民主法律時報

2013年5月号

オレンジコープ不当解雇事件仮処分申立に対し勝利決定を得ました

弁護士 南 部 秀一郎

 去る4月10日、大阪地裁岸和田支部(谷地伸之裁判官)は、オレンジコープ(泉南生協)労組員5人の仮処分申立てに対し、2013年4月以降1審判決までの賃金仮払いを認める決定を下しました。労働者側の主張のみを受け入れ、生協側の主張を退けた勝利決定です。

 決定の内容を述べるにあたって、かいつまんで事案を説明します。オレンジコープ労組は、タイムカードすらなくて、嘘の労働時間の申告を労働者に行わせるなど、労基法を全く無視した生協内の労働環境改善のため、2011年  月に生協の購買部門で、配送業務を行っていたドライバーにより結成されました。そして、2011年  月の団交によりタイムカードの導入を、生協側に約束させるなど、成果を挙げていた矢先、度重なる労組活動に対する生協側の妨害を受けた挙句に、突然2012年6月末日付で、労組員全員が解雇されたという事案です。生協は、2012年4月と6月に、供給部門のみを対象に、希望退職、配置転換の募集をしましたが、説明を求めた組合側の文書の、細かい言葉遣いをとりあげて、謝罪を求め、団交等の説明の機会を引き延ばし続け、説明は一切ないという状況でした。

 労組員たちは、この解雇に対し、労組員のみを狙い撃ちにした不当労働行為にあたり、また会社側が整理解雇と主張した点については、整理解雇の4要件、特に「解雇者選定の合理性」を全く欠いており、解雇権濫用にあたるとして、解雇の無効を主張し、労働契約上の地位確認と、賃金の支払いを求める仮処分を、昨年9月に申し立てました。
 生協側は、申立てに対し、供給事業の赤字の拡大等を整理解雇の理由としてあげ、反論を試みました。

 しかし、4月10日の決定においては、購買部門の赤字は縮小しており、供給事業の赤字の拡大原因は購買部門にはなく、解雇の緊急性は相当乏しいこと、解雇の必要性が明らかでない状況で行われた希望退職、配置転換の募集は、解雇回避策として有効に機能するものではなかったとし、解雇の必要性が明らかでない状況で行った解雇の、人選の合理性についても否定しました。解雇手続きの相当性に至っては、生協の行った引き延ばし行為について、「従業員・労働組合との協議・説明として全く評価できない」と断罪しました。そして、決定は、労組員の解雇を客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない無効なものだと判断し、2013年4月分以降の賃金仮払いを、生協に命じました。

 今回の決定は、労働者の意見を取り入れた勝利決定です。支援いただいた皆様のおかげで、よい決定が出ました。しかし、仮処分という応急的な手続きであるために、この解雇の本質である、組合を狙い打ちにした不当労働行為との判断は一切されていません。また、生協側から賃金の仮払い金は出ましたが、それとともに起訴命令も、生協の申立により出されています。

 今後も、生協の不当労働行為を明らかにする府労委の救済申し立て手続き(近く尋問の手続きに入ります。)や、地位確認の本訴、そして、彼らの原点である未払い残業代の請求と、労組員の闘いは続きます。生協側は、労組員が生協の組合員であるにも関わらず、生協の総代として総代会で発言をできないようにするなど、あらゆる手段を講じています。闘う労組員たちに、更なる支援をいただけますようよろしくお願いいたします。

 なお、オレンジコープ労組に関する一連の訴訟の弁護団は、鎌田幸夫、山  国満、谷真介、宮本亜紀、南部秀一郎です。

公務労働者の使い捨ては許されない! 吹田市非常勤職員雇止め事件

弁護士 河 村   学

1 事案の概要

 本件は、吹田市の非常勤職員として、21年ないし25年間継続して働いてきた原告ら2名が、2012年9月30日に、雇止め(再任用拒否)された事案である。
 原告らは、1987年及び1991年採用。いずれも吹田市立総合福祉会館で、高齢者・障がい者を対象としたデイサービス事業に従事してきた。同事業は全国にも先駆けた吹田市独自の事業として開始され、高齢者については介護保険制度が定着するまで、障がい者については現在に至るまで、民間には真似できない公務、生活困難な地域住民に豊かで文化的な生活を保障するための公務として、継続して実施されてきた。その中で原告の2人は同事業の立ち上げから、正職員と一緒になって同事業を支え、その中心的な役割を担ってきた。
 ところが、吹田市は、利用者の利益や気持ちも考えず安易に同事業の民間委託に踏み切り、それと同時に、長年にわたって吹田市の公務に従事してきた原告らを、「非常勤職員」であるという理由のみで雇止め(再任用拒否)を行った。


2 本件雇止め(再任用拒否)の実質的な問題点

 (1)  本件は、正職員と同様に働いてきた非常勤職員を差別的に雇止め(再任用拒否)したものである。
 吹田市は非常勤職員を常勤職員(正職員)と同様に使用してきており、その職務は恒常的なものであった。また、非常勤職員の更新手続は形骸化し、経験年数加算が設けられ、60歳を超えても就労を継続するなどの処遇がなされていた。さらに、非常勤職員の担当業務が廃止される場合にも配置転換が行われるなどしてきた。このような就労実態のもと原告らは21年ないし25年間継続して働いてきた。
 にもかかわらず、吹田市は、正職員については他部署に配置転換し、非常勤職員はその努力も行わずに雇止め(再任用拒否)したのである。
 
(2)  本件は、吹田市自らが法の趣旨に逸脱する行為をしておきながら、これを利用して雇止め(再任用拒否)したものである。
 吹田市は、これまで非常勤職員を使い勝手のよい安上がりの労働力として活用してきており、2012年4月1日現在では、正職員3018人に対し、非常勤職員609人、臨時雇用員1436人にまで増加させてきた。近時は、正規職員・非常勤職員を減らし、さらに雇用条件の悪い臨時職員への置き換えを進めている。
 しかし、原告らのような恒常的職務に長期間就労する非常勤職員や臨時職員はそもそも法律上予定されておらず、常勤職員(正職員)として雇用(任用)されるべきものであった(この場合、分限免職処分はそう簡単にはできない)。
 にもかかわらず、吹田市は、法の趣旨に反し行ってきた期間雇用(任用)という形式を利用して雇止め(再任用拒否)を行った。
 
(3)  本件は、吹田市が、原告らが公務員であるということから、原告らの生活・権利に配慮することなく、漫然と雇止め(再任用拒否)をしたものである。
 民間であれば、本件のような雇止めは、労働契約法  条により、許されないことは明らかである。しかし、過去の裁判例では、公務員は「任用」という法形式をとっており、契約に関する規制は適用されないという考えをとるものがある。
 そこで、吹田市は、この過去の裁判例に依拠して、公務員の雇止め(再任用拒否)には何ら法的な制約はないという立場で、これを回避するための努力をほとんど行うことなく、漫然と雇止め(再任用拒否)を行った。
 
(4)  このような雇止め(再任用拒否)に対して、原告らは、吹田市における非常勤職員の具体的な就労実態や生活実態、自治体における役割、労使交渉の経緯等を主張・立証し、このような就労を行ってきた原告らを合理的理由なく雇止め(再任用拒否)することは違法であること、民間において認められる労働者保護が、このような就労をしてきた非常勤職員は及ばないという実質的理由はないことを訴えていきたいと考えている。
 本件は、公務員の任用一般の問題ではなく、常勤職員(正職員)と同様の就労実態がありながら、法の趣旨に反して形式的に非常勤職員として扱われてきた労働者をいかに救済するかを問うものである。


3 提訴と今後のたたかい

 本件は、2013年3月28日、大阪地方裁判所に提訴された。
 自治体により使い勝手のよい労働力として法の谷間に押し込められ、民間労働者よりも無権利な状態に置かれている自治体非正規労働者のため、また、正職員も含めた職員全体の労働条件の向上、市民生活の向上のためにも、広く連帯した取り組みが求められる。

(弁護団は、豊川義明、城塚健之、中西基、谷真介、楠晋一、河村学)

北港観光バス・配車差別事件 勝訴判決

弁護士 吉 岡 孝太郎

1 はじめに

 北港観光バス㈱(以下、「会社」という)は、IKEAのシャトルバス等を運行している会社である。会社には4名の建交労の組合員が在籍していたところ、会社は、分会長に対して雇止め、副分会長に対して配車差別、書記長に対して休職期間満了を理由とする自然退職扱いにするとともに、他の分会員に対して懲戒、配転を行うなど、組合員に対して続けて不当な攻撃を続けてきた。そのため、組合員らが、大阪地裁に個別労働事件計5件を提訴していた。大阪地裁は、平成24年1月18日、本件を除く4件について、会社の不当な行為を断罪する判決を言い渡したが(その詳細については、本ニュース2月号にて西川大史弁護士より報告があった)、平成25年4月19日、残りの副分会長に関する訴訟においても、会社による不当な配車差別を断罪する画期的な判決を言い渡した。


2 事案の概要

 O氏は、平成21 年5月に会社に入社し、以後、バスの運転業務に従事してきた。O氏は、入社前に、会社の当時の舞洲営業所長より、給与は時給制だが、月収は月額30万円を下ることはない旨説明されていた。会社は、平成22年1月末賃金減額案を提示したが、O氏はこれに同意しなかった。O氏は、会社に入社以後平成22年6月までの間は概ね月30万円の賃金を受け取っていたが、会社は、平成22年7月以降、O氏への配車を減少させ、平成22年9月以降はいずれも賃金が20万円を下回るように配車を固定化させるという不当な差別を行った。

 そのため、平成23年1月25日、O氏は、副分会長と会社との間には少なくとも賃金月額が30万円を下らない金額となるよう仕事を与える合意があったにもかかわらず、副分会長が組合活動を行ったことから、何ら合理的理由なく、副分会長に対する仕事を減らしたことが債務不履行及び不法行為に当たるとして、差額賃金、慰謝料を請求するとともに、法定割増賃金及び付加金等の支払を求める訴えを提起した。

 これに対して、会社は、配車差別の点について、30万円を下らない月額保証の合意の存在を否定するとともに、O氏が所属していた舞洲営業所全体の業務量が減少していたことやO氏の勤務態度が悪かったこと等によるものであって、配車を減らしたことにつき合理的な理由があると主張し、割増賃金の点についても、無苦情・無事故手当、職務手当は、いずれも時間外労働に対する賃金であり基礎賃金に含まれない等と反論した。


3 裁判所の判断

 大阪地裁(中島崇裁判官)の判決は、30万円を下回らない月額保証の合意を認めず、債務不履行(労働契約に基づく賃金請求)との構成は採用しなかったものの、「被告のバス従業員の給与は時給制であり、労働時間の多寡が各従業員の収入の多寡に直結するという本件事情の下においては、被告が合理的な理由なく特定の従業員の業務の割り当てを減らすことによってその労働時間を削減することは、不法行為に当たりうる」との見解を示した。その上で、会社側の主張するO氏に対する配車の減少の理由について検討し、平成22年7月にIKEAバスの所管を別の営業所に移したことによる舞洲営業所全体の労働時間の減少は、証拠上、600時間しか認められず舞洲営業所に所属するバス運転手1人当たりの平均の労働時間が減少したことを認めるに足りる証拠はないとした。

 さらに、同判決は、O氏の勤務態度の原因があるという主張に対しても、賃金月額で30万円から20万円もの「大幅な減少を長期にわたり続けることに合理的理由があるかは疑問である」として、苦情等の内容と減額の程度、期間が均衡を失すると認識を示し、O氏に対する配車を減らしたことについて合理的理由は認められないとした。

 この点に関し、証人となった会社役員が従業員の苦情については一覧表を作成している旨の証言をしたが、会社は、弁論終結後に、尋問終了後に作成した(会社自身も認めている)他の従業員の苦情等を記した一覧表を提出し、O氏が他の従業員と比較して苦情等が多かったと主張してきた(そのため弁論が再開された)。判決は、尋問作成後に作成された一覧表の信用性を否定し、「苦情等勤務上の問題があった場合に、当該運転手に対する配車を減らすという運用をしていたとの事実を認めることができ」ず、「被告は、他の運転手に対する苦情等に関する資料及び苦情等があった場合にどの程度配車が減らされているかについて証拠を提出することができる立場にあるにもかかわらず、これらを提出していないのであるから、原告に対する配車の減少は、平成22年7月当初から、他の運転手に対する対応との均衡を欠いていたものと認めるのが相当である」として、会社の対応を断罪した。

 判決は、平成22年7月以降、会社がO氏に対する配車を減らしたことにつき、不法行為の成立を認め、平成22年6月までのO氏の月収でもっとも少なかった月の月収と実際に支払われた賃金月額の差額の計約236万円と弁護士費用24万円の合計約260万円の損害賠償請求を認容した(慰謝料については棄却)。

 また、割増賃金等の請求について、判決は、無苦情・無事故手当及び職務手当が時間外業務を行ったか否かに関わらず支給されており、時間外労働の対価としての実質を有しないとして、これらの手当は全て基礎賃金に含まれると判示し、合計  万を超える割増賃金と、同額の付加金請求を認容した。


4 本件判決の意義

 本判決は、不当労働行為性を明確に認めなかったものの、会社のバス従業員の給与が時間制であり、労働時間の多寡が各従業員の収入の多寡に直結するという重大性を十分に考慮し、O氏に対する配車差別を明確に不法行為と認め、差額賃金をほぼすべて損害と認めた点で、大勝利の判決といえる。

 会社は、些細な出来事から配車差別後の事情まで、O氏の配車差別をとても正当化できない事情を縷々述べ、また、証拠調べ後に作成した一覧表を提出する等して、O氏の勤務態度に問題があったと躍起になって主張したが、裁判所は、こうした会社の主張に流されることなく、営業所全体の業務量、営業所に属するバス運転手の業務量、苦情等があった場合の他の従業員に対する対応等を具に検討し、証拠がないとして、会社の主張を全て排斥した点で大きく評価できるものである。


5 最後に

 北港観光の一連の訴訟は、この判決をもって、ようやく全て一審判決が出揃った。5つの判決の全てが組合員側の勝訴判決という内容であり、画期的である。そのうち、会社は、書記長に対する休職期間満了を理由とする自然退職扱いが無効とされた判決と本判決を不服として、控訴した。引き続き控訴審でも勝利を目指したい。

(弁護団は、梅田章二、杉島幸生、原啓一郎、西川大史各弁護士、当職)

新和産業「追い出し部屋」事件――「追い出し部屋」配転について大阪高裁が断罪

弁護士 谷   真 介

1 はじめに

 いま、大企業の「追い出し部屋」(辞めさせたい社員を配置転換で異動させて精神的に追い詰め、自主的に退職させるための部署)が話題となっている。不必要な労働者とレッテルを貼り、会社内で履歴書をもって自分で受け入れ先部署を探させるなど、悪質な追い詰め方をする企業も現れている。

 本事件は、退職勧奨を拒否した労働者が、窓際(仕事のない部署)に追いやられて賃金を半分以下に下げられ自分から辞めるよう追い込まれるという、古典的な「追い出し部屋」手法の退職強要に対し、一人の労働者が闘った事件である。


2 事案の概要

 原告は、大阪市内の新和産業株式会社(化学製品を扱う中堅商社)に営業職として中途採用された営業マンである。入社後、新規開拓営業を担う唯一の営業マンとして10年以上勤務し、一歩ずつ成果をあげ、その間、昇給・昇格もしてきた。しかし、社長にはっきりと意見を述べる性格が煙たがられ、社長らから突如、退職勧奨(強要)を受け、営業の仕事を外された。その後も2か月間執拗な退職強要が続いたが、原告は再就職が簡単にできる年齢でなかったこともあり、退職を拒否し続けた。すると会社は、原告を全く仕事のない倉庫(追い出し部屋)に配置転換(配転)し、賃金を額面約36万円から約16万円と半分以下に下げるという「兵糧攻め」にした。過去にもその会社では「倉庫行き」を告げられ、耐えられず辞めていった従業員が何人もいた。原告は、貯蓄を切り崩し、生活費を切り詰めて、当面をしのいだが、そのような生活が長く続けられる見通しもなく、わらをも掴む思いで弁護士に相談したのである。


3 賃金仮払仮処分申立

 原告はすぐに、大阪地裁に、配転は無効だと主張し、減額された賃金の仮払を求める賃金仮払仮処分を申し立てた。数か月後に裁判所から仮処分決定で仮払命令が出された(峯金容子裁判官)。配転の点については、労働者の賃金を半分以下に下げるという著しい不利益を与えるものであり、業務上の必要性や、配転の動機を検討するまでもなく、配転命令権の濫用であるとして本件配転は無効とした。しかし、保全の必要性との関係で、わずか月6万円の仮払いしか認めなかった。最近、大阪地裁第5民事部は、保全の必要性を厳しく判断する傾向にあるが、極めて問題である。原告は仮払金を含め月額わずか10数万円の収入で(しかも賞与もわずかしか支給されない)、本訴一審判決まで耐えることはできないと判断し、大阪高裁に抗告をした。

 抗告審において、原告が月10数万円では到底生活ができないことについて、総務省の統計や原告の実際の生活状況を細かく立証した結果、抗告審決定(第11民事部、前坂光雄裁判長)では、わずかではあるが仮払額が月額8万円に増額された。


4 地裁判決と高裁判決

 仮処分決定の直後、原告は、配転無効と差額賃金請求だけでなく、差額賞与請求及び不法行為に基づく損害賠償請求をも求めて、本訴を提起した。

 大阪地裁において約1年弱の審理を経て、平成24年11月29日に出された地裁判決(中垣内健治裁判官)は、配転による賃金減額が原告への著しい不利益を与えるという理由のほか、本件配転には業務上の必要性も認められず、また退職強要を拒否した原告を辞めさせるための不当な動機・目的に基づくと断じ、配転命令権の濫用として配転の無効と差額賃金に支払いに加え、不法行為に基づく損害賠償も命じた(慰謝料と弁護士費用相当額とで合計40万円)。配転無効の事案で損害賠償まで命じられることは異例ともいえる。それほどに本件の「追い出し部屋」の退職強要の手法を悪質と判断したのである。ただし、差額賞与請求については、「本件配転がなくても原告が営業職で賞与支給を受けるほどの査定を受けていたかどうかはわからない」として認めず、この点は不満が残った。

 会社は、大阪地裁の判決に従って差額賃金等を原告に支払いながら、この内容を不満として大阪高裁に控訴した。原告も、賞与支払が認められなかったこと等を理由として控訴した。

 平成25年4月25日に出された高裁判決(第14民事部・田中澄夫裁判長)は、配転無効と差額賃金の支払いを維持した上で、不法行為に基づく損害賠償額を増額した(慰謝料と弁護士費用相当額とで合計60万円)。さらに高裁判決は、一審で棄却されていた賞与請求について、以下のとおり、注目すべき判断をした。

 まず、原告の賞与請求権は被告が支給すべき金額を定めることにより初めて具体的権利として発生するものであるから差額賞与は認められないとして、地裁判決同様の判断をしながら、控訴審において原告が不法行為構成を予備的に追加したのに応えて、「(会社は)原告が総合職であることを前提に、人事考課査定を行って具体的な支給額を決定し支給日までにこれを支払うべき労働契約上の義務を負う」とした上で、「(会社が)原告が総合職であることを前提に考課査定を行わず賞与を支給しなかったことは、原告が正当に考課査定を受けこれに基づいて算定された賞与の支給を受ける利益を侵害する」として、差額賞与の約8割に相当する金額について、不法行為に基づく損害賠償請求として会社に支払いを命じたのである。解雇事件において、解雇された間の賃金請求だけでなく賞与請求を行う場合もあると思うが、この高裁判決は不法行為構成をとってこれを実質的に認めたものとして、参考になると思われる。


5 「追い出し部屋」退職強要に対して

 解雇せずに自ら退職をさせるように仕向ける「追い出し部屋」手法は、企業が解雇のリスク(解雇予告手当の支払義務や解雇自体を争われること、また解雇を出すと助成金が支給されない等のリスク)を避けるため古くから多用されている。これに対し、立ち上がることのできる労働者はごく一部である。こうした手法を断罪する判決を積み上げることが違法な手法に歯止めをかける一助になればと思い、一例を紹介した次第である。

㈱日本政策金融公庫(旧農林漁業金融公庫)職員過労自殺事件

弁護士 上 出 恭 子

◆ 事案の概要

 政府系金融機関であった旧農林業業金融公庫に平成2年に入庫した被災者(昭和41年生)が、平成17年7月7日に自殺した事案の民事損害賠償事件について、平成25年3月6日大阪地裁第15民事部(稻葉重子裁判長)は、原告である被災者の妻・その両親に対し、総額約8900万円の損害賠償を認める判決を下した。
 被災者は、平成13年7月から高松支店に勤務、それ以前から恒常的な長時間労働(月平均100時間を超える)に従事、平成17年4月に長崎支店に転勤をして、前記のとおり自殺に至る。なお、長崎支店では、残業規制がなされていたため時間外労働時間は大幅に減っている。
 平成19年12月20日付で高松労働基準監督署長が業務上との判断をして労災認定の出ている事案であったが、被告は全面的に争った。

 

◆ 判決内容

1 精神障害の発症の有無・時期 

 生前の通院歴がなく、発症の時期について、被告・原告の間で争いがあったが、裁判所は労基署の判断とも異なる5月下旬ごろという独自の判断を示した。

2 業務と精神障害発症との相当因果関係

(1)    時間外労働時間については、以下のとおりの認定をした。
  自殺前1か月  24時間10分
  同2か月前   31時間35分
  同3か月前   0分
  同4か月前   64時間03分
  同5か月前   99時間38分
  同6か月前   37時間22分
  同7か月前   49時間43分
  同8か月前  109時間15分
 
(2)  業務による心理的負荷については、高松支店時代の長時間労働とそれによる疲労を解消しないまま転勤をして生活・勤務環境が変化したことや経験の無い金融庁検査による負担等を考慮して「被災者の従事していた業務自体は、他の職員と比較して特段過重なものではなかったとしても、業務の遅れがちであった被災者にとっては、特に、異動直前の業務が滞留して相当過重であったと認められるし、長崎支店に異動してからも、事実上自由に残業できなくなったことによって業務の遅れが顕在化し、うつ病発症後もそれに対する上司の注意や叱責が本件自殺前に何回かあったことが認められることは前記1(9)でのとおりである。これらは、平成17年5月下旬以降も業務による心理的負荷がさらに重なっていった出来事と評価できる。」と判断し被災者の従事した業務の過重性を総合的に丁寧に評価した。業務以外の心理的負荷及び個体側要因についての心理的負荷は特段見あたらないとして、うつ病発症と業務との相当因果関係を認めた。


3 安全配慮義務違反

 
(1)  電通判決の判示を引用した上で、「当該労働者の健康状態の悪化を現に認識していたか、あるいは、それを現に認識していなかったとしても、就労環境に照らし労働者の健康状態が悪化するおそれがあることを認識し得た場合には、結果の予見可能性が認められるものと解するのが相当である」と判断して、「被災者には、高松支店においては、被災者の性格や業務の遅れがちな勤務状況が原因で、特に年度末には、月100時間近い時間外労働時間をしたり、異動直前に1日に労働時間が14時間から15時間に及ぶ日があったこと、よって、その段階で蓄積された心理的負荷があったこと、これを解消することもないまま長崎支店に異動になったこと、長崎支店においては、慣れない環境の中で、高松支店では事実上自由であった時間外の勤務ができなくなったことなどから、平成17年5月下旬の時点で既に被災者に相当の心理的負荷がかかっていたことは、当然、公庫において認識できたことである。さらに、その状況下で、被災者に、休暇をとった職員の担当案件を引受させたり、新規農業参入窓口をさせたりして、担当する業務の増加が見込まれる状況に置き、他の職員のいるところで、筆頭調査役である被災者の仕事の遅れを指摘して、それを叱責することが積み重なれば、被災者に過大な心理的負荷となることも十分予見できた」と判断した。 

(2)   「公庫は、高松支店と長崎支店とで、別々の法人であるわけではないから、それぞれの支店ごとに1つ1つの出来事を分断して、安全配慮義務違反や注意義務違反があったかを判断するのではなく、本件自殺に至るまでの出来事は一連のものとして評価すべきである」と具体的に適示している点は、転勤を一つの契機として発症に至る例が一般的にあることから、他の事案においても活用が期待できる。

(3)    以上を踏まえて、「公庫は、被災者がまじめで穏やかな性格で、時間外労働時間を担当しても業務がなお遅れがちであったことを前記のとおり認識していたのであるから、被災者の性格や勤務状況について配慮することが可能であった。しかし、被災者に対して、形式的な入庫以後の年数から筆頭調査役としての役割を期待し、被災者が十分自覚している業務の遅れを叱責して、心理的負荷を蓄積させるばかりであったといえる。公庫は、上の健康状態を悪化させることのないよう配慮ないし注意し、被災者に合った業務や対応をするについて十分な考慮もなく、適切な措置等をとらなかった」として、責任を認めた。


4 過失相殺の類推適用

 
(1)  判決は、電通事件判決及び昭和63年4月21日最高裁判決を引用した上で、「損害の発生又は拡大に寄与した被災者の性格や勤務態度は、責任感がありまじめであったが、計画的効率的事務処理が不得手であったことが認められる。しかし、このような性格等は、公庫に従事する労働者の個性の多様さとして通常想定される範囲外とはいえない。したがって、被災者の上記性格及びこれに基づく業務遂行態様等を、心因的要因としてしんしゃくすることはできない。
 もっとも、前記のとおり、被災者は、公庫における勤務経験も  年と比較的長く、管理職ではないもののそれに準じる地位にあり、新人とは異なることなどからすれば、何らかの健康上の問題があれば、被災者からの申出や相談があることも期待できる状況といえ、公庫として、被災者の健康状態の悪化に気付きにくかったことは否定できない。また、労働者は、一般の社会人として、自己の健康の維持に配慮すべきことが期待されているのは当然であるが、被災者は、高松支店に勤務当時は、朝食を公庫において取るなどして公庫に滞在する時間を自ら長くし、休憩の時間を適切に確保して自己の健康の維持に配慮すべき義務を怠った面があるというべきである。
 そして、被災者の上記行為は、うつ病罹患による自殺という損害の発生及び拡大に寄与しているというべきである」として、過失相殺の類推適用して損害額の3割を減じた。
 
(2)  しかし、原判決がいう「上記行為」とは、結局のところ被災者の性格に基づく業務遂行に他ならず、電通判決に矛盾したあてはめを行っていることにならないか。今後、同種事案での安易な過失相殺の類推適用を認める根拠とならないよう、この点における原判決破棄を求めて控訴をした。なお、一審被告からも控訴されている。

(弁護団:岩城穣弁護士、中島光孝弁護士、村本純子弁護士、上出恭子)

東京高裁逆転勝利を必ず――JAL不当解雇撤回をめざす大阪支援共闘会議第3回総会を開催

大阪労連 遠 近 照 雄

 2013年5月10日(月)午後6時30分より、国労大阪会館大会議室において日本航空の不当解雇撤回をめざす大阪支援共闘会議第3回総会が開催され、不当解雇撤回裁判原告団、支援者90人の参加で、必ず東京高裁で勝利し一日も早く解雇されたパイロット、客室乗務員を「あの空に返そう」との決意を固めあいました。

昨年3月に東京地裁でだされたパイロット、客室乗務員両裁判の不当判決以降、大阪支援共闘会議として毎月29日の全国一斉宣伝行動(なんば高島屋前)、伊丹空港ターミナル宣伝・日本航空大阪空港支援要請や全国キャラバン出陣(近畿・東海)、昨年8月の実行委員会で開催されたエルおおさか大ホールの「私は変えるwith you 8・31集会」には1,000人の参加者で原告団、参加者が一体となり大阪から争議解決にむけた運動のうねりを発信する集会で成功を収めてきました。

総会では、国民支援共闘会議事務局長(航空連事務局長)の津惠正三さんにJAL不当解雇撤回闘争の現状と今後(秋口にむけて)の運動についてお話をいただきました。東京高裁審理の現状は、5月23日(パイロット)、31日(客室乗務員)の第3回弁論において証人採用の採否が決まるという重要な局面を迎えていること、東京高裁両裁判官宛の「証人採用要請ハガキ」が各13、000通を超えており裁判所に影響を与えていること、しかし、証人が採用されたとしても年内結審という裁判上の見通しもあることから、これから秋口にむけて一層の運動強化が求められ、特に東京高裁に対する「公正判決を求める要請署名」は目標100万筆に対して現在約  万筆であることから、何としても100万筆を集めきるための支援要請がありました。また、安倍内閣がすすめる労働分野の規制緩和を阻止するうえでもJAL不当解雇撤回闘争のもつ意義を改めて認識し、大きな構えをつくっていきたいとの決意が述べられました。

 原告の決意表明では「JALにおける過去の重大事故、特に御巣鷹山事故を契機に絶対安全を誓った会社が、安全より儲けを優先させる会社に戻ってしまった。解雇者141人を職場に戻さず、今年1、000人の新規採用者があった。ハトが飛ぶ入社式をテレビで見て本当に悔しかった」「この解雇は物言う労働者を職場から排除する目的であったことがより鮮明になった」「必ず職場に戻り空の安全を守る一員になりたい」等の訴えに大きな支援の拍手が送られました。大阪支援共闘会議は引き続き、萬井隆令代表をはじめ労働組合の枠をこえた体制が確認され、梅田章二副代表の「東京高裁で必ず勝利を勝ち取る」との閉会の挨拶のあと、団結がんばろうが唱和され閉会しました。

JAL整理解雇の公正な判決を求める要請署名はこちら

5・3憲法のつどい&パレードに950名が参加

弁護士 増 田   尚

 2013年5月3日、「安倍政権の改憲暴走を許さない! 5・3憲法のつどい&パレード」がエルシアターで開催され、950名が参加しました。
つどいは、大阪憲法会議、護憲の会・大阪、憲法を生かす会・大阪、とめよう改憲!おおさかネットワーク、憲法9条の会・関西、大阪宗教者9条ネットワークの6団体の共催により行われました。例年は、各団体がそれぞれ集会を開催していましたが、自民、維新、みんなの党などが競うように改憲を打ち出す中、護憲勢力も改憲攻撃をはね返すべく、連帯しようと一堂に会することにしました。
冒頭、梅田章二・大阪憲法会議幹事長が、9条・  条改憲の動きに対し、憲法を実践する立場から反撃を進めようと訴えました。
講演では、浦部法穂・神戸大学名誉教授が、日本国憲法の平和主義について、帝国主義と決別するという歴史的位置を再確認し、「押しつけ憲法」論に対しても、憲法制定権の淵源である国民が受容し、支持をしてきたという歴史的経過に反すると批判、他国への侵略を重ね、覇権を競う国家への再帰をきっぱりと否定しようと呼びかけました。
続いて、大口耕吉郎・全大阪生活と健康を守る会連合会事務局長、杉本和・桜宮高校元保護者、立石泰雄・大阪宗教者9条ネットワーク事務局長、赤羽佳世子・働く女性の人権センター、小田康徳・大阪電気通信大教授の5名によるリレートークがあり、それぞれの立場から、憲法を守り、生かすとりくみが語られました。
最後に、中北龍太郎・とめよう改憲!おおさかネットワーク代表の閉会挨拶があり、つどいは終了し、参加者は、ゴールデンウィーク中の大阪のまちをパレードし、憲法改正反対のシュプレヒコールを唱和しました。
参院選での  条改憲突破を阻止するためにも、立憲主義を否定し、国民の人権を制限して、「戦争をする国」へと突き進む改憲勢力に未来はないことを広げていく必要性があることを感じるつどいでした。

九条の会・おおさか 赤川次郎さん講演会 「エンタテインメントの中の戦争」

弁護士 大 前   治

 2013年5月17日(金)、中之島公会堂にて「九条の会・おおさか」の講演会が開催された。メインプログラムは、作家の赤川次郎さんによる「エンタテインメントの中の戦争」と題する講演。会場には1200名が集まり、盛会となった。

講演に立った赤川氏は、冒頭で「想像力が欠けていること」の恐ろしさにふれた。ある研究者が「一番楽しいのは兵器の開発研究。なぜなら、予算やコストを考えなくていいから。」と語った例をあげ、「その研究対象が『人を殺すもの』だという想像力が欠けている。そして、そのような例は、最近の文学界にも見受けられます。」と指摘。「残酷な戦闘シーンや暴力シーンを生々しく描写する小説が文学賞をとることがある。私には最後まで読み切ることができない作品もある。それはエンタテインメントの限界を超えている。『戦闘』を描くことと『戦争』を描くことは違う。本当の戦争の怖さは、戦争が人間の内部の何を破壊していくかを描くことで表現できる。そこを描くのが作家の仕事だと思う」と語りました。
ごく普通の人間が、戦争によって恐ろしい考え方や行動をとることがありうる。それが本当の「怖さ」である。社会悪や権力批判という観点をもつことによって、そうした表現ができる。個人の狂気を描写してハラハラさせる小説が増えているが、いま一度、想像力を働かせて社会を見つめていきたいと思う。――― このように講演をしめくくった赤川氏に、大きな拍手が送られた。

講演会の冒頭では、「九条の会・おおさか」呼びかけ人の松浦悟郎氏(日本カトリック正義と平和協議会会長)が開会あいさつに立ち、「憲法  条改正が叫ばれているが、憲法は国民ではなく権力者・支配者が守らなければならないルールである。そのことが、徐々に広がり始めている」と述べた。また、宮本憲一氏(大阪市立大学名誉教授)による閉会のあいさつでは、大阪市・橋下市長の言動への批判が広がるなか、さらに平和と民主主義を守る運動を発展させようと呼び掛けられた。
廣澤大介さんのヴァイオリン演奏も参加者を魅了した。平和憲法を守ろうという思いを確認しあえる充実した講演会であった。