民主法律時報

雨宮処凛さんと考える なくせ! 職場のいじめ・ハラスメント

弁護士 中 峯  将 文

 2012年11月16日、「雨宮処凛さんと考える なくせ! 職場のいじめ・ハラスメント」と題するシンポジウムが開催されました。講師に、作家であり若者の貧困問題に取り組んでおられる雨宮処凛さんをお招きし、約  名の参加者とともに、職場のハラスメントの実態や、職場からハラスメントをなくすためにどのような手段があるのかなどについて学びました。
森岡孝二関西大学教授による開会のあいさつの後、和田香弁護士によるパワハラ事案の報告、ハラスメントによる過労自死人のご遺族による発言がありました。さらなる被害者を出さないためにと、辛いお気持ちを押して登壇されたご家族の思いを無駄にしないために自分に何ができるのか。当事者の方のお話を聞くたびに感じることです。
次いで、地域労組おおさか青年部書記長・北出茂さんが、ご自身の労働相談や団体交渉の経験をもとに、パワハラの原因や実態、労働組合としての活動などについて、具体的な事例を踏まえながら語られました。事例の紹介では、相談者の本当の望みは職場に戻れることだが、実際には解決金をもらって納得せざるを得ないことが多いことに問題を感じているとおっしゃっていました。北出さんが、「20代をうつ状態で過ごさなければならない人の辛さを想像してください。」と時折声を震わせ、また、「理想に現実を近づける努力をしなければならない。」と力強く訴えていらっしゃった姿が印象的でした。
 その後、雨宮さんが、下川和男弁護士との対談形式で、ご自身が貧困問題に取り組んでいった経緯や、現在の企業の価値観を労働者に押し付けその枠にはまらなければ切り捨てる社会の仕組みに反対の声を上げられました。
雨宮さん自身、アルバイトをしていて数日で首を切られた経験があり、その時は自分が悪いんだと自己を責めたそうです。今は、平日の昼間から路上でお酒を飲むという活動をしているそうです。雨宮さんいわく、何の役に立っていなくたって生きていていいんだというメッセージを伝えるための必要な活動だとのこと。人が助けを求めてくる条件は3つあって、それは、自己肯定感、他者への信頼、そして、ダメなところをさらけ出すことだと考えているとおっしゃっていました。また、企業の価値観に合わせられる者が正しいなどという価値観が蔓延していては、人を信じず自分だけが勝ち残ろうという社会になり、いじめが起こるのは当たり前だともおっしゃっていました。
雨宮さんの話は、全体を通して、何の役に立っていなくても生きていていいんだ、自己肯定感を持ってほしい、というメッセージが伝わってくる内容となっており、話を聞いて救われた方が多くいらっしゃったのではないかと思います。
翌日には、過労、ハラスメントの電話相談を開催しましたがあいにく2件の相談に終わりました。集まった弁護士の間で電話相談を増やす方策について話し合われましたが、被害者のさらなる救済につなげるべく皆様のお知恵をお借りできればと思います。今後ともご支援よろしくお願いいたします。

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