民主法律時報

「過労死防止法」緊急シンポジウム 開かれる!

弁護士 岩 城   穣

 2014年6月11日、エルおおさか南館5階ホールで、緊急シンポジウム「過労死防止法の意義と課題」が開かれ、約100人が参加した。
このシンポは、国会で「過労死防止法案」(過労死防止対策推進法案)が5月23日衆議院厚生労働委、5月27日衆議院本会議で採決され、参議院での審議が始まるこの段階で、成立を確かなものにするとともに、その内容・意義を学び、成立後の取り組みまでをも展望しようとの趣旨で、過労死防止法制定大阪実行委員会・大阪過労死問題連絡会の主催、大阪過労死家族の会・NPO法人働き方ASU―NETの共催で開いたものである。この4団体で共同のイベントを行ったのは初めてであった。
シンポは、上出恭子弁護士の司会で進められ、最初に以下の基調報告がなされた。
まず、森岡孝二関西大学名誉教授が、「過労死の実態と対策──「調査・研究」の課題」と題して講演され、長時間労働と過労死問題が長年にわたって改善されず、さらに安倍内閣が労働時間制度を改悪しようとしている中で、過労死防止法はその流れを変えうるものであることが強調された。
続いて、私から「ついに実現する「過労死防止法」──その内容・意義・課題」と題して、主として過労死防止法案の構成と条文の逐条解説を行うとともに、「法制定の5つの意義」と「私たちの5つの課題」を整理して話した。
 最後に、全国過労死家族の会代表の寺西笑子さんが、「「過労死防止法」制定に向けた取り組み《国会議員要請活動報告》」と題して、ご自身の夫を過労自死で亡くし労災認定・民事訴訟を闘った経験、過労死家族の会の歴史と活動を紹介するとともに、「過労死防止基本法」制定活動の経過、とりわけ昨年  月以降の国会議員への執念ともいえる要請活動について、詳細に報告された。
続いて、予め発言をお願いしてあった①産経新聞記者の小野木康雄さん、②朝日新聞記者の阪本康昭さん、③日東フルライン過労自殺事件の原告Nさん、④国立循環器病センター過労死事件の原告村上加代子さん、⑤地域労組おおさか青年部書記長の北出茂さんが、それぞれの思いや経験を踏まえて、過労死防止法への期待を語った。特に過労死遺族のお話では、あちこちですすり泣きが聞こえた。
さらに、会場のフロアから、島根県内の全自治体を廻り、県議会を含む  の自治体で過労死防止基本法制定を求める意見書の採択を実現した元浜田市議会議員の三浦一雄さん、NPO法人POSSEの岩橋誠さんが発言された。
最後に松丸正弁護士が閉会のあいさつで、大阪での  年にわたる過労死防止の運動の歴史が、今回の過労死防止法の取り組みの背景にあること、国会で頑張った「寺西垣のり子」さんを動かしたのは過労死で亡くなった人たちの思いであること、これからがスタートであることを述べ、閉会となった。
このシンポは、事前・事後の新聞報道のみならず、NHK、毎日放送、関西テレビの3つのテレビのニュースでも報道され、関心の高さが示された。

(追記:「過労死防止法」は、6月20日、参議院本会議において全会一致で可決、成立しました。)

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