民主法律時報

2013年7月号

労働組合に対する規制・攻撃に対向して―地域労組とよの面談強要禁止仮処分を題材として

弁護士 鎌 田 幸 夫

1 はじめに
 
 労働組合が本社、営業所周辺で街頭宣伝行動を行ったことに対して、会社が街頭宣伝禁止の仮処分を行ってくることがある。北港観光バス・街宣活動禁止の仮処分では、2011年5月に不当な仮処分決定が出されたことは記憶に新しい。
 私も、今年2月、自交総連傘下の学習塾の労働組合の街頭宣伝禁止の仮処分事件を担当した。同事件は当事者間で話し合いがつき、仮処分は取り下げられた。そして、今年4月、「地域労組とよの」に対する面談強要禁止等の仮処分事件を担当した。同事件も、当事者間で話し合いがつき、仮処分自体は取り下げられた。遅くなったが、簡単に報告したい。


2 事案の概要と経過

 北摂にある介護施設に勤務していたAさん(未成年)が、平成25年3月末、勤務態度、無断欠勤を理由として解雇され、両親が地域労組とよのに相談し、組合に加盟し、解雇撤回を求めて団体交渉を申し入れた。第1回団体交渉で、組合側が労働条件や解雇の根拠規定等を確認するために就業規則の開示を求めたところ、会社側は「施設内に置いている」との回答であった。そこで、地域労組とよのの書記長らが、就業規則の開示を求めて施設を訪れたところ、施設側は開示を拒否し、団交申入書の受取も拒否したので、強く抗議した。
 そして、再度、書記長等が、施設を訪れ、就業規則の開示と解雇の撤回を求めた。そうしたところ、施設側は、組合側が大声を出して騒ぎ、入居者らが怯えたとして、平成25年4月、とよの労組相手に、面談強要禁止等の仮処分を提起した事案である。また、施設側代理人は、組合に対して、解雇の効力は団体交渉ではなく訴訟で争えばよいと通知してきた。
 同事件は、大阪地裁民事1部に係属した。事実関係としては、組合側が施設を訪れた際に大声で騒いだか、入居者が怯えて業務に支障があったかなどが争点であったが、労働部ではないので、本件解雇が無効であること、労働組合活動や団体交渉権の意義についても丁寧に主張した。そして、就業規則他関係資料が訴訟の書証として提出されたこと、施設側が組合側との団交に応じることが確認できたので、当事者間で合意して、仮処分は取り下げで終了した。なお、同事件は、現在、施設側と解雇無効と地位確認を本訴で争っている。 


3 若干の感想

 ①自交総連に対する街頭宣伝禁止の仮処分と②とよの労組に対する面談強要禁止の仮処分とは、少し、違いがあるような気がする。①は、使用者側が組合員に対する不利益扱いを続け、今後、解雇等の紛争に発展することを見込んで、事前に組合の足を止めることを目的としており、その意味で計算されたものである。②は、労働紛争に不慣れな使用者側の過剰反応ともいえる対応である。①は労働部に係属し、②は保全部に係属した。
 ①のようなタイプは、街頭宣伝行動に至った経過、動機・目的の正当性、内容の真実性と相当性、態様の正当性を詳細に主張立証し、街頭宣伝行動が、表現の自由の行使、団結権・団体行動権の行使として正当性の範囲内であることを徹底的に主張していくことになる。
 ②のようなタイプは、労働組合や団体交渉権の意義、裁判事項であるからという理由で団体交渉を拒否できないことなど当然のことを丁寧に裁判所や相手方に説明、説得していく必要がある。
 いずれにせよ、今後も、使用者側が、労働組合の宣伝活動や団体交渉を継続していくことを嫌って、仮処分や地位不存在確認訴訟などを提訴することが予想される。個別事案に応じて対応することになるが、いかなる事件も、労働組合活動権や団交権の行使は、裁判闘争と車の両輪であることは基本としなければならないし、労働組合活動が萎縮することがあってはならない。

 

緊急学習会「アベノミクス雇用規制緩和を斬る!」を開催

弁護士 中 村 里 香

 6月27日、大阪弁護士会館にて、大阪市立大学の根本到教授を講師として、「アベノミクス雇用規制緩和を斬る!」と題した緊急学習会が開催された。以下に、内容の概略を報告する。
 アベノミクスは、「3本の矢」として、金融緩和、財政出動、成長戦略を掲げている。
 このうち、3本目の矢である成長戦略において、「規制緩和」の1つとして、雇用規制緩和が掲げられ、経済財政諮問会議、産業競争力会議、規制改革会議の各会議で議論されている。
 「規制改革に関する答申」やこれを受けた「規制改革実施計画」においては、「ジョブ型正社員」(限定正社員)や、労働時間法制の見直し(企画業務型裁量労働制など)、労働者派遣制度の見直しが掲げられている。中でも、「ジョブ型正社員」は、解雇規制緩和や、有期契約労働者の無期転換後に活用することなど労働条件の引き下げと結びつけられて論じられており、注意が必要である。

 これらの会議のメンバー構成は、不公正である。例えば、産業競争力会議の議員には、竹中平蔵氏や楽天の会長である三木谷浩史氏など大企業の経営者が名を連ねている。一方で、労働者側を代表する委員や、中小企業の経営者は、1人も選ばれていない。このようなメンバー構成では、労働者保護の視点に欠けた、企業側の構想のみが前面に出てくるのは当然といえる。しかも、単に経済界の利益が強調されるにとどまらず、新自由主義的動向が、露骨に示されている。

 これらの会議で議論されている内容は、抽象的なものばかりである。そのため、狙い、方針は一見して明確ではなく、批判は難しい面もあるが、以下のようなことが論じられている。
 まず、前記のとおり、「規制改革に関する答申」においては、「正社員改革」として、「ジョブ型正社員」が挙げられ、その「雇用ルールの整備を行うべき」とされる。また、労働時間法制については、企画業務型裁量労働制の弾力化やフレックスタイム制の見直し、管理監督者等の労働時間規制に関する適用除外制度が挙げられている。また、「民間人材ビジネスの規制改革」としては、派遣労働につき、「常用代替防止」から「派遣労働の濫用防止」への方針転換が挙げられている。

 前記の「答申」においては、解雇の金銭解決制度(違法な解雇であっても、判決で、原職復帰の代わりに、使用者が一定の金銭を支払えば労働契約を終了させる制度)については、「丁寧に検討を行っていく必要がある」とされている。
 このように解雇規制が攻撃される論拠として、日本の解雇規制が厳しいとの指摘が財界からなされる。しかし、OECDが行った2008年の調査結果においては、日本の解雇規制の強さは、30か国中24番目とされており、解雇規制が緩やかだと理解されているデンマークを下回る。正規雇用に限っても、30か国中18番目にすぎない。正規雇用のうち、「解雇の困難性」だけは1位と高いが、これは、解雇後に提訴する際の出訴期間に制限がないことが高い評価を受けている結果でしかない。このような現状において、解雇の困難性を理由に、金銭解決制度を導入する必然性は全く存在しない。金銭解決制度が存在するドイツでも、同制度は「存続保護法であって、補償法ではない」と位置づけられており、解雇規制の緩和としては位置づけられておらず、実際にも、非常に厳格に運用されている。
 一方で、日本の現行制度のもとでも、職場復帰を求めない労働者について、金銭解決によることは可能である。また、日本で金銭解決制度を認めると、違法解雇の追認になりかねないのみならず、労働契約関係に関してこれまで形成されてきた法理をゆがめる危険が大きい。使用者主導の形を容認すると、とりわけその危険は大きく、「金さえ払えば解雇可能」との理解を与えることになろう。

 また、限定正社員(ジョブ型正社員)についても、注意が必要である。
 平成23年に発足した厚労省の「『多様な形態による正社員』に関する研究会」においては、限定正社員に関する研究が進められ、特に整理解雇法理等の緩和に重点が置かれてきた。これまでの裁判例では、勤務地限定のある労働者についても、一定の解雇回避努力が必要とされている。確かに、いわゆる無限定正社員の場合よりも、解雇回避努力や人選の合理性といった要件が認められる例が多いが、人員削減の必要性や手続の相当性については、全く変わらない審査がなされている。にもかかわらず、限定正社員であれば勤務地や職種がなくなれば解雇できるかのように議論されているのは、正社員のワークライフバランスが真意ではなく、解雇規制の緩和の突破口と位置づけていることの端的なあらわれである。

 「限定正社員」を制度化する動きに対しては、立法化やそれに準ずる措置については、断固として反対すべきである。また、労働者が個別合意を求められた場合など、一部の正社員を「第二正社員」に落とし込む動きには警戒すべきであり、労使交渉で阻止することが求められる。

 さらに、企画業務型裁量労働制の拡大については、日本経団連等が緩和を求めているが、長時間労働に直結するものであり、どれ1つとして賛成できない。フレックスタイム制の規制緩和についても労働時間規制の緩和そのものであり、同様の危険がある。
 
 最後に、派遣労働規制等の緩和についても、日本商工会議所などから「常用代替防止」の見直しを求める声があるが、常用で雇用したければ直接雇用すればよく、筋違いの提案というほかない。また、民間人材ビジネスの推進による労働環境の一層の悪化も懸念される。

 総括すると、自民党右派による政権交代が実現し、ここ数年で規制の強化が進んだことへの反動として、今回のような新自由主義的改革の復権がみられるようになったといえる。
 労働者側からは、断固反対すべき内容であることに疑いはなく、規制強化を推進し、人間らしく働ける社会をこそ構想すべきである。また、正社員の多様化ではなく、非正規と正規の格差是正にこそ、力が注がれるべきであろう。

 講演後、派遣労働研究会の高橋早苗弁護士、JMIU大阪地本執行委員の林田時夫さん、大阪過労死問題連絡会の上出恭子弁護士より、それぞれの立場から会場発言がなされた。
 高橋弁護士からは、派遣労働の実態を省みない乱暴な規制緩和であり、改正派遣法を巻き戻すものであるとの発言があり、林田さんからは、徹底した雇用破壊・賃金破壊への道筋が見え、とくに現業労働者の労働条件が切り下げられる危険性を感じる、また、労働組合の弱体化に拍車がかかるとの発言がなされた。上出弁護士からは、企画業務型裁量労働制、フレックスタイム制を導入したとしても、名ばかり管理職、サービス残業の横行、杜撰な労働時間管理、といった現状を変えずして、過労死は絶対に防げないとの発言がなされた。

 最後に、民法協の増田事務局長より、雇用規制緩和を断じて許さないために、雇用規制緩和の中身とねらいについての学習と、このような動きを許さないための運動に取り組むという行動提起がなされ、採択された。

 組合の方のご参加が目立ったが、労働事件に取り組む弁護士としても、最新の情勢に目を向けることができ、非常に有意義であった。正社員の「無限定」な働き方を是正し、非正規社員の権利の底上げを図るという雇用規制の徹底に向けた運動に生かしていきたい。

「9条世界会議関西2013を成功させる法律家の会」の報告

弁護士 中 森 俊 久

  1.  2008年、幕張メッセにおいて9条世界会議が開催されてから5年が経過した。昨年4月に発表された自民党の改憲草案や、同年12月の安倍内閣の誕生、最近の憲法論議の中で、憲法を守り活かす運動の全国的な広がりが今ほど求められている時期はないといえる。
     そうした状況のもと、10月14日に9条世界会議が再び開催される。しかも、「9条世界会議関西2013」と称して、大阪市中央体育館にて1万2000人規模の集会を行うというのである。法律家として、また、人間として、この9条世界会議関西2013に協力しない手はない。
  2. 7月1日、大阪弁護士会にて、9条世界会議関西2013を成功させる弁護士の会(準備会)が開催された。10名強の弁護士が参加する中、神戸大学のロニー・アレキサンダー教授からお話を頂戴し、その後懇親も含めて議論を行った。
     反戦・反核の平和運動に関わる中、足元から見つめる平和の大切さに思い至ったロニー教授は、平和活動団体「ポーポキ・ピース・プロジェクト」を主宰し、ポーポキという名の猫を主人公とした絵本を作り、広める運動をしている。平和を脅かすものは、遠く離れた国での戦争や武力紛争だけではなく、いじめや差別など、私たちの身近なところにもあり、私たちはみなそれらに何らかのかかわりを持っている。自分のことや社会とのかかわり方を考え、その気づきをきっかけに、平和の創造のために自分にできることを見つけて、行動に移すことが絵本の狙いであるという。
     「平和って、なに色?」「平和にとって、重要なものは?」、猫のポーポキに尋ねられて、参加者がそれぞれの回答をしていく中で、自然と「非暴力、平和、多様性、創造性」などのキーワードと結びついていく。ロニー教授の講演は、普段憲法に関心のない方々へのアプローチの仕方として、重要かつ新鮮なヒントとなるものであった。
  3.  10月14日の「9条世界会議関西2013」の成功を目指すプレ企画として、8月19日には、元芦屋市長の北村春江弁護士(大阪弁護士会)を招いて、講演会を開催する。自ら戦争体験を有する北村弁護士は、「戦争につながる道に一歩でも踏み込んだら、後は泥沼です。かたくなな考えかもしれませんが、戦争を体験した世代として、そこは強く言いたいですね」と力強く語っている(毎日新聞2013年6月21日記事)。
     全国初の女性市長として注目を集め、阪神大震災からの復興を陣頭指揮した経験を持つ北村弁護士。憲法9条を一度でも変えてしまえば、歯止めが効かなくなり、我々にとっては想像でしかない戦争の世界がリアルとなって忍び寄る・・・。戦争を知る北村弁護士の話は、理想論ではなくまさしく現実論である。9条世界会議関西2013の本番もさることながら、本プレ企画(8月  日、午後6時  分~、大阪弁護士会館2階)にも是非多くの方に参加していただけたらと思う。

 

書籍紹介 和田肇・脇田滋・矢野昌浩編著「労働者派遣と法」

派遣労働研究会・弁護士 南 部 秀一郎

 6月15日に日本評論社より和田肇・脇田滋・矢野昌浩編著「労働者派遣と法」(日本評論社)が出版されましたので、ご紹介します。

 本書ではまず、第1章で労働者派遣法制定に至る経緯と改正の過程が解説されています。同章第3節では、最新の2012年改正についてまとまった解説がされており、大変参考になります。特に、本改正の目玉である派遣法40条の6の「使用者側の労働契約申し込みみなし」規定について、その根拠を使用者が常用雇用において、自らの危険を負担することなく「使用すること」すなわち「間接雇用の禁止」においているとの解説は簡明でわかりやすいものです。2012年改正については、立法担当者の断片的な解説程度しかない状況ですので、実際に改正法の積極的利用を考える上で、研究者からの解説は貴重であると思います。

 そして、続く第2章では労働者派遣法の理論課題として、派遣法の理論上の問題点が、そして第3章では労働者派遣裁判例の分析がされています。両章の中で特に挙げるべきは、松下PDP事件最高裁判決に集約する違法派遣・偽装請負事件について、研究者と弁護士が共同して、多くの判例を集積し、分厚い批判的解説を行っている点です。本書のはしがきに、本書刊行の経緯について書かれていますが、本書は編著者の一人であり、当民主法律協会の脇田滋教授が違法派遣を中心とする派遣問題について、ホームページを作成し、派遣法の解説や労働問題の相談を行っていたところに、弁護士・研究者がネットワークを形成し、会議・研究会を行うところに、本書の出版に至る端緒があります。私は、弁護士2年目で、裁判当時はロースクールの一学生であったために、詳細を知りませんが、松下PDPをはじめとする違法派遣の裁判においては、その主張・立証の組み立てにおいて、弁護士と研究者そして当事者との協働関係がなされていたと聞いています。本書はそういった協働関係から生み出されたもので、特にその協働が広く行われた違法派遣事件の解説に、その成果があらわれていると思います。違法派遣に関して主に判例解説の形でされた多くの論文について、本書ではリファレンスがされており、様々な学説がまとめられています。本年になって、山口地裁でマツダ派遣切り裁判に勝訴判決が出ましたが(山口地裁 平成25・3・13判決)、今後違法派遣事件を争っていくにあたって必読であると思われます。

 続いて第4章では、諸外国の労働者派遣法として、ドイツ、フランス、韓国の3カ国の派遣法についての解説がなされています。これらの国々は、例えばドイツの派遣法が日本の派遣法のお手本になっている、韓国法が正規と非正規の格差を抱えるなど日本との労働関係上の共通点をもつ、あるいは、フランス・ドイツなどのように外国人労働者の流入という、これからの日本の派遣労働の課題となるべき事柄に対処しているなど、参考とすべきものであると思われます。

 最後に編著者の和田肇教授による総括的検討がされ、派遣法に横たわる(はずの)直接雇用の原則(と例外としての派遣)、そして、違法派遣訴訟などで直面する公法私法二分論、取締法規違反の私法上の効力といった問題がまとめられています。資料として、派遣研によせられた法律相談の概要などもまとめられています。

 本書の画期的な点は、何をおいても、労働者派遣を含む「非正規労働」の分野に取り組む一線の労働法研究者と、実際に多数の労働事件の労働者側弁護を行っている弁護士とが、それぞれの成果を持ち寄って作った本であるという点です。まさに研究と実践の融合です。
 本書には派遣研メンバーだけでなく民主法律協会の多くの研究者、弁護士会員が執筆しています。派遣法研究の現状の到達点を示す決定版の一冊ですので、皆様是非入手され、お読みください。

 ※日本評論社 定価5000円+税 民法協で少しお安くお求めいただけます。