民主法律時報

2013年4月号

社会保険庁職員の分限免職処分を取り消す!――人事院が初判定

弁護士 喜 田 崇 之

1 はじめに

 社会保険庁の解体・日本年金機構の設立に伴って、旧社会保険庁の職員525名が国家公務員法78条4号に基づき分限免職処分となっていた事件で、人事院は、平成25年4月5日、その内の一人である大島琢己さんに対する分限免職処分を取り消す判定を行った。

 この事件は、全厚生組合員39名が審査請求を行っており、うち大島さんを含めて19名が処分取消の行政訴訟も提訴している。同日、大島さん以外に秋田の3名に対する処分を承認した。残り35名の判定がいつ出されるかは現時点では不明である。なお、人事院の判定で国側が負けた場合、制度上、国側は人事院の判定を争うことができず、処分取消は確定した。
 本稿は、この事件を報告する。大阪弁護団は、伊賀興一弁護士、坂田宗彦弁護士、当職の3名である。

2 事案の概要

 政府は、平成16年頃、社会保険庁の年金福祉施設等への保険料の無駄使いや、いわゆる職員の年金未納情報のぞき見問題で3000名以上もの懲戒処分者が出たこと等の情勢のもと、公的年金制度の安定的な運営と国民の信頼回復を目的とすると称して、社会保険庁を解体する方針を決め、平成19年6月、公的法人である日本年金機構(以下、機構という。)が新たに公的年金業務を行う旨を内容とする日本年金機構法が成立した(かかる社会保険庁解体に何らの合理性がなく、極めて悪質なものであることについては本稿では省略する。)。

 さらに、平成20年7月には、機構の組織体制、職員採用の基本的な考え方等を取りまとめた基本計画を閣議決定した。かかる基本計画のもと、機構への職員採用、厚労省への配置転換、その他の処置等の取組がなされ、平成21年12月31日をもって社会保険庁は廃止され、同日までに配置転換先等がなかった職員525名が分限免職となった。

 大島さんは、機構への採用を希望せず、一貫して厚生労働省内その他の配置転換を希望し続けており、平成21年3月頃、大島さんに対する近畿厚生支局(要するに厚生労働省内の配置転換が認められるかどうか)の面接が行われたが、平成21年6月、配置転換の対象とならないことが伝えられた。その後、大島さんは、ハローワークへ行くように指示されただけで、具体的に何らの配置転換先も示されることなく分限免職処分となったものである。

 大島さんは、平成22年1月8日、分限免職処分に対する審査請求を申し立てた。3年以上にわたる人事院闘争は実に充実したものであったが、その内容は別の機会に譲るとして、判定の内容の詳細な報告を行うこととする。

3 判定の内容

(1) 分限回避努力義務を尽くすことを要請した
 判定は、年金機構法により社保庁が廃止されたことから、法78 条4号「官制の改廃により廃職を生じた場合」に該当するとしたが、同号に基づく分限免職処分を行う場合には、「分限免職回避に向けてできる限りの努力を行うことが求められるものと考えられる。そして、分限免職回避に向けた努力が不十分なまま処分が行われた場合には、当該処分は裁量権を濫用したものとなると解される」と述べ、処分者側に分限回避努力義務があることを認め、かかる回避努力が尽くされない場合には違法となる旨を述べた。

 また、分限回避努力義務の主体についても、処分権者である社会保険庁長官(実際には権限が委譲された貝塚社会保険事務局長)だけでなく、平成20年7月閣議決定において分限免職回避に向けてできる限りの努力を行う旨を決定したこと、公的年金事業の主任大臣であること等を理由として「厚生労働大臣も分限免職回避に向けての努力を行うことが求められる立場にあったものと認められる」と述べた。
 
(2) 分限回避が不十分であることを認定した
 以上を前提として、具体的な分限回避の取組については、①厚生労働省以外の他府省に対する職員の受け入れ要請がなされたが合計9人と限定的なものに留まっていること、②厚生労働省の新規採用の抑制が不十分であり、平成22年4月に新規採用が相当数行われていること、③社保庁解体後の残務整理を行う暫定定員枠と予算が確保されていながらそれらが活用されていないこと等の事実を認定し、各般の取組が不十分であると述べ、少なくとも、厚生労働省内で職員の受入を増加させることができる余地があったことを認めた。

 その上で、受入増加があれば厚生労働省内の配置転換(大島さんの場合には近畿厚生支局への配置転換)となっていた可能性があったと見るべき職員が具体的にどのような者であるかを検討し、「実際に転任候補者として選考された職員と同等以上の評価結果にありながら選考されるに至らなかった職員については、転任させることができたと見るのが相当」と述べた。

 大島さんについては、近畿厚生支局面接時の評価がCの上評価であったところ、Cの中評価でも選考されている者もおり、大島さんは厚労省内で転任させることができたと見るのが相当であり、それにもかかわらず大島さんを分限免職処分としたことは、「人事の公平性・公正性の観点から妥当性を欠き、取り消すことが相当と認められる」と結論付けたものである。

4 判定の意義

(1) 積極的な意義
 まず、本件判定は、国家公務員法78条4号に基づく分限免職事例において、人事院が分限免職を取り消した初めての事例であり、この点で大きな意義がある。この判定の考え方は、当然のことながら地方公務員にも当てはまるものであり、今後、公務員改革等に伴い公務員の分限免職が議論されるときには、国家公務員、地方公務員を問わず、この「大島判定」が一つの歯止めなり、運動の大きな柱になることは間違いない。

 また、判定の中身も、少なくとも厚生労働省も含めて分限免職回避義務を実質的に認定した上で、その取組が不十分だったこと(要するに分限回避努力義務を尽くしていないこと)を認定していることは十分な意義がある。基本計画を閣議決定して進めてきた政府の社保庁解体の取組が全く不十分であったと判断されているのであるから、政府はおおいに反省しなければならない。

 そして、分限回避努力が尽くされていれば少なくとも厚労省内で受入数を増加することが可能であったと認定し、また大島さんに対する分限免職処分も人事の公平性・公正性の観点から妥当性を欠くと明言していること等、十分に意義がある判定である。

(2) 残された課題・疑問点
 他方で、判定は、分限回避努力義務の主体について、政府全体が負うと明言しなかった。本来であれば、閣議決定を根拠としている以上、政府全体が分限回避努力を負うとされなければならないはずであり、この点は疑問が残る。ただ、現在、全国各地で係属している裁判の中で、国側が、分限回避努力を行うべき主体は処分権者たる社会保険庁長官に限られ、厚生労働大臣等の行為は「審理の対象とならない」旨の主張を展開しているのだが、それが完全に覆されたことについては今後の訴訟に十分に意義がある。

 また、判定は、「分限免職回避に向けた努力が不十分なまま処分が行われた場合には、当該処分は裁量権を濫用したものとなると解される」と明言し、その上で、分限回避努力が不十分である旨を認定しているのであるから、理論的には、全ての職員に対する分限免職処分が取り消されなければならないはずである。それにもかかわらず、受入増加があった場合に配置転換の対象となりえた者を、実際に厚労省内に配置転換の対象となった職員と同等以上の面接評価にありながら選考されるに至らなかった職員に限定しており、この点は先に述べた論理と整合しないし、救済の対象を不当に限定している。仮に同等以上の面接評価でなかったとしても分限回避を十分に尽くしていれば配置転換の対象となったはずであったのだから、「同等以上の評価」にあった職員に限定するのは不当である。

 しかも、配置転換の面接評価については、全国的な統一的な基準もなく、社保庁時代の勤務成績も反映されず、  分程度の面接で決まってしまうという極めて杜撰なものであり、かかる成績評価を前提として人事の公平性・公正性を論ずるのは、前提事実を誤っているという他ない。処分が承認された秋田3名の事案では、かかる面接評価が低い(もしくは面接そのものを受けていない)ことから、人事の公平性・公正性は問題ないとされたのだが、この点は裁判で覆せる余地が十分にあると思われる。
 判定は、このような問題点も孕んでいる。

5 今後
 現在、大島さんの早期の職場復帰を目指して、厚労省と交渉中である。大島さんが、希望通りに職場復帰できるように、引き続き全力を尽くす次第である。
 また、この事件は、単に、大島さんが職場に復帰すればよいという問題ではない。政府の取組が不十分だったと判断されたのであるから、少なくとも厚生労働大臣は大島さんに対する処分について謝罪しなければならない。弁護団としては、厚生労働大臣に対し、謝罪をさせるべく今後も取り組む予定である。
 そして、大島さんの他に全国で闘っている38名の組合員の闘争も続いており、大阪弁護団としても引き続き協力していく次第である。

羽曳野市非正規職員退職手当請求事件勝訴判決

弁護士 遠 地 靖 志

 本件は、羽曳野市立中央図書館で、平成14年4月から平成23年3月までの10年間、図書館司書として働いていた原告2人が、羽曳野市の「職員の退職手当に関する条例」(以下、「退職条例」という。)に基づき、退職手当を請求した事件です。
 3月28日、大阪地裁堺支部第2民事部(大西嘉彦裁判長)において、原告らの請求を全面的に認め、市に退職手当の支払いを命じる勝訴判決が出されましたので、報告します。

 原告らは、平成14年4月に、羽曳野市の嘱託員として1年間の期限付きで採用され、その後も1年毎に計9回契約の更新がなされ、平成23年3月まで、10年間連続して勤務し、同年3月31日付けで退職しました(なお、同市の嘱託員の雇用契約の更新は、9回までしか認められていません。)。

 同市の退職条例では、正規職員でなくとも、「職員について定められている勤務時間以上勤務した日が18日以上ある月が引き続いて12月を超えるに至ったもので、その超えるに至った日以後引き続き当該勤務時間により勤務することとされているもの」(退職手当条例2条2項)についても退職手当の支給対象となります。

 原告らの勤務は、正規職員と同様に週5日、1日7時間45分であり、職務内容も管理業務を除いて正規職員と同様でした。また、雇用契約は1年毎に更新されるものの、実態としては継続して雇用されており、勤続年数に応じて昇給もあり、有給休暇も取得できました。さらに、図書館長の指揮命令にも服しており、秘密保持義務、職務専念義務、信用失墜行為の禁止等の制約が課され、任命権者は勤務成績等によって原告らを免職することもできるなど、服務規律等も正規職員と同じでした。

 しかし、羽曳野市は、①原告ら嘱託員は地方公務員法第3条3項3号の特別職に該当するから退職手当の支給はできない、また、②原告らは1年間の期間を定めて雇用しているのだから、「引き続いて12月を超えるに至った」という要件に該当しない、などとして、原告らを含む嘱託員に対して退職手当を支給していませんでした。

 主な争点は、①原告ら嘱託員が地公法3条3項3号の特別職か、一般職か、②退職条例の「引き続いて12月を超えるに至った」の要件は、法的な雇用契約期間で判断するのか、事実上の雇用継続関係で判断するのか、の二点でした(なお、原告らは、仮に原告ら嘱託員が特別職に該当するとしても、退職条例2条2項の要件を満たす限り、退職手当は支給されるべきと主張していました。)。

3 (1) 判決では、退職条例が地公法24条3項、6項に基づいて制定された経緯から一般職の地方公務員に適用されることが前提となっていると述べて、まず、原告らが一般職か特別職のいずれに該当するかについて判断しました。

 この点について、判決は、地公法3条3項の特別職に当たるか否かは、任命権者の意思を考慮しつつも、職務の内容・性質、勤務態様や勤務条件等を総合的に考慮して判断すべきであり、その具体的な判断基準として職務遂行に際して指揮命令関係があるか否か、専務職であるか否か、及び成績主義の適用があるか否か等を考慮すべきとしました。そして、原告らは正規職員らとほぼ同等の勤務環境において、同様の勤務に服しており、職階制や成績主義等の地公法の定める他の一般的規定も適用されるとして、一般職に当たると認定しました(なお、羽曳野市の退職条例は旧自治省が昭和28年に示した「職員の退職手当に関する条例(案)」をもとにして制定されていますが、旧自治省が全国市町村職員退職手当組合連合会会長に宛てた給与課長回答(昭和41年4月1日自治給第32号)では、同条例(案)は「地方公共団体の特別職の職員で常勤のものにも適用することを予想して定められたもの」としています。この解釈によれば、一般職か特別職かで違いはありません。)。
 
(2) その上で、原告らが、退職条例が定める「引き続いて12月を超えるに至った」との要件を満たすかについて判断しました。
 この点については、退職条例と同様の規定をもつ国家公務員退職手当法及び同施行令が、「雇用関係が事実上継続していると認められる場合」か否かによって判断していること(総務大臣通達・昭和60年4月30日総人第260号)、同法及び同施行令の改正の経緯をみても雇用関係が事実上継続している場合を指すと解されること、平成22年10月に導入された期間業務職員(任用期間は12月を超えないとされている)も再任用により雇用関係が事実上12月を超えた場合に退職手当の支給対象となることなどから、退職条例の「引き続いて12月を超えるに至った」とは事実上の雇用関係の継続の有無により判断するのが相当であると結論づけて、原告勝訴の判決を言い渡しました。

 本件は、そもそも、正規職員と同じように働いているのに、なぜ嘱託員だけ雇用期間が制限され、その上退職手当でも差別されるのか、という疑問から始まりました。原告らが勤務していた羽曳野市立中央図書館はその名のとおり、羽曳野市の図書館行政の中心的な役割を担ってきており、開館当初より正規職員2割、嘱託員8割という職員配置のもと運営されてきました。嘱託員なくては業務が到底立ちゆかないという状況であり、嘱託員の果たしてきた役割は非常に大きいものがあります。

 昨今、羽曳野市に限らず多くの地方公共団体で非正規雇用が拡大しており、「官製ワーキングプア」と称されるように、正規職員に比べて低賃金かつ不安定な労働条件のもとに置かれています。羽曳野市の退職条例と同様の規定の退職条例を制定している自治体は全国に多数あります。本判決は、正規職員と変わらない勤務実態の非正規職員については、正規職員と同じ扱いにすべきことを認めた判決であり、全国的にも大きな意義のある判決です。

 なお、羽曳野市は、4月2日付けで控訴しました。引き続き、本件訴訟へのご支援、ご協力をよろしくお願いします。

(弁護団は、岩嶋修治、高橋徹、遠地靖志)

神戸刑務所の派遣労働者の交替要請は違法――大阪高裁が一審を変更し、国家賠償を認める

弁護士 村 田 浩 治

1 事件の経緯

 国の機関である神戸刑務所において、2003年から、偽装請負の形態で始まり、その後労働者派遣の形態で違法な就労を継続していた管理栄養士が、調理指導や衛生管理のため受刑者が働く炊場に入場する必要性があるのに、その入場の指示が曖昧であったため、安全に対する管理責任の所在に不安を覚え、所属する責任者の課長に対し、明確な指示を求めたところ、当該課長は派遣元会社に当該労働者の交代を求め、職場から追い出そうとしたため、労働者が労働組合に加入し、国に対し団体交渉を求めたが、刑務所が「なかったことにして職場に戻ってほしい」という対応のため、刑務所長の謝罪、交代要請にいたる事実経緯の説明、職場環境改善の提示等の要求を掲げて、さらに団体交渉を求めたところ刑務所が団体交渉を拒否し労働者が職場に戻る機会を失ったという事件である。

2 公務職場での民間労働者の存在

 刑務所の管理栄養士は本来、管理栄養士という職務の性質上、刑務所が栄養と衛生管理の直接責任を持つべきであり、また刑務所の受刑者に対して調理指導を行い衛生管理上の指示も出すのだから直接雇用された正規職員が当然行うべき業務である。刑務所では2003年ころから業務委託という形式で管理栄養士の業務が民間業者に委託され、処遇施設に入り込む形で民間の労働者が仕事をしていた。本件の当事者である女性労働者は交代要請で事実上職を追われそうになり、一旦はあきらめかけたが、思い直し個人加盟の「アルバイト・派遣・パート関西労働組合」に加入し、組合の支援をうけながら団体交渉に臨んだ。

 その後、組合の支援をうけて2007年10月頃、兵庫労働局に是正指導を求めて申告した。兵庫労働局は労働者派遣が業務委託時代から続いていたとして、同年12月に是正指導を行った。その後、全国9つの施設において偽装請負状態であったことが新聞記者の情報公開で明らかとなったが、違法派遣労働者はその後、直接雇用されている。

3 労働委員会の判断

 2008年12月、兵庫県労働委員会は、申立を棄却する決定との結論を出したが、国の使用者性を認め、本件要求事項について団体交渉応諾義務があることを認めた。棄却は「すでに後任の管理栄養士が勤務している現状においては、当該組合員が復帰する可能性はないので、救済の利益がなくなっている」ということのみであった。労委命令までは労働組合のみで手続きを進めていたが、この時点で弁護士に相談が持ち込まれた。学者のご意見も参考に、労委の判断を生かして、中労委への再審査請求は行わず、労働組合による団体交渉拒否による損害賠償と労働者個人の損害賠償を行うこととした。

4 一審神戸地裁の判決

 一審神戸地裁(矢尾和子裁判長)は、神戸刑務所が労働者の交代要請により労働者の地位に影響を与えたことを認め、「労働組合法上の使用者にあたらない」との国の主張を退けた。そして交代要請に至る経緯及び職場復帰に向けた就業環境の改善などが義務的団交事項にあたるとして、神戸刑務所の団体交渉拒否が不当労働行為にあたるとしたうえで労働組合に対する無形の損害として金33万円(うち弁護士費用3万円)の支払いを命じた。

 ところが、労働者個人については、刑務所においてパワハラを受けたという点について、炊場に入場する指示は出していたのに、労働者が混乱をもたらしたという国の主張を採用し、個人の損害賠償請求をすべて否定して請求を棄却した。片手落ちの評価は免れなかったが、民間の派遣労働者に対する国の労組法上の使用者性を認め損害賠償を命じたことは画期的であった。国は控訴せず労働組合の請求事件は確定した。

5 控訴審の判断

 控訴審の課題は、労働者個人に対するパワハラと交代要請の違法性による損害賠償請求のみとなった。大阪高裁第11民事部(前坂光雄裁判長)は、証拠調べは行わず、準備書面は控訴理由書を含め4通が提出され、改めて控訴人本人の陳述書も刑務所において名札着用していたことの不安など炊場入場にいたるまでの労働者個人の心情や、本来派遣労働ならば派遣先使用者が負うべき責任がないがしろにされてきたことを強調した。

 2013年1月16日に言い渡された判決は、①偽装請負状態で就労させたこと自体についての違法性は否定したものの「偽装請負を前提に、派遣先が指揮命令を行ったことが原因で労働者が不利益を被った場合は、その指揮命令の違法が問われ、その違法を判断する際に偽装請負である点が考慮される余地はある」と指摘し、②直接雇用申込み義務違反による損害賠償も否定したが、偽装請負の場合、法律が要件とする派遣元からの通知等は不要と解する余地もないではないとし、仮にそのような立場に立ち、直接雇用申込義務に違反した事実があると解するとしても本件では直接雇用関係を構築することは不可能であって、このような事態に至ったのは本件交代要請が原因であるから、これによる侵害利益の回復は交代要請の違法による損害賠償を認めることで評価されているとみることができるとした。その上で、③職場環境整備義務違反は、交代要請の違法の問題と重なるとして独立に評価する必要はないと判断した上で、④本件交代要請は違法であるとの判断に基づき損害賠償を認容した。

 なお、控訴審では、団体交渉拒否による賠償は個人の権利侵害も構成するとの主張も展開したが、⑤団交拒否の違法ついては、団体交渉の当事者はあくまでも労働組合であって労働者個人ではないから、団体交渉権の侵害について労働者個人は権利主体たり得ないとした。

 特徴的なのは偽装請負は違法派遣であり、実質派遣状態であるという認定を踏まえ、そうであるならば派遣法では、派遣先にも苦情を受け付けたうえで相応の対応をすることが求められているという具合に実質派遣という実態のもとで労働者派遣の派遣先が負っている義務を重くとらえているという点であり、判決は、神戸刑務所の職員が、控訴人の苦情を放置したのは、本件業務委託契約に派遣管理栄養士に対する身体的損害についての刑務所長の責任が明記されておらず、その責任の所在を明確にしていなかったからだ、その原因はまさに、偽装請負という不明確・不安定な労働環境に控訴人を置いて就労させていた点にあるとして、正式な労働者派遣契約の場合と対比して生じる具体的な不都合として本件では刑務所という特殊な職場における安全及び衛生に関する事項や苦情処理に関する事項を設けなければならないという点を重視した。

 今後の違法派遣の場合の労働者の被る不利益をどう主張するかという点で参考になる判断と考える。今後の参考のため報告する。

 なお代理人は永嶋里枝(主任・大阪労働者弁護団)、辰巳裕規(兵庫民法協)、普門大輔(大阪労働者弁護団)、増田裕一(兵庫民法協)、当職の5名である。

「2013年 春の憲法学習講座」の報告

弁護士 西 川 大 史

1 はじめに

 大阪憲法会議・共同センターは、2013年3月17日、大阪府教育会館で「2013年春の憲法学習講座」――9条をまもり、憲法をいかす共同を広げ、改憲阻止のゆるぎない多数派を――を開催しました。
 自民党が2012年4月28日に憲法改正草案を発表し、国会でも改憲派が多数を占めているなど、憲法改悪の流れが急加速する中、273人が参加し、名古屋大学名誉教授で憲法会議代表委員の森英樹先生の講演、赤旗の政治部記者・中祖寅一氏の特別報告に学び、改憲阻止に向けた運動、取り組みを広げることの大事さを改めて確かめ合いました。

2 憲法の原点に立ち返った運動を

 「政権再交代でどうなる憲法、どうする憲法」と題して講演をされた森先生は、自民党の「日本国憲法改正草案」について、条文に即して分かり易く説明をされました。憲法の前文を廃棄し、憲法9条2項を削除し「国防軍」を明記していることや、「公の秩序」を口実に人権に制約を加え、憲法  条が定めている改正発議要件を現行の衆参両院議員の3分の2から2分の1に緩和することなど自民党の「日本国憲法改正草案」の問題点を詳しく批判されました。

 また、森先生は、安倍首相が  条改憲を公言したことについて、「首相が憲法の条文を名指しして改定を公言したのは初めて」と指摘され、  条改憲の本音は、9条改憲をやりやすくするためだと指摘すると同時に、「その狙いが9条改定にあると指摘するだけでは押しかえせない。権力を縛るという本質に対するごまかしであることを明確にすることが重要だ」と述べられました。
 さらに、森先生は、自民党が「自主憲法制定論」を強調しながらも、「日米同盟推進」を掲げるといった安倍政権の改憲路線の矛盾を厳しく断罪され、「憲法9条の精神は、もめごとを軍事で解決しようとするなというもの」であり、「殴り合いでは、何も変わらんぜよ」という坂本龍馬の台詞を用いて、今こそ憲法の原点に立ち返って運動を進め広げることが大事だと語りかけられました。

3 草の根の世論を

 森先生の講演に続いて、しんぶん赤旗の政治部記者の中祖寅一氏が「改憲勢力の動向と深まる矛盾」と題して特別報告を行いました。改憲派の動向や国会の状況について、赤旗政治部記者ならではの緻密で鋭い取材活動のエピソードも交えて特別報告をされた中祖氏は、96条改悪には改憲勢力内部からも、「9条改悪の狙いが丸見え」「まずハードルを下げるやり方が国民的に疑われる」などの声が出ていることを紹介されるとともに、集団的自衛権の問題についても、「許されない」と長年言ってきた自民党自身の主張とも食い違うことや、内閣法制局の反対など矛盾だらけだと述べられました。

 また、中祖氏は、参院選で自民党や日本維新の会などの改憲勢力の動きを止めるたたかいと同時に、改憲勢力が国民投票に持ち込むことができないように、憲法を守る幅広い草の根の世論をつくることが重要だと述べられました。

4 改憲反対の国民世論形成に向けて

 学習会の冒頭、大阪憲法会議幹事長の梅田章二弁護士が、「参院選で改憲派を落選させて、憲法を守る立場の議員を一人でも多く送り、改憲反対の国民世論を示そう」と呼びかけられました。
 憲法改悪の流れが進む中、改憲反対の国民世論を多数とするために、憲法の原点に立ち返り、憲法を守る草の根の運動を広げていくことの重要性を改めて学び確認することができた一日、それが2013春の憲法学習講座でした。

自民党の改憲草案、こんなのは「憲法」じゃない!――明日の自由を守る若手弁護士の会設立総会

弁護士 宮 本 亜 紀

1 明日の自由を守る若手弁護士の会とは?

2013年3月30日(土)、東京の中央大学駿河台校舎で、「明日の自由を守る若手弁護士の会」の設立総会があり、北は北海道、南は大阪までの若手弁護士約50名が集まりました。関西からは、民法協会員の若手弁護士6人が参加しました。

「明日の自由を守る若手弁護士の会」は、自由民主党が昨年4月に公表した憲法改正草案に反対し、昨年12月衆議院選挙で政権を取った自民党らに、その改憲をさせてはならない、危険な内容を広く市民に知らせようと、選挙直後から準備を始め、今年1月に全国の若手(51期以後、弁護士経験15年以内)に呼び掛けて設立しました。

自民党改憲案は、私たち若手弁護士にとって強烈なショックを与えました。憲法9条を変えるだけでなく、憲法の意味を180度変えるものだったからです。若手弁護士は、経済成長を遂げた平和な民主主義国家に生まれ育ち、日本国憲法を学びました。憲法で、戦争を放棄し、人権が保障され、そのために国会・内閣・裁判所・地方自治の統治機構が定められたこと、国務大臣・国会議員・天皇・官僚らは、国民から統治を信託されて憲法を遵守して国を運営すべきことを、ある意味当然に思っていました。しかし、自民党改憲案は、「すべて人間は生まれながら自由・平等で、幸福を追求する権利を有する」という考えを否定して、国が私達の権利を容易に制限し、国防軍による戦争を可能にして、「国家権力を縛る憲法」から「国家が人を縛る憲法」へと変貌させていたのです。

「憲法」と言うと、法律はよくわからない、何か窮屈なものというイメージで、国民によく知られていないと思います。中学・高校でさらりと触れられて終わりですから、仕方ないと思います。でも、国民がよくわからないうちに、国家権力が自らの鎖を外して国民の幸せを奪うようなことがないように、「憲法」の意味をわかりやすく広めて行くのが法律家の役割だと、若手弁護士らは集まりました。特に未来を担う若手だからこそ、これまで護憲活動をされてきた先輩方に学び、さらに発展させて、アクティブにあらゆる行動を取ろうと決意したのです。

2 3.30設立総会の模様

設立総会では、一橋大学の阪口正二郎教授に講演いただき、「個人が自らの自由を確保するために一定の合意(社会契約)をして国家を形成した、これが人類の歴史に裏付けられた近代立憲主義である」との、法学部・法科大学院の講義を思い起こす内容から始まりました。私は、中学3年の公民の授業で日本国憲法を読んで、なんて崇高な理想を掲げた格好良いものだろうと思い法学部に入学しましたが、大学で学んで初めて、単なる格好良い理想を戴いているだけではなく、個人が主体的に国家を形成し、権力担当者を監視し、不断の努力で護るものだと理解した時の新鮮な気持ちを思い出しました。

阪口先生は、「自民党改憲案は、国家と国民との関係を根本的に変えようとしている」として、自ら最も重要だと考える13条「個人の尊重」をキーワードに、立憲主義を掘り下げて語って下さいました。そして、現行憲法下においても、残念ながら日本は個人よりも共同体を優先させる国であり、周りに同調せよという雰囲気の息苦しい社会である。こういう社会において「もっと個人であることを大事にしなさい」と言ってくれる13条は非常に大事との言葉はわかりやすく、広げていきたいと思いました。

96条改正については、民主主義・立憲主義を可能にするために改正手続が厳格にされた理論など、他にも日本国憲法の深い意義と、自民党改憲草案の違いについて話が尽きず、単発講義では物足りなく感じました。

記念講演に続いて、①4つ折りカラーミニパンフ完成、②紙芝居(パワーポイント)完成、③インターネット戦略、④学者との連携の活動報告がなされました。
①ミニパンフは可愛くわかりやすく、初版はあっという間に売り切れ、現在増刷しており、もうすぐ民法協の皆さまのお手元にお届けするので、当会へのカンパの意味をこめて1枚  円で大量購入いただき(割引あり)、諸団体の憲法活動に使っていただけたらありがたいです。
②紙芝居は、右のような絵柄で、憲法の意味をわかりやすく説明できて好評です。関西メンバーは、ストリート(街頭)紙芝居を企画中です。
③インターネット戦略では、FB(フェイスブック)の「いいね!」や、ツイッターのフォローを広げて行くことも重要事項に決定ました。民法協会員の皆さま、是非ともよろしくお願いします。
④学者は、憲法学者からメッセージをもらっていますが、民法協の労働法の先生方も、是非ともお願いします。

総会後の懇親会は、メンバーの個性が溢れ、楽しくメンバーを増やし、活動を広げていく構想が膨らみました。
総会には新聞取材も入り、雑誌の執筆依頼も来て、4月17日東京での記者会見も注目を集めています。50期以前で残念ながら会員になれない弁護士の先輩方、労組の方々、学者の先生方、今後もアイディアいっぱいの活動を展開していきますので、是非とも応援をよろしくお願いします!

教育の場における「体罰」を考える――子どもと教育・文化を守る大阪府民会議シンポジウム

大阪教職員組合 末 光 章 浩

 2013年3月31日(日)午後1時30分より、大阪グリーン会館ホールで右記シンポジウムが41名の参加で開催されました。今回は「体罰」をどう一掃するか、一掃するために何が必要かということを目的としたシンポではなく、「体罰」とは何か、またその実態はどうなっているのか、「体罰」がうまれる背景や状況がどうなっているのかを交流し、「体罰」問題を掘り下げるための府民的討論を呼びかけることを目的に開かれました。

シンポの進行は6人のパネリストと会場からの双方向の意見をコーディネーターがまとめ、次の討論課題を提起するという形態で行いました。多彩な顔ぶれのパネリストは、桜宮高校保護者の長瀬信明弁護士、学校での「体罰」を中心に人権問題で活躍しておられる下川和男弁護士、父母の正森真由美さん、貝塚にある通信制の秋桜高校の浦田直樹さん、小山民さん、府立高校生の6人。大阪教文センター事務局次長の山口隆さんをコーディネーターに、まず各パネラーから思いを語ってもらいました。

 まず長瀬弁護士からバスケット部顧問の「体罰」による生徒の自死という痛ましい出来事を通し、保護者の中にも当初あった「少しくらいの『体罰』は許されるのでは」「指導上『体罰』は必要でないか」という考えが、保護者間の論議を経て、「『体罰』は法的には犯罪であること、『調教』と同じで教育指導とは全く違う行為である」ことが全体で確認され、「『体罰』は愛のムチであると思っていたが、今回のことで考えが変わった」とのお父さんの発言が象徴的と紹介。同時に、「『体罰』を必要と思っている人はまだまだいて、意識を変えることは難しい」とも発言、問題の深さがうきぼりになりました。

続いて、下川弁護士が発言。自身の経験から、忘れ物したからと、「正座と腕挙げ」を授業終了までやらされたこと、ほっぺたに検印の判を押されたこと、中学時代に教科書で先生に殴られたこれまで3回の「体罰」を受けたことを紹介。「体罰」がおこなわれる大きな背景に「学校に子どもが安心して、気兼ねなしに来られるようになっているのか」という提起がありました。「①子どもたちにとって安心・安全であるはずの学校での『体罰』問題は、直接『体罰』を受けていない生徒・児童も、『体罰』を見せられる苦痛や『体罰』に対する麻痺などの多大な影響があること、②生徒・児童に対する直接的な安全配慮義務がある教職員にとって、『体罰』をした教職員は明らかに義務違反であり、『体罰』をしないが見過ごしていた教職員も義務違反である」との指摘もありました。

主婦の正森さんからは、自身の経験から小学校の時にふざけていた子が担任に大きな三角定規の取っ手で頭をたたかれ、血が噴き出し、救急車が呼ばれたこと、また、子どものクラブで試合中に相手方の監督がエラーした生徒に「あほ、ぼけ、カス」と罵倒し、大変嫌な思いをしたことが語られました。「『体罰』とは愛のムチなんかではなく、自分のこれまでやってきたことを否定され、こんちくしょうと相手に怒りをぶつけているだけ、相手の事なんか考えているはずもない」とぴしゃりと発言。

続いて府立高校2年生は「工科高校の先生が、実習中に騒いでいる生徒に対し、危ないからと叩いたりするのは仕方ないと思う。しかし、自分が親になったら、叩くなど『体罰』はしたくない。」という「本音」の発言に拍手がおこりました。

最後に、秋桜高校の前身である関西コンピューター学院時代の「体罰」一掃の取り組みにもふれて、浦田さんや小山さんは「安心して過ごせ、優しさのある秋桜で子どもたちは安心して自分自身を出せ、優しく育っている。校則がなくても生徒たちは生き生きと生活している。先生は生徒たちの前に立つとき、鎧を身につけるような対応はしない」と発言。
生徒が荒れている時、その解決を「力」に頼り、「力」で生徒を押さえ込もうと、「力ある」先生がどんどん採用され、結果として「体罰」が横行し、学校が荒廃していった前身校の痛恨の経験を経て、今日の秋桜高校が生まれました。その経験の中から、「生徒・父母・教職員の参加と共同の学校づくり」が「体罰」と究極的に対峙することを浦田さん・小山さんの発言から明らかになりました。

その後、会場からの発言では「叩いたりすることをしてはならない。先生が叩くことによって、叩かれた子は先生によって暴力が肯定されたと思い、その子は必ずまねをする。子ども同士でたたいたり、いじめたりすることを話し合う関係をどう築いていくのかが重要」「ある学校の実践。しんどい学校現場だが、教職員が『体罰』はしないと宣言し、生徒を詰めない、厳しい指導はしない、生徒をどうにもないところに追い込まない、暴言は言わせない、また暴言を言ったときでもムキにならず、相手の反応をずらすよう努力し、力で屈服させない、大声で怒鳴らない等の指導を行いながら、少しずつ学校を改善している」ことが紹介されました。

今回のシンポの中で、体罰とはまさに、力で相手を屈服させる暴力そのものであり、人権を無視した、教育とは全く無縁な行為であることが様々な方から語られました。会場からは、少々の「体罰」は仕方ないのではと思っていた方が「認識が間違っていた。きょうのシンポジウムでつくづくそのことがわかった」と発言され、正にこのシンポの目的と合致するところでした。また「体罰」を受けたり、「体罰」を見せられた子どもたちは一生記憶から忘れることがないことも明らかになりました。

最後にコーディネーターの山口さんから、今回のシンポを通して、次の4つのこと「①『体罰』とは何かが明確になったこと、②『体罰』の背景にあるものが明らかになったこと、③『体罰』をなくすことはそれだけに止まらず、根本的には「学校づくり」をどうするのかが問われていること、④『体罰』をなくすのは難しいが、なくせることを展望して、小さな実践を積み重ねていくことが重要であること」が明らかになったとまとめの発言がありました。
今回の府民会議のシンポジウムをうけ、府下各地で「体罰」問題での様々な討論が巻き起こることを期待して、閉会となりました。

ブラック企業といかにたたかうか――労働相談懇談会が開催されました

弁護士 松 本 七 哉

 2013年4月12日、民法協と労働相談センターの共催による「労働相談懇談会」が開催されました。今回の「ブラック企業といかにたたかうか」というテーマが切実であったためか、従来の懇談会よりも多い約  名の参加がありました。

 まず、河田智樹弁護士から、恒例の前回の懇談会以降(1月から4月)の、判決や労働法制等をめぐる情勢報告が行われました。ビクター差戻審の労働者性を認める判決やマツダ防府工場の派遣社員を正社員と認める判決、大阪市の思想調査での不当労働行為の認定など、この3カ月の間に勝ち取られた貴重な事件が、簡潔に整理されて報告されました。毎回のことですが、この情勢報告を聞くだけでも勉強になります。

 続いて、今回の懇談会のメインテーマ、「ブラック企業といかにたたかうか」を中西基弁護士からお話しいただきました。ブラック企業とは、明らかに違法な行為を行う使用者のことであり、そのたたかいかたは、その違法性をついていくということに尽きるわけですが、中西弁護士は、いくつかの事例で、これを検討しました。

(1) 第1は、「追い出し部屋」の問題です。これは、中西弁護士が実際に取り扱っている事件を例に報告されました。社内や社外で、「就職先」を探すことを業務とされ、中西弁護士が担当する依頼者は、いずれもうつ病等の精神疾患を病んでいるとのことで、その実態の悲惨さが理解できます。これに関しては、ベネッセ訴訟の判決があり、そもそも「追い出し部屋」自体が違法な制度であり、このような部署で勤務すべき義務がないことが認められています。これについては、人材派遣会社が、追い出すべき労働者を「ローパフォーマー」と呼び、このような「追い出し部屋」を作って労働者を追い出すシステムを「販売」している実態があるようです。

(2) 第2は、有期雇用をめぐる改正労働契約法の活用についてです。更新上限を5年とすることにより無期への転換を脱法する攻撃への対応の問題です。これは、個別合意により行われる場合と、就業規則の変更により行われる場合の事案が取り上げられました。いずれの場合も、そのような合意を迫る、あるいはそのような就業規則の変更を行う意図を喋らせ証拠化しておくことが重要です。そのうえで、当該条項を抹消させてサインする。あるいは、サインをしないで更新を勝ち取ります。サインをしないことで雇い止めになった場合、改正法19条でたたかいます。改正法18条の適用を潜脱するような就業規則の変更は合理性を欠き、労契法10条よりその変更自体が無効だと主張できるでしょう。

(3) そのほか、労契法20条による「不合理な労働条件の禁止」が、パート法8条よりも使い勝手がよく、武器になるのではないかとの指摘がありました。

(4) 今回の労契法の改正部分は、今後脱法が蔓延すると、それが「あたりまえ」となってしまう可能性があり、脱法に対するたたかいは、「公序」をつくるたたかいであるとの指摘は共感できました。それでなくても「労基法みんなで犯せばこわくない」の世界です。せっかくの労契約法の改正もそうならないようにするため、労働相談で多くの事案を拾い上げ、脱法を許さない状況を作っていく必要があると感じました。

 中西弁護士の報告後、各地域の労働相談員、地域労組のかかえる相談事例を検討して、懇談会を終えました。次回の懇談会は8月2日(テーマは未定)。
労働事件をいろいろ経験してみたいと思う弁護士さん! こんな実際の様々な事案を前提に、勉強になる企画はないですよ。たくさんの若手弁護士の参加を呼びかけます。懇談会後の懇親会も、第一線で労働相談を聞いている組合の人たちの本音が聞けて、有意義ですよ。