました。

6 本件和解の意義
本件和解は、まず、労働者の職場復帰を勝ち取れたところに、その意義があると考えます。この結果に至るには、解雇無効による地位確認、未払い賃金の支払請求、不当労働行為に対する労働委員会での救済申し立て、未払い残業代の請求といった純粋な法律上の手続だけではなく、(相手方が生協だということで行えたものですが )監督官庁である近畿厚生局への働きかけや、行政文書の情報公開、そして広く支援を求める宣伝活動と、考えつく手段を全てとったことが、最後の和解を導いたのだと思います。そして、このような行為を可能にした、労働組合(それは当該だけでなく、様々な共同行動を行った争議団などをはじめとする皆様)の力、元をたどると、労組員らが残業代不払いに対し、労働組合を結成し団結したことが、労働者軽視の甚だしい理事長をはじめとする生協経営陣から和解を引き出せたのだと思います。

7 今後の課題と労組に対する更なる応援のお願い
しかし、本件では「現職復帰」は叶いませんでした。生協側は、生協商品配送の仕事を外注化したとして、労組員が求めた配送での職場復帰を認めませんでした。今後の団体交渉にかかってきますが、労組嫌悪をあらわにした、理事長をはじめとする生協経営陣の過去の言動を考えると、紆余曲折があることが予想されます。訴訟は和解という一定の解決を見ましたが、オレンジコープの職場に再びたった労組の旗が風に乗りはためくよう、今後も皆様の応援をいただけるようお願いいたします。

(弁護団は、鎌田幸夫、山﨑国満、谷真介、南部秀一郎、宮本亜紀)

改正育休法の趣旨潜脱のマタハラ進化系に立ち向かう― 京阪ステーションマネジメント配転命令無効確認仮処分申立事件 ―

弁護士 西 川 大 史

1 はじめに
2015年2月17日、夜間などの不規則勤務を含む業務への配転命令を受けて育児と両立できなくなり、休職に追い込まれた女性(京子さん:仮名)が、京阪電鉄の子会社である京阪ステーションマネジメントに対し、配転命令の無効確認を求める仮処分を大阪地裁に申し立てました。

2 事案の概要
京子さんは夫婦共働きのため、5歳の長女と3歳の長男を自宅近くの保育園に預けています。彼女は、2011年に二人目の子ども(長男)を妊娠出産し、産前産後休業・育児休職を取得し、2012年5月に職場復帰しました。復帰後は、育児短時間勤務として、本社で事務職などの勤務に従事していました。
ところが、会社は、2014年10月に、長男が3歳を迎えたことに伴い、京子さんの育児短時間勤務を終了させて、事務職から駅改札業務への配転を命じました。配転後の勤務時間は、午前8時から午後9時45分までのうち8時間勤務という不規則勤務でした。現在子どもらが通う保育園の開所時間は午前7時から午後7時までのため、これでは子どもらの保育園への送迎ができなくなります。京子さんは、夫婦で時間を調整して、なんとか送迎ができないか検討しましたが、夫も早朝勤務や深夜勤務があり、保育園への送迎ができない日が出てきます。その他に、子どもらの保育園への送り迎えを頼める親族や親戚縁者も近くにいません。
そこで、京子さんは、会社に対して、勤務時間の配慮や配転命令の撤回を求めましたが、会社の回答は、「あなただけを特別扱いできない」との一点張りです。しかも、会社は、「自分は両親の介護のために妻に会社辞めさせました」など退職をほのめかすなど、彼女の申し出に対しては、何らの配慮もしません。そのため、現在も休職扱いを余儀なくされています。

3 配転命令の無効確認を求めて
京子さんは、会社側が子育て中の彼女の勤務時間帯について一切の配慮をしないことから、配転命令の無効確認を求めて仮処分申立に踏み切りました。
配転命令を受け入れることになれば、保育園の開所時間との関係で、子どもらの保育園への送り迎えができず、育児と労働の両立が不可能となり、退職することでしかその不利益を回避できなくなります。
育児介護休業法第24条は、小学校就学の始期に達するまでの子どもを養育する労働者に関する措置を講じるよう努めなければならないと規定しています。また、育児介護休業法第  条は、配転について、子の養育状況に対する配慮を事業主の義務としています。しかし、会社は京子さんに対する配慮を一切しておらず、その努力すら怠っているのです。彼女からの申し出に対して、特別扱いできないとの一点張りで、既に配転命令が所与のものとして押し付けるような態度に終始しています。
一方、親会社の京阪グループでは、「ワーク・ライフ・バランスへの取り組み」として、育児に取り組む従業員への配慮を企業理念として全面的に打ち出しており、厚生労働省の次世代認証マーク「くるみん」まで取得しています。今回の京子さんへの会社の対応は、まさに京阪グループの企業理念に反するものです。

4 本申立の意義
本件配転命令はマタハラの進化系といえるでしょう。小学校就学前の子どもを育てる労働者にとって、勤務時間に配慮した労働形態を求めることは決してわがままではなく、当然の権利主張です。
京子さんは、「妊娠、出産、子育てしながら、長く働き続けられる社会になってほしい」と訴えます。この裁判が、働く女性の権利の実現、育児と労働の両立の実現の一助にできればと思っています。

(代理人は、有村とく子弁護士と当職です。)

ストップ! エグゼンプション 2.25緊急集会

弁護士 須 井 康 雄

 2015年2月25日、エル ・おおさかで残業代ゼロ法案(ホワイトカラーエグゼンプション)に反対する集会が開かれ、100名以上が参加した。
集会では、毎日新聞記者の東海林智さんから、異常な長時間労働に対する本格的規制がないこと、労働者が所得によって分断されること、現在は所得基準が1075万円とされているが、小さく生んで大きく育てるという考えで、どんどん所得基準が引き下げられる危険が大きいことといった問題点が紹介された。
続いて、大阪大学人間科学研究科のスコット・ノースさんから、アメリカでのホワイトカラーエグゼンプションの導入による影響が紹介された。アメリカの例から学ぶ点として、①残業代支払義務の例外(エグゼンプション)の労働者が必ず増加し、②法令にある労働状況や職種の定義が時代に合わなくなり、③法令が想定していなかった職種が次々と現れることにより、紛争や混乱が生じるとのことであった。結局、企業の平均利潤率だけが6%から12%に上がったとのこと。
その後、過労死で亡くなられた方のご遺族や労働組合、NPOの方によるリレートークがあった。そのなかで、損害保険業界で①「みなし労働時間制」と②「私的時間」の除外ということが広がっているという話があった。私的時間とは、あらかじめ労働者が勤務時間中にタバコなどで私的に過ごす時間を申告させ、労働時間から控除する制度とのことである。初期設定が  分とのことで、トイレの時間まで入れることになっているという話があった。ホワイトカラーエグゼンプションでは、「労働者が創造的な能力を発揮しながら効率的に働くことができるように」などとうたわれているが、トイレの所要時間まで申告するような働き方で、創造的な能力など発揮できるのだろうか!?
個人的な話であるが、担当したある過労死の事件で、和解の席上で、会社側役員から謝罪の言葉が述べられることがあった。「最低賃金法を守らずに申し訳ありませんでした」「残業時間の規制を守らずに申し訳ありませんでした」。次々と繰り出される言葉は、いずれも余りに基本的なルールに関するものだった。基本的なルールを守っていれば、その方が亡くなることはなかったのだと、強く思った。
何としてでも残業代ゼロ法案の成立を阻止する必要がある。残業代がもらえなくなるのであれば、日を決めて、全国的に残業を一斉に拒否する取り組みをしてはどうか。労働者は、残業をしなくても、仕事が回っていくことに気付くかもしれない。使用者は、残業代をきちんと支払ってでも、仕事をしてもらうことの価値に気付くかもしれない。

「どこまでできるの? 選挙活動と住民投票」――街宣懇学習交流会のご報告

弁護士 西 川 大 史

1 はじめに
2015年2月26日、街宣懇(街頭宣伝の自由確立をめざす各界懇談会)では、「選挙活動の自由を守る共同センター」との共催で、「どこまでできるの? 選挙活動と住民投票」と題した学習交流会を開催しました。参加者は  名です。

2 自由にできる選挙活動!!

まず、「自由にできる選挙活動 第4版」(自由法曹団京都支部編・かもがわ出版)の執筆者の一人である京都法律事務所の福山和人弁護士より、「公選法の下でできることとネット選挙」と題して、公職選挙法についての詳細な解説をいただきました。
福山弁護士からは、講演の中で、「オートロック式共用玄関型マンションの集合ポストにビラ等を配布することができるのか」、「フェイスブックで自由に候補者への投票の呼びかけをすることができるのか」、「ある候補者の支持を決定した労働組合が、組織内部に配布する機関誌に同候補者への支持を求める記事を掲載することができるのか」など、具体例を挙げての「公職選挙法○×クイズ」が出題され、参加者は福山弁護士の話に聞き入りました。なお、これらの答えは、みなさんお分かりですよね。もし、答えに悩まれた方がいらっしゃいましたら・・・、「自由にできる選挙活動 第4版」に掲載されていますので、是非ご購入下さい。
福山弁護士は、公職選挙法や弾圧とどのように闘うかについて、解釈と運用はその時々の状況で変化するため、情勢をよく掴むことが大切であり、「絶対に大丈夫」も「絶対にダメ」もなく、取締りの状況や他党派の状況を見極め、英知を結集した創意工夫を凝らした活動が重要であると訴えられました。

3 「都」構想住民投票-反対運動は自由に!!
5月17日に実施が予定されている大阪「都」構想の住民投票。反対運動はどこまでできるのかについては、大阪市民の最大の関心事であります。この点について、楠晋一弁護士から非常に分かりやすい報告がなされました。
住民投票は、「大都市地域における特別区の設置に関する法律」に基づいて行われますが、同法は、住民投票運動について公選法を準用しています。しかし、同法の施行令では、公選法のほとんどの制約を適用除外としているため、住民投票運動はほとんど自由であり、公務員や教育者の地位利用による「都」構想反対運動、未成年者の運動、戸別訪問、署名活動、その他非常識な運動のみが例外的に制限されるのみです。
そして、楠弁護士からは、一人ひとりの住民、団体が「反対」派の候補者であり、堂々と「反対」と書くよう訴えましょうと、心強い説明がありました。

4 一斉地方選挙・「都」構想住民投票に向けて

今年の4月には一斉地方選挙、5月には住民投票が予定されています。福山弁護士、楠弁護士の講演・報告は、いずれも私たち市民が委縮することなく運動を繰り広げるためのバイブルとなるようなお話でした。参加者が、今後の運動に力強い確信と大きな希望を持つことができた、大変有意義な学習交流会でありました。

書籍紹介 伍賀一道 著『「非正規大国」日本の雇用と労働』

評者:働き方ASU―NET副代表理事 川 西 玲 子

 本書は昨年10月末に出版されて早くも2刷となっていることからも、まさに待たれていた書であることが覗える。私自身も非正規問題を周辺問題でなく主人公として解明してくれるこのような本を待っていた。派遣村から6年を経て非正規雇用のいまはどうなっているのか。冒頭5人の非正規労働者の実態を示しながら、非正規雇用と一口に言ってもその実像はいかに多様な状況にあるのかをまず明らかにしている。その上で過去30年間の雇用と働き方・働かせ方の実態を踏まえて、その問題点と改革すべき課題を示している。

第1章では日本が「非正規大国」になる過程で、雇用と働き方・働かせ方にどのような変化があり、どのような問題が起こったのか、伍賀氏作成のいつものわかりやすい関係図で明快に全体の姿を写し出している。第2章では雇用形態の変化と非正規雇用の働き方のリスクについて解明している。就業者と失業者の中間的存在としての「半失業」の矛盾に満ちた存在を、マルクスの時代には見られなかった新たなタイプの「相対的過剰人口」であるとしている。第3章では非正規の中でも最も問題を抱える間接雇用に焦点を当て、その構造を原理的に考察している。そして多国籍企業や金融資本が中心の現代資本主義システムのもとでは、もはや労働者に安定した雇用を提供する力を失い、半失業でしか雇用を用意できなくなっている。しかもこの「半失業」の人々を利潤確保の手段として利用し、さらに政府は構造改革や規制緩和で後押ししてきた、とするその構造解説は大変わかりやすい。第5章では、非正規雇用の戦後史をたどりながら、その歴史的変遷と今日の要因を探り、7・8章では小泉政権と第1次、第2次安倍政権の構造改革が雇用の劣化と働き方の貧困をより促進し、デフレからの脱却を困難にし、持続可能な社会を損なうリスクがあることを指摘している。そして、終章ではどのようにして現状を転換するのか、そのポイントはどこにあるのかとして、①ディーセントワーク、②労働基準の明確化、③雇用を増やす政策、④失業時の生活保障の4つの項目を上げ具体的に提起している。詳細な現状分析は打開する方策を考えるためにこそあるとする氏の姿勢が終章に熱く込められていると感じた。

本書の特徴は伍賀氏のこれまでの緻密なデーターを積み上げて検証していく専門書的な著作とは趣を異にして、簡潔かつ分かりやすく各章がまとめられている。問題点を一目瞭然に検証しているグラフや表の文字も大きく、私のような年齢・不勉強でも大変読みやすく、また構成も理解しやすいように工夫されていてありがたかった。労働者・労働組合の方にも是非お勧めしたい。
ASU―NETでは昨年から本書を5回にわたって森岡ゼミで取り上げて学習してきたが、最終回には伍賀氏も参加して下さり、学者・研究者の参加も多く、時間を大幅に超過する熱心な議論が行われた。改めて“非正規大国日本“を解明し全力で取り組むべき課題となっていることを実感した。

発行 新日本出版社
定価 2700円+税