民主法律時報

2012年11月号

ダイキン工業雇止め事件 不当判決

弁護士 井 上 耕 史

1 事件の概要
 ダイキン工業堺製作所の臨海工場と金岡工場では、「支援従業員」と呼ばれる業務請負会社が雇い入れた労働者が空調機の製造業務に就労していた。製造ラインには請負会社を異にする支援従業員及びダイキン社員が混在し、組長と呼ばれるダイキン社員から指揮命令を受けて就労しており、いわゆる偽装請負だった。
 ダイキンは、大阪労働局から偽装請負を是正せよとの指導を受け、2008年3月1日から、支援従業員を「有期間社員」として直接雇用した。しかし、その契約形態は、当初6か月、その後1年、1年の更新で、最長が2年6か月であり、3回目以降の更新はしないというものであった。
 ダイキンは、2010年2月以降、240名以上を新たに有期契約で雇用する一方、契約期間の満了となる同年8月  日をもって、203名もの有期間社員を雇止めとし、有期間社員の大量入替えが行った。
 これに対し、ダイキンの雇止めは無効として、2010年9月1日、4名の有期間社員が大阪地裁に従業員地位確認等を求めて提訴した。

2 本件の特徴
 本件は、二つの点において、通常の雇止め事件と大きく異なる特徴がある。
 第一に、有期雇用契約の入口について。ダイキンは、6年ないし18年にわたり、原告らについて請負を偽装して指揮命令を行っており、直接雇用に切り替える際には原告らの雇用安定を図るべく是正をする責任を負っていた。他方、支援従業員らは、ダイキンで就労を続けるには、有期間社員となる以外に選択肢はなかった。
 第二に、有期雇用契約の出口、すなわち雇止めについて。ダイキンは、2010年8月末日に203名を雇止めしたが、業務そのものは続いており、むしろ経営状態は好調で、その間に240名以上を新たに雇い入れていた。ダイキンが雇止めをしたのは、ただ契約期間が満了した、という理由だけである。
 企業が自由に契約期間を押し付け、労働者の入替えをできるのか、ということが正面から問われることとなった。

3 大阪地裁不当判決
 2012年11月1日、大阪地裁(別所卓郎裁判官)は、大企業の横暴に歯止めを欠けることなく、原告らの請求を棄却する不当判決を出した。判決は、①黙示の労働契約の成立、②原告らを直接雇用するにあたって期間の定めを設けることは許されない、③仮に期間の定めが有効であるとしても人員整理の必要性が全く無い今回の雇止めについては解雇権濫用法理を類推適用すべき、④有期間契約を事実上強制して雇止めに及んだ行為は不法行為、との主張をいずれも排斥した。
 判決の姿勢が端的に示されているのが、2年6か月の上限規定の有効性の判断である。労働契約法16条は、期間の定めがない労働契約では正当な理由なく解雇は出来ないとしている。原告らは、長期にわたって就労してきた原告らに対する2年6か月の上限は、まさにこの規定を潜脱するために設けられたものであるから無効であると主張した。ところが、判決は、「有期労働契約の締結を一定の事由が存在する場合に限って許容するような法制度や判例法理が我が国に存在したことはな」い、などとして、何ら潜脱に歯止めをかけなかった。
 しかし、日本の裁判所は、かつて法律に何らの規制がなく民法上は解雇が自由であった法制度の下で、解雇権濫用を禁止する法理を確立し、それが法律となったのが労働契約法16条である。裁判所が、法律の隙間にあった労働者の痛みを受け止め、判決を積み重ねて判例法理を創造し、それが法律に結実したのである。
 本判決は、「過去の判例法理がない」からダメだというもので、長期にわたりダイキンで就労して貢献してきたのに、ダイキンによって切り捨てられ、生活に困窮している原告らの苦悩に対する理解が微塵も感じられない。本判決は、法を解釈し、判例を創造するという裁判所の役割の自覚に欠けたものであり、こうした裁判官の劣化は厳しく批判されなければならない。

4 ますますのご支援を
 本年8月10日に公布された改正労働契約法により、有期雇用が5年を超えた場合には、期間の定めのない雇用へ転換する権利が定められたが、これを潜脱するために有期間社員について予め5年を超えて更新しない規定を労働者に押し付ける動きが既に起こっている。本判決が放置されることがあれば、こうした不更新規定が蔓延し、有期間労働者の人権は守られないこととなってしまうであろう。
 たたかいは控訴審へ移った。控訴審勝利のため、ますますのご支援をお願いする。

(弁護団は、村田浩治、斉藤真行、峯田和子、辰巳創史、井上耕史)

福住コンクリート事件・府労委で勝利命令――濫用的会社分割による労働組合潰しについて労働委員会が断罪

弁護士 谷   真 介

1 はじめに

 本件は、会社分割制度を濫用した新しい形の偽装事業閉鎖・解雇の事案である。平成24年11月2日、大阪府労委は、本件会社分割が組合潰しの不当労働行為目的にあったと認定して、分割後の両会社に重畳的に労組法上の使用者性を認め、両者に対して解雇した組合員の職場復帰及びバックペイの支払、謝罪文の交付を命じた。

2 会社分割制度の問題点

 会社分割制度は、平成12年の商法改正で設けられた比較的新しい事業再編制度である。会社分割には、新たに会社を新設して分割会社の事業の一部を新設会社に引き継がせる新設分割と、元々存在する会社に引き継がせる吸収分割とがある。いずれも分割会社の事業の一部を承継会社に承継させ、その対価として承継会社(新設会社または吸収会社)が発行した株式の引き当てを分割会社が受けるのが、一般である。会社分割の手続は比較的簡便で、株式の引き当てを受けるだけで、承継会社が事業譲渡の対価を現実的に拠出せずとも良いため、本来の用途である分社化というよりも、簡便に事業譲渡ができる手段として、広く利用されている。
 会社法上、会社分割に伴って会社債権者が分割会社から承継会社に免責的に承継される場合には、債権者保護手続きが整備されている。同じく、分割会社から承継会社に承継される労働者・労働組合には、使用者が替わることになるため、同じく平成12年に成立した労働契約承継法において、詳細な保護手続きが定められている。
 しかし、分割会社に残される債権者や労働者には、上記のような保護手続きは存在しない。これは、建前上、分割会社は承継会社の発行した株式の引き当てを受けるため、帳簿上の分割会社の資産にマイナスはないからである。ただここに制度上の抜け穴(欠陥)がある。分割会社が事業を譲渡する代わりに承継会社の株式の引き当てを受けたとしても、承継会社が閉鎖会社(株式の譲渡に取締役会等の承認を必要とする会社)で株式が流通しえない場合や、全く形だけの新設会社の場合には、実際には承継会社の株式に何の価値もない。そのため、非採算部門のみを分割会社に残して採算部門を承継会社に承継させた場合であっても、分割会社に残された債権者や労働者は何らの手続き上の保護も受けないまま、自らの会社が非採算部門のみになることを甘受しなければならなくなるという重大な問題が生じるのである。
 この抜け穴を濫用して、非採算部門のみを分割会社に残し、採算部門のみを譲渡した承継会社だけ生き残らせ、分割会社(非採算部門)に残した会社債権者・労働者が路頭に迷うという、濫用的・詐害的な会社分割が横行しているようである。このような法制度上の欠陥を見直すべく、現在、法制審においても、分割会社に残す債権者にも債権者保護手続きを必要とする改正について、審議がなされている。また近時最高裁でも、濫用的会社分割の場合に、組織行為である会社分割(新設分割)についても、詐害行為取消の対象となることを認めるに至っている(最二小判平成24年10月12日)。
 前置きがながくなったが、本件はこのような会社分割制度の法制度上の欠陥を利用して労働組合潰しを行った不当労働行為事案であり、従来あった佐野南海・第一交通事件のような偽装解散・解雇事件について、会社分割制度を悪用して行われたものである。

3 本件事案の概要

(1) 合理化提案と不誠実団交
 福住コンクリート工業株式会社(以下「福住コンクリート」という)は、奈良県内に事業所を有する生コンの製造・運搬を業とする会社で、代表取締役を務めるN氏一家の同族企業である。その運搬部門につとめる運転手5名が、建交労関西支部の組合員であった。
 争議の始まりは、平成21年6月、福住コンクリートは組合に対し、減給や解雇等を含む重大な合理化提案を行ったところまで遡る。これに対し、組合は団体交渉の中で、合理化の必要性の裏付けとなる同社の財務資料の開示を求めた。それとともに、組合が調査を行ったところ、福住コンクリートが「日本パナマックス」という別会社に役員や財産を移すなど偽装解散を疑わせる動きをしていることが判明した。そのため、組合は福住コンクリート及び代表者のN氏に対し、「日本パナマックス」を含めた財務資料の開示を求めたが、福住コンクリート及びN氏はこれに応じず、同社の財務資料についても加工したものしか閲覧させなかった。その上、団体交渉にはN氏は出席せず、権限を全く与えられていない弁護士や社労士登録していない社労士を出席させ、実質的な交渉ができず空転した。
 この点について、平成22年9月、組合は財務資料の不開示、及び権限者の立会要求を拒否した点が不誠実団交であるとして、大阪府労委に不当労働行為救済申立を行った。

(2) 不明瞭な会社分割と組合事務所の一方的変更
 上記不当労働委行為救済申立後の、平成22年12月、福住コンクリートは、突如組合員らに対し、同社の代表取締役をN氏から第三者に変更した旨と、組合事務所の変更を通知した。組合が福住コンクリートの商業登記を調べると、同年11月に福住コンクリートは、資本金わずか10万円で宝永産業株式会社を新設して、宝永産業との間で会社分割(新設分割)をしていたことが判明した。そして、福住コンクリートは、その製造部門を宝永産業に引き継がせ、組合員はすべて運送部門として福住コンクリートに残したのである。この点について、組合は福住コンクリートに団体交渉を求めたが、同社は「労働委員会で審理中」という理由で交渉を拒否した。
 組合は、平成23年2月、福住コンクリートが事前協議協定を無視して会社分割を行い組合事務所を一方的に変更した点が支配介入であるとし、また福住コンクリートの団交拒否について、大阪府労委に不当労働行為救済の追加申立を行った。

(3) すると、その直後の平成24年3月、今度は福住コンクリート(実質は退任したはずのN氏が主導)が突如事業を閉鎖し、組合員らを全員実質解雇した。直後にN氏は暴力団風の人物を複数雇って、組合員が占有する組合事務所から実力で排除しようとする異常な状態となった。そのため、組合は大阪府労委にこれを実力排除行為を停止させる命令を求めて、実行確保の措置勧告の申立て(棄却されるも労働委員会が口頭要望を出した)をした上、事業閉鎖と解雇が支配介入であるとして、再び追加で不当労働行為救済申立を行った。

(4) なお、本件については、組合員ら及び組合は、奈良地裁(後に大阪地裁に移送)に法人格否認により両社に対する地位確認と福住コンクリートの前代表N氏及び宝永産業の代表者に対する損害賠償請求を提訴し、後に会社分割登記を行った司法書士が本件会社分割に深く関与していたことが判明したため、かかる司法書士と最大株主兼債権者であるN氏の母を追加提訴した。
 その他、N氏は組合がN氏自宅前で街宣行為等したとして街宣禁止の仮処分申立を行い(街宣禁止仮処分の経過と顛末については労旬1778号27頁参照)、その後N氏は街宣の差し止め・損害賠償請求の本訴も提起した。かかるN氏の提起した本訴は、組合員らが提訴した前記訴訟と併合され、大阪地裁で現在審理がなされている。

4 濫用的会社分割の点に関する労働委員会での争点と判断
 
(1) 濫用的会社分割の点に関する主要な争点は、①本件会社分割及びその後の福住コンクリートの事業閉鎖が組合潰しを企図するものであったか、②組合員らの形式上の使用者である福住コンクリート(分割会社)とは別法人格である宝永産業(承継会社)に、労組法上の使用者性が認められるか、であった。

(2) 大阪府労委は、①の点について、会社分割に至る経緯及び会社分割手続や会社分割契約書等に関する不自然な点を子細に検討した上で、本件会社分割が、本件会社分割前から組合と合理化案を巡って対立関係にあった旧福住コンクリートが本件会社分割の後の適当な時期に運送のみを専業とすることにした福住コンクリートをつぶし、生コンの製造販売を行う宝永産業のみを存続させることにより、福住コンクリートの生コン製造販売事業から組合及び組合員の排除を図る目的をもって行われたものである、と明確に不当労働行為目的にあることを認定した。
 そして、②の点について、宝永産業と福住コンクリートは同一の法人格とはいえないものの、本件会社分割による宝永産業の設立の主要な目的が組合及び組合員の排除であったとみることができる以上、宝永産業と福住コンクリートはともに重畳的に福住の従業員に対する支配決定権をもつものとみなされるべきであり、宝永産業も労組法上の使用者に該当する、と判断した。
 その上で、両社に対し、組合員の職場復帰及びバックペイを命じ、併せて組合に対する謝罪文の交付を命じたのである。
 なおその他にも、労働委員会は、両社の団交拒否に対して団交応諾を命じ、会社分割時の組合事務所の一方的変更に対して従来の組合事務所を継続して使用させること等も命じている(最初の申立にかかる不誠実団交のみ棄却)。

5 本件の意義

 本件は、会社法の分野においても制度の欠陥が指摘され分割会社に残された会社債権者からの詐害行為取消訴訟が頻発するなど問題の多い会社分割制度を利用し、分割会社に組合員を残して分割会社のみ事業閉鎖をし組合員を解雇して組合を壊滅させるという方法で、従来なされていた偽装閉鎖・解雇と同様の目的を達成する新手の手法に対して、労働委員会が会社分割後の両社に重畳的に労組法上の使用者性を認定するなどして阻止した事例であり、先例的にも意義があると思われる。

  (弁護団は徳井義幸と谷真介。なお訴訟と街宣仮処分・本訴については、喜田崇之弁護士にも弁護団に入っていただいている)

共通番号制(マイナンバー法案)に反対――10.24緊急集会のご報告

弁護士 大 前   治

◆社会保障削減の道具
2012年10月24日、中之島公会堂にて、「マイナンバー法案反対・緊急集会」が開催され、約50人が参加して盛会となりました。
はじめに、自治体情報政策研究所代表の黒田充さんが、「マイナンバー制度のどこが問題か」と題して講演されました。この制度の本質が、新自由主義による構造改革と一体のものとして持ち出され、その行き着くところは社会保障費の削減と、その市場化・営利化にあることが多角的に明らかにされました。特に、小泉内閣時代の「骨太の方針二〇〇一」のなかで、「真に支援が必要な人に対して公平な支援を行うことのできる制度」が唱えられ、その実態は支援の対象を狭めるものであることが、これまでの歴史から解き明かされました。政権交代により民主党政権になりましたが、現在も「税と社会保障の一体改革」の名で、小泉時代と同じく新自由主義路線が継承されていることが指摘され、マイナンバー法案はそれを推し進める重要な道具として利用されることが指摘されました。
このほか黒田氏は、マイナンバー法案(共通番号制度)の問題点についても解説し、国家による情報統制やプライバシー侵害、さらにそれを民間営利企業が「活用」されていることの危険性などを指摘しました。

◆今からでも遅くない、反対の声を広げよう
続いて、坂本団弁護士(日弁連・情報問題対策委員会)が情勢を報告しました。民主党も自民党も法案に賛成しており重大な局面ではあるが、一部報道にも問題点の指摘や危惧が表明されていること、かつて住基ネット問題では法律が制定されてから反対運動が全国的に盛り上がり運用拡大させない成果が上がっていることなどを示し、「今からでも遅くない、反対の声を広げよう」と話されました。
なお、この集会後、衆議院の解散によりマイナンバー法案は廃案となりました。しかし、国会開会後は同法案が再提案・審議されることとなるでしょうから、引続く運動が大切です。皆さんのご協力をお願いいたします。

第30回記念 北河内権利討論集会を開催!

大阪労連北河内地区協議会事務局次長 稲 垣 忠 男

 大阪労連北河内地区協・民主法律協会共催の北河内権利討論集会が、2012年10月28日(日)10時~16時、パル寝屋川組合員会館で行なわれ、弁護士10人を含む65人が参加しました。
北河内での権利討論集会は、第1回が「労働者の権利交流」として開催され、労働者の権利意識が大切であることが多くの参加者の共通認識となって長く続けられ、今年で節目の30年を迎えました。今回は、どこの職場でも世代交代が進む転換期を迎えており、これまで勝ち取ってきた労働者の権利をもう一度見直し、権利意識を高めようと開催されました。
午前中の記念講演は「労働相談入門講座」と題し民法協事務局長の増田尚弁護士が講演されました。今労働者の状態は、非正規雇用やワーキングプアの増大で、過労死ラインを超える長時間過密労働、メンタルヘルス不全、パワハラなど厳しい職場環境に置かれている。企業に労働基準法を守らせること、改正された労働者派遣法や労働契約法を最大限活用し、職場における労働条件の向上、労働者の要求実現に取り組む労働組合としての「体力」に、どう結びつけるかが重要だと話されました。
続いての基調講演は「労働相談事例から見た労働実態」について、おおさか労働相談センター事務局次長の長岡佳代子さんが行いました。1年間で1839件の相談を受けて、各産別労組・地域労組へ255件紹介している。相談事例から、長時間労働で生きる気力も失っている、会社が一方的に6ヶ月ごとに給与を見直すと言って賃金を引き下げる、職場でのパワハラ・いじめの繰り返しによるメンタルヘルス不全、有期雇用での雇い止めの強要、会社の都合で休まされるのは生活があるから困るというと解雇、派遣での外国人差別や職場での排除・孤立など劣悪な雇用の広がりがある、等報告され、労働組合の大切さを強調されました。
争議組合からの訴えが行われ、午後からは、①職場の闘いと組織拡大、②職場の健康と安全衛生、③非正規労働者の実態と組織化の3つの分科会で熱心な討論が行なわれました。

【第1分科会】職場の闘いと組織拡大 報告者 中村 鎮夫
労働運動の中で一番大きな課題である「職場の闘いと組織拡大」の分科会には、12団体2法律事務所合計24名の参加がありました。
自己紹介を兼ねて職場でのたたかいについて発言が行われました。主な発言としては、①関西医大労組から、職場に成果主義賃金が導入され悪影響が出ており、その反撃の宣伝を毎週行っていることや、この制度の導入で患者さんに対する対応がおろそかになり、一人の患者に対してチームで取り組む体制が崩れてきていること、また組合員拡大では「新入職員」が入ってきても、最近は長く勤めたいと思っている人は少なく、組合の必要性を訴えるのにも苦労していること。②門真、交野教組から、今問題になっている「保護者・生徒アンケート」(府教委案)について、これは教育を良くするのではなく、教員の中に差別と分断を持ち込むものであり(逆効果)、「私は採用しない」と表明している校長もいること。③北河内合同労組は、労働相談で組合員を拡大しており、これからも相談活動を広めていく、といった発言がありました。
その後、田中議長から中間発言として、当面の組織拡大では産別、地域労連と組織拡大をテーマに懇談会を開いて、地域全体として取り組みを進め、相談活動を強めるとの発言がされました。
田辺鉄工所支部では、今まで家庭訪問で組合加入を訴えていたのが困難になり、職場で直接話をして組合員を増やしているとのことです。また、日立建機ティエラ支部では、青年が新入社員に組合のいいところや、自分の感じている組合活動など話をしているとのこと。それぞれ組合では新しく入社した人に対する「声かけ」が工夫されていることが伺えました。
最後に弁護団より、最近の判例にもとづいての発言がありました。パワハラ問題は昔からあったことで、今は労働組合の力が弱くなっているのが原因のひとつではないか、やはりそうした行為を許さない職場環境にしていくため労働組合の組織拡大が大切だと発言がありました。やはり組織活動は目的、意識的にすることが大切として分科会は終わりました。分科会には、オレンジコープ労組や労災継続を闘っているMさんも参加され発言がありました。

【第2分科会】職場の健康と安全衛生の取り組み 報告者 藤田 純一
第2分科会は、7団体、2つの法律事務所、13名の参加で行われました。
今回は、放射線技師で医労連の園部さんにお願いし、パワーポイントを使って放射能汚染についてのミニ講演をおこないました。
福島で起った原発事故は、まだ1年8ヶ月しか経っていないが、事故が起って5~6年後に病気が増えること、内部被爆や外部被爆でも放射能は排出されない限り、人体から外に出ないことが報告されました。また、現在も事故が起って放射能がずっと出ていること、地下水が汚染されていることや、農作物に影響が出ていることが説明されました。
今、事故が起きていち早く退去命令を出した外国の判断は正しかったが、日本の対応が手遅れであったことが明らかにされました。そして、「政府機能はいつまでも東京には置かない」。「首都機能は東京より西に最終的に持っていく」とも言われました。
又、「福島の原発事故は、チェリノブイリと同程度の事故と考えた方がよい」とのことでした。未だに福島の遺体が回収できていない状況であり、放射能で死んだのか、溺死なのか不明になっている。弁護士からは、この事故に対する裁判については難しい面はあるが、いつどこで何を食べたのかメモを取っておく必要があることを強調されました。
現在、「震災がれきの受け入れ」が問題になっていますが、がれきの受け入れが被災地の復興になっていません。むしろ放射能汚染を全国にばら撒くことになります。
最後に、世界が輸入禁止にしている日本の食品の説明があり、その表を見ると、福島、群馬、茨城、栃木、宮城、山形、新潟、長野、山梨、埼玉、東京、千葉などの食品が輸入禁止になっています。更に、クウェート、ギニアについては  都道府県の食品を輸入禁止にしています。「外食についても材料が何処のものか分からないので食べない方がいい」と言われ不安の広がる中、分科会は終了しました。ここで、スライドを見終わって、みんな暗い雰囲気に包まれました。

【第3分科会】地域運動の取り組み
少人数のため取り止め

【第4分科会】非正規労働者の実態と組織化にむけて 報告者 財間 恒明
第4分科会には、9団体、3法律事務所から16名の参加がありました。
自己紹介を兼ねた職場からの発言では、①四條畷市教組~今、大阪の学校では「授業アンケート」(保護者・生徒の4段階評価による学校長の授業観察)の実施で教員への人事評価が行われる。②福祉保育労~ユニオンショップで加入すると労働組合のことがわからない。シフト勤務で生理休暇が取れない。③寝屋川学校給食アルバイト分会~組合を結成して、交渉してきたが中々成果がでず組合への期待が薄れ5名が脱退した。④パル労組~最賃の引き上げに伴なってパート採用時給を800円に、すべてのパートの基本時給が14円引き上げられた。再雇用の時間給も800円から830円に引き上げられた。再雇用制度で60才から賃金ダウン。パートが主体の職場、正規は長時間労働になっている。定年延長やパートにも扶養手当の要求をしている。⑤JMIU日立建機ティエラ支部~非正規労働者が期間満了で解雇され、相談から組合に加入し正社員にさせた。連合の職場では長時間労働でパワハラ、メンタル不全が広がっている。社会的に包囲し、労基法を守らせることが重要。⑥北河内合同労組~正社員だと思っていたら、有期雇用の契約にされていた。契約のことで話したら、退職強要から自宅待機命令にされた。⑦建交労~朝日分会は日雇いなので不安定雇用。関西総合輸送では2年前に事業所閉鎖の闘いをして、組合の力で新事業を起こした。大久保建材も非正規化で偽装閉鎖撤回で闘い職場復帰させた。弁護団からの発言で、パート、アルバイトが声を上げるとパワハラ、解雇と弱い立場にあるが、労働者の団結で改正労働契約法も活用して立ち上がってほしい。民法協でも「有期・パート・非常勤問題研究会」で非正規問題を話し合っているので相談して欲しい。
最後に、弁護団から今回参加者は増えたが、来年はもっと職場の闘いでのレポートを出していただき、権利問題で議論を交わしてもらいたいとの要望がありまとめとなりました。

日本労働弁護団第56回全国総会報告

弁護士 増 田   尚

 2012年11月9日・10日の両日にわたり、福島・穴原温泉の旅館・吉川屋にて、日本労働弁護団の総会が開催されました。
冒頭、宮里邦雄会長のあいさつ、来賓あいさつに続き、水口洋介幹事長より、今年度の活動方針案の報告がありました。

水口幹事長は、労働契約法の改正により法定された有期労働契約規制について、入り口規制が見送られるなど要求した水準には及ばなかったものの、雇い止め規制や無期転換については、おおいに活用すべきと訴えました。特に、無期転換について、5年になる前に首切りが横行するとの懸念が言われるが、そのような雇い止めは、改正法の趣旨に反するもので無効であり、便乗解雇を許さない事前の闘争で反撃をすべきであると指摘しました。他方で、使用者側が無期転換後の労働条件に関する「別段の定め」(改正労働契約法18条)に関し、労働条件切り下げのための就業規則変更・制定の準備をすすめており、これを許さない運動を労働組合とともに進めることが重要であると述べました。また、いわゆる不更新条項についても、契約の反復更新の可能性を排除するもので不合理であるとする明石書店事件・東京地裁平成21年12月21日判決などを活用し、法廷内外で突破を図ることを呼びかけました。また、不合理な差別の禁止(改正労働契約法20条)についても、国会答弁で私法的効力があると明言されていることから、差別是正のとりくみを労働組合との共同で進めることを訴えました。その上で、来年3月7日に行う全国いっせいホットラインを有期労働者の権利を守り向上させる活動と位置づけ、マニュアルを整備するとともに、実態調査や集団提訴なども視野に入れた運動を提起されました。
このほか、パート法改正、民法(債権法)改正、労働審判・労働裁判改革や、JAL不当判決などの問題を取り上げ、公務員の労働問題に関して、大阪市における職員・職員組合への攻撃は全国的な課題であると位置づけ、各支部でも取り上げることを提起しました。

次に、原発訴訟を数多く手がける海渡雄一弁護士による原発労働者の実態を告発する講演が行われました。海渡弁護士は、東京電力福島第一原子力発電所における過酷事故において、下請・孫請の労働者に被爆が集中していること、多重下請構造の中でピンハネが横行し、「線量隠し」の押しつけなど、下請労働者の生命の安全が脅かされている実態を明らかにしました。偽りの収束宣言で、安全性を強調して再稼働を推し進めようとしながら、実際には、その危険を最も立場の弱い労働者に押しつけている欺瞞的・非人道的な政府・電力資本の横暴に対する怒りを新たにすることができました。

続いて、古川景一弁護士から、各地で取り組みが進む公契約条例についての講演がありました。古川弁護士は、野田市などでのご自身の経験も踏まえつつ、公契約条例による労務報酬の適正化を通じて、労働者の生活保障を図ることができることはもちろん、事業者にとっても、ダンピング防止効果など、その営業を守る効果があることを指摘されました。また、大阪府でも黒田革新府政の当時に、不当労働行為と認定された企業について入札参加停止等の処置を講ずることを可能にしたことを紹介し(大阪府入札参加停止要綱)、労働分野における不正義をはたらく企業への効果的な制裁として機能していると指摘されました。公契約条例をめぐっては、日弁連でのとりくみや、札幌、神奈川県(川崎、相模原、厚木)、京都からも発言がなされました。

2日目は、大阪市問題についての集中討論がありました。在間秀和弁護士から、大阪市をめぐる労使紛争についての概略の報告があり、労使関係条例において便宜供与を一律全面禁止することと、組合事務所の使用許可処分や労働委員会による原状回復命令との関係について、城塚健之弁護士や宮里会長などからも、示唆に富んだ議論が展開されました。
また、労働組合に対する攻撃について、ストライキや組合ホームページの記述をめぐって損害賠償請求が提起されていることが紹介され、前代未聞の「ストライキ禁止仮処分」を受けた当該のユニオンみえ鈴鹿さくら病院分会からも報告があり、労働基本権に対する無理解や、労働組合活動への偏見を有する裁判官をどう説得し、理解させるかについて議論がなされました。
最後に、役員改選があり、今期をもって宮里会長が勇退され、新たに鵜飼良昭弁護士が会長に選任されました。
雇用をめぐる情勢はなお厳しく、使用者側の横暴な規制緩和要求が強まりつつある中、労働者の権利を守り、その地位の向上にとりくむ法律家の役割の重要性が増していることを実感できた総会でした。

街頭宣伝の自由確立をめざす各界懇談会(街宣懇)学習交流集会の報告

弁護士 南 部 秀一郎

 2012年11月16日、街宣懇では、学習交流集会をもちました。当日は、会場の国労大阪会館中会議室が満席になるほどの出席者に来ていただきました。出席していただいた方に、まずこの場で感謝の言葉を述べさせていただきます。拙い文章ですが、以下、当日の模様を報告いたします。
集会は、主催者を代表した大阪労連の川辺和宏議長のあいさつから始まりました。
そして、今回の講師として招いた、自由法曹団大阪支部支部長の伊賀興一弁護士から「街頭宣伝の自由を守る闘いは、心の自由を守る闘い」と題して、講演いただきました。
まず、この講演では実物の「許可状」を見て、その問題点がどこにあるのかを、会場の参加者で考えました。問題の「許可状」では、チラシを渡す人数や、チラシ配布場所を限定し、渡すチラシの添付まで求めています。また、街宣についての許可状には、街宣を行う場所や細かな許可条件が付されており、許可条件には「道路において駐停車して放送宣伝を行わないこと」などというものも含まれています。
このような許可状を示すことで、伊賀弁護士は語ります。「警察は許可をとることで制限を付させる。許可を得ることは、警察に取り締まり権限を与える行為である。」
更に、伊賀弁護士は街頭宣伝を規制するとされる法令、道路交通法、屋外広告物条例、公安条例などをあげて、街頭宣伝そのものを制限する法令がないことを説明します。これはつまり、街宣活動そのものには、許可を得る必要性がないということです。警察は取り締まる権限もないのに許可をとることを求め、この許可によって、街宣を制限しているのです。
話の後半では、伊賀弁護士は、自由法曹団が街宣の自由を守る闘いに参加されるようになった、1980年代に遡り、自らの経験を話されました。その中で、印象的なのは、1986年10月のなんば駅での攻防のお話です。警察官が街宣に対し、プラカードを掲げて街宣を妨害しているのに対し、宣伝者が街宣の自由を説き、警察に対し、「取り締まる根拠はあるのですか?」と問いかけます。そうしたところ、周囲の市民から「警察帰れ」の大合唱の声が。
集会での質疑の時間に、参加された合唱団「ピースコール」の方が、市民の支持を受けることが街宣成功に必須であることを、日々、通行している人たちに宣伝が届くよう工夫されている活動実例に基づいて報告されていましたが、街宣は市民の支持のもと、市民のために行う活動だと認識することが大事なのではないかと、私は思いました。決して、警察の許可を受け、警察のために行うものではありません。
伊賀先生は最後に、「街宣の自由を守る闘いは、心の自由を守る闘いである」と、講演をまとめられました。これから、街宣を行うにつき、心にとめておきたい言葉です。
当日は、組合関係者だけでなく、現在争議を闘っておられる方々のお顔もたくさん見ることができました。この日の学習交流集会で話された内容が、これからの街宣活動に活かされると思います。また、これからも、街宣懇では、情報を収集し、学習集会等情報交換の機会をもって、自由な街宣活動が行われるよう努める所存です。

憲法も国民の安全も踏みにじるオスプレイ――日米安保の黒い影

弁護士 橋 本   敦

1 オスプレイに湧きおこる国民の怒り

 たび重なる事故をおこして「未亡人製造機」とまで呼ばれている危険なオスプレイが、ラムズフェルド米国防長官も2003年の視察で「世界で最も危険な基地である」と認めたその沖縄の普天間基地に国民の大きな反対を押しきって強行配備された。そして、「学校を含む人口密集地の飛行は極力避ける」「ヘリモードは基地内に限る」などの日米合同委員会で合意された安全対策の合意事項を踏みにじるオスプレイの危険な飛行が常態化している。
 本年9月9日の沖縄の反対集会には10万人をこえる県民が結集した。
 米兵の暴行事件で県民の怒りはさらに高まり、沖縄県議会では10月22日全会一致でオスプレイ反対とともに、米軍基地の全面撤去が決議された。
 さらに、オスプレイは沖縄だけでなくこれから全国で運用される。しかも許せないことに、日本の航空法が禁止している地上約60メートルの危険な超低空飛行も実施されようとしている。
 これは、航空法第81条が「航空機は国土交通省令で定める高度以下の高度で飛行してはならない」と定め、これにもとづいて同法施行規則第174条では、「まもるべき最低安全高度は人口密集地で300メートル、それ以外では150メートル」と規定されていることに明白に違反する危険な暴挙であり、到底許されない。
 こうして今やオスプレイ反対の怒りの声は全国に燃えひろまっている。
 これに対し、アメリカのパネッタ国防長官は「オスプレイ配備は日米安保条約上のアメリカの権利である。日本側には配備を拒否する権限はない。」と居直っている。
 日本の法律を犯し、日本の国民にいのちの危険を押しつけて、それが「権利だ」とは何ごとであろうか。そして野田内閣はこの発言に抗議もできず、アメリカの言いなりにオスプレイの配備を容認しているのである。

2 日本の法律を踏みにじるオスプ レイの重大な危険

 オスプレイの危険性の最大の問題は、オスプレイにはオートローテイション(自動回転機能)が欠如していることである。オートローテイションとは、エンジンが停止した場合に滑空により安全に緊急着陸する機能である。
 これはヘリコプターの安全運行のために絶対必要な機能であって、わが国の航空法ではこのオートローテイション機能がないヘリコプターは飛行が禁止されている。
 すなわち、航空法第11条は「航空機は有効な『耐空証明』を受けているものでなければ、航空の用に供してはならない。」と定めている。『耐空証明』とは安全に飛行ができる証明のことである。そして、この航空法の施行規則の附属書第一「航空機及び装備品の安全性を確保するための強度・構造及び性能についての基準」が定められていて、その第二章の「2―2―4―3」項には「回転翼航空機は、全発動機が不作動である状態で、自動回転飛行により安全に進入、着陸することができるものでなければならない。」と明確に規定されている。
 そのため、この規定に違反してオートローテイション機能をもたないオスプレイは、飛行に必要な『耐空証明』を受けることができないから、航空法第11条によって、そもそも飛行することが許されないのである。

3 日米安保の黒い影

 ところがそれなのにオスプレイはなぜ『耐空証明』がとれないのに日本の空を飛行できるのか。
 それは米軍の軍事的利益を守るために航空法の特例がつくられ、その特例法によって、米軍機には前記の航空法第11条の適用が除外されているからなのである。
 何故に米軍機に対しては日本国民の安全をまもるための重大なこの法律が適用されないのか。この許し難い特例法なるものはどうして作られたのか。
 まさにここに日米安保があるのである。
 日米安保条約第6条は米軍の日本駐留を認め、その米軍の日本における優先的地位と基地利用の便益などを認めるため日米地位協定(その正式の名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定」)が締結された。その日米地位協定の第3条は、「合衆国は施設及び区域において、それらの設定、運営、管理のため必要なすべての措置をとることができる。」と定めている。
 このアメリカの軍事上の優先的専権的利益をまもるために、アメリカの要求どおりに航空法の特例がつくられているのである。
 それが「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第6条に基づく日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定の実施に伴う航空法の特例に関する法律」である。
 そしてこの特例法の第2項は次のように定める。
 「合衆国のために又は合衆国の管理の下に、公の目的で運行される航空機並びにこれらの航空機に乗り組んでその運行に従事する者については、航空法第11条の規定は適用しない。」
 こうして、この航空法の特例法によって、米軍機には日本国民の安全をまもるための重大な法律である航空法第11条が適用除外とされ、『耐空証明』がとれない危険なオスプレイもわがもの顔で日本の空を飛行することができるのである。
 この特例法なるものは日本国民の生命の危険を無視して米軍の特権的優位を認める対米従属の屈辱的法律であり、それは米軍に対して、わが国の法律の支配を受けない特権、すなわち『治外法権』を与えていることにほかならない。断じて許せないではないか。
 アメリカの航空専門家のアーサー・レックス・リボロ氏は米下院でのオスプレイに関する公聴会で証言し、オートローテイション機能をもたないオスプレイの導入は「兵士の生命の軽視である」ときびしく批判しているが、日本への配備は、沖縄県民はじめ日本国民のいのちと安全を「軽視」どころか、重大な危険にさらす不法な暴挙であると言わねばならない。
 今沖縄では多くの県民がオスプレイ墜落により生命と安全が失われる恐怖に毎日脅えているのである。
 沖縄国際大学の前泊博盛教授が、「アメリカは日本にはオスプレイ配備を押しつけるのに一方で、米陸軍は“危険だから”という理由でオスプレイの導入をやめています。それなのに日本にはおしつけるオスプレイ配備の問題は、日米安保条約の本質や矛盾、日本の民主主義の機能不全の実態、対等ではない日米関係の実態を浮き彫りにしています。」と述べているとおりである
 こうして今、沖縄は勿論、全国に高まるオスプレイ反対の国民のたたかいは、屈辱的な対米従属の安保条約廃棄をも視野に入れて、「オスプレイはアメリカへ帰れ」「米軍基地をなくせ」という大きな平和のたたかいにしてゆかねばならない。

4 憲法違反のオスプレイ配備

(1) 侵略的攻撃兵器オスプレイの日本配備の目的
 このように日本の航空法を踏みにじり、国民の大きな反対を押しきってオスプレイを日本にもち込み、海兵隊に配備するアメリカの目的は何か。
 まず、オスプレイの軍事的侵略機能の絶大な強化である。防衛省が今年6月13日に公表した「オスプレイの普天間配備及び日本での運用レビュー」によると、オスプレイは在来のヘリに比較して、飛行速度は2倍、戦闘半径は4倍、輸送兵員数は2倍、貨物積載は3乃至4倍、航空距離は5倍強の3900キロ、そしてこれまでのヘリコプターと違い、空中給油が可能で、これによって北朝鮮や中国への進行も可能となる。
 これはまさしく米海兵隊の地球規模の遠征=「殴りこみ」の能力を飛躍的に高める侵略的攻撃能力の強化にほかならない。そのねらいはアメリカの「新防衛戦略」に基づく海外遠征軍“殴り込み部隊”である海兵隊の戦力強化が目的である。
 そして、オスプレイが配備された海兵隊は「考えられうる最も過酷な状況下でも交戦能力を有して、不確実な将来への戦闘作戦への即応性を有した迅速で決定的な遠征部隊になる。」とされている。
 また、2009年に策定された米海兵隊の「海兵隊・展望と戦略2025」という文書では、このオスプレイは従来のヘリと比較して、「戦場における革命的効果をもたらす」とまで述べている。
 まさしく、オスプレイの配備は日本防衛のためではなくアメリカの軍事的世界戦略の「革命的」な強化のためなのである。

(2) 平和憲法違反のオスプレイ配備
 このようなアメリカ海兵隊の先制攻撃能力を強化するための侵略的攻撃兵器を治外法権によって平和憲法をもつ日本にもちこむことは許されるのか。
 オスプレイの導入と配備は、何よりもわが憲法第9条を踏みにじる憲法違反であり、わが平和憲法が到底許さぬ問題であると言わねばならない。
 ここであらためて60年安保闘争の前夜に、『砂川の土深く杭打たるるも心に杭は打たせるまいぞ』とたたかわれた米軍基地拡張反対の砂川闘争の裁判で、1959年3月30日、東京地裁の伊達秋雄裁判長が被告人とされた労働者、市民の全員に無罪判決を下し、その理由のなかで「安保条約による駐留米軍は、憲法九条に違反する」と明確に判示した画期的な勇気ある判決を想起しよう。
 その判決は、わが国が駐留を許容しているアメリカの軍隊は、日本国憲法第9条2項が禁止する「陸海空軍その他の戦力の保持」に該当するものであり、わが国内に駐留する合衆国軍隊は憲法上、その存在を許すべからざるものといわざるを得ないと明快に判示したのであった。この砂川事件の判決に照らしても、「戦場における革命的効果をもたらす」とまでアメリカが強調する侵略的攻撃兵器であるオスプレイの日本配備の違憲性はさらに明白であると言わねばならない。
 中山研一京都大学教授は論文『治安と防衛』(現代法学全集  )において次のように論述されている。
 「ところで、安保条約を根拠とする駐留軍の存在および行政協定や刑事特別法による駐留軍への広汎な特権の賦与は、果たして戦争の放棄と戦力の不保持を定めた憲法に適合するものであろうか。この点については、現に昭和三二年に発生したいわゆる『砂川事件』において裁判上争われ、米軍の駐留を違憲としたいわゆる伊達判決(昭和三四・三・三〇東京地裁)が、逆にこれを合憲であるとした最高裁判決(昭和三四・一二・一六大法廷)によって破棄されるという経過をたどったのである。最高裁は、いわゆる統治行為論によって安保条約に対する司法判断を回避して、憲法九条が日本軍に関するだけで外国の軍隊には関係がないとする形式論を展開したのであるが、ことがらを実質的に見るならば、自国が行ないえない行為を他国と協定して自国内で行なわせることも当然禁ぜられるといいうる以上、憲法的疑義はなお将来にわたって留保されるべきものと考えられるのである。」(146頁)
 すなわち同教授は、米軍に対する治外法権の利益供与は平和憲法違反の疑いはぬぐえないと強く主張されているのである。
 また、日本国民の安全といのちをまもるための重要な航空法第11条を米軍には適用しないと除外する航空法の特例法なるものは、アメリカの軍事的利益のために、わが国民のいのちと安全をおびやかすものであって、日常安心して生活することができるという国民の生存権を侵害するものであるから、憲法第25条を犯す憲法違反であることも明らかではないか。
 こうしてオスプレイの配備は、わが国民のいのちと安全を脅かすだけでなく、わが憲法を踏みにじる重大な問題である。
 アメリカの同盟国のなかで、米海兵隊が常駐している国は今は安保条約下の日本のみである。今こそわれわれは安保条約廃棄をも展望し、オスプレイはアメリカへ帰れの国民的たたかいを大きくまきおこしていかねばならない。
 全国にひろまるオスプレイ反対のたたかいは、国民のいのちと平和憲法をまもる今日の国民的たたかいの基軸である。

ジョン・ニコルス著『市民蜂起  ウォール街占拠前夜のウィスコンシン2011』

大阪・日本の労働者・市民への呼びかけにどう答えるか

評者・弁護士 小 林 保 夫

 私の親しい友人である梅田章二さん・喜多幡佳秀さん監訳、おおさか社会フォーラム実行委委員会日本語版編集による標記の著作が出版された。 本稿は、私の切実な読後感を踏まえて、みなさんにこの著作を紹介し、購読をお勧めするものである。

1  本書の概要
 ――公務員労働者の団体交渉権を守るためのウイスコンシン州市民のたたかい――

 資本主義の行き詰まりを新自由主義的な方向と政策で打開しようとするアメリカの企業・富裕層は、ウィスコンシン州で共和党のスコット・ウォーカー知事のもとで緊縮財政政策を推し進めるにあたって、これに対する抵抗を排除するために、2011年2月11日、公務員労働者、教員等から団体交渉権を奪い、労働組合の権利を制限する内容を含む財政改革法を提案した。これに対して、同州のみならず全米の民主主義勢力が反対の声を上げ、同州首都マディソン市において、当初の50人から、10万人にも及ぶ集会参加者を得、ついに同月20日、州議事堂を占拠するに至った。3月3日占拠を終結し、またさきの団交権制限法案の可決を見るが、その後も共和党議員や同上知事のリコール運動への展開とその成功をかちとった。
 ウィスコンシン州におけるたたかいは、他の諸州におけるたたかいとともに、さらに2011年7月に始まる全米の市民による「ウォール街の占拠」と思想的・運動的に連動するものであった。
 本書は、ウィスコンシン州におけるたたかいを跡づけ、その正当性をアメリカ合衆国憲法(修正第1条 抵抗権)、民主主義の観点から解明するとともに、このたたかいについてのメディアの対応やあり方を検証したものである。
 著者は、アメリカのオピニオン誌「ネイション」の政治記者・ジョン・ニコルスであり、みずからも、ペンと行動によってこのたたかいに参加し、立ち上がった市民を鼓舞激励した。

2 著者の日本の読者への呼びかけ 
 
――たたかいと連帯の必要――

 著者は、「日本語版への序文」において、日本の読者に以下のように呼びかける。
 「ウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事が州の公務員の団体交渉の制度を解体しようとした。」のに対して、州民たちは「アメリカの現代史の中で最大の、最も戦闘的な、労働者の権利を擁護する運動を展開した。」
 世界の多くの国で、政治的利権グループは、「『緊縮財政』の旗を掲げ、経済的な混乱と財政の困難な中では労使関係や、社会福祉や、国家の役割の根本的な変革が必要であると主張している。緊縮政策は嘘である。彼らは『負担を分かち合う』べきだと言っているが、現実には、勤労大衆の賃金や福利が犠牲にされ、若者、高齢者、失業者、貧困層に対するサービスが切り捨てられる一方で、企業と富裕層は保護され、冨と権力を上に向けて再配分する政策によって、一層富裕化している。」
 「ウィスコンシンの闘いは、労働者の権利と組合の力に対する攻撃に反撃し、生き延びた経験の物語である。それは、純然たる勝利や、たやすい勝利ではない。後退もあった。ウォーカー知事は、彼の政策のいくつかの要素をすでに実施した。労働組合と労働者は大きな打撃を受けた。知事による州議会上院の支配を終わらせることができたが、ウォーカー知事を失職させることはできなかった。」
 「ウィスコンシンの教訓は、反労働者的な政策との闘いは可能であるだけでなく、必要であるということである。」
 「ウィスコンシンのもう一つの教訓は、国際連帯である。」
 そして彼は、日本の読者に対しても「連帯を!」と呼びかける。

3 私たちはウイスコンシン州のたたかいから何を学ぶか
 ――ウィスコンシン州における攻撃とたたかい、大阪における橋下・維新の会の攻撃と私たちの闘いの共通の普遍的性格――
 
   本書が紹介するウィスコンシン州における労働者・市民への攻撃の内容は、まさに今大阪で展開されている橋下・維新の会の労働者・市民に対する労働基本権侵害、福祉攻撃と驚くほどの共通性を有するものである。
 橋下氏は、府知事当時、大阪府の職員・教員に君が代斉唱を義務づける条例を制定し、その後大阪市長に就任すると同市においても同様の条例を制定したうえ、さらに維新の会所属の府知事とともに、憲法や地方公務員法はもちろん、改悪教育基本法さえ無視して、府市職員・教員の組合活動・政治活動の権利、教育活動を徹底的に抑圧する条例を制定した。
 橋下・維新の会は、これらによって労働者・市民の抵抗を排除して、労働者の権利に敵対し、市民の福祉を切り捨て、核武装まで可能にするような新自由主義的・反憲法的・反民主主義的な内容の政策(「維新八策」)を推進しようとしている。
 しかも、これらの政策への志向は、橋下・維新の会に限らず、日本の支配層に共通するものである。
 この点で、ウィスコンシン州における事態は、わが国の労働者・市民にとってよそごとではない。
 ウィスコンシン州における市民の反撃は、私たちに多くの教訓と示唆を与えるものではないだろうか。
 橋下・維新の会が「維新八策」に掲げる政策は、客観的には、大阪府市民の99%の利益に敵対し、圧倒的多数の市民の平和への願いに敵対するものである。
 したがって、このような勢力に対するたたかいは、客観的には圧倒的多数の市民の理解と支持を得る性格を持つものであろう。

4  マイケル・ムーアは言う
 ―― 「ウイスコンシンで起こっていたことはどこででも起こりうる」――

 本書について、マイケル・ムーアは、「ジョン・ニコルスはウィスコンシンの闘いの意義が1つの州にとどまらないことをすぐに理解した。それは私たちみんなが待っていた闘いである。人々は『もうたくさんだ!』と叫んだ。ジョンはウィスコンシンで何が起こったかを語っているだけではない。ウィスコンシンで起こっていたことはどこででも起こりうることを私たちに教えている。」と語った。
 私も、マイケル・ムーアのひそみにならって、「2011年にウィスコンシンで起こっていたことは日本でも起こりうることを私たちに教えている。」と語って、とりわけ橋下・維新の会が、新自由主義の政策を振りかざして、大阪をはじめとするわが国の労働者・市民に加えようとしている憲法・民主主義破壊の攻撃に対して、スコット・ウォーカー知事らの労働基本権攻撃とたたかって成功を勝ちとったウィスコンシン州の市民のようにたたかうことを訴えたい。

株式会社かもがわ出版
2011年10月1日発行
定価 1800円+税

中国雲南省 麗江 シャングリラ紀行(第6回)

弁護士 福 山 孔市良

7 シカ雪山(4449メートル)
 今日5月3日はシャングリラでのハイキングの最終日である。
 3200メート以上の町で寝起きしていると、それだけで身体が疲れてすぐ眠くなってしまう。食欲はそれほど減少しないが、何となく疲労感が抜けきれない気分である。天気は上々。朝からシカ雪山の山頂まで行き、4、5時間のハイキング予定である。
 シカ雪山はシャングリラの北約7キロの所にある藍月山谷風景区の中に地位する。
 シカ雪山の山頂に行くには、ロープウェイを2基乗り継いで行く。第1ロープウェイは3200メートルの地点から600メートル上がる。3800メートルの地点で、ここは広々とした山に囲まれた草原が広がっている。雪は全くない。このロープウェイを降りると休憩所と土産物店があり、ここで無料のお茶が配られて、ゆっくり飲んで高度に慣れる。
 第2ロープウェイは長さ2000メートル、高度差600メートルを約4500メートルの地点まで登る。
 さすがにロープウェイもゆっくりと運転されており、途中で時々休止して、無理のないように高度に順応させながら登って行く。
 ここに来る前にシャングリラの町で80元(約1200円)の携帯の酸素ボンベをみんな買っていたので、車内で酸素を補給する。
 山頂駅で降りるとそこは雪と風の別世界であり、マイナス5℃以上の寒さで風が強い。足下はカチンカチンに凍っている。
 昨日まではシャングリラは雨で、高山では雪が大量に降って積もったらしい。この季節、本来はこの山頂付近も緑の広がる草原で、ここから第1ロープウェイの駅まで、途中湖をぐるりと廻って、4、5時間かけて下るのがハイキングコースになっている。
 真正面にかすかに梅里雪山が見える。肉眼では見えるのだが写真は難しい。
 頂上から周囲を見ると目の前にシカ雪山(4449メートル)がどっしりと見えるが、ハイキングコースは雪の中である。
 20人中、15人は第1ロープウェイまで下りて牧場をゆっくりハイキングすることになった。佐賀の5人、大阪の2人がガイドと一緒に雪の中を下るということで出発した。
 一体どうなることか心配ではあるが、私にとっては全く未知の世界であり、地元のガイドに任せるしか仕方がない。
 15人は再びロープウェイで3800メートルまで下って牧場を歩くことにする。ヤクがのんびりと草を食べている。山頂とは全く違った気象状況で風もなく暖かい。
 牧場には一面に黄色の花が咲いている。
 現地では名前も分からなかったが、帰国して「世界の山草野草」を調べてみた。名前はオクシグラフィス・グラキアリス。キンポウゲ科オクシグラフィス属で、分布はチベット雲南省北西部四川省西部。3000メートルから4500メートルの日当たりのよい石礫地や草つきのやせた砂地などに群生するそうで、フクジュソウのように花が咲いてから葉が伸び、地表に張り付くように咲く。
 ここまでは別に珍しくもないが、黄色の花が時間が経つにつれて緑色に変化すること、その緑色が鮮やかな色なのでびっくりするというのが特徴である。
 誰かがフクジュソウと違うか、と云っていたが。花は違うがよく似たところがあるようだ。
 緑の花もところどころ咲いていたので、今から思えば黄色が緑に変化して咲いていたのだと思う。
 早めの昼弁当を牧場の一角にかたまって食べる。
 遠くに野生の鹿が4、5頭見ることができた。
 山のところどころにシャクナゲのピンクの花が咲いているのが見えるが、全山ピンクというわけにはいかない。
 牧場のハイキングといっても、3800メートルの高さがあるので富士山頂をハイキングしているのと同じで、そろそろとしか歩くことができない。シーサンパンナのガイドの女性が5人組を心配して携帯電話を何回も掛けていたが通じない。3時前にようやく雪で前進できないので、元に戻ってロープウェイで下りるという連絡があったので一同ほっとする。
 ハイキングというより、3、4時間の散策といった感じであったが、3800メートルではそうどんどん歩けない。これで充分満足だというのが15人の気持ちであった。

8 ナパ海
 シカ雪山の帰り、ナパ海に立ち寄った。
 ここは三方を山に囲まれた草原であるが、今は乾期のため草一本も生えていない。馬に客を乗せて  ~  分ぐるっと廻ってくるのがこの時期の観光で、蒲田さんが馬に乗っている姿を写した。
 6月からの雨期になると湿原になり、牧草に覆われるのでシャングリラ最大の牧草地らしいが、この時期は少し早すぎた感じである。
 夕食はチベット族の鍋料理で、ヤクの各部の肉のしゃぶしゃぶである。生でも食べられると云っていたが、やはり熱湯をとおさないでは心配で、生で食べた人はいなかった。しかし薄いヤクの肉はいい味で、全員の人気があった。野菜は白菜、エンドウの苗、春雨、昆布、ジャガイモなどで、あとはラーメンが出た。
 ヤクの肉のしゃぶしゃぶは初めての経験で、思い出に残ることだと思った。
 翌日は早朝、シャングリラ空港から昆明経由で上海に行き、上海を観光して夕食に海鮮料理を食べた。

              以上