民主法律時報

2014年11月号

泉南アスベスト国賠訴訟最高裁判決――最高裁が国の責任を断罪

弁護士 鎌 田 幸 夫

1 最高裁での勝訴判決の言い渡し

 平成26年10月9日、最高裁判所第一小法廷(白木勇裁判長)は、大阪・泉南アスベスト国賠1陣訴訟(原告34人・被害者26人)及び2陣訴訟(原告55人・被害者33人)の上告審において、1陣訴訟、2陣訴訟とも国の責任を認める原告勝訴の判決を言い渡した。アスベスト被害について国の責任を問う訴訟で、最初に言い渡される最高裁判決であり、1陣高裁と2陣高裁で結論が正反対に分かれたため、最高裁がどのような判断を示すのか全国的に大きな注目を集めていた。本最高裁判決については、既にマスコミで大きく報道され論評されているところだか、ここでは、弁護団の立場から、判決の概要、意義、課題、今後の展望について簡単に述べたい。

2 本最高裁判決の内容

 本判決は、国の規制権限不行使について、①「労働大臣は、昭和33年5月26日には、旧労基法に基づく省令制定権限を行使して、罰則をもって石綿工場に局所排気装置を設置することを義務付けるべきであったのであり、旧特化則が制定された昭和46年4月28日まで、労働大臣が旧労基法に基づく上記省令制定権限を行使しなかったことは、旧労基法の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、著しく合理性を欠くものであって、国家賠償法1条1項の適用上違法である」と判断して、国の責任を認めた。
 他方、②「昭和49年9月30日以降、石綿の抑制濃度の規制値を昭和50年告示で5本/ccとし、産業衛生学会の勧告値である2本/ccとしなかったこと」、および、③「昭和47年9月30日以降、石綿工場における粉じん対策としては補助的手段に過ぎない防じんマスクの使用に関し、上記各義務(「防じんマスクの備え付け義務、労働者の使用義務、雇い入れ時、作業内容変更時の安全教育義務、じん肺法の安全教育義務」を指す・・筆者注)に加えて事業者に対して労働者に防じんマスクを使用させる義務及びその使用を徹底させるための石綿関連疾患に対応する安全教育実施を義務付けなかったこと」は、いずれも、著しく合理性を欠くとまでは認めらないとして、国賠法1条1項の違法性を否定した。
 そのため、1陣訴訟については被害者2名、2陣訴訟については被害者1名が、就労開始時期が昭和47年以降であったため、国の規制権限不行使の違法期間外であることを理由に責任が認められなかった。
また、2陣訴訟は確定したが、1陣訴訟は原告らの損害額の確定のために大阪高裁に差し戻された。

3  本最高裁判決の意義

 第1に、最高裁が、司法の最終判断としてアスベスト被害について国の責任があることを明確に認めたことである。平成17年のクボタショック後、国は、過去の対応を検証したが問題はなかったとし、平成18年の石綿救済法も国に責任があることを前提とした「補償法」ではなく「救済法」であった。最高裁が、1陣地裁、2陣地裁、同高裁に続き、アスベスト被害について国の法的な責任を認めたことは、国の過去の対応の検証や被害者救済及び将来の被害防止対策のあり方の見直しを迫る契機となる。

 第2に、産業発展でなく、国民の生命・健康を優先することを明確に認めたことである。本判決は、産業発展を優先するのか、国民の生命健康を第一とするのか、国のあり方を左右する問題について、最高裁が、憲法と法令に則り、国民の生命・健康こそが至高の価値であり、生命・健康被害を防止するために迅速かつ適切な規制権限を行使する義務があることを明確に認めたことである。最高裁判決は、1陣高裁判決を破棄し、筑豊じん肺最高裁判決(平成16年4月27日)を引用して「できる限り速やかに、技術の進歩や最新の医学的知見等に適合したものにすべく、適時にかつ適切に行使すべき」と判示した。本判決の判断枠組は、全国6カ所の建設アスベスト訴訟などアスベスト被害で国の責任を追及する訴訟にも当然適用され、勝訴に向けての追い風となる。
 さらには、最高裁の判断は、現在における原発再稼働など安全性軽視、産業、経済発展優先の国策に対する警鐘となるものといってよい。

 第3に、全国に広がったアスベスト被害救済の礎となることである。
 最高裁判決は、昭和33年3月末には石綿被害の知見が確立しており、国は昭和33年5月26日には、局所排気装置設置を義務づけるべきであったとして、昭和46年4月28日までの国の責任を認めた。医学的知見が確立してから対策の義務付けまでわずか2カ月弱の猶予期間しか認められていない。石綿紡織業以外の石綿取扱い業についても、被害が発生しているのに有効な粉じん対策を怠れば国に責任があることになる。石綿被害の原点である泉南地域の被害について国の責任が認められたことは、全国に広がったアスベスト被害の救済の礎となる。

 第4に、国賠訴訟の保護対象が広がったことである。
 最高裁は、2陣高裁判決が石綿工場の出入り業者について国賠法上の保護対象となるかについて「石綿工場の労働者の他、職務上、石綿工場に一定期間滞在することが必要であることにより工場の粉じん被害を受ける可能性のある者も保護対象に含まれる」とした判断について、国の上告受理申立を排除し、高裁判決を是認した。この判断は、旧労基法、安衛法を規制権限の根拠とする国賠訴訟の保護対象が、当該事業者と雇用関係にある労働者に限定されるものではないとするものであって、国のいう反射的利益論を打破し、国賠訴訟における救済対象を広げるものであるとともに、建設アスベスト訴訟の一人親方等の判断にも影響するものである。

 第5に、アスベスト被害について国に重い責任が認められたことである。
 最高裁は、2陣高裁判決が国の責任の範囲が全損害の2分の1であるとした判断について、国の上告受理申立を排除し、高裁の判決を是認した。筑豊じん肺事件の高裁判決の国の責任は、3分の1であり、アスベスト被害について国の責任の範囲を重くみる先例となろう。さらに、基準慰謝料額を筑豊じん肺訴訟の基準から各疾病において100万円増額し、慰謝料の減額事由を一切認めなかった2陣高裁判決の判断が確定した。

4 本判決の問題点

(1)   最高裁は、1陣訴訟の近隣ばく露者、家族ばく露者、および2陣訴訟の除斥期間の被害者について、7月17日の決定で上告を受理せず、あるいは排除して審理の対象としなかった。これは、泉南地域では零細の石綿紡織工場が集中立地し、事業者も労働者も家族も石綿粉じんにまみれて働き、工場外に石綿粉じんが大量に飛散していた実態を見ないものであって極めて問題である。

(2)   また、本最高裁判決は、抑制濃度の強化義務違反、防じんマスクを使用させることと安全教育実施義務違反による国の責任を認めた2陣高裁判決を破棄し、47年以降の違法を認めなかった。しかし、昭和47年以降は中低濃度の曝露による肺がん、中皮腫の罹患の医学的な知見が確立しており、しかも、本判決も認めるとおり、昭和40年代半ばから昭和60年にかけて石綿の大量消費が続き、泉南地域の石綿工場はフル稼働であり、大量の石綿粉じんが飛散していた。他方で、局所排気装置の性能は悪く、事業主や労働者の石綿の危険性の認識は極めて乏しく、防じんマスクも息苦しく、作業に支障があった。医学的知見や技術の進歩に適合した、迅速で「適時かつ適切な規制権限の行使」という判断枠組からは、昭和47年以降により厳格な規制である、抑制濃度の強化や特別安全教育の実施と防じんマスクを使用させること義務付けるべきであったというべきであり、最高裁判決の判断は不当である。
 なお、防じんマスクについて、最高裁は「石綿工場における粉じん対策としては、局所排気装置等による粉じんの発散防止装置が第一次的な方策であり、防じんマスクは補助的手段にすぎない」とし、「石綿工場の粉じん対策としては補助的手段にすぎない防じんマスクの使用に関し、上記義務に加えて」、防じんマスクを使用させることその徹底のための特別教育実施を義務づけなくとも、著しく合理性を欠くとまではいえないとした判示した。この判示部分が、現在係争中の建設アスベスト訴訟に直接の影響を及ぼすことはない。むしろ、建設作業では、局所排気装置による効果的な粉じん対策が困難であり、防じんマスクの使用が有効な防じん対策であったのだから、その規制の不備は、本最高裁判決の立場からしても違法という結論になるであろう。

5   最後に

 原告団弁護団は、国に対し、今回の最高裁判決を重く受け止め、加害者として原告ら被害者に真摯に謝罪すること、最高裁判決を基準に、1陣、2陣訴訟の原告らに対して、一括して速やかに賠償金等を支払うとともに、原告ら以外の泉南地域の被害者救済や残存アスベストの除去等に向けた協議を求めた。10月27日、厚労大臣が原告らに直接面談して謝罪し、差し戻された1陣訴訟については確定した2陣訴訟の基準で賠償金を支払う和解を申し入れること、1陣2陣訴訟原告以外の石綿工場の労働者についても最高裁判決と同様の状況にあれば訴訟上の和解を申し入れることを表明した。
 社会的な力も組織力もない泉南地域の労働者住民らが国に挑み、8年半の闘いの末についに国に謝罪させ、責任を認めさせた。民衆の闘いの歴史的な勝利である。弁護団は、 今後、差戻し審で泉南被害の全面解決を果たし、建設訴訟の勝利など全国に広がったアスベスト被害の救済に力を尽くしたい。

東中光雄先生の在りし日を偲ぶ

弁護士 小 林 つとむ

 わたし達の大先輩であり、当協会創立当時の準備世話人のおひとりであった東中さんが、去る8月7日お亡くなりになりました。
 10月11日には、阿倍野斎場「やすらぎ天空館」で、多数の与野党国会議員をはじめ、各界数百名もの参列で、「お別れ会」が厳粛に、盛大に行われました。
 先生の60年以上にわたる弁護士、国会議員としての活躍の多くの場面は、あらためてふり返るまでもなく、大阪府民の記憶に刻みつけられている歴史そのものであり、私などからつけ加えることはありません。

 ただ先生は、1956年わが協会が、当時の労働組合大阪地評の肝入りで設立準備に入ったときから、そして設立してその事務局の場所を、東神ビル内東中法律事務所に置くとしたことにみられるとおり、まさに当時の、数少ない若手弁護士の代表者であったのであります。私とか、宇賀神直、荒木宏、山田一夫君らが、弁護士登録をしたのは1959年で、日教組の勤評闘争、全逓、全国税弾圧など、自民党反動内閣の公安政策が、強行されている時期でしたが、民法協は、その反対闘争の、関西地方全体の中心であり、そして先生は、その後に続いた、橋本敦、石川元也、正森成二、小牧英夫、深田和之さんらと、戦前の大先輩、毛利与一、菅原昌人、山本治雄弁護士らとの継なぎ役として、大切な役割を果たされました。

 1969年に先生は、大阪2区川上貫一衆議院議員の、伝統の議席の後継者として、国会への道を進むとの選択をされました。
 それまでの私の知っているかぎりの、先生の弁護士活動は、党派をこえて、弁護士はもち論、裁判官の目からも、敬服に値するものとして扱われていたと記憶しています。
 吹田、枚方事件をはじめ、私も参加していた大証労組刑事、民事事件、毎日放送労組弾圧事件などでの真剣な先生の弁護活動を忘れることができません。
 まさに私たちにとっては、師であり、兄であり、畏敬すべき先輩でありました。

 今回あらためて、先生の国会議員引退10周年を記念しての「東中光雄という生き方―特攻隊から共産党代議士へ―」の一冊を読ませていただき、生前私たちには余り話されなかった、戦中世代としての苦悩も、少しは知ることができました。
 その戦争終結と再出発。先生はあの激動の時代を身をもって体験されたのでした。
 それから69年、めぐってきた8月、先生は90歳を最後に、数々の業績を残して、此の世を去られました。しかもこの国は再び、戦争を知らず、戦後レジーム(体制)の一掃を信条とするグループが、内閣を支配するという、それこそ嘗てない危険な政治状況にあるという時にです。
 私たちは、あらためて先生の在りし日を思い、その委託に応える活動の決意を新たにしています。

 昨年の今頃かと思いますが、私から当協会の弁護士の何名かと、事務局にもよびかけて、東中さん90歳のお祝いの会を企画しよう、それを機会に、私など年寄りもいっぺんに集まる、祝賀の宴としてくれ、などと申していたのですが、残念ながら間に合いませんでした。
 どうか先生、安らかにお眠り下さい。
 長い間、本当に有難うございました。

 合掌

労働契約法20条についての労働法研究会を開催

弁護士 須 井 康 雄

 2014年10月4日、「学ぼう! 使おう! 労契法20条」と銘打って大阪弁護士会館で労働法研究会が開かれた。まず、労働契約法 条の解釈について弁護士の菅野園子会員より報告があり、続いて提訴したばかりの郵政産業ユニオン事件と一審判決が出た法テラス奈良事件の報告が、それぞれ担当弁護士である河村学会員と兒玉修一会員よりあった。以下、研究会で出た意見などを紹介する。

労働契約法20条は、①有期労働契約を締結していること、②期間の定めのない労働者の労働契約の内容である労働条件と相違すること、③その相違が期間の定めがあることを理由とすること、④その相違が不合理と認められることという要件が満たされる場合に、そのような有期雇用労働者の労働条件を禁止する。④の不合理かどうかの判断は、(ⅰ)業務内容、(ⅱ)当該業務に伴う責任の程度、(ⅲ)職務内容及び配置の変更の範囲、(ⅳ)その他の事情を考慮して決められる。

労契法20条により、有期契約労働者の労働条件の定めが無効になる場合、基本的には無期契約労働者と同じ労働条件が認められ、また、不法行為を理由とする損害賠償も認められうるとされている。
不合理であることの立証は労働者側が負うため、労働条件の格差の理由を団体交渉や労働条件に関する説明義務の履行(パートタイム労働者法 条参照)によって使用者側に求めていくことが重要である。合理的な説明がなされない場合は、立証責任の転換を主張することもありうる。

労契法20条の根底には同一労働同一賃金という考え方があるが、日本では正社員の賃金体系に扶養など労働内容以外の要素も含まれているので、合理的な修正をしたうえで同一労働同一賃金の原則を主張する必要がある場合もあるのではないか。
同一労働同一賃金に関しては、丸子警報器事件(平成8年3月15日長野地裁上田支部判決・労働判例690号32頁)がある。この判決では、賃金が8割以下の場合、公序良俗に違反するとされたが、労契法 条ができる前の事件である。労契法 条ができた今、不合理かどうかは100%を基準とすべきである。

労契法20条も比較対象となる無期契約労働者の労働条件が低く抑えられてしまうと意味が薄れてしまう。限定正社員制度は、無期契約労働者の労働条件を低くしかねない。限定正社員制度には注意を払う必要がある。

憲法学から見た集団的自衛権――集団的自衛権連続研究会第2回・森英樹先生の報告

弁護士 宮 本 亜 紀

1 連続研究会の開催

民法協、自由法曹団大阪支部、青法協大阪支部、大阪弁護士9条の会が共催で、著名な学者を講師に、集団的自衛権の連続研究会を企画しました。第2回目は、憲法学の森英樹先生(名古屋大学名誉教授)を迎えて、2014年10月6日に北浜ビジネス会館にて行いました。
第1回は、前号ニュースにて報告した通り、国際法学の松井芳郎先生で、国連体制を改めて学び、権利と義務をすり替えるなど倒錯した議論をする7.1閣議決定が、現代国際法学で制約された自衛権の必要性と均衡性の要件に欠けるという理論展開を学びました。そして、「日本国憲法の『初心』に立ち戻るべき」という結びに力を得ました。

2 森英樹先生の講義と討論

第2回森先生の講演は、松井先生の結びを継いで、憲法9条の意味を改めて確認するところから始まりました。私は特に、「武力による威嚇」禁止により「抑止力」さえ否定しているという言葉に目を開かされました。そして、下記の引用文を再度噛みしめることで、不戦の誓いである憲法に自信を持とうと思いました。
「しかしみなさんは、けっしてこころぼそく思うことはありません。日本は正しいことを、ほかの国よりさきに行ったのです。世の中に、正しいことほど強いものはありません。」(文部省『あたらしい憲法のはなし』1947年)
「9条2項で『戦力を保持しない』としていることに対しては、攻められたらどうするのかという『問い』が反9条の側から出されます。攻められることはない、絶対安全という論証はできません。絶対安全という論証ができないことを国是とし、それほどの決心を求めたのが9条です。他国から攻められることのない、外交をはじめその前提をみたす努力を要求しているのが9条なのです。」(樋口陽一・赤旗2014年9月18日)
また、7.1閣議決定は、「非戦闘地域・後方支援」という限定をやめて「戦闘現場」という概念を創設したと指摘され、安保条約5条が集団的自衛権を含むとの学説を紹介されたことで、講演後の討論が盛り上がりました。

3 憲法講師活動の中で

現在の憲法の危機においては、9条の解釈や自衛隊の存在については様々な考えがあるとしても、「今そこにある戦争の危機」に対処するために一致点で広く共同することが必要だとは思います。私は、憲法講師として集団的自衛権を説明する際には、「個別的自衛権の範囲で対応可能」と力説しても、9条の根本的精神を語ることに力が入らず、不全感がありました。しかし、森先生が結びとして「腹をくくって9条完全実施を国民として求めていく」と言われたことで、私自身の軸を通すべきことに気付きました。
この連続研究会の内容を活かし、民法協の弁護士としても、憲法講師活動を引き続き展開し、諸団体と協力して行動したいと思います。

大阪弁護士会主催市民集会 「日本はどこへ向かうのか?――秘密保護法・集団的自衛権・共謀罪を考える」開催

弁護士 向 井 啓 介

1 7月6日の野外集会以来の大規模な市民集会

2014年10 月30日午後6時30分から、中之島公会堂の大ホールにて、大阪弁護士会が主催し、日弁連が共催するかたちで市民集会を行いました。弁護士会としては、7月6日に扇町公園にて行った6000人規模の野外集会以来の大規模な市民集会の開催となりました。

2 問題意識を広める訴え

集会の冒頭、鎌倉利光大阪弁護士会副会長が、秘密保護法の「施行が迫っているが、間違っているものを正すのに遅すぎることはない」と訴え、その後、社会風刺コント集団ザ・ニュースペーパーのコントを挟んで、秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪の順で基調報告を行いました。
その後、秘密保護法に反対する各政党からのアピールへと移り、辰巳孝太郎参議院議員が、この集会のために東京から戻って来られ、最新の国会情勢を踏まえた発言をしてくれました。大阪憲法会議は、市民の不安な声、怒りの声を代読しました。

3 弁護士会からの基調報告

閣議決定された秘密保護法の運用基準では、情報の秘密指定が適正かどうかのチェックが不十分だと指摘されるとともに、集団的自衛権の行使容認の根拠が秘密に指定されると、理由がわからないまま戦争に巻き込まれる恐れがあり、秘密保護法と集団的自衛権は危険な関係にあると報告されました。
そして、政府は従来の自衛権行使のための要件を変更し、来年の通常国会に集団的自衛権が行使できるようにするための法案が次々と出てくることや、秘密保護法と一体となって不都合な情報が隠され、重要な事実が知らされないまま戦争に巻き込まれていく危険性が訴えられました。
さらに、秘密保護法でも取り入れられた共謀罪処罰規定が一般犯罪に適用される共謀罪法案が準備されており、単に悪い考えを持って話し合っただけで捜査の対象になり、処罰されてしまうことになってしまうという危険性があると指摘されました。

4 集会の趣旨に賛同する著名人からのメッセージ

社会学者の上野千鶴子さんは、「秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪と3つ並べてみると、安倍政権の思惑が透けてみえる。改正憲法草案で新たに加えられている緊急事態の章をも踏まえると、自衛隊が国民に銃を向ける日がきっと来る。どうしてそれを防げなかったの?と後からくる世代に言われないために、今のうちにやるべきことをやっておこう。」とのメッセージを送ってくださいました。
哲学研究者の内田樹さんからは、「立法府の空洞化、行政府への権限集中は、事実上の独裁移行を意味している。政体の根底的な転換があたかも散文的な日常業務のように平然と進行している」との現在の危機的な情勢を訴えるメッセージを送ってくださいました。
元毎日新聞記者の西山太吉さんは、「集団的自衛権の導入と秘密保護法の制定は、国際政治の共存化の潮流に逆行するものである。共存していかなければならない国を仮想敵国とすることは、日本の存立にとどまらず国際平和にとって重大な驚異を及ぼすものである。間違った政策を撤回させるために、巨大な国民的運動を起こしましょう」とのメッセージを送ってくださいました。

5 決議文の採択と訴え

最後に、大江洋一秘密保護法対策本部本部長代行が、秘密保護法には「法律にはない米軍秘密が対象となるという運用基準案が検討されてきたように、秘密保護法と集団的自衛権とはリンクしていることがはっきりしてきた」、「秘密保護法で先取りされている共謀罪も、話し合っただけで処罰対象とするもので、秘密保護法、集団的自衛権、共謀罪が揃って動き出せば、大変な威力を発揮し、私たちに知らされないままに集団的自衛権が行使されるかもしれない」と訴えました。

6 デモ行進の予告
なお、弁護士会では、12月8日の正午から弁護士会館を出発点として、デモ行進を企画しています。12月10日の秘密保護法の施行直前となりますが、奮ってご参加ください。

枠組みを超えて広がった「なくそう! 官製ワーキングプア」第2回大阪集会

集会実行委員 川 西 玲 子

 2014年11月3日、エル・おおさかで「なくそう! 官製ワーキングブア」第2回大阪集会が開催されました。昨年に引き続いて2回目の開催です。主催は同実行委員会で、共催は民法協・大阪労働者弁護団・非正規労働者の権利実現全国会議・NPO労働と人権サポートセンター大阪・NPO官製ワーキングプア研究会でした。
 参加者は、午前の5つの分科会①運動の報告と交流②任用論を越える③総務省実態調査の分析④委託、指定管理者の状況と取り組み⑤官製ワーキングプア入門講座にのべ103名、午後からの全体会に160名の参加者がありました。
民法協からは、萬井隆令会長、豊川義明副会長をはじめ、多数の弁護士、労働組合の会員の皆さんに参加していただき熱心な討論がされました。
また、前田達男先生(金沢大学名誉教授)、西谷敏先生、脇田滋先生、上林陽治さんなど学者・研究者の皆さんにもご協力をお願いし、午前中の分科会から全体会、その後の交流会までみなさんお付き合いくださり、現場の非正規労働者を励ましていただき大変充実した集会になりました。

公務職場で増え続ける非正規労働者は、正規とは大きな格差のある処遇におかれ、3年、5年と期限を付けられた不安定な雇用を強いられ、20年30年勤続であっても「公務は契約ではない任用だ」と一方的に首を切られる。この集会は、こんな理不尽な実態を社会的にアピールしようというものです。ナショナルセンターを越えた公務職場の非正規労働者が自ら立ち上がり、労働組合・弁護士・学者・研究者と協力して取り組んできたものです。
 今年 7月には総務省が全国の自治体に通知を出し、特別職非常勤(労働法・労組法全面適用)を一般職非常勤(公務員法適用)か「任期付職員」に位置付けるよう任用替えを示しました。この間非常勤の手当(一時金・退職金)を巡る判決でも「任用」と「実態」のかい離が明らかにされ、もはや繕いようのない事態になっています。そして今吹田の非常勤裁判ではまさにそのことが大事な争点の一つとして争われています。私たちの前に立ちふさがる「任用」とは何かをいま一度しっかり学ぶ必要があると、意見書を書かれた前田達男先生を金沢からお招きし、午前の分科会では日本の公務員法がドイツ官吏制度を取り入れ、戦後改革の中で公務員の身分関係はすべて「任用」と統一された歴史的経過と今後どうあるべきかを講演していただき、午後の全体会では河村学弁護士との掛け合いトークでさらに解かりやすく、もともと吏員とは違って雇用契約関係にあった3分2もの労働者には、市民法の一般原理である合理的意思解釈とか信義則といった法理を適用することが可能になると言われたことは私たちを大いに励ますものでした。

午後の全体会は中西基・小野順子弁護士の司会で始まり、オープニングは、掛け持ち大学非常勤講師のコール佐藤さんがギター片手に「非常勤ブルース」で楽しく元気よく開会しました。
城陽市非常勤の中労委事件について塩見卓也弁護士が「労働委員会でなら不当労働行為は職場復帰命令が出せる」と闘っている事案を報告しました。
リレートークでは、ハローワーク雇い止訴訟、東大阪学童保育指導員解雇事件、大阪大学非常勤雇い止事件、混合組合の団交権訴訟などを当事者が報告し、多くの職場で闘いが広がっていることを実感しました。
事前に募集した川柳には241句の応募があり当日入選作が発表されました(選者:正木斗周)。安倍首相のお題では「返り咲きしたと思えば狂い咲き」、自由句では「奴隷ではないと手足が叫び出す」「年金に早く逝けよと急かされる」など思わず共感しうなずきました。
続いていま臨時・非常勤が最も知りたい総務省7・4通知については「模擬団交」から始まり、通知の背景・あらまし、すでに悪用されようとしている東京都の当局提案の内容などが上林陽治さんや玉城さん(東京都の消費生活相談員)から報告されるなど短い時間でしたが通知をめぐる現時点の状況が交流されました。

最後に集会のまとめ的な発言では西谷先生は「いまの公務員の法制度は無茶苦茶、特に特別職非常勤(3条3項3号)はひどく本当に法治国家といえるのか、法と実態の矛盾を通知一つで是正できるのか」と総務省のいい加減さを指摘し「現在地方公務員法のコンメンタールを作っている。総務省作成のものが普及しているが、もっと正しい解釈のものを作りたい。来年3月には発売できる。大いに役立ててほしい」「公務員制度全般はどうあるべきか検討し直す必要がある」と話されました。
脇田先生は韓国の「風船効果」(非正規運動で押し込めば、使用者側は悪知恵を働かせて他の就労形態を考え、間接雇用や特殊雇用(請負)が風船のように広がった)の危険性について話され、官製ワーキングプアをなくす運動だけでは業務委託(偽装請負での丸投げ)が増える可能性があると指摘されました。また、上林さんは「非正規が非正規でいるという事が自分たちの責任ではないという事を常に意識して、自分たちが正しいと言える運動を創ろう、攻撃する側の言葉を使わず自分たちの言葉と文化を持とう」と結ばれました。
そして最後に、共催団体でもある非正規労働者の権利実現全国会議から村田浩治弁護士が、緊迫した派遣法の国会情勢の報告を行い、必ず成立を阻止するために署名・ネット署名を訴えました。

今年の集会は、社会的にアピールしたいという私たちの願いどおり、参加者の所属は68 組織と多岐にわたって広がり、組合未加入の参加者もありました。また初めて市会議員の参加も3市3名あり、マスコミも新聞4社、毎日放送は翌日の夕方の番組VOICEで報道しました。
正規・非正規、組織・未組織、ナショナルセンターの枠組みを越えて、「なくそう! 官製ワーキングプア」という一致点でさらに大きな運動にしていきたと思います。