民主法律時報

2013年12月号

秘密保護法案反対運動をふりかえって

事務局長・弁護士 中 西  基

1 はじめに
 秘密保護法案は、10月25日の国会に提案され、12月6日に成立しました。
 この間、わずか40日余りでしたが、多くの市民らが、かつてないほど大きな反対の声をあげた結果、自民党・公明党は無理矢理に強行採決せざるを得ない状況に追い込まれましたし、当初は与党にすり寄る姿勢だったみんなの党や日本維新の会も採決を欠席・棄権せざるを得ませんでした。
 民法協は、大阪労連、関西MIC、自由法曹団大阪支部、国民救援会大阪府本部とともに5団体共同で緊急集会を呼びかけ、連日のように街頭宣伝に取り組みました。また、いち早く反対運動の先頭に立った大阪弁護士会や連日にわたって緊急ニュースを発信し続けた大阪憲法会議・共同センターなどの取り組みも重要な役割を果たしました。
今回の秘密保護法案の廃案を目指した運動をふり返っておくことは、これからの法律の施行を許さないための取り組みや、共謀罪や通信傍受法などの治安立法さらには解釈改憲・明文改憲を許さない闘いにとって、きわめて重要なことだと思いますので、個人的な感想を含めてふり返ってみたいと思います。

2 国会審議の経過
10月25日 法案が閣議決定
11月 7日 衆院で実質審議入り
    25日 地方公聴会(福島)
    26日 午前、衆院委員会で強行採決。午後、衆院本会議で強行採決。自民・公明・みんなが賛成。維新は退席。
    27日 参院で審議入り
12月 4日 地方公聴会(さいたま)
     5日 参院委員会で強行採決
     6日 参院本会議で強行採決、成立。自民・公明が賛成。みんな・維新は退席。みんなの一部は造反して反対。

3 主な取り組み
10月24日 5団体(民法協、自由法曹団大阪支部、大阪労連、関西MIC、国民救援会大阪阪府本部)呼びかけによる街頭宣伝(淀屋橋)
11月12日 大阪弁護士会の昼休みデモ(600人)
    15日 5団体の呼びかけによる緊急集会(300人)
    20日 大阪憲法会議・共同センターのデモ(200人)
    21日 5団体呼びかけによる街頭宣伝(京橋)
        大阪弁護士会の緊急集会
    22日 日比谷野音で集会(1万人)
    26日 5団体呼びかけによる街頭宣伝(ヨドバシ前)
12月 1日 「戦争はイヤ」御堂筋パレード(2000人)
     2日 大阪弁護士会の昼休みデモ(1000人)
        5団体呼びかけによる街頭宣伝(梅田)
     3日 5団体呼びかけによる街頭宣伝(なんば)
     4日 5団体呼びかけによる街頭宣伝(京橋)
     5日 大阪憲法会議・共同センターによる街頭宣伝(淀屋橋)
        5団体呼びかけによる街頭宣伝(梅田)
     6日 大阪憲法会議・共同センターによる街頭宣伝(なんば)
        大阪原水協による街頭宣伝(天王寺)
        日比谷野音で集会(1万5000人)、国会周辺での抗議(数千人)

4 課題
(1)運動の出遅れについて
 民法協など5団体では10月24日に初めて淀屋橋で街頭宣伝を行いましたが、この時点では、秘密保護法案の内容やその問題点については民法協の会員の間においても十分に知られていない状況だったと思います。その後、5団体では11月15日の緊急集会を呼びかけましたが、すでに衆議院での審議も半ばを過ぎた時期の設定になってしまいました。
 麻生太郎副総理の「ナチスの手口に学べ」発言があったにもかかわらず、秘密保護法案については運動が出遅れたと言わざるを得ません。国会情勢のスピードに比べて、運動の出遅れが顕著であったため、情勢に応じた機敏な行動提起が十分になされなかったと思います。この点は、今後の取り組みにあたっては、真摯に反省しなければならないと思います。

(2)広範な世論の広がりとの連携について
 11月中旬になると新聞やテレビでも秘密保護法案の問題点が繰り返し取り上げられるようになり、それにともなって法案に対する反対または慎重審議を求める世論が日に日に広がっていきました。ただ、それは、わたしたちの運動によって「広げた」というよりも、自然発生的に「広がった」と評価すべきでしょう。
 わたしたちの運動は、そのような急速な世論の広がりと十分に連携することができなかったと思います。11月26日にヨドバシ前で実施した街頭宣伝には、ツイッターやメールなどでその情報を知った若者らが飛び入りで参加してくれました。12月5日の淀屋橋での街宣の場にもどこの組織にも属していないと思われる方が数名来られていました。しかし、そういった自発的に立ち上がった市民らと連携・共同するという発想がわたしたちの側にはまったくなかったため、相互にコミュニケーションもなく、結果的には、わたしたちはわたしたちだけで街頭宣伝を予定どおり完結させただけでした。
 世論を喚起し、政治を動かし、社会を変えることを目指す運動を担う立場を自覚するのであれば、一致点での連携・共同を模索し、提起することも必要だったのではないでしょうか。
 その他、インターネットやSNSの活用など創意工夫すべきところはたくさんあったと思います。

 民法協は、特定秘密保護法が公布された12月13日に、「特定秘密保護法の強行可決に抗議し、その施行を許さず、廃止を求める声明」を発表しました。
声明では、「特定秘密保護法の施行阻止と廃止、さらには、民主主義国家としてあるべき情報公開制度等の整備に向けて、特定秘密保護法案に反対ないしは慎重審議を求めた多くの市民らともに力をあわせて、引き続き取り組みを継続する決意」を表明しています。
引き続き、頑張りましょう!

許せぬ秘密保護法の強行採決――その背景にあるのは日米軍事情報保護協定

弁護士 橋 本   敦

1 強行採決の暴挙と高まる国民の怒り
 安倍政権は、圧倒的多数の国民の反対の声を押し切って、2013年12月6日の深夜、特定秘密保護法を採決を強行した。
 我々はこの暴挙に心の底からの抗議を表明する。
 特定秘密保護法が国民の「知る権利」を奪い、国民の目と耳と口を覆って「戦争する国づくり」をすすめる憲法違反の悪法である。
 政府は「何が秘密か。それは秘密である。」とうそぶき、一方的に、国会にもかけずに防衛庁長官などの政府官僚が、本来なら主権者たる国民が知る権利がある何万件という防衛・外交などに関する重要事項を秘密に指定して、全て国民の目から隠してしまうのである。
 だからこそ、国民の反対世論は短期間のうちに急速に燃え広った。
 ノーベル賞受賞者をはじめとする3500人を超える学者が強く反対の声をあげるなど、かつてない空前の状況が生まれた。ノーベル賞作家の大江健三郎も、12月10日の大阪市内での講演で「この法律で国民の信教・思想・良心の自由が危うくなっている。この秘密保護法は、まさしく憲法を改正せずに日本の国家を変えようとしている。」とその本質を厳しく批判した。

2 秘密保護法強行の背景にあるもの ―― それは、日米軍事情報包括保護協定である ――
 戦前は、軍機保護法・国防保安法などで、国民には政治・軍事の真実をかくして戦争に突入していった痛恨の歴史であった。この歴史を反省するどころか、自民党は2012年4月に発表した「憲法改正案」で現憲法の9条を改悪して、国防軍を設置し、その国防軍の「機密の保持に関する事項は法律で定める」としている。まさに、その「秘密保護法」が今、憲法改正を待たずに先取りして強行成立させられたのである。
 この背景にあるものは何か。それが「軍事情報包括保護協定(正式名称:軍事情報の保護のための秘密保持の措置に関する日本政府とアメリカ合衆国政府との間の協定)」である。これは、2007年(平成19年)8月10日に、日米が2プラス2日米安全保障委員会(日米の防衛庁長官と外務大臣が出席)で署名し、成立させた。日米軍事共同作戦をねらうアメリカの強い要求によるものであった。
 公表されているこの協定の「概説」では、「この協定は、軍事技術だけではなく戦術データ、暗号情報、高度のシステム統合技術など有事の時の日米共同作戦に必要な情報が網羅的に対象となる」とされている。
こうして、この秘密協定なるものが、日米の軍事共同作戦に必要とされていることが根本的に重要なのである。日本が戦争する国となり、集団的自衛権を行使して、アメリカとともに戦争する国となることを当然の前提としているのである。
 そして、重要なことは、この協定第6条「秘密軍事情報を保護するための原則」の(b)で「秘密軍事情報を受領する締約国政府(日本)は、自国の国内法令に従って、秘密軍事情報について当該情報を提供する締約国政府(米国)により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。」と定められていることである。さらに、第7条の(e)項の(ⅲ)では、次のように取り決めている。「当該情報を受領する締約国政府(日本)は、自国の国内法令に従って、当該情報について当該情報を提供する締約国政府により与えられている保護と実質的に同等の保護を与えるために適当な措置をとること。」とされている。
 これによって、今回の秘密保護法強行の根本的理由が明確になった。
 何のことはない―日本は、この「日米軍事情報包括保護協定」によって、日米軍事共同作戦遂行のために、軍事情報の秘密をまもるために、アメリカと同様に、国内法で「秘密保護体制」を作ることをアメリカに強要され、これを認めさせられていたのである。
 こうして、まさに、この憲法違反の秘密保護法なるものは、日本をアメリカとともに戦争する国にするために、その先駆けとして、アメリカの要求によって仕掛けられたものであることが明白である。
 まさに、対米従属の日米安保体制が秘密保護法の根源である。われわれは憲法をまもり、この秘密保護法の廃止をめざす今後のたたかいの中で、この根源である日米安保条約廃棄を大きな国民的たたかいにしてゆかねばならない。

「なくそう! 官製ワーキングプア」大阪集会に170名が参加

弁護士 南 部 秀一郎


 11月23日、「なくそう官製ワーキングプア」大阪集会が、新大阪マルビルにて開かれましたので、報告します。
 この「なくそう官製ワーキングプア」集会ですが、公務現場で実際に働く非正規職員の方々が、それぞれのおかれた状況について語り、また現場の状況について様々な方向で分析していくことで、制度のスキマにおかれた非正規公務員の問題を解決していこうとする集会です。既に東京では5回開かれていますが、今回集会が東京以外では初めて大阪で開催されるということで、民主法律協会も共催の輪に入りました。集会当日は、秋最後の連休の中でも、170名以上の多くの参加者を集め、会場に参加者が入りきれない大盛況で、大変有意義な集会となりました。

 今回の大阪集会でも、非正規公務員当事者が、それぞれの「たたかい」について、報告しました。神戸刑務所訴訟の原告当事者からは、派遣社員が働くルールすらなく一人で業務を行わざるを得ない状況で、職員に意見をしたら、派遣切りされ、子どもを抱えながら、子どものためにも闘い、勝利に至った状況が報告されました。
 また、労働契約法改正後、非常勤講師・職員に5年以下の更新上限が設定されるなどの改正を無にする脱法的状況が横行している大学の現場からは、大阪大学での労使交渉についての報告がありました。研究者については、「研究開発力強化法」が、労働契約法の5年無期転換ルールを適用しないとしていて、この法律は本集会後、12月臨時国会で成立しています。
 郵政の現場からは、ジョブ型正社員制度が2014年度から導入され、期間雇用の非正規労働者がその雇用形態に移行するとの事前の説明があったのに、実際に概要が発表されると、非正規の職員比率が維持され、ジョブ型正社員制度が、正社員の雇用条件を切り下げるために使われ、非正規雇用をなくす制度になっていないことの報告がされました。非正規の現場が、安倍内閣の労働規制緩和のターゲットとされる生々しい状況の報告でした。
 また、大阪からは、吹田の在宅高齢者・障害者のデイサービス事業に携わってきた生活指導員の方々が、維新市長のもと、民間への業務委託により雇い止めされた事件の原告当事者の報告もありました。民主法律協会からは、同事件の代理人を務めている河村学弁護士が、非正規公務員の雇い止め裁判一般についての報告を行いました。その報告では、「任用行為」という、非正規公務員雇い止めに立ちはだかる大きな壁について説明がされました。しかし、非正規公務員は、法律上の根拠を逸脱した形で採用が広がり、非正規職員の比率が50%を超える自治体もあります。体勢不備の状況で、国・地方自治体が責任を逃れ、結果雇い止めされた公務員が、著しい不利益を被る状況に対し、労働者の声と運動で壁を乗り越えようと、河村弁護士は呼びかけました。吹田の事件についても、20年以上先進的な福祉事業に携わった職員が雇い止めをされ、大きな不利益を受けています。運動を盛り上げて、吹田でのたたかいに勝利できるよう、呼びかけがされました。

 その後も、様々な働き方で働く非正規公務員当事者によるミニシンポジウムや、総務省の非正規職員の調査に関する報告と情報公開請求の呼びかけ、韓国ソウル市の非正規をなくす取り組みなど、盛りだくさんの内容で集会は行われました。締めくくりとして、集会に参加された西谷敏大阪市立大学名誉教授、脇田滋龍谷大学教授、地方自治総合研究所研究員の上林陽治氏の、研究者3氏からの発言がされました。
 非正規公務員は、制度のスキマで、無秩序に広がっており、政府の労働規制緩和の影響も大きく受ける状況にあります。その中で、民主法律協会をはじめとする多くの団体が共催し、多数の参加者を集めた大阪での集会は大変意義があるものでした。大阪では維新の会のもと、組合敵視、安易な民営化と、公務員を「敵」扱いし、非正規公務員が増えています。労働環境も悪化しています。今後も、非正規公務員のたたかいを広げ、誰もが安心して、公務サービスを受けられるものとしたいとの考えを新たにしました。

第1回裁判・府労委委員会の報告

弁護士 原 野 早知子

 労働裁判・府労委での取組について、分析・検討を行うのが裁判・府労委委員会である。今期の第1回を12月3日(火)午後6時から民法協事務所で開催した。弁護士・労働組合等 名が参加した。
 テーマは「裁判所と府労委の判断はなぜ分かれたか~北港観光事件を手がかりに考える~」で、北港観光事件弁護団の西川大史弁護士の報告の後、質疑・意見交換を行った。
 北港観光事件では、組合員の提訴した個別労働事件が全て一審で判決勝訴となる一方、大阪府労委では不当労働行為が認められなかった。判決と府労委命令が同時期であるにも関わらず、完全に結果が分かれた事件である。
 西川弁護士は、裁判の勝因・府労委での敗因を次のように分析した。
・地裁の担当裁判官が会社側証人の信用性を吟味し、個別事件について踏み込んだ判断を行ったのに対し、府労委は簡単に信用性を認め事実認定が杜撰である。
・府労委の事実認定は、文書の記載内容に拘る等、極めて形式的で、実質を見ようとしない。北港観光事件のみならず、最近の府労委の全体的傾向といえる。
 この報告を手がかりに、府労委での闘いについて、次のような意見が出た。
・長期間組合が活動し、府労委でも長期間闘っていると、組合活動の記録が残り、不当労働行為(意思)が認定されやすくなる。しかし、組合活動や会社の組合嫌悪の実績が少ない場合(新しく組合を結成したような場合)、不当労働行為が認められなくならないかという疑問がある。
・労働委員会で勝つことは重要。争議全体の解決の契機になる。しかし、最近府労委・中労委ともに内容が悪く、裁判すると6審・7審になることもある。
・裁判で勝ち、府労委で負けるとなると、手続の選択が難しい。
・府労委問題について、民法協として継続的にまとまって対応する必要がある。
 次回委員会は3月14日(金)の予定である。会員多数の参加を呼びかける。

お薦めの新刊 『後月輪東(ぱんどら)の棺(はこ)』 (大垣さなゑ著・東洋出版)

弁護士 梅 田 章 二

 この本の作者は、イラクへの自衛隊派兵差止大阪訴訟の事務局で中心的な役割を担われた大垣さなゑさんである。また、靖国神社、知覧や万世といった特攻隊の記念館を1泊2日で訪れる弾丸ツアーを企画したことがあったが、彼女もそのメンバーだった。そのような経過もあって、私としては珍しく最後まで真面目に読んだところ、非常にすばらしい本であるので、是非、みなさんにもお薦めしたい。
 「日本国は長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家」で始まり、基本的人権を「公益」や「公の秩序」で制限する自民党の改憲草案が公然と登場し、教育への国家統制、国民への監視体制や情報統制が強化され、自衛隊を国防軍とし集団的自衛権を認め、憲法9条を改定しようという、歴史歯車の逆回転の世相のなかにあって、意味のある出版である。
 知覧の特攻隊基地から発進した特攻隊員の話から始まり、明治維新からアジア太平洋戦争の終結にいたるまでの歴史の流れをベースに、なぜ、日本が無謀な戦争に突っ走り、いたずらに青年の命を奪ったのかを検証し、作者独特の表現で怒りと呆れを溢れさせている。
 明治維新の廃仏毀釈は、古来プリミティブな神道と習合もしくは共存してきた仏教を、大陸から伝授した邪教としてしりぞけ、寺院や仏像を破却する宗教政策だったが、その目的は体制に叛き、体制からの逸脱を促す神や仏を廃滅し、神国日本の天皇制を純化させることにあった。本作ではその過程が詳しく紹介されている。
 また、国民国家形成の画期となった明治憲法の制定にも筆をむけ、大日本帝国が天皇の名において行なったすべての侵略戦争の責任から天皇を免じるカラクリを明らかにする。
 大日本帝国憲法が規定する「万世一系の統治」の正統性を根拠づけるものは神話以外にない。本作は「日本神話」創出の胎盤となった天智・天武・持統朝の東北アジアの緊張した時代を描き、神宮皇后の三韓征伐や、天皇すなわち神の軍隊の登場の物語にこめられた政治的意図にもふれている。
 昭和初期、神国日本のもとでは、美濃部達吉の天皇機関説事件や滝川事件など、学問の自由が完全に否定される。ファシズムと国体論のまえに合理的精神は後退し、あらゆる人々が思考停止を余儀なくされていく。
 「後月輪東の棺」(のちのつきのわのひがしのひつぎ)というタイトルの「後月輪東」とは、孝明天皇陵の所在地であるが、その一帯は江戸時代の歴代天皇の墓所のある地域である。歴代天皇の墓は質素に並んでいるそうだが、史上はじめて「火葬儀」と寺院勢力の関与を廃して埋葬された孝明天皇の墓はひときわ立派なものとなり、神権天皇制国家の誕生を象徴するモニュメントとなった。
 終盤は、津田左右吉の「神代史の研究」などの発禁処分、出版法違反での起訴という思想裁判と対米戦争の開始を並行して展開し、軍事的敗北を重ねていく帝国内部の崩壊を描き、最後は、天皇の玉音放送で終わる。
 中国大陸への侵略からアジア太平洋戦争への道は、もっぱら昭和の軍部独裁によるものとして、明治時代の指導者を免罪しようとする立場もあるが、江戸末期から明治にかけて創出された神権天皇制国家の「虚構」にこそ、無謀な戦争に突入した背景があることがよくわかる。
 本作は歴史アンソロジーでありながら、史的事実の考証はきちんとされていて、歴史の勉強になり、秘密保護法や集団的自衛権などという戦争前夜を思わせる時代にあって、あらためて近現代史が学べるお薦めの書物である。