民主法律時報

2015年2月号

2015年権利討論集会開催

事務局長・弁護士 中 西   基

 2015年2月7日(土)に2015年権利討論集会を開催し、235名の皆様にご参加いただきました。
全体会の記念講演では、中島岳志さん(北海道大学准教授)から、『橋下維新政治はなぜ失敗するのか』と題して、ご講演いただきました。中島岳志さんは、若手の論客としてマスコミに登場することも多く、かねてより橋下氏の政治手法には警鐘を鳴らしてこられた方です(橋下氏からツイッターで「バカ学者」と名指しされたこともあります)。
講演では、まず、再分配をめぐる軸(セーフティーネット強化VS自己責任)と、価値をめぐる軸(リベラルVSパターナル)とで、今の日本の政治状況をわかりやすく分類したうえで、昨年12月の衆院総選挙によって、自民党と維新の大阪グループという、ネオコン組だけで3分の2の議席が占められたことが、本来対極にあるはずの公明党を、ネオコン側にすり寄らせることとなり、「大阪都構想」問題における公明の寝返りにつながったと分析されました。また、保守とは、人間・人間社会が永遠に不完全であることを冷静に見つめた上で、個人の理性を超えた集団的経験知、良識、伝統、慣習を重視する立場であり、復古・反動・進歩のいずれにも立たない、漸進主義であると解説され、橋下氏のグレートリセット論を強く批判されました。また、保守は、他者との合意形成による秩序の形勢を重視し、熱狂を嫌い、議論を通じて、葛藤し合う諸価値のあいだの平衡を追及するものだと解説され、その観点からも、選挙で多数を獲得すれば何でも許されるという橋下流の政治を強く批判されました。参加者アンケートでも、中島さんのご講演は大変好評でした。5月頃発行予定の『民主法律』権利討論集会報告号に講演録を掲載予定です。
全体会の特別報告として、以下の6つの報告がなされました。
①国政報告(清水ただしさん・衆議院議員)、②泉南アスベスト国賠訴訟(鎌田幸夫弁護士、原告)、③生活保護基準切り下げ違憲訴訟(喜田崇之弁護士)、④過労死防止法(寺西笑子さん・過労死を考える家族の会、⑤労働時間法制(中西基弁護士)、⑥「大阪都構想」(原野早知子弁護士)
また、以下の4本の集会決議を満場一致で採択しました。決議は各執行先に送付して執行するとともに、民法協ホームページにて公表しています。
①「労基法の時間規制を外す、残業ただ働きを許さない決議」、②「労働者派遣法「改正」法案に反対する決議」、③「戦争する国づくり・憲法を破壊する法制化を許さない決議」、④「民主主義と地方自治・住民自治のルールを無視する「大阪都構想」による大阪市解体に断固反対する決議」
午後からの分科会では、7つの分科会を持ち、それぞれ熱心な討論が繰り広げられました。
また、夕方からの懇親会にも  名の方々にご参加いただき、互いに交流を深めることができました。
民法協として年に一度の大規模な集会でしたが、実行委員や事務局の皆さん、ご参加いただいた多くの方々のご協力のもと、無事に盛会に終えることができました。ご協力いただいた皆様に感謝申し上げます。
権利討論集会で学んだこと、感じたこと、人と人とのつながりを、今後の諸活動に活かしていきましょう!

 

分科会報告

第1分科会 本当に闘っているか? 裁判闘争(報告:弁護士 須井 康雄)

第1分科会では、毎年、裁判や府労委での闘い方をテーマとしています。今年は、泉南アスベスト訴訟での闘いを踏まえた問題提起がありました。訴訟活動や運動の分かりやすいフレーズを掲げたことや、攻めの姿勢、たとえば国の控訴理由書に対する反論を控訴審の第1回期日の1か月前に提出し、裁判官に面談したことなどが紹介されました。
続いて、オレンジコープ事件の報告があり、不当労働行為救済申立と並行して行ったことがよかったという話がありました。また、労働審判により復職し、職場で労働組合を結成した方の話もありました。自分が労働審判で争うことになったことを契機に、会社からの攻撃は自分が引き受けたらよいと思い組合を結成したこと、組合結成後の会社からの攻撃を想定し、耐えられる人を役員にしたことが紹介されました。
JAL裁判の当事者の方からは、ビラまきや全国キャラバンを行うなかで、自分たちの主張に耳を傾けてくれる人が増え、2日間で署名が160筆も集まるようになったことが紹介されました。
大阪市労組からは、組合事務所を明け渡すべきかどうか非常に悩んでいると、支援者から「絶対に明け渡したらあかん、俺らが泊まりに行く」と言われて勇気づけられ、明渡しを唯一拒否し、そのことが全体的な勝利につながったと思うという発言がありました。
後半は、争議の報告と府労委の労働者側委員と労働審判員の方からお話をいただきました。「分かるだろう」ではなく「分かってもらう」という姿勢で臨むことが必要であること、有利な証拠が埋もれることのないよう、簡潔な書面が必要だとの話がありました。
弁護士との関係では、とにかく事実を詳細に伝えて、弁護士に仕事のイメージを持ってもらうことが重要との話が出ました。
今回、当事者が支援者の言動で励まされた話を聞き、当事者の結束という面でも支援の重要性を認識しました。また、弁護士としては、事実と証拠によって裁判官の心を動かすことの重要性を再認識しました。
参加者は42名でした。

第2分科会 ハケンハキケン、もはやイケン!? 派遣法の改悪を許すな! すべての労働者に人間 としての尊厳を!(報告:弁護士 古本 剛之)

第2分科会では、派遣労働、偽装請負等をテーマに28 名が参加し、議論を交わしました。
前半は事例報告で、業務委託に偽装した労働者派遣で期間制限潜脱のあった堺市救急事業団の事件、偽装請負から直用されたものの2年半で雇い止めにされたダイキン工業事件、派遣の期間制限を潜脱していた阪神高速パトロール事件が報告されました。
また、JMIU日立建機ティエラ支部の取り組みについての報告がありました。これは、非正規実態調査の中で知ることのできたもので、組合の要求により、毎年継続的に派遣社員を契約社員に、さらに契約社員を正社員化した事例です。
後半には、派遣法の改正問題を扱いました。まずは、2015年10月1日の施行が決まっている改正で、違法派遣(期間制限違反など)で会社に故意・過失がある場合に会社が直接雇用申し入れをしたものとみなす規定についての報告と議論がありました。「最近数年以内に敗訴した  件の事例に『この規定があった場合どうなるか』と仮定してみた場合、  件が勝訴になる」というシミュレーション結果もあり、労働者側に大いに武器となる規定です。ただし、会社側がこの規定の危険を察知して、施行の10月1日前に派遣労働者等を解雇する危険もあり、注意が喚起されました。
また、昨年2度廃案になったが、近く提出が予定される派遣法「改正」案について報告と議論がなされました。派遣期間制限を骨抜きにし、永続的な派遣利用を可能にしてしまう悪法です。10月1日施行の直用申込みみなし規定も意味のないものにされてしまうもので「絶対に通してはいけないものだ」と再認識しました。
派遣問題については、組合においても、派遣労働者をどう組織するか、その地位を守るために会社とどう交渉していくか、必ずしも十分な運動ができているとは言えず、課題も残りました。

第3分科会 非正規雇用 労働契約法改正で労働条件は改善されるか(報告:大阪労連 嘉満 智子)

最初に、労働契約法改正後の均等待遇めざす取り組みについて、通信労組から交通費支給を勝ち取ったことが報告された。法的には、有期雇用だからという理由で差別してはならないとしているが、使用者が自ら改善することはなく、労働組合の要求によって実現している。
また、公務職場からは、非正規労働者の空白の一日問題で、これまで雇用中断の度に健康保険証を消失させていたが、総務省から空白期間が8日以内であれば継続が可能であると通達を出させ、自治体との交渉で実現させていることが報告された。
有期から無期への転換、 均等待遇実現の闘いは、これまでの経験からも労働契約法の趣旨を生かし、職場・労働組合のたたかいによると実感した。
そんな中で、正職員と同じ仕事をしていても、扶養手当や年末・年始手当もないなど非正規だからと不当な差別受け、その差別是正を求め争われる郵政産業労働者ユニオン  条裁判が注目される。
二つめのテーマとして、「限定正社員制度」について討論を行った。郵政職場から「勤務地限定の新一般職という新制度が導入されている。契約職員から正規になるには、新一般職にならなくてはいけない。処遇は、非正規と正規の間で、やはり同じ仕事をしていても正規より低い。非正規の処遇が引き上がることだけを見ればいいが、正職員の引き下げの材料に使われる可能性もある。」と報告された。勤務限定や職務限定だと職場や仕事がなくなった場合に解雇されやすくなるのではと懸念されているが、厚生労働省の調査では、直ちに解雇という実態にはないと報告されている。
最初に限定正社員制度導入賛成は、0人だったが、非正規労働者の処遇改善や、正規職員で働きつづけられない人がすぐに非正規になるのではなく限定正社員として働き続けることができればいいのではとの意見も出た。いずれにしても、限定正社員制度の狙いを見抜き、均等待遇のたたかいと合わせた運動が求められるとの結論に至った。
分科会参加者は29名。

第4分科会 ついにできたぞ過労死防止法 活用方法大検討会(報告:弁護士 和田 香)

第4分科会は、「ついにできたぞ過労死防止法 活用方法大検討会」と題し、過労死等防止対策推進法(以下、「過労死防止法」といいます。)の成立と今後の活用方法について検討しました。
まずは第1部として、過労死等防止対策推進全国センター事務局長の岩城穣弁護士、全国過労死家族の会代表世話人の寺西笑子さん、過労死防止大阪センター結成準備会事務局長の柏原英人さんから、過労死防止法を成立させた熱い思いと、今後厚生労働省など国の機関と連携して過労死をなくす取り組みを一層強化することなどをお話頂きました。
そして、第2部として、ブラック企業対策弁護団副事務局長である嶋﨑量弁護士をお招きして、『いのちと健康から見たブラック企業の実態・残業代ゼロ制度と過労死防止法』と題し講演を頂きました。講演では、労基法の残業代制度の第一の目的は、本来長時間労働の抑止であるところ、政府の労働時間法制の改正案の発想は「残業代の不払いをなくす」ことであり、そのための手段として「取り締まり強化ではなく、犯罪の合法化」を進めるものであるということを分かりやすくお話し頂きました。「残業代0法案」「時間ではなく成果で評価される働き方」がその巧妙な呼称によって、政府の改正案が現実に残業代の支払いを受けていないブラック企業勤務の若者や同じ仕事をしても正社員より著しく低い賃金しか得られない非正規社員にとって、成果を上げれば賃金が上がるのではないかという希望となり、導入に反対する声につながりにくくなっているということは、過労死をなくす取り組みにとって憂慮すべきことです。
そのことは、森岡孝二関西大学名誉教授による講演『ホワイトカラー・エグゼンプションと過労死防止法』においても一層明らかにされました。
自由討論では、参加者から過労死をなくすための取り組みとして、職場において残業の実態調査を行ったことの報告がなされたり、在職死亡の原因の調査を行うことなどの提案がなされるなど、過労死防止法が施行されたことを受けて新たな取り組みに向けた有意義な議論ができました。22名が参加しました。

第5分科会 今こそ自治体と公務労働の価値を問い直す!(報告:弁護士 菅野 園子)

第5分科会は「今こそ自治体と公務労働の価値を問い直す!」という表題で24名が参加し開催しました。最初に森裕之・立命館大学教授に「橋下・維新の府市政を総括する」という表題で基調講演を頂きました。いわゆる「大阪都構想」について、結局は、広域行政機能を担ってきた大阪市を、その権限と財源を大阪府に差し出し、きわめて不完全な「特別地方自治体」に解体し、一方で特別区の担えない水道や国保、福祉等の重要な行政機能については100以上の一部事務組合が担うこと、その結果二重行政解消とは真っ赤な嘘で有り、不効率で住民の意思がより反映しづらいわけのわからない組織になること、来たるべき住民投票については、「大阪都構想」の住民投票の争点は大阪都構想の是非ではなく、これまでの橋下氏のやり方に対する不信任投票であるとして反対派は激闘に持ち込まなければならないことなどお話頂きました。議会で議論精査なく住民投票に持ち込むやり方の問題については午前の中島先生の講演ともリンクしてより深められました。
その後、自治体労働組合を中心として、大阪府、大阪市、泉佐野、吹田、枚方、守口などの労働組合より各現場の状況を報告いただきました。その共通点としては、いずれも、程度の差こそあれ、「勤務条件の引き下げ」に対する対応、「組合事務所、組合活動に対する攻撃」に対する対応を迫られていること、特に、仕事が奪われる、民営化といった労働者にとってきわめて重大な事項、組合事務所の問題でも、「管理運営事項」といわれ交渉の余地がなく、当局側が地公法上の労使交渉を組合の要望をきくという程度の認識しか有していないため、労使交渉が形骸化し、それを克服するためにどうするかということを議論しました。また、いずれの組合も、地域の中小企業や住民の要望はなにか積極的に外部に出ていくこと、また、住民の要求実現のたたかいに一緒に取り組むことを位置づけ住民協働に取り組もうとしていること、具体的には、市立住吉病院の廃止延期、大阪市保育所幼稚園の民営化、職員の給与削減問題、枚方の中小企業アンケートの取り組みなどが紹介されました。公務労働者は住民の声を身近に聞いているという強み、そしてその認識を住民に持ってもらうことの苦心や意義を交流できた有意義な討論でした。

第6分科会 語ろう憲法、伝えよう憲法(報告:弁護士 小林 徹也)

1 分科会の趣旨――若い世代との意見交換
憲法にどのように関心を持ってもらうか、私たちの考えをどのように広げていくか、は私たち護憲派の運動体の大きな課題でしたが、他方で、「身内」以外の方や若い世代と意見交換をする機会は少なかったと思います。そこで、今回は思い切って、まさにこれからの日本を担う高校生6名に来ていただきその意見をお聞きしました。
2 真摯な姿勢に基づく「集団的自 衛権行使容認」「9条改憲」論者が 過半数
様々な問題について意見交換をしましたが、いくつかの例を挙げれば、彼らはいずれも、「悲惨な戦争は回避すべき」という点では一致していましたが、他方で、戦争を回避する手段として「抑止力」を挙げ、そのためには集団的自衛権は容認されるべきであり、9条を改正すべきとの意見を持つ方が4名でした。
このような質問を含め、高校生以外の参加者からの高校生に対する質問がひっきりなしで、すべてをとりあげるには到底時間が足りませんでした。
3 今後も継続した取り組みを
参加した高校生たちは皆、真摯にこれからの日本を考えており、決して平和を軽んじているわけではありません。これからの日本を真面目に考えている高校生の相当数を占める意見といえるのではないでしょうか。ある高校生は、「自分のような改憲派が、戦争容認論者と見られることに大きな違和感がある」と述べられていました。他方で、新聞やマスコミの表面的な報道が与えている影響も大きいと思いました。
また、分科会後、彼ら全員が、今回の機会が大変貴重なものであり機会があれば是非また参加して、もっと意見を述べたいし他の人の様々な意見を聞いてみたい、また、自分たちの意見に対する反論も聞きたかった、などの感想を述べておられました。
彼らのように、今後の日本のことを真摯に考えている積極的な若い世代がいるにもかかわらず、それらの方との接触の機会をあまり持とうとしなかった私たちの運動にも再検討の余地があるように思うとともに、今後も継続的な意見交換が不可欠であることを認識させられた重要な機会でした。

第7分科会 生活問題から労働問題へ(報告:弁護士 喜田 崇之)

1 はじめに
第7分科会は、「生活問題から労働問題へ」と題し、生活保護をはじめとする社会保障問題も、労働組合の課題として、民法協全体で取り組むべきではないかという大きな問題意識のもと開催された。参加者は25名であった。
2 分科会の内容
分科会は、大阪市立大学の木下秀雄教授、弁護士喜田、大生連大口氏、関西合同労組米村氏の4名の報告と質疑・応答を中心に進めていった。
木下秀雄教授から、現在の生活保護をめぐる状況や、労働問題と生活問題が労働組合にとっての課題とされるべきこと、労働組合が取り組むべき社会保障の課題等を提案された。
次に、弁護士喜田から、昨年12月19日に提訴された生活保護引き下げ違憲訴訟の内容・争点、各地の状況等を報告・説明がなされた。
続いて、大生連の大口氏から、昨年7月に施行された改正生活保護法の内容について解説がなされた。
休憩をはさんだ後、米村氏から、派遣村で生活保護が人々の希望になった体験等から、以降、労働組合である自身が生活保護問題に積極的に取り組んでいるという話や、大阪市生活保護行政問題全国調査団の具体的な取組内容、浮彫となった問題点等が報告された。
その他、参加者で様々な意見交換等を行った。日常的に労働相談だけでなく生活相談等を行っている地域労組の参加者から、生活保護問題に取り組むことの重要性が説かれたり、現職のケースワーカーの方や、元ケースワーカーの方等から、ケースワーカーの過酷な勤務の実態(厚生労働省はケースワーカー1人に対し、80件をめやすとしているのに、福祉課に来て一年目の方がすでにその倍近くを担当させられ、日々残業に追いかけられていること等)等が報告された。
また、年金者組合の方から、国民年金及び厚生年金の引き下げ等が実施されており、生活保護費の引き下げだけではない、社会保障全体の引き下げ全体に対し、共闘して取り組まなければならないとの意見もあった。
3 まとめ
第7分科会は、開催前、どれだけの参加者が集まるのかいささか不安もあったが、ふたを開けてみれば、様々な方にご参加頂き、多くの方と闊達な意見交換、情報交換をし、問題意識を共有することができ、大成功だったと思う。

泉佐野市事件で勝利命令――千代松市長の不誠実団交・組合事務所使用料徴収は不当労働行為

弁護士 増 田   尚

 大阪府労働委員会は、1月15日、泉佐野市職労及び同現業支部の申立てについて、組合の主張する不当労働行為をすべて認め、誓約文の手交や、組合事務所の使用料に関する団体交渉につき応じるよう命じる救済命令を交付しました。
千代松市長は、就任後、給与や勤務条件を一方的に切り下げ、労使交渉を形骸化して、職員団体・労働組合を軽視し続けてきました。
①市当局は、2012年11月~12月に、職員基本条例の制定や、特殊勤務手当の廃止・時間外勤務手当の見直し・退職手当の削減等の条例改正を提案し、組合との団体交渉を「公開」することを条件としたり、一方的に実施日時を指定したりと、誠実に交渉せず、合意形成を図ろうとしないまま、議会に上程し、可決成立させて、職員の勤務条件を大幅に引き下げました。
②また、2013年3月には、1977年ころから無償で提供されてきた市役所別館の組合事務所について、突如として、組合からの使用料の減免申請を承認せず、1年ごとに2割ずつ減免率を引き上げることとし(最終的には年12万2500円)、減免申請不承認等についての組合からの団体交渉申入れにも、管理運営事項(地方公務員法55条3項)であるとして、これを拒否しました。
③さらに、2013年5月には、給料表の是正(引き下げ)や夏期休暇の日数削減について提案し、組合との団体交渉において、その理由をまともに説明しないまま、一方的に打ち切って、給与を削減する条例案を議会に上程するなどしました。
組合は、2013年5月及び10月に、これらの市当局の対応が不当労働行為であるとして、団体交渉に誠実に応じることや、組合事務所の使用料の徴求の禁止、謝罪文の掲示を命じるよう求めて、大阪府労働委員会に救済を申し立てました。
命令は、職員の給与や勤務条件に多大な影響を与える条例案であるのに、きわめて短期間の団体交渉しか予定しておらず、十分な資料を提供するなどして説明しないまま、議会に上程したり、交渉を打ち切ったのは、不誠実であるとともに、組合を軽視する支配介入に該当すると指摘しました。また、組合事務所の使用料減免を不承認としたのは、使用料を徴収にかかる方針変更について必要な説明のないまま一方的に負担を強いたものであり支配介入に該当し、かつ、管理運営事項であるとして団体交渉を拒否したことについても、団体的労使関係事項は、管理運営事項そのものでない限り、団交事項であるとして、正当な理由がないと判断しました。
千代松市長は、その後も、チェック・オフに手数料負担を要求し、組合が応じないことを理由にチェック・オフを中止したり、組合事務所の使用許可についても、使用料を支払わなければ取り消すとの条件を付加するなどの行為を繰り返し、組合の活動に打撃を与えようとしています。これらの不当労働行為についても、組合は、救済命令を申し立てるとともに、実効確保の措置勧告を求め、府労委は、市に対し不当労働行為を拡大しないよう口頭で要望しました。さらに、2014年12月にも、さらに5年間職員の給与のカット(4~9%)などの勤務条件の引き下げを提案し、組合との合意形成を図らないまま、議会に上程して可決成立させたため、救済命令を申し立てました。このため、同一の地方公共団体で6件もの救済命令申立事件が係属する異常な事態となっています。
市当局は、不当にも、本命令を不服として、再審査申立てを行いました。しかし、本命令は、千代松市長の市政運営に厳しく批判したものであり、千代松市長がなすべきなのは、命令を受け入れて、労使関係の正常化に努めることです。
この間、橋下・大阪市長をはじめとして、同様に強権的な手法をとる首長に対しては、大阪府労働委員会はその無法を厳しく戒めています。中労委でも、救済命令を維持するとともに、他の事件についても必ず勝利命令を得て、労使関係の正常化を果たすため、組合・弁護団一体となって、引き続き奮闘します。

(弁護団は、大江洋一、半田みどり、谷真介及び当職)

日本航空の整理解雇無効!

大阪JAL不当解雇撤回訴訟弁護団


2010年の大晦日に、パイロット・客室乗務員165名の首切りを行った日本航空の整理解雇について、本年1月28日、大阪地方裁判所民事第5部合議係(中垣内健治裁判長)は、解雇を無効として原告の客室乗務員Aさんの労働契約上の地位を認める判決を言い渡しました。

1 解雇の経緯
経営破綻に陥った日本航空は2010年1月(以下、同年の出来事については年の記載を省略)に会社更生法の申請をしました。8月31日に提出された更生計画案には「JALグループの人員削減をより推進し、平成21年度末の4万8714人から平成22年度末には約3万2600人とする」とされていました(整理解雇については触れるところなし)。
その後、日本航空の業績はV字回復し、他面で人員削減も進んでむしろ人員不足に陥っていたにもかかわらず、冒頭に記載した大晦日の解雇が強行されたのです。
本件解雇の必要性がなかったことについては、稲盛会長(当時)自身が「その160名を残すことが、じゃあ経営上不可能かというとそうではないのはもう皆さんもお分かりになると思います、私もそう思います」と発言していることからも明らかです。

2 今回の判決
本件判決は人選基準のうち「復帰日基準」と呼ばれる点に着目して、解雇の無効を認めたものです。
今回の整理解雇にあたっては、会社側は当初(9月27日)、大要2つの要件を柱とする人選基準案を示しました。その1つは病欠基準であり、もう1つは年齢基準です。
病欠基準とは「2010年8月31日時点の休職者」「2010年度に病気欠勤日数が41日以上である者」などの基準にあてはまる者を整理解雇の対象者にするというものであり、皮膚の疾患で欠勤していたAさんはこれに該当していました。
会社は病欠基準を設けた理由として「病気で欠勤したことのある者は、将来の貢献可能性が低いから」と説明していました。これに対して労働組合から「現時点で復職している者については将来の貢献可能性が低いとは言えない」という意見が出され、会社もこれを認めて、11月15日に修正した基準を提示しました。これは「9月27日の時点で乗務復帰していた者については(1定の別の要件を満たす場合)整理解雇の対象者とはしない」とするものです(復帰日基準)。
しかし、将来の貢献可能性というのであれば、9月28日以降に復帰していた者でも全く変わらずに貢献可能なはずです。Aさんは10月には症状が軽快し、復帰していたのですが、この不合理な復帰日基準によって、解雇の対象者に留め置かれていたのです。
今回の判決においては、復帰日基準の不合理性を認め、その余については判断するまでもなく整理解雇は無効であると判示しました。

3 裁判を振り返って
今回の裁判で特筆すべきは、仲間の支援の力です。
本件は労働組合の支援を受けずにたった1人で闘ったものですので、傍聴席がガラガラになってしまうのではないかという危惧がありました。しかし、弁護団の弁護士からの紹介で憲法ミュージカルの皆さん(出演者やスタッフ)と知り合いになれて、彼らは毎回、傍聴席を埋め尽くす応援をしてくださいました。これはAさんにとって大変心強い支援であり、裁判での勝因の1つだったと思います。

4 これからについて
なお、本件判決後、先行する東京での集団訴訟(2件)について、最高裁は上告棄却・上告不受理決定を下し、東京高裁における敗訴判決が確定しました。これは全くもって不当と言う他ありませんが、本件控訴審においては、争点設定・判断枠組みの相違を意識して、再度の勝利につなげて行きたいと考えています。
控訴審においても今回の画期的判決が維持され、原告のAさん(更には東京の仲間たち)が再び空を飛べる日の来ることを願ってやみません。

(弁護団は、坂田弁護団長、西、篠原、増田、平山、西川(研)、楠、西川(大)、本田、奥井の各弁護士)

真夜中のブラック企業ホットライン報告

弁護士 野 条 健 人

2015年1月16日(金)、民法協のブラック企業対策判例ゼミに参加する若手弁護士を中心にして、「真夜中のブラック企業ホットライン」を実施しました。
このホットラインは、「ブラック企業被害対策弁護団」が長時間労働を強いられている労働者が電話を掛けやすいように、夜中まで相談を受け付けるというもので、大阪でも19 時から夜中24 時までホットラインを実施しました。
あいにく告知不足もあってか、相談件数は1件しかありませんでしたが、この1件の相談は、典型的なブラック企業による被害を訴える内容でした。
その相談内容の概要は、以下のとおりです。
・「会社を辞めさせてくれない。」「社長から『君が退職するなら君のミス(相談者に身に覚えのない内容)による営業損益数百万円を支払ってもらう』と凄まれる。」
・「月約  時間程度の残業はあるが、残業代は勤続  年で一度も支払われたことがない。」それどころか「会社への不満を言うと同意なしに賃下げされた。」
・「待遇改善の上申をしたところ、会社から種々のパワハラを受け適応障害になった。」「診断書を持っていても辞めさせてくれない。」等々でした。
ブラック企業は法律遵守の姿勢すらなく、労働者を喰い潰すものであることをこの相談からあらためて実感しました。これらの相談を受けて、ホットラインの相談員と協力しあって正確に回答しました。
最後に、相談者が、「本当に安心しました。誰にも相談できなくて・・・」と声を振るわせていた様子に、権利救済にこぎつけたと思うよりも、改めて「人間らしい生活」さえ失わせているブラック企業の恐ろしさを実感しました。(その後、相談者は無事に会社を退職でき、会社を相手に裁判するか否かは検討中である。)
今回のホットラインの問題点は、相談が1件(相談時刻は  時台)しかなかったことです。今後は、どのようにしてホットラインの情報を届けていくかが課題です。ブラック企業の労働者は、長時間勤務で心身ともに疲弊していることから、日頃から新聞やテレビも見ずに生活を営んでいます。そのため、自らの権利救済に接する機会すらないのが現状です。今回の相談者も偶然フェイスブックでの告知を目にしたため、ホットラインに電話をかけてきたとのことでした。
今後もこのようなホットラインを定期的に実施して、ブラック企業の労働者の権利救済のため、引き続き、ブラック企業と闘っていきたいと思います。

アジア太平洋法律家会議(COLAPⅥ)に参加しませんか

弁護士 田 中   俊

 「COLAP」って聞いたことがないかもしれませんが、The Conference of Lawyers in Asia Pacificの略で、アジア太平洋地域で平和・人権に取り組んでいる法律家が一同に集まる国際会議のことです。
2015年6月25日~27日にネパールのカトマンズで第6回のCOLAPが開かれます。今まで、ニューデリー1988年、大阪・東京1993年、ハノイ2002年、ソウル2005年、マニラ2010年と開かれ、毎回200~300人のアジア太平洋地域の法律家が参加しています。大阪からも、ソウル(団長徳井義幸弁護士)では、約30名、マニラ(団長藤木邦顕弁護士)では、約20名の市民・弁護士が参加しました。
主催は90ヶ国以上の法律家団体からなるIADL(国際民主法律家協会)で、現地の法律家団体が会議の実行委員会を担当します。アジア各国で取り組まれている人権や平和の課題の活動の交流をして、アジア地域で共通に取り組む課題を見いだしていく国際会議です。今回のCOLAPの全体テーマは、「平和、民主主義、人権、及び経済的発展の権利への挑戦」です。参加費用は交通費を入れると20~30万円(会議、宿泊代込)かかりますが、このような会議は4~5年に一度の開催ですから、めったに参加する機会はありません。日本語への通訳もいますので、英語が分からなくても会議に参加できます。
各国の法律家の置かれている社会的条件はだいぶ違うのですが、いろいろな見方を知ることができ、また共通して取り組む課題も見出せるのが国際会議の醍醐味です。
たとえば、沖縄など米軍基地訴訟に取り組んでいる方は、フィリピン、韓国などの基地訴訟に取り組んでいる法律家と出会えますし、日本の集団的自衛権行使や憲法9条に対して、アジアの法律家がどのように見ているかなどの意見を交流すると、日本の置かれている状況を知ることができます。人権の問題では、各国で労働者の権利がどのような状況にあるかを知ることができますし、多国籍企業の活動の問題点や新自由主義が事件の背景として見いだされることもあります。環境問題や経済開発、原発の問題では、経済大国である日本とアジアの途上国の置かれている状況の違いや、連携して取り組むべき課題が見つかるかもしれません。
2010年にマニラで開かれた前回のCOLAPⅤでは、フィリピンとインドネシアの労働者から、日本や韓国に流出している移民の権利保護について、移民の送り手と受け手の法律家が連帯して取り組もうという提案がなされ、現在もフィリピンの法律家やNGOと継続した連帯活動をしています。
このような新鮮な驚きや感動を生む場がCOLAPです。会議後には、ヒマラヤを見渡すトレッキングツアーや仏教・ヒンズー教の施設なども見学できるオプションツアーもあります。

昨年12月に、関西準備会を開催し、講師としてNPO法人アジア女性自立プロジェクト(AWEP)理事の大森恵実さんを招いて、ネパールのカースト制度や人身売買の問題等についてお話を聴きました。3月4日には、午後6時30分から、エヴィス法律会計事務所にて、第1回関西実行委員会を行います。参加を希望する方、参加を決めかねている方、参加はしないが興味はある、という方は、是非お立ち寄り下さい。
参加を希望する方、ご質問のある方は、日本国際法律家協会関西支部弁護士田中俊(エヴィス法律会計事務所06-4707-8004 shun.t@evis-l-a.com)までご連絡をください。

(写真は、前回2010年マニラでのCOLAPⅤにて 日本からの参加者)