民主法律時報

東京地裁「不当判決」をはね返し、JAL不当解雇撤回闘争の勝利を!

弁護士 南 部  秀一郎

1 はじめに

 去る4月27日、国労大阪会館大会議室において、「東京地裁『不当判決』をはね返し、JAL不当解雇撤回闘争の勝利を! 4・27  『判決報告&決起集会』」が開催されました。この日は、ゴールデンウイーク開始前日にも関わらず、150人を超える参加者が会場に集結しました。


2 開会のあいさつと若干のコメント

 集会はまず、集会を主催した大阪支援共闘会議代表・萬井隆令民主法律協会会長の開会のあいさつからはじまりました。このあいさつに引き続き、本訴訟2判決についての若干のコメントと題して、本訴訟2判決を分析するとともに、高裁での戦いに向けての課題が示されました。ここで会長から示された視点については後述します。


3 東京地裁判決報告

 続いて、JAL不当解雇撤回裁判弁護団の清見榮弁護士から判決報告がされました。この報告では、本判決が、整理解雇法理の適用は認めたものの、具体的な運用については、整理解雇の法理を無視したものであることの指摘がされました。
 整理解雇法理は、ご存知の通り、①人員削減の必要性、②解雇回避努力、③人選の合理性、④解雇手続きの適正が、要素・要件とされています。
 そして、本件解雇では、
①解雇が行われた2010年度には、更生計画での利益目標の実に3倍もの1884億円の営業利益をJALがあげていたこと、東日本大震災にも耐えられるほどのリスク耐性を持っていること等から、法廷での稲盛JAL会長(当時)が証言しているように、「人員削減の必要性がなかったこと」
②組合が提起した「解雇回避努力が十分行われていないこと」
③「病気欠勤・休職などによる基準」「目標人数に達しない場合の年齢基準」による判断で、熟達した経験の伝承が妨げられ、「人選の合理性がないこと」
④人員削減に労働組合を関与させず「手続きの適正もないこと」
以上の事実があります。
 しかし、判決では、以上の事実に触れないで判断がされています。その理由付けでは、更生計画が無批判に絶対化されているだけであると清見弁護士は指摘しました。
 更に、清見弁護士は、日本航空の客室乗務員組合が、30歳での若年定年制や結婚退職制度・妊娠退職制度を撤回させ、女性の人権を無視した「監視ファイル」裁判を戦い抜いた組合であること、乗員組合も勤務裁判で安全問題を提起し、それぞれの組合が労働者の権利、安全を守ってきたことを指摘します。そして、解雇が組合を狙い撃ちした、不当労働行為であり、判決がこの不当労働行為を免罪するものであると報告し、控訴人・組合員への更なる支援を呼びかけました。


4 原告団決意表明

 次に原告団の皆さんのうち、乗員1名、乗務員4名の計5人の方から、決意表明がされました。
 この原告団の決意表明からは、不当解雇後の日航社内の状況が伝えられました。既に早期退職した社員が5000人以上、不当解雇後でも、乗員60人以上、客室乗務員に至っては500人以上が自主退職。暗い職場に、職員のモチベーションが低下し、骨折した機長がそのまま乗務するなど、日航社内の安全に対する意識・技術が低下している状況は惨憺たるものです。
 その中、原告それぞれが高裁での勝利を、職場復帰を誓いました。日航は、原告に対し、会社を通じた住宅ローンの一括返済を求めているそうです。原告団の中には、一人で子育てをされている方、配偶者をなくされた方、失業手当が止まり、夜勤で働きながら、裁判活動に取り組んでいる方もおられます。大阪からも原告団を支援する更なる活動が必要です。


5 今後の戦いと当面の行動提起

 この原告団の声に答えて、大阪の支援共闘会議からはオルグ活動の強化の方針が示されました。また、ターミナルでの宣伝活動について、なんば駅での駅頭活動(6月5日18時30分から)に加えて、初めての試みとして、伊丹空港ターミナルでの宣伝活動が行われることが発表されました。5月24日と6月15日の両日19時から、横断幕などを示して航空旅客に訴えていきます。
 最後に、職場のうたごえのみなさんが原告団とともに「あの空へ帰ろう」を合唱し、支援共闘会議副代表の川辺和宏大阪労連議長の発声で、団結がんばろうを行いました。


6 まとめ 今後の高裁での闘いについて

 今後の高裁での闘いについて、順番が逆転するが、開会のあいさつにおいて、萬井代表の挨拶及び判決分析から、重要な視点の指摘があったので、最後に示します。
 まず判決分析において、萬井代表は、清見弁護士と同じく、本判決が、整理解雇法理に従うとしながら、何ら同法理に沿っていないことを示しました。その中で、筆者が気になったのは、原告が「解雇の必要性がないこと」を示す証拠とした、稲盛会長の発言についての評価です。しかし、この発言については、「整理解雇をするという債権者らへの約束を反故にできない」と続きます。つまり、解雇の必要性がなくとも、再建計画により損失を被った株主・債権者(である銀行・国)とのバランスをとり、それらの理解を得るために、計画通り解雇を行ったと、この発言は評価できるのです。この発言から想起されるのは、民主党が提案した議員定数削減です。消費税増税の理解を求めるため、国会議員も身を削らないといけないとの発想は、一見、「わかりやすい」ものですが、少し考えると、増税と定数削減に全く関連がないことは明らかです。そして、日航でも同じことが言えます。日航の経営悪化の真の原因は、日航経営陣の放漫経営と必要のない地方空港を建設し、そこに不必要な路線を開設した、国の航空政策の失敗です。この経営悪化について、なぜ、乗員・乗務員が責任をとらないといけないのでしょうか?損を関係者みんなで被ろうというのは、一見、「わかりやすい」発想ですが、何らの合理性もありません。それで仕事と生活を奪われる原告にとっては、何の説得力も持たない話です。百歩譲って、政治家の判断として、一定の理解の範疇であっても、事実をもとに合理的な判断を下すべき裁判官の判断ではありません。
 萬井代表からは、高裁での闘いについて、日航の主張だけでなく、東京地裁の判決という大きな壁も打ち破る闘いになるとの発言もありました。原告・弁護団は、これから高裁で、この不合理な地裁判決を打ち破る闘いをされます。大阪からも、この不合理に対する闘いを支援しなければならないとの感想を持ちました。

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