民主法律時報

2013年2月号

北港観光バス事件――会社の不当な嫌がらせを断罪

弁護士 西 川 大 史

1 はじめに

 北港観光バス㈱には、建交労の組合員4名が在籍しているところ、会社は、分会長に対して雇止め、副分会長に対して配車差別、書記長に対して休職期間満了を理由とする自然退職扱い、分会員に対して懲戒、配転など不当な攻撃をおこなった。そのため、組合員らは、大阪地裁に個別労働事件計5件を提訴していた。これに対して、大阪地裁は、2012年1月18日、副分会長に対する配車差別を除く4件について判決を言い渡し、会社の不当な嫌がらせを断罪した。

2 分会長喜多に対する雇止め

(1) 当時68歳だった分会長の喜多は計13回の雇用契約が更新されてきた。会社では、60歳定年制を採用していたが、それ以降も、継続雇用制度により、従業員からの希望があれば、少なくとも70歳までは継続して雇用されることが慣行になっていた。ところが、会社は、喜多に対して、2010年8月に「継続雇用制度の期間を大幅に超えていること、及び、体力的にも勤務継続可能でないと会社が判断したため。」との理由で、喜多に雇止めを通知した。
 しかし、会社では、喜多を雇止めするにあたり、医師の診断や検査を実施したこともなく、喜多自身も健康面及び体力面において勤務継続することに何ら問題はなかった。また、会社は、雇止め時に、当時68歳以上の他の従業員4名に対しても雇止めを通知したが、会社は喜多以外の継続雇用を希望する者に対しては、雇止めを撤回し、再び雇用を継続した。
 そのため、喜多は、雇止めが無効であるとして、2010年12月10日、地位確認等を求めて提訴した。

(2) 大阪地裁の田中邦治裁判官は、まず、会社には高齢の運転手が多く在籍していることや、会社役員が、喜多の入社時に「  歳までは頑張ってもらう」と発言していたことなどから、  歳までの継続雇用が慣行として存在していたことを認めた。
 そのうえで、雇止めの有効性について、会社には高齢者の雇用を終了させる方針などないと判断するとともに、会社は雇止め時に喜多の健康状態を考慮していたとはいえないことや、喜多が体力健康面で業務に耐えられないという事情もないとして、喜多に対する雇止めは合理的理由がなく無効と判断した。
 本判決は、  歳までの雇用継続に対する期待を認めるとともに、会社の不合理な雇止め理由をすべて排斥して、雇止めを無効と判断しており、非常に画期的な判決である。

3 書記長安田に対する自然退職扱い

(1) 書記長の安田は、2010年9月2日、通勤途中に交通事故被害に遭い、全治6週間の見込みを要する右小指中手骨開放骨折等を負った。安田は、事故翌日から会社を欠勤したところ、会社は、安田に対して休職を命じることもなく、「ゆっくり治るまで休んでもらって良い」と述べたため、安田は治療に専念していた。
 そして、安田が2010年12月29日に職場復帰の申し出をしたところ、会社は、診断書を提出するよう命じたため、安田は総合病院で精密検査を受けた上で診断書を作成してもらうことにし、その旨を会社に伝え、会社も了承していた。ところが、2011年2月2日、安田が精密検査日を会社に連絡したところ、会社は、安田に対して、休職期間が満了しており、復帰の見込みがないため退職になった旨を通告してきた。
 しかし、安田は、休職命令を受けておらず、また、2月2日時点で就労は可能であっため、地位確認等を求めて提訴した。

(2) 大阪地裁の田中邦治裁判官は、会社から安田に対する明示の休職命令がなかったと認定するとともに、仮に、会社が主張するような黙示の休職命令があったとしても、命令日が特定できず、2011年2月2日に休職期間が満了したと認める証拠はないとした。加えて、裁判所は、安田が2011年2月2日に就労可能だったとも判断した。
 休職命令がなかった以上、自然退職扱いが無効であることは当然ではあるが、会社側の不合理な主張をすべて排斥した大勝利判決なのではないか。

4 分会員田中の残業代請求事件・地位確認等請求事件

(1) バスの整備係であった田中は、早朝深夜もバスの整備に従事するとともに、緊急の整備に備えて手待ち待機するなどしていたにもかかわらず、会社では残業代が一切支払われていなかった。そこで、田中は建交労に加入し、2010年11月2日、未払い残業代の支払いを求めて提訴した。
 すると、会社は、田中が残業代請求訴訟を提起したことに対する報復として、田中に対して、「バスを触るな」、「愛社精神が足りない」などと罵倒して、田中を従前のバス整備業務から外し、一切の仕事をさせなかった。その直後、田中は、有給休暇を取得したところ、会社は、休暇届の手続に不備があるとして、15日間の出勤停止処分を言い渡した。その後、会社は、突然、田中に対して配転を命じ、一日中、日報の書き写しをするという業務を命じた。田中は、頚椎に障害があり、日報の書き写しという細かいデスクワークはできないと抗議したが、会社は田中の言い分を聞き入れることはなかった。田中は不慣れで過酷な業務を強いられ、しかも終日、上司らから業務を監視されたため、視力低下やうつ病を発症し、2011年3月21日、退職日付が空欄の退職届を提出してしまった。組合では、会社に対して退職届の撤回を求めたが、会社は退職届の撤回を認めることはなかった。そこで、田中は、2011年7月8日、懲戒処分の無効、配転命令の無効、及び地位確認等を求めて提訴した。

(2) 大阪地裁の峯金容子裁判官は、田中の手待ち待機時間の一部についての労働時間該当性を否定したが、請求額の約半額の残業代請求については認めた。それとともに、裁判所は、会社は所定労働時間の管理を怠ったとして判決認定の残業代金額から除斥期間に係る部分を除いた付加金の支払いを命じた。
 また、田中の退職届の撤回は一方的な解約の意思表示であり、仮に合意解約の申し入れと解しても会社の承諾があると認定して、地位確認については不当にも否定したが、田中に対する懲戒処分は相当性を欠き無効であると判断するとともに、配転命令についても業務上の必要性を欠き無効であると判断し、田中に対して慰謝料請求も一部認めた。
 田中の待機時間についての労働時間該当性を一部否定するとともに、田中の退職届の撤回を認めなかった点などは非常に遺憾であるが、付加金やその他会社からの嫌がらせを厳しく断罪した点は非常に大きい。

5 さいごに

 大阪地裁判決は、一部において不当な点はあるが、会社の不合理な主張をほぼ排斥し、会社の不当な行為を断罪した点では組合側の大勝利である。会社は、安田の判決については控訴したものの、その他の判決については控訴せず判決は確定した。
 今後は副分会長の大西の勝訴判決、安田の控訴審での再びの勝利を目指すとともに、組合員らの労働条件改善等を目指して奮闘する所存である。

(弁護団は、梅田章二、杉島幸生、原啓一郎、吉岡孝太郎各弁護士と当職である。)

下請いじめを許すな! ミネ企画が取引先を提訴!

弁護士 喜 田 崇 之

1 はじめに

 平成24年12月27日、印刷物の企画、制作、製版等の下請会社である㈱ミネ企画が原告となり、そのメイン取引先であった印刷業界最大手グループ会社の㈱トッパングラフィックコミュニケーションズ(以下、トッパン)を被告として、合計金1億3342万7658円の損害賠償ないし不当利得返還請求を求め、大阪地方裁判所に提訴した。
 この事件は、民法協「中小零細事業主のための独占禁止法研究会」に寄せられた事件であり、同研究会初の大型訴訟となったものであるので、紹介する。弁護団は、吉岡良治、西念京祐、喜田崇之、西田敦、岩佐賢次(以上、敬称略)である。

2 事案の概要
 
 大雑把に事実経過は次の通りである。
 ㈱ミネ企画は、平成9年頃から、トッパンとの間でパッケージ印刷等の業務を請け負い始め、平成17年頃には、トッパンからCTP色校正業務を請け負うことになった。CTP色校正業務のためには、市場価格6000万円以上もする特殊なCTP設備が必要であるところ、㈱ミネ企画は、もっぱらトッパンの同業務のために同設備をリースで導入した。当然のことながら、当事者間において、CTP色校正業務が今後も長期間継続することが見込まれての導入であった。
 ところが、トッパンは、平成21年12月頃、CTP色校正業務の単価を約4割近くも切り下げることを要求してきた。かかる減額を受け入れなければ取引停止がありうることをちらつかされたことから、㈱ミネ企画は、減額を受け入れざるを得なかった。
 このような状況のもと、トッパンは、㈱ミネ企画に対し、通常の市場価格を大幅に下回る価格で画像補正業務を請け負うことを要求してきた。トッパンが提示した単価で利益を出すことは不可能であったが、㈱ミネ企画は、CTP色校正業務を打ち切られることをおそれ、やむをえずトッパンの提示した単価で画像補正業務を受け入れざるを得なかった。
 トッパンは、このようにCTP色校正業務の取引停止を背景にして、CTP色校正業務のさらなる単価切り下げ、画像補正業務のさらなる単価切り下げを強行していった。画像補正業務では、市場価格で単価1000~3000円の業務を、単価10円、20円に設定するなどした。
 その後、㈱ミネ企画とトッパンの関係は悪化し、平成22年9月頃、トッパンは、色校正業務も含めてすべての取引を一方的に打ち切ったものである。

3 中小企業庁への申告

 この事件は、研究会への相談の前に、㈱ミネ企画本人が中小企業庁へ下請法違反の申告を行っていた。しかし、中小企業庁は、同申告を受け、どれだけの調査を行ったのか不明のまま、下請法違反による勧告等の措置を取らなかった。
 弁護団としては、まず、詳細な事実調査を行った上で、法律的な分析を行い、下請法違反の事実を、公正取引委員会下請法運用基準(平成15年12月11日事務総長通達第18号)の考え方に沿った形で整理し、さらに証拠資料も添付した上で、平成24年7月24日、改めて中小企業庁に下請法違反の申告を行った。
 ところが、中小企業庁は、既に処理済みであるとして、再度の調査・検討を行うことを頑なに拒否した。中小企業庁は、下請法・独占禁止法を遵守させることを役割としているにかかわらず、再度の調査を行おうともせず、自らの職責を放棄したのである。
 弁護団としては、やむなく戦いの場を裁判所に移すことにした。

4 原告側の主張・法的争点

 本件のように、元請業者からの業務に特化した多額の設備投資の負担をしている場合等の継続的契約においては、信義誠実の原則に照らし解約権の行使は制限されるのが裁判例の趨勢である(東京地裁平成16年4月15日、同平成22年7月30日等)。本件でも、トッパンの一方的な契約打ち切りは違法・無効であり、CTP色校正取引の契約当初の適正単価が継続していれば得られたであろう利益等の損害賠償を請求した。
 また、CTP色校正業務の単価切り下げ、画像補正業務の著しく低い単価設定は下請代金の買いたたきを禁ずる下請法第4条1項第5号に違反し、また、トッパンがその優越的地位を濫用して単価切り下げを強要したことは、独禁法第2条第9項第5号に違反し、公序良俗(民法90条)に違反して無効となる。ゆえに、これら取引によってトッパンが実際に支払った額と、適正な価格との差額につき、不当利得の返還を請求した。

5 提訴の意義・今後の見通し

 中小零細企業に対する単価切り下げ、様々な不利益の押しつけ等、大企業の横暴は、昨今の不況でますます深刻の一途をたどっている。実際の取引では下請法の各種規定が遵守されないことが多く、下請業者は不利益を押しつけられているのであるが、中小零細企業は狭い業界の中で大企業の圧力に屈してなかなか提訴することができないことが多い。本件提訴はかかる現状に一石を投じるものであり、その意義は決して小さくない。
 弁護団としては、下請法・独禁法を武器として、大企業の横暴を許さない判決を勝ち取りたいと考えている。

2013年権利討論集会を開催

事務局長・弁護士 増 田   尚

 2月9日、10日の2日間にわたって、南港にある大阪アカデミアにて、2013年権利討論集会が開催されました。234名の方に参加いただき、盛会のうちに終えることができました。
 全体会の記念講演では、東洋経済新報社の記者である風間直樹さんをお迎えして、「『雇用融解はどこまで進むのか』~新政権の向かう先~」と題し、深刻化する雇用情勢と、安倍第2次政権のねらいをお話しいただきました。
 風間さんは、この間の取材を通じて、昨年来吹き荒れるリストラの嵐の中で、「ロックアウト型」解雇や、常軌を逸した退職勧奨、嫌がらせの配置転換がまかり通っていると告発されました。「ロックアウト型」解雇とは、帰社時に退職勧奨(解雇通知)と自宅待機命令を同時に発し、職場から閉め出す手法です。IBMなどで多用され、労働者を精神的に追い詰めておいて、退職勧奨に応じれば、解雇を撤回し再就職支援をするなど申し出て、「自主的な退職」を装うものであり、同時に、解雇無効を争う裁判での証拠収集を困難にするねらいもあると指摘されました。また、執拗な退職勧奨にお墨付きを与えるきっかけとなった、IBM事件での東京地裁判決が、退職を拒否したとしても勧奨を中断する必要がないと判断したことを批判されました。これらに加え、中小・零細企業では、すでに「解雇自由」というべき無法な解雇が横行しており、解雇規制が厳しいから退職強要や嫌がらせ配転をせざるを得なくなるとの企業側の言い分が事実とまったく異なっていると指弾し、解雇規制を貫徹させることこそ重要であると述べられました。
 他方で、若年非正規労働者が、低賃金と不安定な地位にあえぎ、雇用と同時に住まいも生活も奪われる状況に置かれており、こうした現状をマスコミも報道しなくなってきていると批判されました。とりわけ派遣労働については、登録型をメインにする派遣業者が軒並み黒字を維持しており、経営リスクを労働者に転嫁するビジネスモデルのあり方を問題視されました。その上で、非正規雇用から正規雇用への転換こそ、ワーキングプアを解消する道であると訴えられました。
 最後に、安倍政権の雇用戦略について、経済産業省サイドが労働市場に介入する傾向が強くなっており、経済財政諮問会議や規制改革会議などを復活させ、労働規制緩和をねらっているが、かつての「労働ビッグバン」での暴走の再現を許さない運動を構築すべきと述べられました。
 風間さんのご講演では、豊富な取材経験に裏付けられた生の事実が明らかにされ、私たちにとっても、「雇用融解」という現状を改めて思い知らされたのではないでしょうか。安倍政権の規制緩和の動きや、リストラ攻撃と対峙する労働運動の構築という課題に取り組む上で、たいへん示唆に富んだ内容であったと思います。

 全体会では、1日目に、思想調査国賠・組合事務所など大阪市のたたかい(竹村博子さん・大阪市役所労働組合委員長)、ダイキン控訴審(青山一見さん・全日本金属情報機器労働組合大阪地方本部ダイキン工業支部執行委員長)、JAL控訴審(神瀬麻里子さん、西岡ひとみさん・JAL不当解雇撤回訴訟原告)、北港観光事件勝訴判決(安田博之さん(原告)、西川大史弁護士)が、2日目に、泉南アスベスト訴訟(山田哲也さん(原告)、遠地靖志弁護士)過労死防止基本法制定(岩城穣弁護士・過労死防止基本法制定実行委員会事務局長)、改憲阻止のたたかい(梅田章二弁護士・大阪憲法会議幹事長)について、それぞれ特別報告がありました。最後に、「『職員の政治的行為の制限に関する条例案』・『労使関係に関する条例案』の廃案を求める決議」を採択し、集会を終了しました。
 全体会や分科会を通じて、各団体や各委員会・研究会での日ごろの活動の成果が持ち寄られ、交流を図ることができたことは、権利討論集会の大きな魅力の一つだろうと考えます。今年は、大阪市内で開催し、日帰りでの参加も可能となるようにしました。権利討論集会の参加者が確信をつかみ、自らの活動に還元できるよう、これからも運営に努めてまいりたい所存です。

 

分科会報告

第1分科会 裁判闘争、労働委員会闘争における課題と展望 (報告:大阪労連 龍 洋治)

 1日目は、鎌田幸夫弁護士より、「もう一度、権利闘争の原点を見直そう」と題し、①労働委員会をどう使うか、②裁判や労働委員会で得られた成果、③法廷外闘争をどのように形成していくかという課題の問題提起がありました。
 討論では、各争議の当該や担当弁護士が、オレンジコープ、津田電気計器、北港観光バス、大阪市労組の組合事務所問題等の、各争議内容について、経過や課題の報告を行いました。
 議論の中で、ビクターアフター争議の当該からは、2005年に申立てを行ってから、差戻審を含めて現在「7審」目となっており、8年の争議を闘っていること、せっかく勝利命令を勝ち取っても、会社からの不服申立てにより簡単に覆され、最高裁、東京高裁に行く交通費用、精神的な不安があることなどが話されました。
 また、ある当該は、署名が裁判所にどの程度影響与えているのかについて質問し、谷智恵子弁護士から、自分たちの経験から、署名やビラは必ず届いており、どの程度の数が来ているかは裁判官も把握しているとの発言がありました。
 2日目には、1日目の議論を踏まえ、争議支援共闘会議のあり方についても議論がもたれました。ダイキン争議においては、ダイキン工場前での月1回の宣伝行動、専従者の生活支援等の報告がなされました。
 また、組合事務所問題弁護団の大江洋一弁護士からは、法廷でのたたかいにおいて事実を出すためには、弁護団が当該の語ることに謙虚に耳を傾ける必要性があり、当該には、経験したこと、自身が事実を知っていることに確信を持ち、主体的に参加していくことが求められるとの発言がありました。
 労働審判については、労働審判員の経験もある、地域労組さかい吉田暢書記長より、労働審判の実態や、地域労組の組織化にどのようにつながっているかについて報告がありました。時として解決水準の低さが指摘されることもある労働審判制度ですが、迅速かつ実効的な権利救済のための制度にしていくため、積極的な活用が望まれます。
 参加者は40名でし。


第2分科会
 骨抜き派遣法だから諦めていませんか? 労働組合の力で派遣法を活かす! ――派遣法改正の内容を学び、活用するために―― (報告:弁護士 中峯 将文)

 第2分科会では、2012年10月から改正派遣法が施行されたことをふまえて、主に労働組合の立場からこの改正法の活用法について議論をしました。
 労働組合からは15名の方が参加され、弁護士を含めて総勢22名で議論が交わされました。
 1日目は、長瀬信明弁護士が、改正派遣法を当てはめると労働者の権利を守ることができた事例として、NTT西日本アセットプランニング事件を紹介されました。その後、労働組合の方の事例報告がありました。「正社員だけの労働条件を闘っているだけでは先細りになる。協力関係になければならない。」と語っていらっしゃったのが印象的でした。正社員がどれだけ当事者意識を持って派遣労働者の問題について取り組むことができるかが、派遣法の運用にも影響してくるのではないでしょうか。
 残りの時間で村田浩治弁護士が改正派遣法の講義をし、1日目を終えました。
 2日目は、主に労働組合法7条の「使用者」性に焦点をあて、団体交渉のシミュレーションを行いました。
 派遣法が改正され派遣労働者の保護が明確化されましたが、派遣先と派遣元との力関係を考えた場合、派遣社員の労働条件について派遣先に対して改善を求めていくことが必要になると思われます。しかし、派遣先からは、派遣労働者の使用者ではないからという理由で団交を拒否してくることが想定されます。この点について、派遣先に団交応諾義務は存在しない旨結論付ける労働委員会の判断も出ているところです。今後、労働組合としては積極的に団交申入れを行って団交応諾義務の存在を主張していく必要があり、このような観点からの企画でした。
 シミュレーションをしていると、労働組合の方から次々と質問が出てきて、派遣研究会を開いているようでした。
 労働組合の方からは、昨年末から派遣労働者の相談が増えているという指摘があり、今後ますます派遣法の研究を深化させていき、活用していく必要を実感しました。


第3分科会 改正法を学んで活用しよう ~有期雇用労働者の権利を守るために~ (報告:弁護士 片山 直弥)

 第3分科会では、「改正法を学んで活用しよう」をテーマにした議論が行われ、38名の参加を得ました。
 1日目は、まず、有村とく子弁護士から有期法制改正(労働契約法の新18条、19条及び20条)についての解説を頂きました。有村弁護士からは、各条項の問題点、すなわち、新18条については5年を超える前に有期契約労働者の雇止めが一斉に行われる危険がある点等、また、新19条については使用者による濫用的更新拒絶がなされる危険がある点、さらに、新20条については違法とされた場合の法的効果の内容が今後の解釈に委ねられている点の指摘がなされました。これを受けて、参加者間で、非常に活発な議論がなされました。その中で、新18条ないし20条を労働者の新たな武器として積極的に活用する道を模索すべきであることが確認されました。
 続いて、郵政産業ユニオンの森田さんから非正規の正社員化と均等待遇に向けての闘いについて、北口さんから生協労連が取り組んでいる有期雇用の闘いについて、松澤さんから建交労大阪府本部における有期雇用の闘いについて、仁木さんから自治体及び公共関係の非正規労働者における有期雇用・雇止めに関する闘いについて、岩井さんから大阪の私学における有期雇用実態と大私教の運動についての報告がなされました。仁木さんの「有期雇用のしわ寄せを食らうのは結局のところ消費者である。」という発言が印象的でした。
 2日目は、まず、楠晋一弁護士から非正規労働者にまつわる判例の解説を頂きました。
 次に、現在、訴訟係属中あるいは訴訟に向けて準備中の事件について、青山さん、井口さん、藤井さん及び、時任さんの事件について有村弁護士から報告がありました。ダイキン訴訟原告の青山さんの「物を作る会社は、労働者が主役でなければならない。悲惨な雇止めを繰り返させてはならない。」という発言が印象的でした。仕事に誇りと自信を持って働いてきた人が虐げられている現状を知り、ショックを受けました。
 続いて、川西玲子さんから「職務評価のガイドライン」(厚労省)についての解説を頂きました。川西さんからは、正社員とパートタイム労働者との間にある格差が合理的であることを示す手段として、このガイドラインが用いられることが懸念されるとの指摘がなされました。
 その後、新20条をどう生かすかについて、参加者間で、活発な議論がなされました。その中で、「職務評価のガイドライン」で示された評価方法の妥当性を引き続き検討する必要のあることが確認されました。
 このように、1日目・2日目を通じて、改正法に関する活発な議論が参加者間でなされました。新たな制度ができた場合には、その問題点を検討する必要、そして、強気にその制度を利用する方法を検討する必要があることを実感しました。


第4分科会 今、改めて『過労死』について考える ――それぞれの立場から考える過労死・過労自殺をなくすための具体策――
  (報告:弁護士 西川 研一)

 第4分科会では、「今、改めて『過労死』について考える―それぞれの立場から考える過労死・過労自殺をなくすための具体策―」と題し、各分野の方々から報告やミニ講演をいただき、過労死・過労自殺をなくすための方策を討論するという、近年にあまりない取組を行いました。
 1日目は、まず、労働実態の現状についての報告として、大阪過労死問題連絡会の上出恭子弁護士より、「労災補償状況から窺える過労死問題の現状」と題して、精神障害事案は増えていること、他方、過労死・過疾病事案については「減ってはいない」と捉えることが正確であること、精神障害事案については若年労働者の割合が2~3割弱と非常に高いことなどが報告されました。
 次に、NPO法人POSSE事務局長の川村遼平さんより、「若年労働者を取り巻く過酷な労働実態」と題する報告をいただき、女性正社員や契約社員の過労が広がっていることに着目し、契約社員として入社し、社員登用があると希望を持たせておいて正社員よりも一層働かせるといった実態などが報告されました。そういった実態を「強制された自発性」と捉え、これを発動するメカニズムについての分析をいただきました。
 第2に、ミニ講演として、まずは、元大阪労働局労働基準部監督課・非常勤職員の畠山奉勝さんより、「企業に求められる『まともな働き方』の最低条件」と題する講演をいただきました。畠山さんは、元は民間企業の人事畑での仕事に長年従事され、退職後に非常勤職員として労働基準監督業務に携わってこられた経験から、労働基準法違反のトップが労働時間(32条)違反であることを挙げつつ、労働時間が日本では規制されていないこと、その背景に日本の労働契約が「ジョブ契約」でなく「メンバーシップ契約」であることで使用者による強力な拘束性が生じていることなどを論じていただきました。
 次に、三共精機株式会社代表取締役社長である石川武さんより、企業の経営者の立場から講演をいただきました。当分科会として経営者の方をお招きして講演いただく初の取組となりました。石川さんは、商社である自社にとって大切なことは、介在することで価値を生み出す「介在価値」を実現することであり、そのためには発信の起点となる人づくりが重要であるとして、それを実現するための取組を紹介いただき、過労死とは無縁に近い生き生きした職場環境を構築しておられることをお話しいただきました。
 続いて、過労死連絡会の下川和男弁護士より、「過労死防止のための教育活動」と題し、高校の先生との勉強会や高校への出前授業を通じて、過労死しない働き手を育成する楽しい実践的取組について、実演を交えながら講演いただきました。
 最後に、関西大学教授森岡孝二先生より、総括として、労働組合の弱体化が大きな原因になっていることなどのご指摘をしていただきました。
 2日目は冒頭に、過労死防止基本法制定実行委員会の取組について、同委員会事務局長の岩城穣弁護士からの報告、ついで、過労死企業名情報公開訴訟の高裁判決・及び上告理由書を2月1日に提出をしたことの報告をいただきました。
 2日のメインの報告である、「一般社団法人・産業保健法務研究研修センター」の理事である三柴丈典近畿大学法学部教授より、同法人による職場の精神障害事案への対処に向けた新たな取組の紹介がなされました。同法人では、これまで精神疾患を抱えた労働者を無理に「抱え込む」か不用意に「切り捨て」る方向で対応されてきた側面の強い当該問題に、労働者の精神疾患の具体的症状、程度、業務起因性の有無といった各視点から問題点を「切り分けて」適切に対処すべきという発想の元に、企業への法的アドバイス、人材育成等を行う予定であるとのことでした。
 最後に、三柴教授への質疑、また、分科会参加者の簡単な自己紹介と意見、質問等がなされました。今年も、複数の過労死、過労自殺遺族の方が参加をされ、被災者の過酷な労働実態についての訴えもなされています。
 2日間を通じて、過労死防止ための具体策が一朝一夕では見い出せないことを改めて痛感しつつも、過労死の一番の要因が長時間労働にあることを再確認し、今後の活動に活かせればと考えています。参加者数は36名でした。

※第4分科会報告第9段落中、当初 「同法人では、これまで精神疾患を抱えた労働者を「切り捨て」る方向で対応されてきた側面の強い当該問題に、」と記述しておりましたところを 「同法人では、これまで精神疾患を抱えた労働者を無理に「抱え込む」か不用意に「切り捨て」る方向で対応されてきた側面の強い当該問題に、」と修正しました。


第5分科会 大阪府・市の悪政に、どう立ち向かうか
 (報告:弁護士 大前 治)

 第5分科会は、「大阪府・市の悪政に、どう立ち向かうか」をテーマにして、約35人が活発に討論しました。
◆教育・教員に対する攻撃とのたたかい
 最初に、大阪教職員組合の藤川真人書記次長から、教育基本条例を具体化する動きとして、教員評価を目的とした「授業アンケート」が混乱を生じさせている実情などが報告されました。
 藤木邦顕弁護士からは、学校協議会が教員評価へ介入できる仕組みや、民間人校長の大量採用、さらには「つくる会」の社会科教科書の採択や「近現代史の歴史博物館」への社会科見学などを市長が指示できる体制づくりについて報告があり、これら全体の本質をとらえた反撃が必要だと指摘されました。
 会場からは、桜宮高校での体罰自殺事件を利用した教育への政治介入への反撃の重要性など活発な発言が続きました。また、日の丸・君が代の強制に反対するのは大切だが、さらに大きく広く共感を広げるためには、「児童憲章を読み上げよう」という提案を対置するなど、私たちの側にも工夫が必要だという意見も出ました。
◆公務員攻撃・自治体破壊とのたたかい
 次に、公務員攻撃と自治体破壊の動きについて議論が進みました。
 府職労の小松康則書記長からは、多くの施設や部局を民営化・独立法人化・民間委託する動きについて生々しい実態が報告されました。そのなかで「公務でも民間でも1人の首切りも許さない」という共同の取り組みが広がっています。
 大阪市労組の中山直和氏からは、橋下市長就任以前から大阪市解体へ向けた動きや労使交渉の形骸化が進められてきたことが指摘され、支配層が狙う自治体解体・公務員攻撃の狙いと結びつけて本質をつかみ反撃するべきと指摘されました。
 このほか高橋徹弁護士からはWTCビル購入および府庁舎移転費用の返還を求める住民訴訟について報告があり、遠地靖志弁護士は大阪市思想調査アンケート国賠訴訟について報告しました。
 私たちの運動の成果とともに、今後の課題と展望を語りあえた有益な分科会となりました。


第6分科会 新自由主義と改憲問題
 (報告:弁護士 中森 俊久)

 1 改憲論「総論」

 冒頭、改憲問題の情勢につき共通認識を得るべく、丹羽徹教授から「改憲の動向と私たちの課題」についてお話をいただいた。憲法  条を改訂して憲法改正を日常化させ、その経過の中で、平和憲法を放棄し、権力者の支配の道具としての憲法にその性格を変えさせようとする改憲派の真の狙いを把握するとともに、そのような危険な内容を孕む憲法改正草案の問題点を広く国民に知らせることの重要性を改めて認識できた。
 次に、梅田章二弁護士からの「新自由主義と改憲問題」と題して分科会を持った意義の説明に続いて、参加者に自己紹介をいただく経過の中で、それぞれの憲法問題に対する問題意識を発表いただいた。女性の参加者から憲法  条の重要性を訴える声が多かったことが印象に残っている。
2 改憲論「各論」
 憲法改正の動きの背景には、新自由主義があり、憲法9条の問題に限らず、総じて、国民の権利が制限され、多くの義務が課せられる基本的な問題がある。そのような視点から、改憲論の各論として、①教育の問題点につき大阪教職員組合の末光章浩さんから、②生活保護の問題点につき大生連の大口耕吉朗さんから、③労働の問題につき大阪労連の鴻村博さんからそれぞれ発表をいただいた。
 国際協力や規制緩和、自己責任の名のもとに、平和主義を後退させ、国としての基本的な義務を放棄するかの如くの情勢が如実に伝えられ、憲法改正の動きに孕む根本的な問題を理解させられた。
3 運動論
 それでは、いかに運動を進展させていくか。この点につき、2日目の冒頭、アメリカのウィスコンシンで共和党の知事のもとで労働組合の権利を後退させる攻撃が加えられ、それに対する労働者や市民の闘いが続けられている映像を放映した。そして、梅田弁護士より、「労働者が組合を自分たちの利益だけを考える機構としてではなく、公正な経済のために集団的に立ち上がることを可能にする媒介として見るように環境を変えなければ大幅な組織拡大をすることはできない。」(特集号137頁参照)という220万人の組合員を擁するサービス従業員国際労組(SEIU)の委員長の言葉等を紹介いただき、運動論について討議した。
 そして、明日の自由を守る若手弁護士の会の活動を諸富健弁護士に紹介いただく中で、日本国内における運動をいかに大衆化させ、大きな運動に繋げていくかにつき、率直な意見交換を行った。
4 平和への権利の動き
 最後に、田中俊弁護士から、平和への権利が国連の人権宣言として採択されようとしている動きを紹介いただいた。平和的生存権を国際的スタンダードにしようとする国際的な潮流のもと、それと真逆の方向に進もうとする安倍政権の平和憲法改悪の策動は、国際的孤立化に導くものである。国際的な視点も踏まえて憲法改正の問題を考える必要性を感じさせられた。
 分科会参加者は37名であった。

労働相談懇談会の報告

弁護士 中 村 里 香

 2013年1月11日、国労大阪会館にて、今年初の労働相談懇談会が開催された。

初めに、西川大史弁護士より、昨年9月から12月にかけての労働情勢報告がなされた。報告は多岐にわたるが、まずは、いわゆる「不更新条項」付きの契約書に署名したことを理由とする期間社員の雇止めを有効とした、昨年9月20日の東京高裁判決が目を引く。契約更新を繰り返し、11年以上も継続的に勤務してきたことや、正社員と同様の業務を行っていたという実態を軽視し、「期間社員は景気変動に対応する臨時的・一時的雇用者」とし、かつ、不更新条項付契約書に「自由な意思」で署名したと認定したのは、あまりにも現場の実態と乖離した事実認定といえよう。この判決は一方で、原告のように更新を繰り返してきた労働者が、使用者から不更新条項付の契約を迫られた場合、「不更新条項に合意しなければ、有期雇用契約が締結できない立場に置かれる一方、不更新条項付契約を締結した場合には、次回以降の更新がされない立場に置かれる、いわば二者択一の立場に置かれる」と判示している。その上で、「半ば強制的に自由な意思に基づかずに(不更新条項付)有期雇用契約を締結する場合」には、その「効力が否定されることがあり得る」としている。しかし、契約更新を繰り返してきた労働者が不更新条項付の契約更新を迫られた場合、「自由な意思」に基づいて署名する場合は通常は考えがたく、この部分はリップサービスではないかと思われる。
昨年11月1日に大阪地裁で雇止めを有効とする判決があったダイキン工業事件も、長年勤務してきた有期雇用の労働者を、不更新条項を利用して雇止めにしたという点で類似の事例といえよう。
このように、不更新条項を濫用的に利用する事例は、労働契約法改正に伴い、今後も頻発すると考えられ、現在の判例の流れを変えていくことが喫緊の課題である。この点については、1月28日の労働法研究会でも重点的に取り上げたので、そちらも参照されたい。
このほか、1審判決を取り消し、過労死企業名不開示を適法とした大阪高裁判決や、ブルームバーグ記者の解雇を無効とした東京地裁判決などが注目される。

続いて、谷真介弁護士より、「改正高年法と継続雇用の仕組みについて」と題し、高年法の改正点や、高年法に関連した労働相談時の注意点などに関して解説講義が行われた。
高年法に関する紛争としては、典型的には、使用者が同法9条1項の措置を全く採っていない場合、継続雇用希望者が選別基準を満たしているかが争われる場合(津田電機計器事件など)、継続雇用後の労働条件が争われる場合、継続雇用後の雇止めが争われる場合などの類型が考えられる。
このうち、使用者が9条1項の措置を全く採っていない場合には、私法的効力を認めない裁判例が多いことから、地位確認請求の裁判のほかに、職安に申告を行うといった方法が考えられる。次に、継続雇用後の労働条件が定年前に比べて著しく低くなるといった問題については、定年前の6割程度の賃金での雇用契約も有効とした裁判例もある。しかし、特に、中小企業などで定年前と同じ業務に従事している場合においては、有期雇用の労働者について不合理な労働契約を禁止した改正労働契約法20条を積極的に活用し、不合理な労働条件の是正を求めていくべきであろう。この点、改正労働契約法が適用される典型例としては、通勤手当や安全衛生などが挙げられる。また、継続雇用後の雇止めについては、改正労働契約法  条で雇止め法理が明文化されたこともあり、労働者の合理的期待権はきわめて高いという前提で臨むべきであろう。
本年4月より施行される改正高年法については、やはり、継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み(改正前9条2項)を廃止したことが、最大のポイントである。とはいえ、今後も相談が続くことが予想される。
高年法に関する相談の際のポイントとしては、まずは、①経過措置に注意し、何歳までの雇用が義務付けられているかを確認すること、そして、②継続雇用をしない理由や継続雇用後の労働条件について、労使協定、就業規則の内容を把握することが出発点となる。その上で、③継続雇用基準との関係で、査定期間を把握し証拠を確保することが必要となる。査定に関する証拠の確保については、訴訟となれば詳細な主張立証が求められることもあり、訴訟に耐えうる証拠の確保には困難が予想される。職場に組合がある場合には、査定差別をさせないことを第一義に考え、また、査定を低く付けられた場合には理由を聞いてメモを残す、場合によっては面談を録音するなどの綿密な証拠確保が必要であろう。そして、④違反の場合の対処方法としては、団体交渉や訴訟のほか、職安への申告も考えられる。
今後、使用者側からは、継続雇用に際して配転や転籍を迫る、また、定年前の労働条件を下げることを条件として継続雇用する、継続雇用後の労働条件を抽象的なものとする、といった手法が採られることが予想される。早期に相談を受け、労使協定が労働者側に有利なものとなるよう職場内での取り組みをすすめるとともに、相談後も相談者をフォローしていくことが必要であると考えられる。

さらに、地域からの事例報告では、城北友愛会より、アルバイト募集の求人に応募したところ、「委託販売契約書」に署名させられ、果物の販売業務に従事したものの、最低賃金を大きく下回る水準の報酬しか支払われなかったとの事例が報告された。
このように、従業員に労働者性がないと偽装することにより経営リスクを押し付けるといった事例は古くからあるが、最近、種々の業態で散見されるように思われる。今後の経過に注目したい。

今回、弁護士は6名、組合からは11名の参加であり、新年初の懇談会としては少し寂しさを感じた。次回は、4月  日に国労大阪会館の2階小会議室で開催することとなっているので、是非とも多数の参加を待ちたい。

労働法研究会「有期の使い捨てを許さない! 『雇い止め』の効力を考える」 報告

弁護士 南 部 秀一郎

 2013年1月28日、大阪弁護士会館1205号会議室において、労働法研究会「有期の使い捨てを許さない! 『雇い止め』の効力を考える」が開かれた。
 弁護士・研究者だけでなく、実際に有期雇用の雇い止め事案で争議を闘っている組合関係者、あるいは日頃、有期労働者からの様々な相談を受けている方々も含め34名が参加し、会場は満員となった。

 研究会ではまず、大阪市立大学の根本到教授から「有期雇用法制の動向と課題―労契法と判例の動向」と題して、基調講演が行われた。その中では、改正労働契約法18条~20条の改正内容について概括的な説明がされた。そして、特に本件改正の目玉である改正18条(同一使用者に対する有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときに、無期労働契約に転換できる条項)について、例えば「同一の使用者」とならないように使用者を変えて契約が継続される場合についてはどうするのか、あるいは、「無期労働契約」の契約内容がどのようになるのか、クーリング期間などの問題点についての説明がされた。
 そして、特に根本教授が問題となるものとして指摘されたのが、「不更新合意」である。根本教授からは、この「不更新合意」について、近畿コカコーラボトリング事件(大阪地判 平成17.1.13  )、明石書店事件(東京地決 平成22.7.30 )等や、いわゆる派遣切りの中でのダイキン事件(大阪地判 平成24.11.1 現在大阪高裁に係属中)、本田技研事件(東京高判 平成24.9.20 最高裁に上告中)について紹介があった。その中では、唯一雇い止めを認めなかった明石書店事件について、経営側は例外的事例判断と描こうとしていることが紹介された。そして、根本教授からは、契約の締結状況について、説明があっても不利な契約を締結せざるを得ない労働者の状況を、積極的に主張していくことが大事であるとの意見が述べられた。

 そして、この根本教授の講演を受け、実際に不更新条項について争われた、ダイキン、本田技研の事案について、弁護団からの報告がされた。
 まず、ダイキン事件については、村田浩治弁護士から、事案についての報告、裁判の経過が説明された。そして、地裁の判決について、「短い判決文」で、事実については原告の主張を認めているものの、「更新の合理的期待」を否定する方向に全ての事情を結びつけ、長期の違法派遣により不利な立場に置かれ続けたことなどの、労働者側の事情に、深い検討もしない不当な判決であったことが説明された。
 続いて、本田技研事件については、弁護団の代々木総合法律事務所の林治弁護士から、報告がされた。その中では、労働者が契約を強いられた、年末までで更新をしない旨の契約について、労働者が解雇に応じる事情がないことを考慮にいれずに、契約意思の存在を認めたとの高裁の判決内容が伝えられた。
 いずれの事件についても、不更新条項の入った契約書に署名・押印した事実をとらえて、不更新合意の有効性を認める内容であるとの報告であった。
 更に続いて、増田尚弁護士から、「更新の合理的な期待」について、厚生労働副大臣の更新の合理的期待を奪う不更新条項無効化を認めた答弁、及び契約締結前の同一業務を「合理的期待」の考慮に入れた裁判例の報告があった。

 以上の各報告を受けて、参加者による討論が行われた。まず、改正労働契約法の評価についての意見が出された。この中では、西谷敏先生から、改正法について、法政策的観点から、有期法制の悪い点はどういう部分なのか、その改善をどうすべきか、という疑問に答えたものではないとの批判がされた。そして、特にダイキン事件について、偽装請負からの連続性が無視される結果となったことについて、改正法自体が、当初から5年以内に契約期間を限定して更新されないという不当な契約内容を規制していないとの指摘があった。一方で萬井隆令先生から、今までの雇い止めにおける、解雇権濫用理論の適用とのとらえ方が、雇用の継続を法で定めるという形に変化したことをとらえて、従来の枠を超えたものであると肯定的に評価し、その法意を拡張していくことで積極的に利用すべきではないかとの意見が出された。
 討論の後半では、不更新条項について、実際に現在、ダイキン・本田技研の事件を闘っている弁護団、ダイキンについては原告、組合も交えて、事案について突っ込んだ議論がされた。そしてダイキン事件については、契約更新の合理的期待についての具体的立証について、本田技研事件については不更新条項の効力を否定する法理論について、様々な意見が交わされた。特に不更新条項については、法律相談を受けている組合の方から、どうアドバイスすべきかの質問も寄せられた。
 この労働契約法改正18条と不更新条項の問題は、法制化を受けて「5年」の年限が迫ってくる。今後、労働相談にあがってくることが確実な問題である。今回の研究会の深く有意義な3時間の討論を受けて、継続的に議論していかなければならないとの思いを強く持った。
 今後も民主法律協会では、労働法の様々な問題について、労働法研究会を開催していく。その際には、多くの方々の参加を願いたい。

新人弁護士のための労働相談入門講座(民法協新人ガイダンス) 参加報告

弁護士 牛 尾 淳 志

1 はじめに
新人弁護士のための労働相談入門講座(民法協新人ガイダンス)が、2013年1月31日、大阪弁護士会館1110会議室にて開催されました。
出席者は、弁護士が14名(うち4名が65期の新人)、労働組合から4名、修習生が4名でした。新人弁護士は私を含めて4名であり、もう少し多くの新人の方が参加されるのかと思っていたため、少々残念に感じた部分はありましたが、出席者は熱心に説明に聞き入っていました。
講師は事務局長の増田尚弁護士(52期)であり、まず最初に、民主法律協会の概要の紹介がされた後、順次、労働問題の現状や民法協の具体的活動等についてのお話がありました。

2 労働問題の現状について
労働問題の現状の裁判手続きの面からの分析として、増田先生は判例タイムズに掲載された大阪地裁の労働事件に関する記事を参照された上で、労働事件数が依然増加していることを指摘しつつ、現在の労働者の置かれた苦しい状況を説明されました。増田先生ご自身が弁護士として具体的な事件に関わる中でも、大阪の労働者が経済的な空洞化に伴い厳しい状況に追いやられていることを感じると述べておられ、率直な実感に基づくものだけに強い説得力がありました。また、非正規雇用の広がりに伴い、働いていても生活を支えるだけの収入を得られないという状況が生まれつつあるとも述べておられ、どうにかしなければならないという思いが伝わってくるものでした。
また、電器産業を中心として、リストラを進める一環としての追い出し部屋(リストラの対象となった社員を隔離した部署に配置し、単純作業をさせ、自主退職に追い込むもの)の問題が顕在化しつつあることも取り挙げられました。
他にも、ブラック企業の問題や就活の問題などにも触れられ、私たちをとりまく労働環境がきわめて多くの問題に直面しているということを改めて感じる機会となりました。

3 日本の労働政策の推移
その後、労働の規制緩和にかかわる政策の推移についての解説がありました。1995年の日経連による「新時代の「日本的経営」」が発表されたことが、現在の非正規雇用の広がりにつながるターニングポイントであったというお話は、恥ずかしながら初耳でした。このような知識は労働者の現状を大局的な視点で理解するために必要であると思いますが、普段の事件処理の中では学ぶことのできないものなので、良い機会であったと思います。

4 近時の裁判例の動向
近時の裁判例の動向についても言及され、松下PDP最高裁判決等、最高裁のレベルでも問題のある判決がなされている他、近時、東京地裁でも問題な判決が出されているとのことでした。特に、有期労働契約に付された不更新条項の有効性の問題等、現在の労働事件においてまさに問題となっている事項についても簡単に解説がなされ、興味を刺激されました。

5 現在の日本法による労働者保護
さらに、労働組合による団結、使用者に対する対抗の重要性について言及され、憲法が労働基本権を保障していることの意味を問い直す必要があるとのお話がありました。特に、労働争議が、民事的には債務不履行、刑事的には業務妨害であるが、これを問わないとされていることの意味を考え直す必要があるとの問題提起には、あらためてはっとさせられるものがありました。

6 民法協の具体的活動について
その後、民法協の具体的活動についての紹介があり、民法協は、弁護士だけでなく、学者や労働組合の方と協働しており、この点が大きなメリットになっているとの紹介がありました。具体的な活動としては、毎週金曜日の夜に、電話相談(労働相談ホットライン)を行っており、毎週5、6本ほどの電話がかかってきていることや、労働審判支援センターを立ち上げ、労働審判のより良い活動を考えていることなどが紹介されました。

7 質疑応答
最後に、質疑応答の時間が設けられました。労働事件における証拠保全の際に、証拠を隠された場合にどう対応すべきかという質問がありました。また、現在、大阪地裁において、個別の労働事件の支援に携わっている労働組合の方が労働審判の場に同席できない運用について問題提起がされました。確かに、企業の従業員が特に問題とされないこととの関係では、均衡を欠いているのではないかと思いました。
このように、労働事件の現場で今まさに問題となっている事項について組合の方を交えて議論が交わされるというまさに民法協らしい質疑応答の場となっていました。

中小零細事業主のための独禁法研究会の新人歓迎学習会が行われました。

弁護士 岩 佐 賢 次

 2013年2月6日、大阪弁護士会館にて、中小零細事業主のための独禁法研究会(以下「独禁法研究会」といいます。)の新人歓迎ガイダンス(学習会)が行われました。今年の参加者数は弁護士登録して間もない新65期を中心とする弁護士20名、66期司法修習生13名が参加し、弁護士会館510号室は、開始時刻の午後6時半には満席となり、他の会議室から椅子を借り出す必要があるほど盛況でした(終了後椅子は元にきちんと戻しました。念のため。)。講師は西念京祐弁護士と西田敦弁護士で、事例報告担当が辰巳創史弁護士でした。
 まず、新人歓迎学習会は、司会の喜田崇之弁護士が、民主法律協会や独禁法研究会がどのような目的で設立、組織されて、どのような活動をしているかについて、簡にして要を得た説明を行い、幕が開きました

 学習会は、講師の西念京祐弁護士から、「中小零細企業のための独禁法活用について」と題して、独禁法の目的や仕組み、公正取引委員会の役割などの基本知識の説明から始まりました。公取への申告を交渉の場でどう活用するのかということや、裁判事例を複数取り上げて、どういう事実に着目して、独禁法をどう駆使して戦っていったのかなど具体的実践的な説明がなされました。講師作成のレジュメも独禁法違反と私法上の効力の関係が事例に基づいてわかりやすく整理されており、具体的にイメージできるものでした。また最後に時間の制約がある中で、独禁法の特別法・補完法である下請法にも簡単に触れられました。
 続いて、もう一人の講師である、西田敦弁護士からは、「継続的契約の打ち切り・不当な契約打ち切りに立ち向かう」と題して、契約自由の原則から、継続的契約は信頼関係を破壊するようなやむをえない事由がない限り、取引関係を解消してはならないという判例法理など、基本的事項から簡潔な説明がありました。具体的な裁判例に基づいて説明がなされ、大企業側の不合理な抗弁事由にも触れられ、いかなる事実に着目しどのような主張を組み立てるのかはもちろん、大企業側の不当な抗弁事由(反論)にどう立ち向かったのかについて、説明がありました。熱い語り口に引き込まれるように、熱心にメモをとったり、持参した六法をめくったりする参加者が目立ちました。
 最後に、辰巳創史弁護士から、独占禁止法違反で争っている事案の紹介があり、相談の経緯から調停に至った経緯の話がありました。まず、当初は債務整理の相談だったが、借金を増やした経緯がいかにも不当で、企業側に何か請求できないかということで、個人事業主である依頼者の権利保護のために試行錯誤して、独禁法違反の法律構成に思い至ったという話でした。具体的に依頼者から相談を受けた弁護士として、依頼者からの事情の聞き取りをいかにすべきか、方法選択を採るにあたって粘り強くあらゆる可能性を探るという姿勢は、弁護士の基本姿勢として勉強になる話でした。

 民法協をはじめ、各種法律家団体の新人ガイダンス(学習会)では稀にみる?盛会となりました。これはまず、学習会のタイトルを「中小企業救済のために独禁法を活用しよう」と題したために、企業法務の参考になると考えた弁護士・修習生が少なからず参加していたのが一因であることは否定できないでしょう。また、必ずしも企業側の事務所ではない弁護士が、弁護士大増員時代でいかに生き抜くかという最近の若手弁護士の問題意識から業務拡大などの参考にしようとして参加した弁護士・修習生も多くいたように思います。
 しかし、むしろこれは民法協や独禁法研究会の存在すら知らない弁護士・修習生に、民主法律協会、独禁法研究会の活動や存在意義を伝える貴重な機会になったということです。
 学習会のあとは、恒例のチルコロでの懇親会でした。22名が参加し懇親を深めました。修習生時代に青法協の例会(沖縄普天間・嘉手納基地問題)に参加したと言う新65期弁護士から話掛けられ、大いに旧交を温めることもできました。これからも微力ながら民法協・独禁法研究会の発展に寄与できれば幸いです。

「大阪過労死家族の会」が「第12回大阪弁護士会人権賞」を受賞!

弁護士 岩 城   穣

 「大阪過労死を考える家族の会」(略称:大阪家族の会)は1990年(平成2年)12月8日結成され、満22年を迎えた。1988年(昭和63年)に「過労死110番」が開設され、過労死の相談や労災申請が激増する中で、過労死遺族同士が互いに励まし合い協力し合って、過労死遺族・本人の救済と、過労死の予防に取り組むことを目的として、当時相談中や労災申請中の過労死遺族17家族、約60名が参加して結成されたのである。
 翌1991年には、各地の家族の会が集まって「全国過労死を考える家族の会」が結成され、毎年11月の厚生労働省要請などを行っているが、大阪家族の会は、毎年夏に全国一泊交流会を主催するなど、全国の牽引車として大きな役割を果たしてきた。
 最近では、全国家族の会の代表でもある寺西笑子さんが原告となった「過労死企業名公表裁判」と「過労死防止基本法」制定のための取り組みでも、全国家族の会の中心となって頑張っている。

 大阪弁護士会は平成13年度から、社会的弱者の人権擁護活動等を行っている個人、グループ及び団体で、近畿地区に住所、事務所または活動の本拠を置くものに、毎年「人権賞」を授与している。
 そして、大阪家族の会として、平成24年8月に応募したところ、受賞が決定したのである。

 本年1月22日(火)午後5時30分から、大阪弁護士会館2階ホールで、「第12回大阪弁護士会人権賞授賞式」が行われた。
 テレビカメラも入る中、金屏風に飾られた壇上に、選考委員の方々と大阪過労死家族の会の代表世話人の村上加代子さん、世話人の寺西笑子さんが登壇。
 人権賞選考委員会委員長の武者小路公秀氏の開会のあいさつ、司会の島尾恵理弁護士(大阪弁護士会人権擁護委員会委員長)による選考委員の紹介の後、選考委員会副委員長の中川喜代子氏が選考経過を報告された。
 中川氏は、本年は6件5団体の応募があった中から、大阪過労死家族の会が選考委員7名の満場一致で選ばれたことを紹介するとともに、受賞理由として、①20年以上の活動実績、②今後の活動の展望として「過労死防止基本法」の取り組み、③過労死が多発する大阪での活動への期待を挙げた。
 続いて、大阪弁護士会の藪野恒明会長から村上加代子代表世話人に、表彰状と副賞が授与された。そして、寺西笑子さんが、受賞団体を代表してあいさつをされた。
 寺西さんは、日本の労働者の働き方の現状、大切な家族を過労死で失った遺族の悲しみと労災申請の大変さ、過労死を根絶するための過労死防止基本法の制定のために頑張っていることなどを述べるとともに、栄えある人権賞の授与への感謝の言葉を述べた。
 最後に、藪野会長が閉会あいさつを行った。

 この賞は、自らの事件も闘いながら、大阪家族の会を立ち上げ、営々と地道な活動を続けてきたこの20年間の遺族の皆さん全員が受賞したものといえる。
 また、4000人近い会員を擁する大阪弁護士会が「過労死防止基本法」の制定の取り組みを評価し、激励してくれたことは、防止法制定運動に取り組む全国の過労死遺族にとっても、大きな励みとなるものである。
 なお、この授賞式の様子は、当日夜のテレビ朝日のニュースで紹介され、また翌日付けの朝日新聞でも報道された。

書籍紹介 『高速ツアーバス乗務員は語る 家族は乗せたくない!』自交総連大阪地連編

紹介者・自交総連大阪地連 松 下 末 宏

 東京―大阪間で4000円。このような低下価格への驚きもなくなり、すでに激安バスの存在は当たり前になりつつある。しかし、苛酷な労働が低価格を支えていると、本書は指摘する。
 とくに、問題となった高速バスツアーを含む貸切バス運転者による座談会は生々しい。運転中に宿泊先に電話をせざるえないほどの過密なスケジュールが居眠り運転を招く。語られる労働実態は深刻だ。旅行会社にもの言えず、低価格で仕事を請け負わざるをえない業界構造にも言及している。2012年4月の群馬県から出発したバスの乗客7名が居眠り運転の犠牲になった。この事故の運転手も非正規で、きちんとした休息を取れずにハンドルを握っていた。
 副題は「家族は乗せたくない!」。ここまで労働環境が悪化したのは2000年の規制緩和以降だ。当時は規制緩和によりサービスが向上すると唱えられたが、現実には過当競争が進んで最低の安全性すら担保されずにいる。本書は政府・国交省の検討する事故防止では解決しないと指摘し、必要な法規則を具体的に提示している。バス業界を熟知し、交通の安全と労働者の生活を守るために警鐘を鳴らし続けた自交総連が新たな犠牲者が出る前に抜本策を講ずべきと提起している。

日本機関紙出版センター
2012年11月30日発行
定価 900円