民主法律時報

分断された仲間つなぐ一歩に――「マスコミ文化産業で働く非正規、フリーランス労働者のつどい」

 新聞労連・関西新聞合同ユニオン

 テレビや新聞、出版業界などで働く非正規労働者らの交流を目的とした「マスコミ文化産業で働く非正規、フリーランス労働者のつどい」が4月21日、大阪市内で開かれ、関係者ら約30人が参加した。
 今年2月、東京で新聞労連が初めて開催した「新聞産業で働く非正規労働者のつどい」の関西版として企画された。今回は関西MIC(関西マスコミ文化情報労組会議)が主催し、対象をマスコミ文化産業全体に拡大して開かれた。
 
広がる企業の〝いいとこどり〟
 はじめに、関西で若者を中心とした労働運動をリードする「大阪青年ユニオン」書記長の中嶌聡さんが、非正規問題の現状や取り組みについて講演した。中嶌さんは実際に受けた労働相談の事例から、非正規や個人事業主といった働き方の境界が曖昧になってきていると指摘。フルタイム以上に働いても社会保険に入れないなど、「(企業にとって)〝いいとこどり〟の働き方が広がっている」との懸念を示した。
 また、労働者が個別に企業と交渉すると、結果的には一人一人がより劣悪な労働条件を受け入れざるを得なくなる仕組みを解説。こうした「労働者間の安売り競争」をなくすことが労働組合運動の原点だと強調したうえで、「その機能を強めることなしに労組に勝ち目はなく、何十年かかってもそこへ到達しなければならない」と力強く訴えた。
 その後、非正規労働者の待遇改善などに取り組む2つの労組が活動報告を行った。まず、読売テレビ労組は今年1月、子会社で働く非正規との懇談会を開催し、その後も弁護士を招いて勉強会を開くなど、組合役員と非正規がともに非正規問題への理解を深めていった。
 その結果、4人の非正規が新たに組合員となり、今年2月に加入したという契約社員の女性は「もともと組合は正社員のためのものと思っていた。私を受け入れてくれた組合の力強さ、懐の深さをみなさんにも知ってほしい」と語った。
 一方、京都放送労組はアルバイト100人の雇い止め阻止などを勝ち取った闘争について報告。組合役員が粘り強く非正規との対話を続け、不満や要望を丹念に聞き取り、会社への要求につなげていった経緯を説明した。

小グループで話しやすく
 後半の意見交換では、すべての参加者が十分に発言できるよう、全体を4つの小グループに分けて議論するスタイルを取り入れた。
 こうした集会では、せっかく意見交換の場を設けても、人数が多すぎて1人の発言量が限られてしまい、議論に発展せず交流も深まらない、といった不満が残りやすくなる。そこで今回は、誰もが十分話せるよう7~9人ずつのグループに分け、各グループで話し合う形をとった。また、民法協「有期・パート・非常勤問題研究会」などの弁護士がグループに1~2人ずつ入り、法律的な話もできるようにした。
 新聞社などで働く契約社員らのグループでは、正社員との待遇格差に対する不満が語られた一方、「(入社時の)試験が違うので差は当然だと思い、(正社員と同じ待遇を)要求することができない」といった声も聞かれた。また、非組合員の労働者は「組合に誘われたことがない」「相談しても話を聞いてもらえないと思っていた」などと語り、職場の労組に距離を感じていることが分かった。
 小グループでの意見交換については、終了後のアンケートでも「ざっくばらんに話せた」「次回もこういう時間をつくってほしい」など好意的な感想が目立った。他の労働関係の集会でも、今後こうした話し合いのスタイルがもっと広まってよいのではないだろうか。

散らばったビーズ
 今回、新聞労連傘下の個人加盟ユニオンに所属する私は「主催者側」の立場で参加していたが、同時に、仲間との交流を求めて集まった非正規労働者の一人でもあった。
 集会は様々な業界の人と出会い、語り合える貴重な場となったが、肝心の非正規・フリーランスの参加が伸び悩み、中でも労組と関わりのない「個人参加」の労働者は少数にとどまった。背景には、彼らに広く参加を呼び掛けるべき各職場の労組が、日頃から「非組合員」の非正規と十分コミュニケーションを取っていない実態があることは容易に想像でき、悔しさも残った。
 非正規労働者は、同じ会社でもフロアが違えばまったく交流がなかったり、同じ部署でも人の入れ替わりが激しく、深い人間関係を築きにくかったりする。そのうえ、大部分の非正規は労組と接点がなく、横のつながりを持てないまま分断され、お互いの情報を共有することもできない。
 集会では、そのバラバラに散らばったビーズの一粒一粒を丁寧に拾い集め、つなぎ合わせる地道な作業を今後も続けていこう、との方向性は確認できた。しかし、行動を伴わない掛け声だけの目標設定は空しい。集会を第一歩に、次のアクションへと確実につなげていきたい。

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